15歳 β月π日 『こればかりはなぁ(シゲル視点)』
チャンピオンリーグでは、初年度の新人が勝ち抜ける確率はそこまで高くない。
初戦で二年目以上のトレーナーとぶつけられることが多いこともあり、どうしたって経験の差がバトルに出てくる。それは、あの伝説ポケモンを使っていたタクトというトレーナーもそうであり、彼も凄く強かったがまだこのリーグで勝ち抜けるほどではなかった。
なので、二戦目の相手がまた今年初挑戦の初年度トレーナーだと聞いて少し驚いている。
特別参加枠のタクトとは違い、今回の対戦相手であるシンジは、少し調べると情報が手に入った。今年のシンオウリーグを勝ち抜いたというそのバトルデータに目を通していく。
流石に全部を見るだけの時間はないので、見るのは今年の分だけでいい。実際、今の実力に最も近いデータが今年の分だ。それ以前のデータはどうしたって鮮度で劣ってしまう。
しかし、チャンピオンリーグは初らしいが、実力はしっかりと感じられた。タクトも強かったが、このシンジという少年はどこか自分に似た節を感じる。
だからといって手加減するつもりはないが、それでも相手は初年度の新人ではなく、実力のあるトレーナーだと認識して相対しないと初戦のように間抜けを晒しそうだった。
そうして始まった二回戦。
開幕、こちらがカイリューを出していくと、向こうはガブリアスを出してくる。奇しくもドラゴンポケモン対決となった訳だが、向こうは初手『ステルスロック』という面倒な一手を打ってきた。
流石に放置はできないので、こちらは『きりばらい』を使って『ステルスロック』を除去していく。だが、向こうもこのくらいのことは想定済みのようで、特別動揺した様子は見せていなかった。
では、上空からの『りゅうせいぐん』ならどうか――と、攻撃を仕掛けていくと、『あなをほる』で地面に潜って対応してくる。ならば、『じしん』で追撃と、急降下するとそこを狙って『ドラゴンクロー』で飛び掛かってきた。
成程、地面で別の技を仕込めるレベルか。
ならばその一撃を腕で反らして、返しの『ドラゴンクロー』で叩き落としていく。が、どうやら向こうのガブリアスの特性は『さめはだ』のようで、こちらにも僅かなダメージが入った。これで、『マルチスケイル』の効果は無効にされたと言って良い。
こちらは『りゅうせいぐん』の効果で特攻がダウンしていることも有り、ここは一旦カイリューをボールに戻す。同時に、向こうは再び『ステルスロック』を使ってきた。
仕方ないので、ここでカメックスを出していく。
流石に『ステルスロック』のダメージは受けるが、即座に『こうそくスピン』からの『れいとうビーム』のコンボ技で、『ステルスロック』を排除して弱点を突いていった。
向こうは再び、『あなをほる』で地面に逃げていく。しかし、対応策がない訳ではなかった。穴に向かって『れいとうビーム』を放ち、穴の中に隠れるガブリアスに大ダメージを与えていく。
まさか、こんな手があるとは思わなかったようで、向こうも流石に驚いた様子を見せた。だが、すぐに地面から飛び出してきたガブリアスをボールに戻している。
とはいえ、四倍の弱点だ。かなりのダメージを与えたのは間違いない――と、思っていると、向こうは二体目としてエレキブルを出してきた。
流石に相性が良くないので、カメックスを戻してゴローニャを出していく。しかし、向こうもゴローニャを見た瞬間、エレキブルを問答無用で戻してきた。
事前情報通り、基本的にはポケモンの相性を重視する効率派――しかし、たまにサトシのように意外な行動を取る一面もあるので注意が必要。
と、考えていると、ドダイトスを出してくる。
くさ・じめんタイプのポケモンで、こちらに有利を押し付けに来たようで『からをやぶる』で防御・特防を一段階下げて、攻撃・特攻・素早を二段階上げてくる。
試しに『ほのおのパンチ』を指示すると、こちらが接近する前には余裕で向こうは回避を始めていた。そのまま、『はっぱカッター』で遠距離から一方的にこちらを攻撃しようとしてくる。
それを見て、こちらは即『だいばくはつ』を指示した。ゴローニャには申し訳ないが、このドダイトスは放置するとなかなかに面倒臭そうなのでここで一気に退場して貰う。
こちらのゴローニャの特性は『がんじょう』なので、どんな攻撃でも確定で耐えることが出来た。
防御が一段階下がっていることも有り、不一致の『だいばくはつ』でもドダイトスはこちらの攻撃を耐えることが出来なかった。これで互いに一体ずつポケモンが戦闘不能になる。
ありがとう、ゴローニャ。君はいい仕事をした。
まさかの自爆攻撃を受けて向こうもリズムが崩れたようだが、それならばとドラピオンを出してくる。こういう手合いは、崩れたリズムを取り返すために、次に自信のあるポケモンを出してくる傾向が多い。
と、いうことで、こちらはミミロップを出して、『まねっこ』を指示した。この『まねっこ』という技は最後に使われた技を使うことが出来る技であり、今最後に使われたのはゴローニャの『だいばくはつ』だった。
ミミロップが『だいばくはつ』をするという予想外の行動に、向こうも『まもる』の指示が遅れる。当然、タイプ一致の『だいばくはつ』を受けきれるはずがなく、向こうのドラピオンも即座に戦闘不能になった。
「くっ、公式のルールでは『だいばくはつ』や『みちづれ』は一度のみとなっているが、まさかこんな方法で穴を突いてくるとは――」
そう、僕が指示した技はあくまで『まねっこ』であり、『だいばくはつ』を指示した訳ではない。これはルールに抵触しない連続『だいばくはつ』と言って良い技術だ。
とはいえ、防ぐ方法がない訳ではなかった。サトシなんかだと、多分こちらの『まねっこ』に合わせて余裕で先制技を叩き込んできただろう。あくまでこれも初見殺しでしかなかった。
「ならば、こちらも切り札を切ろう! 出てこい、ムクホーク!」
向こうは五体目のポケモンとしてムクホークを出してくる。何をしてくるのかと思うと、そのまま隠していたキーストーンを使って、ムクホークをメガシンカさせてきた。
ムクホークが光に包まれ、その身を変化させていく。基本的にはそこまで大きく変化したようには見えないが、体が一回り大きくなって前髪が長くなっている。
メガムクホークか。僕も見るのは初めてだ。
ひこうタイプであるのは間違いなさそうだが、果たしてタイプやステータスがどう変わっているか――と、思いつつ、こちらもカメックスを出してキョダイマックスさせていく。
必殺のガラル粒子パックを使ってカメックスをキョダイマックスカメックスにすると、通常のカメックスの背中に要塞が出来たかのように、甲羅の四方八方に小さな砲塔が出来上がる。特に中心には特大の砲が出来ており、その全てがメガムクホークに向けられていた。
「これが噂のダイマックスか……!?」
「いいや、これはキョダイマックスだ!!」
全ての砲塔から放たれる『ダイアイス』がメガムクホークを追っていく。同時に、『ダイアイス』の追加効果でフィールドが霰状態になり、メガムクホークの体力をさらに削りに行った。
向こうも『かげぶんしん』を使って回避するように指示するが、残念ながらダイマックス中の攻撃は必中となる。弱点攻撃を受けて吹き飛んだメガムクホークに、とどめの『キョダイホウゲキ』を指示した。
この『キョダイホウゲキ』はみずタイプの攻撃技を選択することで変化するキョダイマックスカメックスの専用技だ。
さらに追加効果でフィールドはしばらくの間、『キョダイホウゲキ』状態となり、定期的に相手の体力を大まか1/6程削る。いわば、『ステルスロック』の時間版というべき効果だ。
メガムクホークにみず技は弱点ではないが、こちらのタイプ一致技――それも最大火力を受けて無事で済むはずがなかった。
向こうも、体を回転させながら『ぼうふう』を使うという、まるでサトシのような荒業で何とか打ち返そうとしてきたが、『キョダイホウゲキ』はそんな攻撃をも飲み込んでメガムクホークに直撃している。
しかし、気合で体力が残ったようで、向こうも『インファイト』でこちらに殴り掛かってきた。
多少のダメージは受けるが、キョダイマックス中は体力が大幅に上昇するため、受けるダメージはそこまで大きくない。
おまけに、『キョダイホウゲキ』の追加効果で、メガムクホークも残りの体力を削られ切ってしまった。
これで相手のポケモンが先に三体戦闘不能になったことでインターバルに入る。まだダイマックスの効果は残っているが、これはルールなので戻す以外になかった。
五分間休憩――しかし、今回使った『だいばくはつ』コンボは駄目だな。初見殺しとしては面白いが、知っていれば対策が容易に打てる。先程も少し考えたが、サトシなら初見でもしっかり対応して来ただろう。
特に、サトシは前のジョウトリーグで似たような『だいばくはつ』連打を受けている。
もし、このバトルで戦っていたのがサトシなら、そもそもゴローニャの『だいばくはつ』も通らないだろうし、仮に通ってもミミロップの『まねっこ』は見通されていたに違いない。
それでも、このバトルではいい結果を出してくれた。ゴローニャも、ミミロップも、身を犠牲にして僕のために戦ってくれている。
よく、『だいばくはつ』や『じばく』を使うトレーナーは、ポケモンへの愛情がないのではないかと言われることがあるが、僕はそんなことはないと思っている派だ。
勿論、中にはポケモンを道具のように使う悪党がいることも確かだが、『だいばくはつ』や『じばく』といった技自体に罪はない。トレーナーとポケモンがしっかりと意思疎通できていれば、自爆技を使ったバトルの組み立てだって自由だろう。
僕は、それがどんなポケモンであれ、僕と共に戦ってくれることに感謝とリスペクトを持っている。だから、ポケモン達も僕に応えてくれるし、僕も彼らのために強くならないといけない。
――そう、このリーグでサトシに勝つことが、彼らの努力に報いる最大の結果なんだ。
だからこそ、このバトルでは負けられない。インターバルを挟んだことで、『ダイアイス』や『キョダイホウゲキ』によって作られたフィールドの状況はリセットされてしまったが、五分ではまだ向こうも落ち着きを取り戻せてはいないだろう。半数を一気に失って混乱しているはずだ。
その隙を突く。
インターバルが開けてバトルが再会されると、向こうはガブリアスを出してきた。こちらは再びカイリューを出していく。
開幕、向こうは『げきりん』を指示してきた。もし、『ステルスロック』を撃ってこようものなら、その隙を突いて叩くつもりだったが、向こうももう残り体力からここでカイリューを殴り倒す以外の択がないとわかっているらしい。
ならば、真正面からお相手しよう。
こちらも、『ドラゴンクロー』を指示して、『げきりん』を受け流していく。威力的には『げきりん』の方が上なのはわかっているが、相手の攻撃をしっかり見れば威力の低い技でも十分に受け流すことが出来る。
特に、相手がガブリアスなのがよかった。
僕はこう見えて、ジョウトチャンピオンであるワタルさんの弟子だ。当然、ドラゴンタイプについてはこれ以上ないほど勉強させられており、ガブリアスに対する知識もしっかり叩き込まれている。よって、他のポケモンに比べて動きが良く見えるのだ。
また、殆どのトレーナーは『げきりん』を両手で使用してくるが、本来であれば『げきりん』は手だけでなく足や頭など全身で攻撃が出来る。
これは『げきりん』だけでなく、同じ系列の技もそうだ。そのため、サトシなんかはたまに足技とかヘッドバッドが挟まるので、腕だけの攻撃など受け流すのはそう難しくなかった。
向こうも、まさかここまで全て受け流されるとは予想外だったようで、『ドラゴンクロー』叩きつけからの『じしん』でガブリアスもまた戦闘不能になっていく。
これで残るは二体。その内、一体はエレキブルだとわかっているので、こちらもガブリアスの交代に合わせてカイリューを戻させて貰う。
この場面、正体が割れているエレキブルを出せば、それに合わせて僕が相性のいい最後のポケモンを出してくる可能性が高い。それならば、まだ正体が割れていない最後の一体を出すのがベスト。効率重視で考えるタイプならば、そう考えるはず――
――故に、こちらはカメックスを出した。
向こうはこちらの読み通り、最後の一体を出してきたようでゴウカザルを出してくる。それを見て、向こうは即座にゴウカザルをエレキブルに交換してきたので、その瞬間に最後の技の『ほえる』を使って強制的にポケモンを交代させた。
向こうの残りポケモンは2体なので、エレキブルを出せば無理やりゴウカザルを引き摺り出せる。つまり、ゴウカザルとカメックスで対面する以外に、向こうに択はないということだった。
不利対面だが、向こうはまだ諦めていないようで、『かみなりパンチ』で突っ込んでくる。
こちらは真っ向から受けて立った。そのまま、両手でゴウカザルをわしづかみにし、砲塔から究極技である『ハイドロカノン』をぶつけていく。
向こうも慌てて『みきり』を指示して攻撃を回避してきた。そのまま、硬直で動けないカメックスに二度目の『かみなりパンチ』を叩き込んでくる。
それならばと、こちらは足元に『れいとうビーム』を撃った。ポケモン自体を氷状態にするのは確率だが、足場の地面を凍らせて相手の足と地面を固定することは容易にできる。
向こうは『フレアドライブ』で全身を燃え上がらせることで、氷の楔を解除してきた。しかし、その間にこちらは『こうそくスピン』からの『ハイドロカノン』という割と難しいコンボ技を始動させて貰っている。
究極技はその威力故、普通に使うだけでも自身が吹っ飛ぶくらいの反動があった。だから、『こうそくスピン』で下手にコンボ技として使用しようとすると、その威力を制御できずにカメックス自身が明後日の方向に飛んでいってしまう欠点がある。
普段はその重量級の体で大地を踏みしめて耐えているのを、空中で制御しろというのがそもそも無理なのだが、カメックスは『こうそくスピン』での回転中、『ハイドロカノン』の反対側に『れいとうビーム』(放出系なら何でも良し)を撃つことで上手く姿勢を保つことに成功していた。
反対側に別の技を噴射することで、バランスを無理やり制御したのだ。これにより、本来ならば不可能とされていた究極技を回転して使うことが出来ている。
それはつまり、多段攻撃が可能になったということであり、ゴウカザルが『みきり』で初段を躱しても、回転によって次の攻撃がすぐに襲い掛かってきた。当然、『みきり』は連続では使えないので、究極技の多段攻撃はゴウカザルに直撃する。
弱点攻撃を受けて、ゴウカザルの体力はかなり削られた。レベル差もあってか、ゴウカザルの体力は一気に半分以上削られていく。
しかし、向こうはまるでこれを待っていたと言わんばかりの笑みを浮かべた。同時に、ゴウカザルからとてつもない炎が嵐のように吹き荒れる。
まさか、特性の『もうか』か? にしては、あまりに凄まじいエネルギーだ。ポケモンの中には、サトシのリザードンやミュウツーのように、たまに本来持ちえない特性を持つポケモンがいるが、もしやこのゴウカザルも同じような?
と、思考していると、向こうはこちらのカメックスが反動で動けない間に、『だいふんげき』と『フレアドライブ』を同時発動させて一気にその炎の力を拳に集約させていた。
「まだこの同時技は安定していない。全力を発揮するまでに少し時間がいるんだが……そっちが究極技の反動で動けないおかげで助かった」
拳が黄金に輝くと、ゴウカザルが突っ込んできて腕を振り抜いてくる。ほのお技はカメックスには半減のはずだが、一撃で『かみなりパンチ』を優に超えるダメージを叩き込まれた。
しかし、『だいふんげき』を使用している以上、その技は連続技のはずだ。技の最中に別の技を使うのは無理とみて、二撃目の前に『ハイドロカノン』を指示していく。幸か不幸か、『だいふんげき』の一撃で、こちらも特性の『げきりゅう』が発動していた。
発射された究極の一撃をぶち抜くと言わんばかりにゴウカザルが拳を振り抜く――もしこちらが『げきりゅう』状態じゃなかったら、向こうの一撃はこちらの究極技を突破していたかもしれない。
だが、今回はこちらの勝ちだ。
こちらの最大火力がゴウカザル自身を吹き飛ばし、一気に戦闘不能まで持っていった。
向こうがゴウカザルを戻すのに合わせて、こちらもカメックスを戻していく。当然、最後の一体はエレキブルだったので、こちらもエレキブルを出していった。
これにより、お互いに得意なでんき技が使えないという状況になる。対サトシのピカチュウの前哨戦ではないが、この状況でも勝つことがこちらの理想だった。
お互いにまだ技を使っていない。
どうバトルを組み立てるか――思考は一瞬。向こうは『じしん』を指示してくる。当然、読めているので、こちらも『じしん』で相手の攻撃を相殺した。
振動同士がぶつかり合うことで、お互いの攻撃が相手に届く前に打ち消されていく。
この時点で弱点を突いて叩くのは無理だとお互いに判断し、殴り合いを選択。向こうが二つ目の技として『かわらわり』を指示してきたので、こちらも攻撃を受けながら『けたぐり』で相手を投げ飛ばしていった。
エレキブルの体重は平均140㎏前後。威力としては『けたぐり』の方が高いが、相手はしっかり受け身を取ってダメージを最小限に抑えている。
続けて、『ギガインパクト』を指示した。ノーマル技の中でも最大級の威力を誇る物理技だ。反動こそあるが、その威力は一級品である。
相手が転んで起き上がっている今なら回避は不可能と判断した。実際、回避は間に合わなかったようで、こちらの一撃を受けて向こうのエレキブルが吹き飛んでいく。
しかし、向こうもただでは倒れなかった。
それならばと、地面に叩きつけられた勢いに逆らわず、そのまま『じしん』で反撃してくる。こちらが反動で動けない間に弱点攻撃を仕掛けてきたのだ。
これは受けるしかない。
予定では、向こうが体勢を立て直す間にこちらの硬直が解除されるはずだったのだが、敢えて起き上がらずに無理やり攻撃に転じてくるとは予想外だった。
続けて、向こうのエレキブルが『グロウパンチ』を仕掛けてくる。攻撃をするごとに、自身の攻撃ランクを一段階上昇させる技だ。
敢えて大技を狙うのではなく、小さな一撃で大きなダメージを狙ってきたか。
確かに、同族同士の戦いでは僅かなステータスの差が有利に働く――なら、そちらがパワーならばこちらはスピードを選ぼう。『10まんボルト』を自身に帯電させることで、無理やり『でんきエンジン』を発動させて速度を上げていく。
これで向こうの攻撃を避けるだけの速力を得た。その上で、隙を見て『けたぐり』でダメージを与えて、避けられないタイミングで大技を叩き込む――つもりだった。
だが、ここで予想外の技を使ってくる。最後の技に『でんこうせっか』をチョイスすることで、こちらの上がった速力に無理やり追いついてきたのだ。
そのまま、無理やりこちらを押さえつけてくる。『グロウパンチ』で、向こうの火力が上がっていることも有り、こちらは拘束を振りほどくことが出来なかった。
追撃に『じしん』が来るのは読めていた――が、逃げられないので回避も出来ずに弱点の直撃を受ける。
こちらも何とか反撃に『ギガインパクト』のヘッドバッドをお見舞いしたが、向こうのエレキブルは怯まなかった。
流石に火力の上がった『じしん』は耐えきれず、こちらのエレキブルが戦闘不能に持ち込まれる。
まさか、あそこで敢えて『でんこうせっか』をチョイスしてくるとは――てっきり今までのバトルの傾向から、『まもる』系の技で受けに回ると思っただけに予想外と言って良い。
しかし、いい勉強になった。
それに、エレキブルは倒されたが、まだこちらのポケモンは残っている。こちらは再びカイリューを出していき、『ドラゴンクロー』で一気に向こうの体力を削り切った。
これで、向こうのポケモンは全て戦闘不能となり僕の勝利が確定する。向こうもエレキブルをボールに戻すと、こちらに向かって歩いてきた。
「負けたが、良いバトルだった」
そう言って、シンジが握手を求めてきたので、こちらも喜んでそれに応じていく。
「そうだね。君なら、もう数年あれば余裕でチャンピオンリーグを突破しそうだ」
「その数年が、今の俺とお前の差か……」
「少し前まで、僕も似たようなことを考えていたよ。だからアドバイスだ。やることをやっていれば、壁なんて勝手に乗り越えている。トレーナーとしての技術やポケモンの育成、君はまだまだ足りないことばかりだ。勿論、僕もね」
「……ふっ、胸に刻んでおく」
でも、本当に初年度とは思えないくらいいいトレーナーだった。彼なら、もう何度かチャンピオンリーグで揉まれれば、すぐに僕やサトシの領域まで来られるだろう。
後ろからも怖いトレーナーは居る。
でも、何よりも怖いトレーナーは僕のすぐ隣にいた。だからこそ、僕は油断しないでいられる。油断や慢心なんてしている暇はなかった。そんなことをしていれば、すぐにでも引き離されてしまう。
とはいえ、これで後三回勝てば四天王リーグだ。どこでサトシとぶつかるかはわからないが、出来ることなら決勝でぶつかってスッキリ勝ちたい。
そんなことを考えながら、準々決勝は一回戦や二回戦よりも余裕で勝ち進められ、後は準決勝さえ勝てば望み通り決勝でサトシが来るのを待つことが出来そうだった。
シゲルはニューサトシと一緒で、地味にシンジの脳を焼いた一人なので、どこかで「俺を覚えているか?」という台詞を入れようか悩んだが女々しいので止めた。
シンジはニューサトシとシゲルの良いところ取りスタイルなので、地味にシゲルが親近感を感じている。