ニューサトシのアニポケ冒険記   作:おこむね

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#034 『そうだよ(ゲス顔)』

 11歳 μ月υ日 『準決勝 ライバルバトル VSシゲル 前編』

 

 準決勝第一試合。バトルフィールドを挟んでシゲルと向き合う。

 遂にここまで来た。アニメでは決して再現されなかった、セキエイ大会でのシゲルとのバトルである。

 シゲルも「この日が来るのを、ずっと待っていた」と言っており、今日を楽しみにしていたのが感じられた。だが、それは俺も同じだ。今日が来るのをずっと待っていた。

 

 いつもはコーチとして俺の後ろにいるタケシとカスミさんも、今日は博士やママさん、ナナミさんと一緒にスタンドで応援してくれている。二人共、試合に水を差すのは無粋だと感じたようだ。

 見れば、ロケット団も売店のバイトをしながら、こちらをちらちら見ていた。その目は、負けるんじゃないと言っているようにも感じられる。安心しろ、負けねーよ。

 

 互いにモンスターボールを構える。

 

 奇しくも、それは二年前に見た、ワタル対レッドのバトルを彷彿とさせた。どうやらシゲルもそう思ったようで、「あの日みたいだな」と呟いている。

 あの時はただ見ているだけの子供だったが、今では互いにポケモンリーグの準決勝で争い合うまでのトレーナーになった。

 

 審判の合図と共に、ボールを投げる。

 シゲルの一体目はニドキング。俺の一体目はオコリザルだった。相性としては悪くない。ニドキングは技のデパートと呼ばれるくらい技を覚えるが、かくとうタイプが苦手な、ひこう、エスパー、フェアリー技はタマゴ技の『ねんりき』と『つつく』くらいしか覚えない。逆にこちらはエビワラー直伝の『れいとうパンチ』があった。

 

 ただ近距離技なので距離を詰める必要があるのが問題である。オコリザルがニドキングに向かって走って行く。

 対するシゲルは、『あなをほる』でニドキングを地面に潜らせる。ニドキングは基本的に特殊型の方が多いイメージだが、シゲルのはどちらなのかわからなかった。

 ニドキングの姿が消え、オコリザルの足が止まる。ゲームではあまり使われない『あなをほる』だが、こうして実際使われるとどこからくるのかわからないという厄介さがあった。

 こんなことなら『じしん』を覚えさせておくべきだったか。いや、でも三色パンチを覚えるので精一杯だったからなぁ。

 

 当然、真下を警戒していたのだが、オコリザルの後ろからニドキングが出てくる。慌ててオコリザルが後ろに振り返るが、その時には既に拳に光が集中されていた。

 きあパンかよ! 穴の中で事前に気合いを貯めるとか、アニポケ殺法噛ましてくれるじゃねぇか!

 

「ニドキング、『きあいパンチ』だ!」

 

 避けるのは無理だ。もう迎え撃つしか無い。

 

「オコリザル、『ギガインパクト』!!」

 

 同じ威力150技で迎え撃つと、その威力でオコリザルとニドキングが弾き飛んだ。しかし、相打ちのはずなのに、オコリザルが何やら肩を押さえている。

 見ると、肩が紫色に滲んでいた。どうやら、特性、『どくのトゲ』の毒を貰ったらしい。

 

 最初の小競り合いは、シゲル有利で進んだか。おまけにこちらは技の反動で動けない。そんなこちらの隙を突くように、シゲルがニドキングに『げきりん』を指示していた。

 物理型のニドキングで高火力を出すなら『もろはのずつき』や『ふいうち』なんだろうが、どれもオコリザルには相性が良くない。故の『げきりん』指示か。

 

 どちらにしろ、動けない以上は、一撃受けて反撃するしか無い。こちらもオコリザルに『げきりん』と『あばれる』を合わせたアニポケ殺法を指示した。

 サカキ様がトキワジム戦で見せた。ターン技同士の組み合わせである。

 

 ニドキングの拳が顔面に当たり、その後にこちらの拳がニドキングの体に命中した。

 ただ、同じ『げきりん』でも、『あばれる』のパワーが入っているのでこちらが有利である。そのまま打ち合いを続け、先にニドキングを戦闘不能まで持って行った。だが、ターンが重なったことで、こちらもダメージの他に毒も蓄積されたのか、オコリザルも戦闘不能になる。

 

「相打ちか」

「みたいだな」

 

 互いにオコリザルとニドキングを戻して二体目を出す。俺がプテラ、シゲルがエレブーだった。相手こそ違うが、プテラにとってエレブーは因縁の相手である。気合いを見せつけるようにプテラが声を上げた。

 

 シゲルがエレブーに『10まんボルト』を指示すると同時に、『じしん』を指示する。お互いに弱点攻撃だが、プテラの方が早いようで攻撃は先に当たった。しかし、向こうはタイプ一致なのでダメージはこちらの方が受けている。

 シゲルはくらったダメージから、エレブーがもう一度耐えて、返しの一撃で倒せると思ったのだろう。引き続き、『10まんボルト』を指示してきたが、その判断は甘いぞ。

 

 こちらは『はねやすめ』を指示して体力を回復させる。また、追加効果でこの技の使用中はひこうタイプがなくなるというものがあった。よって、今回くらう『10まんボルト』は等倍となり、ダメージをそこまで受けない。

 シゲルが予想外の回復技に驚いている。

 残念だったな。うちはひこうタイプのポケモンが多いから、ピジョット先生によって、覚えられる奴は全員、『はねやすめ』を習得済なんだよ。

 

 プテラの『はねやすめ』を見て、シゲルが素直にエレブーを戻した。このまま続けても、こちらの回復量がダメージを上回っているので、プテラの体力が全回復されてから『じしん』が打たれると分かったのだろう。

 

 しばらく悩んでいたシゲルだが、三体目に出してきたのはキングドラだった。カントーでキングドラが出てきたのは初めてだったのか、観客からの歓声が凄い。

 クソが、誰から進化方法を聞きやがった?

 ニューサトシは自分への歓声は大好きだが、他人へ送られる歓声は大嫌いなのだ。

 

「あまり驚いていない所を見ると、知っていたようだね」

「舐めんな。俺は博識なんだよ。シードラにりゅうのうろこを持たせて通信交換すれば進化することくらいズバッとお見通しだ」

「昔から思っていたが、どこからそれだけの知識を手に入れてくるんだか。僕なんか、ワタルさんに教えて貰ってようやく知ったというのに……」

 

 成程、情報源はワタルか。確かに、あのドラゴン使いなら知っていてもおかしくはない。

 

 キングドラが出てきたことで、中央のフィールドの数ブロックが半分に割れ、下から水のフィールドが出てきた。キングドラはシードラと違って陸上適性があるタイプのポケモンだが、おそらく主催側がどちらかわからなくて気を利かせてくれたのだろう。

 

 俺のプテラはキングドラに有効打がないので、一旦ボールに戻した。オコリザルがいれば『げきりん』があったのだが、既に倒されている。とすると、ここは歓声を取り返すという意味も込めて、イーブイを送り出すことにした。

 

「来たな、イーブイ」

 

 最初に戦った時とは違い、今日までしっかりと訓練してきたイーブイである。まだ少しレベルは低めだが、十分に戦えるだろう。

 ハンドサインで進化先を指示すると、イーブイがニンフィアに進化した。カントーでは見られないニンフィアの姿に、歓声がこちらに送られる。

 大変、気分が良い。おまけにニンフィアはフェアリータイプなので完全にドラゴンキラーなのだ。シゲル自慢のキングドラも有効打はあまりあるまい。

 

 シゲルもニンフィアが苦手なフェアリータイプということは知っているはずだが、引き下がるつもりはないのか、『あまごい』を指示していた。

 天候を雨にしてきたということは、特性『すいすい』だな。雨の時だけ素早が二倍になるので、こちらの攻撃を避けまくろうという腹だろう。

 

 そのままシゲルが雨で威力が1.5倍になっている『ハイドロポンプ』を指示してきたので、こちらも『スキルスワップ』を指示した。この『スキルスワップ』という技は互いの特性を入れ替える技である。

 これでイーブイの『アドバンスシフト』がキングドラに行き、ニンフィアに『すいすい』が与えられるが、キングドラは自由に進化や退化が出来ても特にメリットは無い。逆にこちらは、『すいすい』でニンフィアのスピードが二倍に上がった。

 

 また、特性を失ったことでキングドラのスピードも落ちている。こちらも雨状態のタイプ一致『ハイドロポンプ』でかなりダメージは受けたが、まだ元気はあるようだ。そのままニンフィアに『ムーンフォース』の指示を出す。

 動きの遅くなったキングドラに、効果抜群の一撃が当たる。想像以上にダメージが入った。多分、急所に当たったな。

 

 だが、ギリギリで踏みとどまったようで、シゲルが『しおみず』を指示してきた。『しおみず』は、相手の体力が半分以下の時、威力が二倍になるという技だ。

 ニンフィアの体力は『ハイドロポンプ』の一撃でギリギリ半分以下だったようで、雨状態+タイプ一致130技になっていた。ニンフィアも特殊技に対する耐久はある方だが、流石にこの大技二連続は耐えられなかったらしい。戦闘不能になってイーブイの姿に戻っていた。

 

 観客が驚く前に、すぐイーブイをボールに戻す。

 騒がれるのは大好きだが、イーブイの物珍しさが目立ってしまうと本人が可哀想なので、ここは見間違いだと思って貰おう。

 シゲルもキングドラをボールに戻した。

 戦闘不能ギリギリだが、ボールに戻せば『スキルスワップ』の効果も切れるので、また『すいすい』コンボが狙えると判断したのだろう。

 

 俺は四体目にピカ様を送り出した。天候は雨だし、そろそろ盤面を有利にしていきたい。シゲルが四体目に出してきたのはゴローニャだった。

 相性はピカ様不利ということで、シゲルがゴローニャに『じしん』を指示してくる。当然、俺はピカ様に『なみのり』を指示した。

 波に乗ったことで、『じしん』の振動をかわして、一方的にゴローニャに攻撃が当たる。カツラやサカキ様にも通用した不意打ちだが、ここまで隠し通していただけあって、流石のシゲルも動揺していた。

 

 ゴローニャはいわとじめんの2タイプを持っているのでみず技は4倍ダメージである。

 おまけに雨でみず技の威力が上がっているおかげでタイプ不一致であるピカ様の『なみのり』でも大ダメージを与えられた。『がんじょう』の特性で戦闘不能は避けたようだが、弱点技を受けて動揺した所を、追撃の『でんこうせっか』で一気に戦闘不能まで持っていく。

 

「くっ、ピカチュウが『なみのり』とはっ!」

「ケケケ、知らなかったろ?」

「君が旅立ちの日に、おじいちゃんに『なみのり』の技レコードを要求していたのはこういうことだったのか!?」

 

 そうだよ(ゲス顔)。

 

 苦しそうな顔でシゲルがゴローニャをボールに戻した。上手い具合に奇襲が成功したな。俺も一旦、ピカ様を戻そう。ダメージは受けなかったが、ピカ様には後半が残っている。

 

 シゲルは五体目にカメックスを出してきた。遂にエースを出してきたな。

 カメックスはみずタイプなのででんき技が効く。ピカ様を出すべきか? いや、今さっきのピカ様の活躍を見て、尚、カメックスを出してきたんだ。何かあると見て良いだろう。

 

 悩んだが、俺もここは五体目としてカモネギを出すことにした。カモネギは『リーフブレード』も持っているので、カメックスにも有利が取れる。

 茎とながねぎを両方持っているカモネギを見て、シゲルが「またおかしなポケモンを……」と言っていたが、俺のカモネギは普通だ。ただ、ちょっと二刀流なだけである。

 

 しかし、雨状態が続いている以上、みずタイプのカメックスの方が有利だ。本来なら天候が戻るまで時間を稼ぐべきなんだろうが、カモネギはお世辞にも足が早い方では無い。雨で威力の上がっているみず技で撃墜されるのが目に見えていた。

 セオリー通りの動きをするのが難しい以上、攻撃するしか無いのだが、俺のカモネギは物理型なので近づく必要がある。懐に飛び込めるかどうか、カモネギが攻撃を避けられるかどうかが鍵となりそうだ。

 

 カモネギに『リーフブレード』を指示すると、シゲルがカメックスに『ハイドロポンプ』を指示していた。二つのキャノンから発射させるみずタイプの大技を、カモネギが体を低くしてくぐり抜けていく。自身の体の小ささを上手く利用した避け方だった。

 そのまま、カメックスの懐に飛び込んだカモネギが『リーフブレード』を構えると、シゲルがカメックスに『ハイドロカノン』を指示している――って、究極技だと!? いつ覚えやがった!?

 

「君のゼニガメに『ハイドロポンプ』を教えた代わりに、見せて貰ったのさ」

 

 ゼニガメェ!? いくら落ち込んでたとはいえ、何余計なことしてんだよ!

 

 カモネギの『リーフブレード』が当たった瞬間、カウンター気味にカメックスの『ハイドロカノン』が直撃し、カモネギの体がぶっ飛んでいく。

 天候のせいでみず技の火力が上がっていることもあってか、カモネギが倒れたまま動かない。少しすると審判によって戦闘不能を宣告された。

 

 俺のポケモンが先に三体倒れたことで、五分間のインターバルに入る。

 

 おい、ゼニガメ。負けたら一生恨むからな。

 

 

 




 原作との変化点。

・シゲルとのバトルが始まった。
 実力はほぼ互角だが、先にニューサトシのポケモンが三体戦闘不能になった。


 現在ゲットしたポケモン。

 ピカチュウ Lv.51

 ピジョット Lv.46

 バタフリー Lv.46

 ドサイドン Lv.51

 フシギダネ Lv.49

 リザードン Lv.52

 ゼニガメ  Lv.49

 キングラー Lv.46

 カモネギ  Lv.46

 エビワラー Lv.47

 ゲンガー  Lv.49

 オコリザル Lv.46→47

 イーブイ  Lv.42→43

 ベトベトン Lv.44

 ジバコイル Lv.46

 ケンタロス Lv.45

 ヤドラン  Lv.45

 ストライク Lv.45

 トゲピー  Lv.13→14

 プテラ   Lv.45

 ラプラス  Lv.45

 ミュウツー Lv.70

 バリヤード Lv.44



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