ニューサトシのアニポケ冒険記   作:おこむね

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♯321 『今なんだ』

 15歳 γ月λ日 『今なんだ』

 

 さて、これからどう立ち回るか――と、考えていると、腰のボールが僅かに震えた。

 

 ずっと出し時を考えていたが、どうやらもう我慢できなくなったらしい。まぁ、気持ちはわかる。お前にとって、ブルーとのバトルって言うのはやはり特別なものだしな。

 

 なら、温存は止めだ。

 

 ポケモンの意志を尊重する――と、いうことで、ここでこちらは六体目のポケモンとしてハッサムを出していく。

 そう、かつてオレがブルーと初めて戦ったカントーリーグセキエイ大会の決勝戦。あの時はまだストライクだったが、あのバトルで自分が何も出来ずに負けたせいでオレに初の公式戦敗北という印をつけてしまったことを、こいつは未だに後悔している。

 

 勿論、あの時、全員が持ちうる力を出し切って、その上でも届かなかったことなどはオレや仲間達、ハッサム自身だって理解はしているのだ。

 それでも、悔しさが消える訳ではない。

 もう一度、戦う機会があるのなら――そんな思いをずっと抱えてきたのは、オレが誰よりも知っている。だからこそ、何も言わなくても、ハッサムはこの試合に選出した。

 

 対するブルーはガルーラを出してくる。

 

 やはりな。残りの手持ちの中で、メガカメックスは切り札として温存したいだろうし、ピクシーはお休み中。アローラキュウコンが引っ込めば必然的に出てくるのはガルーラしか居なかった。

 

 どうやらブルーのガルーラは、前と同じ物理型のようで、開幕『ねこだまし』をしてくる。が、ハッサムははがねタイプで物理防御もそこそこ高い。タイプ一致とはいえ、半減のノーマル技ではダメージはほぼないに等しかった。

 

 開幕の『ねこだまし』で怯みこそしたが、別に特性が『がんじょう』や『マルチスケイル』ではないので、多少の体力減少は特に問題はない。

 それ以上に、ハッサムのやる気が凄かった。

 前とは違うのだと。絶対に倒れないのだと。自分が、俺や仲間達を勝利に導くのだ――と、少し気負い過ぎなくらい、ハッサムはやる気に満ちている。

 

 でも、気持ちは良くわかった。

 

 今なんだ。

 

 ずっと抱えていた後悔を晴らすのも、

 

 これまで培ってきた全てを出すのも、

 

 カントーリーグの決勝戦で何も出来なかったあの時の自分を乗り越えるのも、今なんだ。

 

「ああ、そうだな。戦うべき時は……今なんだ」

 

 そう声をかけると同時に、普段は物静かなハッサムがこれでもかというくらいの雄叫びを上げた。ずっと待っていたと、戦うべき時が来たのだと、興奮で体を震わせている。

 

 同時に、いつもの『バレットパンチ』と『ダブルアタック』のオラオラコンボを指示していく。ブルーは、『ほのおのパンチ』を指示してきた。

 四倍弱点で一気に倒し切ろうという狙いだろう。だが、今のハッサムは四倍弱点など気にしない。これまでの全てを込めた拳をガルーラに叩きこんでいく。

 

 本来であれば、ガルーラも反撃するつもりだったのだろう。フィールドは雪で、まだ『オーロラベール』の効果も残っていた。多少のダメージなど気にせず攻撃できる。

 

 だが、ハッサムの構えを見た瞬間、まるでこちらの勢いに押されるようにガード姿勢を取って動きを止めた。

 同時に、雨のようにオラオラの拳がガルーラにぶつけられる。そんな中、ガルーラはブルーの指示を無視したまま、ガード状態を維持して動こうとしない――否、動けないのだ。

 

 少しでも防御を崩せば押し切られかねない。

 

 それがわかっているからこそ、ガルーラは防御に徹している。とはいえ、押しきられるというのはダメージ的な意味ではない。

 向こうには『オーロラベール』があるので、いくらオラオラでもダメージはそこまで大きくはなかった――だが、ガルーラが警戒したのはダメージ以上に勢いだった。

 

 どんなにこちらから与えられるダメージが少なくても、その勢いに呑まれて自分のペースを乱すことをガルーラは嫌ったのである。だからこそ、こうして防御に徹していた。

 

 ブルーもすぐにガルーラの気持ちを理解し、それを咎めるようなことは言わずにいる。

 こちらも想定よりもダメージが与えられずに少し驚いたが、こちらのオラオラが止まると同時にようやくガルーラは動き出した。

 

 反撃だと言わんばかりに、『ほのおのパンチ』を繰り出してくる。が、普段からオーキド研究所で殴り合いばっかりしているハッサムに素直な攻撃は通用しない。

 無駄ァ――と、いうかのように、『バレットパンチ』で『ほのおのパンチ』を弾き飛ばした。「近接の捌き方鬼すぎ!?」と、またもブルーが悲鳴のような声を上げる。

 

 同時に、雪が止んだことでフィールドの状態が元に戻り、『オーロラベール』の効果も消えた。ここからはもうハッサムの攻撃を半減で受けられない。

 

 こうなれば、もう温存とか考えている場合ではないと判断したのだろう。ブルーが、ずっと隠していた最後のキーストーンを出してくる。

 三度目のメガシンカか。

 思えば、ブルーのパーティはキュウコン以外、全員メガシンカが可能なポケモンだ。まぁ、ウツボットだけでなくピクシーがメガシンカできるのは後で教えて貰うまで知らなかったが、やろうと思えば五体連続メガシンカなんてことも出来るのかもしれない。

 

 だが、後で聞いた話によると、メガシンカはトレーナーとの絆が深くないとその力を維持できない。だからこそ、本来であれば一回のバトルで複数のメガシンカをするのは、本場のカロスだとあまり推奨されない行為だということだった。

 

 と、いうのも、メガシンカというのは本来であればトレーナーとポケモンの絆が起こす奇跡に似た進化であり、トレーナーにも精神的な負担をかけている。

 一体だけならそこまで大きな負担ではないが、二体、三体と増やせば、それだけ複数のポケモン達と深くつながる必要があり、トレーナーへの負担は加速度的に増えていく。

 

 俺でいえば、リザードンとミュウツーを同時にきずな化させているようなものだ。メガシンカはきずな化ほどの負担はないとは思うが、それでも数が増えればそれだけトレーナーへの負担はかかる。

 実際、メガシンカときずな現象を一つのバトルで同時に使うと、バトル後はオレですらかなり疲れるのだ。昔のように動けなくなるほどではないが、それはオレがきずな化になれたことや基礎能力を向上させたり波動を覚えたりしたことも関係しているのだろう。

 

 そう考えると、オレの周りのトレーナーは当たり前のように二回もメガシンカを使っていて凄いのかヤバいのかよくわからないな。

 

 しかし、もうメガウツボットが戦闘不能になっているとはいえ、3回目のメガシンカともなれば、それこそトレーナーやポケモンにどんな異常がでるかわからないらしい。

 そういえば、ポケスペでもXY編の主人公であるエックスが、五体同時メガシンカをして負荷で動けなくなるシーンがあったっけか。それを考えると三体でもやばいのはよくわかる。

 

 だが、この時のブルーは、それでも使わないと俺には勝てないと判断したようで、死ぬ気の表情で三回目のメガシンカを使ってきていた。

 何だかんだ文句や言い訳をしているが、それでも一度始めたバトルは最後まで諦めない。こいつはそういう女だった――ならば、俺はそれに応えるだけだ。

 

 メガガルーラにメガシンカしたことで、特性が『おやこあい』に変化する。こちらも本来ならメガシンカしてお相手したいが、今回のバトルでオレはもうメガリザードンYにメガシンカを使ってしまっていた。なので、ハッサムはそのままで戦うしかない。

 

 だが、やる気だけは負けていなかった。

 

 メガガルーラが再び『ほのおのパンチ』を仕掛けてくるのを、再び『バレットパンチ』で弾いていく。が、今度は親だけでなく、子供も動き出してきた。

 親の拳を弾くと同時に、子供の一撃がハッサムに命中する――が、四倍弱点の一撃を受けても、ハッサムは倒れなかった。勿論、子供の攻撃でダメージが半減だったというのもある。

 

 しかし、ハッサムはこのバトルでは何があっても倒れないという覚悟で戦っていた。相手がメガシンカしようがしまいが、一人だろうが二人だろうが関係ない。

 

 目の前の敵は全て倒す。

 

 その勢いで、ハッサムはこの場に立っている。

 

 だからこそ、こちらも出し惜しみは止めにした。オラオラコンボは相手にバレていて直撃を取るのが難しい。だからこそ、ハッサムに新技である『インファイト』と『ダブルアタック』のコンボを指示していく。

 

 当然だが、うちのハッサムだってずっと馬鹿の一つ覚えのようにオラオラばかりを練習していた訳ではない。

 むしろ、ブルーとの再戦に備えて、ハッサムは他の戦い方をしっかり模索していた。何よりの刺激になったのは、去年のグリーン戦だ。自分とは違う強さを持ち、あのミュウツーすら苦戦させたあのバトルは、映像越しにハッサムの脳を強く焼いている。

 

 だが、あの型はグリーンとハッサムが独自に作り極めてきたものだ。一朝一夕で身につくモノではない。なら、どうするか?

 

 答えは、これだ。

 

 ハッサムが『インファイト』の構えに入る。今度は連打ではなく、一撃に全てをかけていく。その力の全てを拳にぶち込む勢いで力を貯め――一気に解放した。

 ブルーは何か嫌な予感がしたのか、メガガルーラに『まもる』で防御を指示する。しかし、拳がバリアに触れた瞬間、ハッサムは手を弾くように開いてバリアを粉砕した。

 

 もし、どこかで、俺以外の人間がこの日記を読む機会があったのならば、その人たち問いかけよう。君は、君達は、『二重の極み』という技を知っているか?

 

 これも前世の漫画知識だが、全ての物質には抵抗が存在する。水の中を進もうとすると動きが鈍くなったり、上空からジャンプすると体が押し上げられたりするような感覚になるだろう。それらが抵抗だ。

 これは別に上記のような状況以外にも存在し、拳を相手に当てた瞬間すら抵抗というものは発生している。故に、まず一撃目の衝撃が物質の抵抗とぶつかった瞬間、すかさず二撃目を叩き入れるというのが二重の極みの理論だ。

 

 一つ目の衝撃が物質の抵抗とぶつかり合っている間に、二撃目の衝撃を素通りさせることで通常とは比べ物にならない威力の衝撃を相手に与えることが出来る。

 

 その作品では、拳を使っていた。指を第二関節で折って拳を立てて握り、そのまま一撃目を加える。続けて、刹那の瞬間に拳を全て折って二撃目を加えることで上記の条件をクリアしたのだ。とはいえ、それは指のある人間だからこそできるもの。

 

 それに、所詮は漫画知識。リアルで出来るはずがないと普通は思うだろう。実際、前世でも何人の人間が真似をしたが成功した人間は一人としていなかった。

 だが、このアニポケ世界ならどうだ?

 ポケモンなんて言う摩訶不思議な生き物が生きていて、いろいろな特殊エネルギーがそこかしこにあるこの世界ならば、不可能とも思われる二重の極みも再現できるのではないか?

 

 当然、俺はかなり前にこの二重の極みを拳を持つ全てのポケモンに教え込んだ。が、結果は出なかった。器用なエビワラーすら匙を投げ、指を持つポケモン全てが首を横に振っている。

 

 そんな技にハッサムは勝機を見出した。とはいえ、ハッサムには拳がない。ハサミでは、指を畳んで衝撃を連続して伝えるなど不可能だ。

 それも、かくとうポケモン達がこぞってギブアップする程の難易度。しかし、ハッサムは諦めなかった。そして、俺も思い出したのだ。

 

 この二重の極みを使用していたキャラは、同じく二重の極みを使うキャラと戦うのだが、二重の極みは叩き込まれた瞬間に反対から同じ二重の極みを打ち込むと威力を相殺できてしまうという設定があった。

 だからこそ、そのキャラは勝つために『三重の極み』という技を編み出した。基本的には二重の極みと一緒だが、最後に指を弾くように開いて三つ目の衝撃を相手に伝えることで、相手の二重の極みを破る――ここに俺は道を見出した。

 

 衝撃を伝えるのに、拳を折るだけが手段ではない。ならば、拳をぶつけた瞬間、ハサミを開くように弾いてやれば衝撃を生み出せるのではないか、と。

 

 結果は、砕けた『まもる』が証明している。

 

 ハッサムの新たな必殺技――『インファイト(二重の極み)』は、絶対防御の『まもる』すら破壊する力を得たのだ。

 正確には『インファイト』が『まもる』にぶつかった瞬間、『ダブルアタック』の二回攻撃の力を流用して、二度目の『インファイト』の衝撃を叩き込んでいる。

 

 勿論、合体技故、本来の『インファイト』よりも一撃の威力は落ちるが、二重の極みの衝撃通し効果によって、本来の『インファイト』を超えるパワーを手に入れたのだ。

 

 とはいえ、この技にも欠点がある。

 

 疑似的にとはいえ、『インファイト』を二回使っているので、防御や特防も二段階ダウンするのだ。しかし、倒れなければ何も問題はない――と、『まもる』を突破したハッサムは、そのまま『インファイト』状態の拳を無防備なメガガルーラに叩きつけていく。

 

 二重の極みの威力は『まもる』で防がれたが、それでも苦手なかくとう技を受けてメガガルーラが吹き飛んでいった。

 流石のブルーも、シンゴのように子供の練度を上げたり、独立させて動かしたりは出来ないようで、子ガルも親を心配して追いかけていく。

 

 だが、やせ我慢しているが、ハッサムも子ガルから『ほのおのパンチ』を受けていて体力は既に1/3以上削られていた。開幕の『ねこだまし』と合わせると半分近い。

 防御や特防も二段階下がったし、ここは一旦ハッサムを戻して状態をリセットしていく。ハッサムも、トレーナー判断に逆らうほど興奮している訳ではないようで、またいつでも呼べと言わんばかりにこちらにアピールしながらボールに戻っていった。

 

 ブルーもメガガルーラが起き上がると、こちらに合わせてボールに戻してくる。メガカメックス同様に、後半戦に温存する気なのだろう。

 

 ここで、こちらはピカ様を出していく。

 

 向こうはウツボット、ゲンガーが戦闘不能で、ピクシーは眠り状態。メガガルーラは今引いて、残るはメガカメックスとアローラキュウコンの2体だ。

 

 対するこちらは、リザードンが戦闘不能で、ミュウツーが体力約1/4。ハッサムは今戻したばかりで、残りはピカ様とヨルノズク、カバルドンの3体。

 だが、ヨルノズクもカバルドンも、アローラキュウコンとの相性はよくない。メガカメックスだってこおり技を使ってくる可能性がある。そう考えると、実質一択だった。

 

 ブルーも、こちらがピカ様を出してくるのを読んだようで、アローラキュウコンを出してくる。

 

 特性の『ゆきふらし』で、再びフィールドが雪状態になる。当然のように、雪による防御1.5倍を選んだ。

 しかし、こちらには向こうが苦手な4倍弱点の『アイアンテール』がある。ブルーは当然のように『オーロラベール』で再び、こちらのダメージを半減させに来た。

 

 だが、甘いな。本気で防ぎたいなら、ここは迷わず『まもる』を使うべき場面だった。

 

 切り札――青い『10まんボルト』をチャージして帯電したまま疑似『ボルテッカー』状態へ移行し、『ばちばちアクセル』で速度を付けて飛び上がり、『アイアンテール』に繋ぐJVA(ジャンピングボルテッカーアイアンテール)を勿体ぶらずに使っていく。

 

 こおり・フェアリータイプのアローラキュウコンに、はがね技は4倍弱点となる。いくら半減されようと、十分すぎる火力で残り体力2/3もないアローラキュウコンを一刀で戦闘不能に持っていった。

 

「……えっ?」

 

 流石のブルーも何が起こったかわからないような声を漏らす。いくらなんでも、ピカ様に雪状態防御1.5倍且つ『オーロラベール』でダメージ半減したアローラキュウコンを一撃で倒せるような火力があるとは思っていなかったのだろう。

 

 事実、去年まではなかった。

 

 なかったせいでシゲルに負けたし、今年から得た力だからこそブルーもまた知り得ない未知の情報となっている。これがもし去年あって普通に使っていたら、ブルーはピカ様相手にもっと警戒していたはずだ。

 

 今年のチャンピオンリーグで新型JVAを使わなかったことが幸いした。まぁ、シゲル戦においては使うタイミングがなかっただけではあるが、それが上手くブルーに刺さって今わからん殺しを返せている。

 

 ブルーのポケモンが先に3体戦闘不能になったことでインターバルに入るが、ブルーも「むりぃ。想像以上にむりぃ……私は、グリーンみたいに伝説ポケモンの力借りられてないんだってぇ」と、半泣きになっていた。

 

 とはいえ、先程も言ったがこちらにだって余裕がある訳ではない。リザードンは倒され、ミュウツーも体力を1/4まで削られているし、ピカ様もJVAを見せてしまった。

 ヨルノズクやカバルドンはまだまだ元気一杯だし、ハッサムもやる気に満ちているが、向こうの残りのポケモンにはまだメガカメックスとメガガルーラがいる。ピクシーも良い加減起きるだろうし、油断すれば十分に逆転は有り得た。

 

 油断せずに行こうということで、インターバルが開けると再びハッサムを出していく。

 ブルーはシゲルなんかと違って、切り札を最後まで残すタイプだ。残りのブルーのポケモンでハッサムが警戒すべきはメガカメックスであり、そいつが出てこないのであればメガガルーラやピクシー相手なら有利に立ち回れる。

 

 と、考えたこちらの思考を読んだように、ブルーはここでメガカメックスを出してきた。

 

 同時に、「よっし! 読み勝ちぃ!」と声を上げる。実際、読み負けたので、ここは素直に最後の技である『とんぼがえり』で、ハッサムをボールに戻した。

 当然のように、ブルーは『からをやぶる』でメガカメックスのステータスを上げてくる。ならばここはピカ様を出して、再び相性を有利に進めさせて貰おう。

 

 当然、インターバルが入ったことで天候も『オーロラベール』も効果が切れているので、メガカメックスが『からをやぶる』で防御や特防が一段階ダウンしたままだ。

 代わりに、攻撃・特攻・素早が二段階上昇しているが、それでもピカ様の『ばちばちアクセル』の方が速度は上だ――と、再び先制技を決めていくと、待っていたとばかりにメガカメックスがピカ様を掴んだ。

 

 来るとわかっていれば耐えるのは難しくない。続けて、『あくのはどう』をゼロ距離発射してダメージを奪いに来た。

 まずい。ピカ様はイッシュの旅を通してヤバい力を手に入れたが、耐久力だけは変わらず普通のピカチュウなのだ。いくら不一致の等倍技とはいえ、ゼロ距離で受ければダメージは大きい。おまけに、運がないことに追加効果の怯みを引いてピカ様の動きが止まった。

 

 こちらが反撃の『10まんボルト』を撃つ前に、追撃の『あくのはどう』で戦闘不能に持っていかれる。

 だが、メガカメックスも『ばちばちアクセル』を受けて体力はさらに削られた。これまでのダメージと合わせて体力も後半分あるかないかくらい――ここで一気に倒しきりたい所ではあるが、ミュウツーとカバルドン、ハッサムはメガカメックスに相性が悪かった。

 

 正確には、ミュウツーは『あくのはどう』が怖くて、カバルドンはそもそもみずタイプが弱点。ハッサムははがねタイプ故に、向こうにはがね技が半減だった。

 

 リザードン、ピカ様が戦闘不能の今、ここで出せるのはヨルノズク以外にいない。

 

 そう、ここでオレがヨルノズクを出してくるのは誰もが読めるが故に、ブルーは躊躇なく最後の技として『れいとうビーム』を指示してきた。

 それも、『こうそくスピン』を併用してのユナイト技だ。からやぶで速度を二段階上げたメガカメックスがヨルノズクへと回転しながら突っ込んでくる。

 

 この状態で『さいみんじゅつ』を当てるのは無理と判断し、咄嗟に『かげぶんしん』で回避させたが、範囲攻撃になっている『れいとうビーム』は偽物も本物も巻き込んで攻撃してくる。

 おまけに、特攻が二段階上がっているため、タイプ不一致でもかなりの威力になっていた。ヨルノズクの体力が一撃で半分近く削られていく――ヨルノズクは割と特殊耐久寄りのひこうタイプだが、向こうの攻撃力はこちらの耐久力をやすやすと抜いてきた。

 

 さらに、『こうそくスピン』の追加効果で素早はさらにもう一段階上がり、ますますメガカメックスは手が付けられなくなっていく。

 

 しかも、回転していることで、こちらと視線を合わせずに済むため、ヨルノズク得意の『さいみんじゅつ』対策にもなっていた。

 トドメとばかりに、再び『こうそくスピン』からの『れいとうビーム』を撃って来る。ならば、こちらも少しでも足掻こうと、ヨルノズクには最後の技として『ハイパーボイス』を指示した。

 

 威力90のノーマル特殊技だが、音系の技なので回転していても防ぎようがないだろう。

 からやぶのデメリットで特防も下がっていることも有り、思わぬダメージを受けたメガカメックスだが、それでも攻撃は止まらずヨルノズクは戦闘不能になった。

 

 しかし、ピカ様やハッサム、ヨルノズクのおかげで、メガカメックスの残り体力も後1/3だ。

 

 倒せる――と、ここでミュウツーを再び出していくと、ブルーもここが勝負所だと覚悟を入れてくる。

 だが、やはり消耗は隠せないようで、インターバルを挟んだというのに、ブルーはもう肩で息をしていた。やはり、それだけメガシンカを3回するというのは負担が大きいのだろう。

 

 現在、攻撃力やスピードはメガカメックスの方が上回っている。体力的も、向こうの攻撃を一撃でも受けたらこちらの負けだ。

 そして、ブルーはここでも確実性を求めて、『こうそくスピン』からの『あくのはどう』のユナイトコンボで攻撃を仕掛けてきた。攻撃を全体攻撃にすることで、弱点を確実に付こうという狙いだろう。

 

 だからこそ、ミュウツーは動かなかった。

 

 向こうがこちらに近づいてきた瞬間、きずな現象によって安定フォルムのきずなミュウツーに変化し、エスパー・かくとう状態に変化――これにより、あく技は弱点ではなくなる。

 同時に、タイプ一致となった『ドレインパンチ』を、接近してきたメガカメックスに最後の一撃を叩き込む。当然、向こうの『あくのはどう』も直撃するが、きずなミュウツーの体力が削り切られるよりも先に、『ドレインパンチ』の回復が入ってギリギリ生き残った。

 

 これがゲームなら、ミュウツーが先に倒れていただろう。しかし、この世界はリアルであり、歯をくいしばってダメージを耐え、回復を間に合わせるなんてことは十分にあるのだ。

 

 ブルーも、きずなミュウツーにかくとうタイプが入っていることは知らなかったようで、「そんなんズルじゃんねー……」と言いながら膝を付く。

 いい加減限界のようで、慌てて駆け寄ろうとするも、「まだ、バトル中……」と汗だらけの顔で制止される。向こうがまだやるというのであれば、俺も戦う以外になかった。

 

 とはいえ、こちらももう余裕はない。メガガルーラの――否、通常のガルーラの『ねこだまし』ですら耐えられる体力はないので、向こうがカメックスを戻すのに合わせてミュウツーもきずな化を解除してボールに戻していく。

 

 ブルーはピクシーを出してきた。流石にこれだけの時間があれば起きたようで、良くもやってくれましたねと言わんばかりに怒っている。

 対するこちらはハッサムを出していった。

 メガカメックスを攻略した今、残りの二体相手ならハッサムは強気に出せる。当然のように向こうの苦手な『バレットパンチ』と『ダブルアタック』によるオラオラを指示すると、ブルーはここで『ステルスロック』を指示してきた。

 

 これで、ミュウツーは出た瞬間に敗北が決まる。

 

 しかし、オラオラは止められずに、ピクシーが弱点攻撃で一気に体力を半分削られる。が、しっかり仕事はして『ステルスロック』を撒いてきた。

 ハッサムも全部技を使ってるので、このステロは解除できず、カバルドンにもステロを排除できる技はない――つまり、実質こちらで戦えるのはハッサムとカバルドンだけということだ。

 

 だが、ハッサムは俺だけで十分だと言わんばかりに、二度目のオラオラを叩き込んで一気にピクシーを戦闘不能に追い込んでいく。これでブルーの残りもメガガルーラだけとなった。

 

 当然の如く、メガガルーラは開幕『ねこだまし』で少しでもハッサムの体力を削ろうとしてくる。実際、もうハッサムの体力は半分を切っていた。

 対するメガガルーラの体力は、まだ2/3近くある。しかし、それがどうしたと言わんばかりにハッサムは構えた。今度こそ二重の極みを叩き込んでやると拳を強く握り込んでいる。

 

 メガガルーラは最後の技を残しているが、ブルーとしてはカバルドン用に残しておきたいはず。つまり、メガガルーラの基本武器は『ほのおのパンチ』だ。

 オラオラは警戒されているし、先程もそうだったが、『おやこあい』相手では通常の時のようにパンチを全て弾くのは無理――と、すると、先に一撃を相手に叩き込んだ方が勝者となる。

 

 スピードはメガガルーラの方が上だが、向こうは先手で動くつもりがないようでゆったりと待っている。

 

 ならば、先手は頂こう。

 

 ハッサムが翼を広げて、メガガルーラに突っ込んでいく。その瞬間、ブルーは「子ガルを投げてメガガルーラ!」と声を上げた。

 見ると、真っ直ぐ突っ込むハッサムに向けて、まるで野球のボールでも投げるかのように、メガガルーラが自分の子供を投げてくる。

 

 ハッサムも咄嗟に拳を振り抜くが、タイミングをずらされたせいで二重の極みが発動できなかった。

 

 しかし、子ガルは『インファイト』の一撃を受けて吹き飛んでいく。子供にもダメージは入るので、これでメガガルーラの残り体力は約1/3まで削られた。

 だが、その攻防やダメージと引き換えに、親のメガガルーラは時間を得ている。自身の全速力でフィールドを駆け、攻撃をし終えたハッサムの近くまで走ってきていた。

 

 当然、『インファイト』を使ったので、こちらの防御・特防は一段階下がっている。おまけに、完全に打ち終わりを狙われ、防御も回避も不可能な状態だった。

 

 ブルーがやったという表情を浮かべる。

 

 同時に、メガガルーラの『ほのおのパンチ』がハッサムのボディに突き刺さった。本来ならば、絶対に耐えられない一撃。

 だが、ハッサムは意地で倒れなかった。

 あの時の屈辱が、倒れることを許さない――あの時、自分が倒れずにいれば勝敗はきっと変わっていた。だからこそ、今度は絶対倒れない。

 

 明らかに限界を超えたダメージで体を震わせながら、それでもハッサムはニヤリと余裕の表情を浮かべる。

 

 しかし、実際に余裕はなかった。

 

 もう立っているのがやっとであり、少しでも気を抜けば今にも戦闘不能になってもおかしくない――そんな状況。

 

「ハッサム!」

 

 だが、指示は出さない。出す必要がない。

 

 その証拠に、ハッサムはわかっているとばかりに頷くと、最後の力を振り絞るように、『とんぼがえり』でガルーラにダメージを与えながらボールに戻っていった。

 

 ああ、そうだ。

 

 お前が全部倒す必要はない。

 

 お前が生きて、バトンを繋ぐことが大事なんだ。

 

 あの時出来なかったこと――それは戦うだけでなく、倒れず後ろへと繋ぐこと。

 

 今回ハッサムは最後まで自分の仕事を全うした。

 

 なら、その頑張りを活かすのはトレーナーである俺の役目だろうが――

 

「――さぁ、派手に行こうぜ!!」

 

 ハッサムが戻って来ると同時に、俺は最後のモンスターボールを天高く放り投げていく。

 

 それは奇しくも、前のブルーとのバトルで、彼女が俺に見せたトレーナーとしての技術。

 

 出てきたのは、当然カバルドンだ。

 

 そして、ボールをメガガルーラの真上へ投げたことで、カバルドンは落下のエネルギーをプラスし、上空から物凄い速度で『ボディプレス』を仕掛けようとしている。

 

 不意を突いたこともあり、回避は間に合わない。

 

 ならばと、メガガルーラは『まもる』で攻撃を防いできた。しかし、防がれることが想定済みだ。

 その『まもる』を押し潰すように、カバルドンが全体重をかけていく。そう、『まもる』は攻撃を防ぐし、ある程度の弾き能力はあるが、真上から降って来るカバルドンを弾くほどの力はない。効果が切れると同時に、メガガルーラはカバルドンの下敷きとなる。

 

 とはいえ、『ボディプレス』の威力は『まもる』で相殺されていた。メガガルーラはあくまで圧し掛かられているだけであり、まだ体力は1/3程残っている。

 だが、そんなことは関係ない。

 メガガルーラに『まもる』を使わせた――その時点で、勝負はついているのだ。吹き飛ばされた子ガルがこちらに走る中、メガガルーラも最後の技である『れいとうパンチ』を使ってカバルドンを倒し切ろうともがいている。

 

 しかし、そんなメガガルーラの足掻きなど気にせず、カバルドンはその四肢で相手を抑え込みながら、最後の技である『じわれ』を使用した。

 

 本来、一撃必殺技の命中率は三割であり、自身よりレベルの高い相手には通用しないという欠点がある。だが、アニポケの一撃必殺は、そんなこと関係ないジャイアントキリング性能を持っており、相手に直撃させられる状況の場合は必中に出来た。

 

 いくら、メガガルーラの力が凄かろうと、体重300キロのカバルドンがマウントポジションを取ったら容易には動けない。おまけに、子供も側におらず助けは期待できない状況。

 

 つまり、ハッサムがメガガルーラの一撃を耐えた時点で、このバトルの勝敗はもう決まっていたのだ。

 

 慌てて『まもる』を使おうとしてももう遅い。メガガルーラが一撃必殺で戦闘不能となり、俺の勝利が決定する。

 

 とはいえ、結果以上の接戦だった。何だかんだ言ってやはりブルーは強い。

 しかし、そのブルーも、流石に無理のし過ぎだったようで、バトルが終わると同時に気絶するように倒れた。急いで担架が運び込まれ、ブルーが連れていかれる。

 

 ガルーラも倒れたままだったので、とりあえず波動で体力を回復させてやった。起き上がったガルーラも、ブルーを心配するように後を追っていく。

 

 また、この一件も有り、今回の四天王リーグが終了すると同時に、メガシンカ、Z技、ダイマックス等の、トレーナーとポケモンがリンクして効果を発揮するタイプのアイテムや特性の使用は1回のバトルで1度ずつまでと制限されることになった。

 

 そう、お気づきの方もいるだろうが特性もだ。

 

 なんで、きずな現象まで一緒にナーフ受けなきゃいけないんだよ、コンチクショー!!

 

 

 追記。ブルーも休んだら元気になったようで、周りに心配かけたことを謝ってきた。また、ルールが整備される前から、四天王や俺の間ではメガシンカはバトル中2回までという個人ルールが作られた――のだが、誰とは言わないが、それを破ったやつがこの先現れ、その後にまた一波乱起きるのだが、この時点では書かないでおこう。

 

 

 




 原作との変化点。

・実は、この話書き直していたりする。
 最初は6体目がハッサムではなく、さいせいりょくヤドランだった。しかし、木曜日の夜に感想を見て、ブルーとハッサムの因縁を思い出し、丸2日かけてこの話を仕上げた。でも、ヤドランの時より文字数6000以上増えていいバトルになったから良し。

・ハッサムの二重の極み。
 実は、別の話で出す予定だった。ハッサムをこの話に登場させたことで、出番が前倒しになっており、この話が更新された後も必死になってその話を修正していることだろう。ちなみに、まもるを破壊できるが、それならインファ連打した方がいいと思うかもしれないが、連打の場合は相手に時間を与える。技のイメージとしては、修正後のふかしのこぶしみたいな感じ。

・ハッサム
 作者は基本自分の話を用がない限り読み返さない派なこともあり、すっかり忘れていたが、読み返すと何とも可哀想な因縁だった。何も出来ずに負けた自分への悔しさをずっと抱えており、自分が活躍するだけでなく自分が駄目でも後ろへ繋ぐという全てをやりきった男。このバトルで無念も晴れて一歩成長した。

・空高くボールを投げる。
 実はずっとどこかで使おう使おうと思ってはいたが、ハッサムの話に書き直したことでようやく使う時が来た。ハッサムから繋いだ空中からのカバルドンボディプレはもう書いていて満足する出来だった。

・メガなどのルール改定。
 これにより、原作ルールになる。勘違いしてほしくないのは、アイテムや特性の使用は1回のバトルで1度"ずつ"と書いたが、メガシンカ、Z技、ダイマックスはどれか1つで、きずな化はそれとは別に1回使えるという意味。アイテム1回、特性1回ずつ。なので、これまでのようにメガダイマやメガ連打、きずな連打などは禁止。


 現在ゲットしたポケモン

 ピカチュウ Lv.68

 ピジョット Lv.63

 バタフリー Lv.63

 ドサイドン Lv.66

 フシギバナ Lv.64

 リザードン Lv.67

 カメックス Lv.63

 キングラー Lv.63

 カモネギ  Lv.63

 エビワラー Lv.63

 ゲンガー  Lv.65

 コノヨザル Lv.63

 イーブイ  Lv.63

 ベトベトン Lv.64

 ジバコイル Lv.63

 ケンタロス Lv.63

 ヤドラン  Lv.63

 ハッサム  Lv.63→64

 トゲキッス Lv.63

 プテラ   Lv.63

 ラプラス  Lv.63

 ミュウツー Lv.76

 バリヤード Lv.63

 イワーク(オレンジ諸島の姿) Lv.62

 カビゴン  Lv.63

 ニョロトノ Lv.62

 ヘラクロス Lv.62

 メガニウム Lv.62

 バクフーン(ヒスイの姿) Lv.62

 ラティアス Lv.61

 ヘルガー  Lv.62

 ワニノコ  Lv.62

 ヨルノズク(色違い) Lv.62

 カイロス(部分色違い) Lv.62

 ウソッキー Lv.62

 バンギラス Lv.64

 ドンファン Lv.62

 ギャラドス(色違い) Lv.62

 ミロカロス Lv.61

 ラグラージ Lv.59

 オオスバメ Lv.59

 ジュカイン Lv.59

 ヘイガニ  Lv.59

 フライゴン Lv.62

 コータス  Lv.57

 サーナイト(色違い) Lv.54

 オニゴーリ Lv.57

 ワカシャモ Lv.57

 メタグロス(色違い) Lv.57

 エテボース Lv.55

 ムクホーク Lv.54

 ドダイトス Lv.54

 ブイゼル  Lv.55

 ムウマージ Lv.57

 カバルドン LV.54→55

 ミカルゲ  Lv.61

 グライオン Lv.53

 ロトム   Lv.54

 ユキノオー Lv.53

 ガブリアス Lv.52

 ゾロア(ヒスイの姿) Lv.46

 ボーマンダ Lv.52

 カイリキー(変異体) Lv.52

 ミジュマル Lv.50

 エンブオー Lv.50

 ツタージャ Lv.50

 ズルッグ  Lv.45

 ハハコモリ Lv.48

 ペンドラー Lv.48

 エルフーン LV.48

 ギガイアス Lv.48

 ワルビアル Lv.52

 ヒトモシ  LV.47

 サザンドラ Lv.65

 マリルリ  Lv.43

 ヒコザル  Lv.1


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