15歳 β月σ日 『それでも、負けるつもりは毛頭ない』
メガリザードンの強制交代によって出てきたのはウインディだった。こちらもメガリザードンで続投しても良いが、流石にここは一旦戻していく。
ウインディは既に技を全て使っている。『しんそく』、『ほえる』、『フレアドライブ』、『じゃれつく』だ。相対するならピカ様かミカルゲ辺りを出すのが鉄板ではあるが、ここでマスターボールが揺れたので、そろそろ切り札を出していくことにした。
どうやら、リザードン達の奮闘を見てもう我慢が出来なくなってしまったらしい。だが、気持ちは良くわかるので、ここで最後の一体であるミュウツーを出していった。
「ここでミュウツー!? ピカチュウかミカルゲの確率が濃厚なこの状況で!?」
本来であれば最後まで温存しておく場面――だが、そんなセオリーよりも俺は本人のやる気を買った。
『久しいな。随分と強くなったようだ』
「……俺を覚えているのか?」
『後にも先にも、敗北したのはあれが初めての経験だ。忘れるはずがない』
確かに、ミュウツーは何度か敗北を味わっているが、それでも公式戦初敗北はシンゴの連続『だいばくはつ』によるものだったっけか。
何だかんだこいつも負けず嫌いだし、あの時のリベンジがしたかったのかもしれないな。
『悪いが手加減無用だ』
そう宣言して、『サイコキネシス』でウインディの動きを封じていく。基本的に俺に似て近接好きなこいつが手加減なしで特殊技――それもエスパー技を使う当たり、それだけシンゴの実力を認めているという証拠だった。
事前のバトルで体力がかなり削られていたことも有り、ウインディの体力は約半分程削られていた状態だったが、特攻種族値154から繰り出されるタイプ一致の『サイコキネシス』は一撃で残りの体力を削っていく。
シンゴも『しんそく』を指示していたが、ミュウツーはウインディを逃がさなかった。これでウインディも戦闘不能になってしまうが、ここで満を持してシンゴはガラガラを出してくる。
それ見て、ミュウツーもスプーンを出した。
真っ向勝負がしたいということだろう。
向こうも、近接戦なら絶対に負けないという自信があるようで、『ボーンラッシュ』を指示してくる。ミュウツーもまた、『アイアンテール(スプーン)』で受けて立った。
ミカルゲやラグラージさんが翻弄された相手だが、流石のミュウツーは骨ヌンチャクの複雑な軌道も上手く捌いている。が、ミュウツーの技量をもってしてもガラガラとの勝負は五分だった。
ガラガラは再び骨の片方から鎖を外して、『ホネブーメラン』を撃ってくるが、ミュウツーは真正面からそれを受け止めた――そのまま、二刀流で『アイアンテール(スプーン&骨)』を仕掛けていくが、ガラガラは一本の骨でも十分に攻撃を防いでくる。
否、防ぐ所か、攻撃を受けたのを利用してこちらの手から骨を弾いて奪い返してきた。
バックステップで距離を取り、再びガラガラが構える。それならばと『サイコキネシス』を指示してみるが、攻撃種族値実質160越えのガラガラは力づくで拘束を解除してきた。
成程、マジで対策済な訳だ。
なら、こっちも手加減なしで行こうか。再び『アイアンテール(スプーン)』で攻撃を仕掛けていく。
向こうも、『ボーンラッシュ』で受けてくるが、その流れの中でミュウツーは技と技の連携という超高等技術を見せてきた。スプーンを受けられた瞬間、反対の手で『ドレインパンチ』を発動させ、それを防がれると『ローキック』で足を払いに行く。
ガラガラも予想外の連続攻撃に驚いたようにジャンプするが、空中に浮いたことで自由に動けなくなった。そのまま一回転して本来の尻尾による『アイアンテール』でガラガラを吹き飛ばしていく。
ギリギリで骨での防御が間に合ったようだが、それでもガラガラもノーダメージではなく、少し驚いたような表情で起き上がって来た。そう、本来ならば有り得ない状況だ。
「馬鹿な……ポケモンの技は、一つ一つの後に僅かな硬直がある。反動技ほどではないが、連続しては使えない。いや、勿論技術によって連続攻撃が可能なのは知っている……だが、これはそんなレベルを超えている」
シンゴが驚くのも無理はなかった。ミュウツーは、『アイアンテール(スプーン)』から『ドレインパンチ』、『ローキック』、『アイアンテール』と技を高速で四つも繋げたのだ。
普通のポケモンでも、この速度で技を繋げるのは二つが限界。それを乗り越えたとしても三つで止まる――が、こいつはそんな常識を無視して全ての攻撃を当たり前のように繋げた。
気が付けば、天候は元に戻っている。しかし、そんなことなどどうでもいいと言わんばかりに、シンゴはミュウツーの超絶技巧の前に動揺を隠せずにいた。
『この程度で驚かれては困る。まだまだいけるぞ』
種は『サイコキネシス』にあった。本来、相手の体の自由を奪ってダメージを与える技だが、その本質はモノを動かすという点にある。
ミュウツーは、『サイコキネシス』で自分を操作することで、技後の硬直を上書きする技の発動タイミングを、客観視して発動させることが出来ていた。
分かりやすく言うと、戦い方が違うのだ。
通常のミュウツーの戦い方が自分視点のFPSだとして、『サイコキネシス』を使った自身を操作したバトルは、第三者視点で格闘ゲームをしている感覚に近い。
実際に自分で戦うと感覚が難しいが、画面の外から技のタイミングを計れば発動しやすいのと同じく、ミュウツーは『サイコキネシス』で自分を操り第三者視点にすることで、技術の難易度を下げたのだ。これが、本来なら出来ないはずの連続技の秘密である。
とはいえ、当然デメリットもあった。『サイコキネシス』で自分を無理やり動かすにも自傷ダメージが必須になっている。だが、メリットはそれを遥かに上回っていた。
ガラガラも技術があるだろう。しかし、『ボーンラッシュ』という一つの技では動きに型が出来てしまい、どうしても対応にも限界が出てくる。
対するこちらは、いろいろなパターンで攻撃技を繋げられるので先読みは困難。実際、シンゴも対策がわからずにどうすればいいか頭がオーバヒートしているようだった。
しかし、こちらもガラガラに全ての技を使ってしまって後がない。それだけ、ガラガラはミュウツーをもってしても凄い技量を持つ相手だった。
「まだだ! こちらには切り札その五がある! やれ、ガラガラ!」
まだ切り札あんのかよ! どんだけ隠してんだ!
と、こちらが驚いていると、ガラガラが最後の技である『あばれる』を使って突っ込んできた。これまでの美しい技術が嘘のように力任せに骨を振り回してくる。
だが、真っ直ぐ故に避けにくかった。
どうやら、『あばれる』の効果で、ガラガラは暴走状態になっているのか、いつも抑えているパワーを全開放しているらしい。これまでとは比べ物にならないくらい技の威力が上がっており、スプーンで防いでも衝撃を流しきれずに体勢を崩されてしまった。
そのまま、防ぎきれずに一撃を受けると、それだけで体力が軽く1/3近く削られる。一撃であのミュウツーの体力を1/3も削るとは恐ろしいパワーだ。
『だが、攻撃が強くなった代わりに鉄壁だった防御には穴が出来ている!』
と、続く攻撃を受け流しながら、ガラガラのボディに『ドレインパンチ』を直撃させて体力を回復していく。しかし、ここでガラガラは骨ヌンチャクから手を離し、力づくでミュウツーを抑え込んできた。
まさかここから『じわれ』に繋げるつもりか!?
本来であれば、『あばれる』の発動後はそのデメリットで混乱するはず――だが、後から聞いた話によると、シンゴのガラガラは『あばれる』の発動後は逆に冷静になるらしい。
いわば、マイナスにマイナスをかけるとプラスになるように、暴走モードに混乱をかけ合わせると逆に正気に戻るということだった。デメリット無しの『あばれる』とか最強かよ!?
が、この時はそんなことも知らず、いきなりの状況に俺もミュウツーも驚いていた。
しかし、ここでこのままやられる程、うちのミュウツーは甘くない。咄嗟に『サイコキネシス』を自身に使うことで、そのまま空中に身を浮かせて『じわれ』を回避していく。
続けて、『ローキック』でガラガラを弾き飛ばす。流石のガラガラも肩で息をしていた。
いくら向こうの物理防御が高いとはいえ、HPはそこまで高くないのでそこまで打たれ強くない。『アイアンテール』や『ドレインパンチ』、『ローキック』で、体力は既に半分以下まで削られている。
だが、対するこちらも、『ドレインパンチ』で回復したとはいえ、『サイコキネシス』の自傷ダメージを二回受けて、『あばれる』の直撃も受けていた。体力は2/3もないという所だろう。
一見、まだ余力があるように見えるが手札を全て晒してしまっていた。出来れば、一気に勝負を決めたい場面だ――と、思っていると、再び『あばれる』でガラガラが突撃してくる。おまけに、『ボーンラッシュ』も合わせて火力を一気に上げてきた。
あのパワーは流石のミュウツーでも、真正面からは受けきれない。なら、ここでこちらも切り札を切ろう。
星への願いが――ここに新たな絆を結ぶ。
いつもの吹き荒れるようなエネルギーはないが、フォルムがきずなミュウツーへと変化していった。
まだ不完全ではあるが、きずなミュウツーとなることで力を強化し、『サイコキネシス』で無理やり相手の動きを封じていく。流石のガラガラもきずなミュウツーの力には逆らえないようで、そのまま一気に体力をゼロに持っていかれた。
これにより、シンゴのポケモンが先に三体戦闘不能になったことで、五分間のインターバルに入る――が、シンゴはベンチに戻らなかった。
「そのミュウツーの変化。モノにしたのか?」
「まぁ、完璧じゃないけどな」
「そうか……公式戦の記録ではどうも力を持て余している印象を受けたから、まだモノに出来ていないと踏んでいたんだが……」
その推測は間違っていなかった。実際、俺もまたジラーチに会えなければ、あのきずな化のパワーを持て余したままだっただろう。
しかし、切り札のガラガラが倒されてもシンゴはまだ冷静だった。このままでは終わらないという強い気持ちが伝わって来る。
バトルが再開すると、シンゴはメガガルーラを出してきた。こちらは再びピカ様を出していく。
当然のように、メガガルーラは『ねこだまし』で先制攻撃を仕掛けてくる。流石のピカ様もこれは避けられずにダメージを受ける。火傷のおかげでダメージが半減しているが、それでも体力が半分まで削られてしまった。
と、思っていると、ここでさらにシンゴはメガガルーラをボールに戻してくる。続けて、カイリューを出してきた。
成程、メガガルーラの『ねこだまし』で少しでもダメージを稼ごうという作戦か。もし、火傷状態じゃなかったらパーティが壊滅していた可能性がある。ステロからの『ほえる』もそうだが、決まっていれば俺でも負けていたかもしれない。
まぁ、決めさせないのが実力ってやつなんだが。
さて、先程は上手くカイリューをあしらうことが出来たが、それでも種族値の差は明らか。逆に言えば、ここでカイリューを落とせれば、この勝負はほぼ決まったも同然になる。
再び『しんそく』と『ばちばちアクセル』でぶつかっていく。
続けて、カイリューは距離を取ってきた。そのまま、最後の技である『スケイルショット』を使って攻撃を仕掛けてくる。
この技はドラゴンタイプ専用の連続攻撃技で、威力25の物理技だが、2~5回連続で攻撃が出来た。また、攻撃後に自分の防御を一段階下げ、代わりに素早を一段階上げるという追加効果も持っている。
鱗を飛ばすという感じで連続攻撃を仕掛けてくるが、こちらも回避しながら避けられないものは『アイアンテール』で全て叩き落としていく。
おそらく、目的は攻撃ではなく、追加効果の素早アップだろう。先程の一連の流れで、カイリューの速度でもピカ様を追いきれなかったことからカイリューの速度を上げて対応しようという狙いと見た。
しかし、その予測は半分外れる。
ポケモンの素早は、実際の速さだけでなく動きのこなしの速さも上げるのだが、本来なら上がらない『スケイルショット』の速度もまた一段階早くなってきたのだ。
先程まで軽く避けられていた攻撃が段々と避けにくくなってくる――ならばと、『ばちばちアクセル』で懐に潜り込み、そのまま近距離戦に持ち込んだ。
向こうは『スケイルショット』で素早が二段階上がったが、その代わりに防御が二段階落ちている。いくらカイリューとはいえ、防御力半減はかなりの痛手のはずだ。
また特性の『マルチスケイル』も、先程のバトルで使った自身への『りゅうせいぐん』の自傷ダメージで剥がれている。回復手段もない以上、防御はかなり薄くなっていた。
しかし、スピードが上がっているだけあって、カイリューもそう簡単に攻撃を通してはくれない。『げきりん』で『アイアンテール』を上手く防御される。
だが、先程までは次の『アイアンテール』発動が間に合っていたが、今回はそのまま『げきりん』で吹っ飛ばされそうになった。咄嗟に、『エレキネット』を顔面にプレゼントして視界を封じることで、ギリギリで攻撃ポイントをずらしていく。
が、『げきりん』の一撃はピカ様の小さな体を余裕で吹っ飛ばした。残りの体力が一気に削られるが、特性の『せいでんき』によってカイリューも麻痺状態に陥る。『エレキネット』の効果で、素早も一段階下がって動きはかなり鈍くなっていた。
チャンスだ。ここで、体勢を立て直しながらも雷をチャージしていく。向こうは『げきりん』の後遺症で混乱状態に陥っていた。麻痺+混乱というこの隙を逃す訳にはいかない――必殺の青い『10まんボルト』で、カイリューにダメージを与える。
本来であれば、ドラゴンタイプにでんき技は効果今一つだが、カイリューはひこうタイプを合わせ持つが故にダメージは等倍になっていた。
また、『マルチスケイル』が剥がされたことで防御面も下がっており、必殺の一撃でカイリューの体力もまた削られていく。ゼクロムの影響によってもたらされたこの青い雷は、まだ公式戦でもそこまで回数を使用していない。シンゴもほぼノーデータのはずだ。
予想外のダメージを受けてシンゴも動揺する――が、ダメージによって混乱が解除されたようで、すぐに反撃の『スケイルショット』を指示してきた。
麻痺によって動きこそ鈍くなっているが、技の速度は変わらない。遠距離攻撃で攻めた方が有利と判断したのだろう。が、逆に言えば、こちらからすれば近距離の方が有利ということだ。
相手の『スケイルショット』に合わせて、『ばちばちアクセル』で回避しながら一気に距離を詰めていく。
シンゴもカイリューも反応は出来ているが、麻痺のせいで体が言うことを聞いていなかった。そのまま、『アイアンテール』で、『スケイルショット』を弾きながら一撃を与える。
ならばと、カイリューはピカ様に抱き着くように体を抑え込んできた。動きに追いつけないのであれば、動きを封じてしまえばいいと考えたのだろう。
続けて、『りゅうせいぐん』を放とうとチャージしていく。相打ち覚悟でこのままピカ様を何とか戦闘不能に追い込もうという考えのようだが、うちのピカ様はそこまで優しくないぞ?
動けないのであれば丁度いい――と、ピカ様が再び雷をチャージしていく。そのまま、ゼロ距離の青い『10まんボルト』でカイリューにダメージを与えていった。
カイリューも絶対に離さないとピカ様を掴んだままだが、麻痺のせいで動きが鈍い。ならばこちらも『10まんボルト』の放出を続けるのみ。シンゴにとって誤算だったのは、このイッシュの旅でピカ様の最大放電量や電気の蓄積量がアップしていることだった。
去年までのピカ様のデータならば耐えられていたかもしれないが、今のピカ様の電撃はそう簡単には収まらない。カイリューも頑張っていたが、『りゅうせいぐん』を発射する前に戦闘不能になってしまった。
カイリューが倒れるのに合わせて腕の中からピカ様が脱出していく。これで、シンゴの残りポケモンは二体。ハッサムとメガガルーラのみだ。
当然ながら、こちらも向こうの交代に合わせてピカ様を戻していく。このままピカ様を続投させれば、シンゴは100%『ねこだまし』を打ってくる。
何だかんだピカ様の体力ももうミリなので、そうなれば戦闘不能になってしまうのは自明の理だった。ここは、『ねこだまし』の効かないミカルゲに交代していく。
「ここでミカルゲが出てくる確率100%。なら、ここで切り札その六だ!」
しかし、シンゴも俺がピカ様を下げてくることは読んでいたようで、ミカルゲに対してハッサムを出してきた。
おまけに、ガルーラをメガシンカさせているのとは別のキーストーンを出して、ハッサムをメガシンカさせてくる。まだルール整備されていないからこその連続メガシンカ――しかし、これにはキーストーンが複数必要なので、そう簡単に出来ることではない。
こちらはまだ『ちょうはつ』と『トリックルーム』、『ふいうち』しか使っていないため、シンゴも『みちづれ』を警戒する場面ではある。そのため、向こうの初手は当然ながら『バレッドパンチ』だった。
火力の上がった一撃で残り体力を削りきろうという狙いだろう。とはいえ、一撃で倒れるほどミカルゲも甘くない。最後の技で『みちづれ』を指示して『バレッドパンチ』を封じていった。
流石のミカルゲも、次の一撃は耐えられないからな。当然の選択と言っていい。だが、シンゴもこちらが『みちづれ』を使ってくることは読んでいたようで、特に慌てるような様子はなかった。
当然のように、笑みを浮かべながらシンゴは『つるぎのまい』を指示してくる。それを見て、こちらの失策を悟った。
こちらが『ちょうはつ』を使えば、『つるぎのまい』は防げる。だが、その瞬間に『みちづれ』が無効になり、シンゴは『バレッドパンチ』でミカルゲを倒せるようになるのだ。
おまけに、こちらには攻撃技が『ふいうち』しかないので向こうも、安全に『つるぎのまい』で火力を上げられる。だが、こちらは『バレッドパンチ』対策のために『みちづれ』を使う以外の択がなかった。
つまり、このままミカルゲを継続させるのは、メガハッサムの積みの起点にしかならないということだ。まさか、こんな方法で『みちづれ』を回避してくるとは――こうなればミカルゲを戻さざるを得ない。
「メタグロスが出てくる確率92%」
当然、シンゴは読んでいたようで、当たり前のように『つるぎのまい』を重ねてきた。
これで攻撃が四段階上がったが、こちらははがね技は威力半減な上、メタグロスは物理に固いのでメガハッサムでは抜きづらい。かといって、ここで戻してもメガガルーラでメタグロス攻略は難しかった。
結局、シンゴに出来るのは攻撃以外にない。
四段上がった攻撃を信じ、『どろぼう』でこちらの弱点を突きながら攻撃を仕掛けてくる。威力60のあく物理技なので、特性『テクニシャン』の効果で威力はさらに上がっていた。
まともに受ければそこそこのダメージを受けかねない――が、パンとこちらが手を鳴らすと同時に、メタグロスとメガハッサムの位置が入れ替わる。
シンゴもすぐに『サイドチェンジ』だと気付いたようで、「後ろだ!」と、声を上げるが、メガハッサムが攻撃をキャンセルして対応するよりもこちらの追撃の方が早かった。
地面が揺れ、ハッサムがバランスを崩す。
こちらの得意なエスパー技はハッサムには効かないので、自ずとメインウェポンは『じしん』になる。
だが、シンゴもこのまま倒れさせてものかと最後の技として『はねやすめ』で体力を回復させてくる。ならばと、こちらも『じしん』を連打していった。おまけに、運良く急所に当たったようで、かなりのダメージが稼げている。
回復中は防御も回避も出来ない無防備状態だ。下手に連打してもPPの無駄と判断したようで、シンゴも追撃で『どろぼう』をしようとしてきた。ならば、こちらも再びパンと手を叩く。それに反応してメガハッサムが即座に後ろを向いた――が、背後には誰も居なかった。
少し遅れて、シンゴが「罠だ! メタグロスは『サイドチェンジ』を使っていない!」と声を出すが、その頃にはメタグロスが隙を晒したメガハッサムをガシッと両手で掴んでおり、とどめのゼロ距離『じしん』を決めている。
そう、手を叩いたからといって必ずしも技が発動する訳ではない。向こうの学習能力を利用した罠であったが、これが上手く決まった。
シンゴ自身は罠の可能性を考慮していたかもしれないが、メガハッサムはシンゴほど知能が高い訳ではない。初見なこともあり、素直に罠に引っかかってしまっても仕方ないだろう。
メガハッサムが戦闘不能になり、これで本当に勝負は決まった。残るメガガルーラは技を全て使い切っている。『ねこだまし』、『グロウパンチ』、『おんがえし』、『ふいうち』――この中でミカルゲ相手に有効打があるのは『ふいうち』のみだが、『ふいうち』は相手が攻撃技を使わないと必ず失敗するというデメリットを持っていた。
つまり、こちらが『トリックルーム』を使ってスピードを速くすれば、向こうよりも先にこちらの『ふいうち』が決まることになり、残り体力の少ないメガガルーラはなすすべなく戦闘不能になってしまうということでもある。
しかし、ここでシンゴは敢えてメガガルーラのメガシンカを解除し、ガルーラの特性を『きもったま』に変えるという最後まで諦めない姿勢を見せてきた。『きもったま』という特性は、相手がゴーストタイプでもノーマル・かくとう技が等倍で当たる効果がある。
もう火傷で火力もなく、体力も僅か――どうやってもこちらの攻撃ダメージで倒れる方が先だが、それでもシンゴは最後まで諦めない姿勢を見せた。終わりが見えて動けなくなっていたあの頃とは違うと言わんばかりに立ち向かってくる。
故に、こちらも本気で迎え撃った。
手加減などしない。『ねこだまし』を受けて多少怯んだが、まだミカルゲの体力は残っている。ここからは読み合いだ。
向こうの方が足が速い以上、『あくのはどう』の択はない。また、向こうに変化技がない以上、『ちょうはつ』も『ふいうち』を透かす以上の効果はなかった。
つまり、こちらの択は『トリックルーム』か、『ふいうち』の二つ。仮に、『トリックルーム』に合わせて『おんがえし』を打たれれば、その時点でミカルゲの体力はゼロになる。逆に『ふいうち』に合わせて『ふいうち』を使われれば、これもまたこちらの敗北だ。
シンゴもここまでは読んでいる。
後は、どちらを選ぶか。
奴はデータから、俺が選びそうな答えを選んでくるはずだ。つまり、俺を客観的に見れば自ずと答えは見えてくる。
仮に二択を外してミカルゲが戦闘不能になった場合、こちらの残りポケモンはピカ様、メタグロス、メガリザードン、ミュウツーと、まだ層は厚い。
向こうは火傷のダメージも有り、黙っていてもそのうち倒れる。つまり、この択に失敗してもこちらに負けはない。だからこそ、俺なら攻める――『トリックルーム』で攻撃を透かすより、『ふいうち』で一か八か殴りに行く方を選ぶだろう。
それに、単純に考えても『ふいうち』が通る確率は3/4だ。基本的に、ニューサトシも論理的に考えて行動することが多い。
しかし、俺がそう考えるってことは、シンゴも俺が『ふいうち』を選ぶ可能性を見通しているということだ。ならば、逆に『トリックルーム』を選んで『ふいうち』を透かすべき――と、いうのも読んでいる可能性がある。よし、決めた。
お互いの択が決まり、シンゴは『おんがえし』を指示してくる。やはり、俺が『トリックルーム』を指示して『ふいうち』を透かす所まで読んでいたらしい。
素晴らしい読みだ。
故に、読み合いで勝つのは無理だと俺は判断した。ここで、ミカルゲをボールに戻し、メガリザードンを出していく。同時に、急上昇して相手の攻撃を回避した。
思えば、無理に戦う必要はなかったのだ。
勿論、向こうに合わせてミカルゲをぶつけることも出来たが、わざわざ負けて嫌な気分にさせる必要もない。何せ、黙っていれば向こうは戦闘不能になるのだ。
ここはゆっくりと時間を稼いで火傷のダメージで相手を倒す――それが最良の作戦だった。
結果、ガルーラは火傷のダメージで倒れ、シンゴの手持ちのポケモン全てが戦闘不能になる。シンゴは、「何だかんだ、前と同じ負け方か……」と、苦笑いで呟いていた。確かに、思えば前のシンゴとのバトルも最後は猛毒のダメージを稼いで勝ったんだっけか。
「お前がしれっとポケモンを交換してくるやつだと俺は知ってたのにな。勝負に熱中して相手のデータが頭から抜けるなんて、俺もまだまだだ……」
「まぁ、どちらにしろ状況的には詰んでたからな」
「そうだな。ミュウツーを倒しきれなかった時点で、勝敗はほぼ決まっていた」
とはいえ、勝敗こそ俺の勝ちで手持ちも一体しか戦闘不能にされていないが、それでもシンゴにはこちらが隠しておきたかった切り札を使わされてしまっている。
特に、ピカ様の青い雷、メガリザードンのXY、きずなミュウツーの情報についてはシゲル戦まで伏せたかったが状況がそれを許してくれなかった。特にきずなミュウツーは、あそこで出さなければどうなっていたかわからない。
もし、あそこでミュウツーが倒されていた場合、その後のバトルの流れはガラッと変わっていただろう。それでも負けるつもりはないが、危うい状況になっていた可能性は高かった。
「こうなれば、先に行ってくれ。俺も近い内に必ず四天王リーグに追いついて見せる」
「おう。待ってるぜ!」
これで準決勝は俺の勝ちが決まり、残るは決勝戦――相手は最初から分かり切っていたがライバルであるシゲルだ。
この一年、旅をしながらも目標はずっとシゲルを倒すことにフォーカスを当ててきた。メガシンカやダイマックスなど、伝説ポケモンを使わずとも準伝使いであるタクトを倒しきるその実力は明らかに去年よりも上と言って良いだろう。
それでも、負けるつもりは毛頭ない。
去年の雪辱――今回こそ晴らしてやるぜ。
原作との変化点。
・切り札その五。
あばれるによる、ガラガラのリミッター解除。おまけに、暴走状態が終わると逆に冷静になるという反則。
・切り札その六。
二度目のメガシンカ。相棒のメガハッサム。
・何だかんだ戦闘不能になったのはラグラージさんだけ。
こちらもそこそこ切り札を使わされたが、向こうが強くなっているのと同じかそれ以上にニューサトシも強くなっている。シゲルがタクト相手にニドクイン以外の犠牲を出さなかったのと同じく、この二人の力は既にチャンピオンリーグクラスを超越しつつあった。
現在ゲットしたポケモン
ピカチュウ Lv.68
ピジョット Lv.63
バタフリー Lv.63
ドサイドン Lv.66
フシギバナ Lv.64
リザードン Lv.67
カメックス Lv.63
キングラー Lv.63
カモネギ Lv.63
エビワラー Lv.63
ゲンガー Lv.65
コノヨザル Lv.63
イーブイ Lv.63
ベトベトン Lv.64
ジバコイル Lv.63
ケンタロス Lv.63
ヤドラン Lv.63
ハッサム Lv.63
トゲキッス Lv.63
プテラ Lv.63
ラプラス Lv.63
ミュウツー Lv.76
バリヤード Lv.63
イワーク(オレンジ諸島の姿) Lv.62
カビゴン Lv.63
ニョロトノ Lv.62
ヘラクロス Lv.62
メガニウム Lv.62
バクフーン(ヒスイの姿) Lv.62
ラティアス Lv.61
ヘルガー Lv.62
ワニノコ Lv.62
ヨルノズク(色違い) Lv.62
カイロス(部分色違い) Lv.62
ウソッキー Lv.62
バンギラス Lv.64
ドンファン Lv.62
ギャラドス(色違い) Lv.62
ミロカロス Lv.61
ラグラージ Lv.59
オオスバメ Lv.59
ジュカイン Lv.59
ヘイガニ Lv.59
フライゴン Lv.62
コータス Lv.57
サーナイト(色違い) Lv.54
オニゴーリ Lv.57
ワカシャモ Lv.57
メタグロス(色違い) Lv.57
エテボース Lv.55
ムクホーク Lv.54
ドダイトス Lv.54
ブイゼル Lv.55
ムウマージ Lv.57
カバルドン LV.54
ミカルゲ Lv.61
グライオン Lv.53
ロトム Lv.54
ユキノオー Lv.53
ガブリアス Lv.52
ゾロア(ヒスイの姿) Lv.46
ボーマンダ Lv.52
カイリキー(変異体) Lv.52
ミジュマル Lv.50
エンブオー Lv.50
ツタージャ Lv.50
ズルッグ Lv.45
ハハコモリ Lv.48
ペンドラー Lv.48
エルフーン LV.48
ギガイアス Lv.48
ワルビアル Lv.52
ヒトモシ LV.47
サザンドラ Lv.65
マリルリ Lv.43
タマゴ 時々動いているみたい。生まれるまでもうちょっとかな?
※ハッサムが本来覚えない『ちょうはつ』を使っていため、内容を一部修正しました。話の流れ自体は変わっていません。