ニューサトシのアニポケ冒険記   作:おこむね

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#035 『まだ終わってねぇだろーが!』

 11歳 μ月υ日 『準決勝 ライバルバトル VSシゲル 後編』

 

 カモネギは『ハイドロカノン』の一撃で倒れてしまったが、カメックスにも一太刀浴びせていた。

 これで向こうのポケモンは、『じしん』を一発くらっているエレブーと、死にかけのキングドラ、『リーフブレード』の一撃を受けたカメックスに、まだ見ぬ六体目の四体である。

 対する俺のポケモンは、体力に余裕のあるプテラと、無傷のピカ様、まだ見せていない六体目の三体だけだ。悪い状況ではないが、カモネギが一撃でやられたのは痛かったな。

 

 しかし、シゲルめ、ポケモンを良く育ててやがる。ぶっちゃけ、ニューサトシとしての知識がなかったら負けていたのは俺だっただろう。

 俺もかなり育成には力を入れたはずなのだが、こうもあっさり並ばれると自信がなくなるぜ。

 

 とはいえ、弱気になっている場合ではない。このインターバルで天候も元に戻ったこともあり、俺は再びプテラを送り出した。シゲルもカメックスを温存するつもりなのか、エレブーを出してくる。

 先程の焼き直しとなった訳だが、こちらの『はねやすめ』を知った以上、シゲルも同じ攻撃をしてくるほど甘くは無いだろう。

 

 お互いに動くタイミングを探しているせいか、プテラもエレブーも動かずにいる。

 こちらは基本的に近距離型ということもあって、遠距離で攻撃出来そうなのは『じしん』くらいしかない。ただ、『じしん』一辺倒になると、タイミング良くジャンプで攻撃を避けられるということもあるので、迂闊に先制すると返しのでんき技で倒される危険もあった。

 

 さっきはエレブーも『10まんボルト』を打っていたからその心配はなかったが、こっちの動きを探っている今、下手な『じしん』ぶっぱは起点になりかねない。この辺が、ゲームと違って難しい所なのだが、同時に楽しい所でもあった。

 

「……昔は、こうしてポケモンが動きを止めると、どうして動かないんだと思っていたけど、自分がそうなるとは思わなかったよ」

「トレーナー同士のレベルが互角だと希にある。まぁ、俺も実際なったのは初めてだけどな」

 

 とはいえ、いつまでもこのままでいる訳にもいかないだろう。シゲルもそう思ったのか、エレブーに『あまごい』を指示した。

 どうやら、今のシゲルは天候を雨にして動くのを基本にしているようだ。雨状態だと、『かみなり』が必中になるので、さっきのような技の打ち合いになればこっちが不利になる。

 

 と、いう訳で、乱戦に持ち込むことにした。

 

 エレブーの『あまごい』に合わせて、プテラに『とっしん』を指示する。プテラの素早さなら、向こうが反撃に移るより先に攻撃が出来るはずだ。

 一直線に向かっていくプテラだったが、シゲルのかけ声でエレブーがギリギリで攻撃を回避してきた。まだだ、旋回してそのまま『ストーンエッジ』で追撃を仕掛ける。

 

 シゲルも一撃受けるのは仕方ないと腹をくくったのか、『かみなり』を指示した。

 雨状態なので、どんなに動いても直撃する。こちらも腹をくくるしかなかった。エレブーに石の柱が、プテラには雷が直撃し、互いにダメージを受ける。

 ただ、運が無かったようで、プテラが『かみなり』の追加効果で麻痺してしまい機動力が大幅にダウンしてしまった。こうなればもう足を止めて『じしん』を打つしかない。

 

 だが、シゲルもそれを読んでいたのか、プテラが地面に足をつけると同時に、エレブーをジャンプさせて『かみなり』を指示していた。

 すぐに『ストーンエッジ』を指示するが、エレブーの方が先に動いていたと言うこともあり、二度目の『かみなり』が直撃し、プテラが戦闘不能になる。

 

 これで俺の残りは二体になった。シゲルは四体だが、そのうち三体がダメージを受けていることを考えれば、まだまだここからである。

 雨状態であることも考慮に入れて、ピカ様をフィールドに送り出す。シゲルはエレブーを続投させるようなので、オーキド研究所で付けられなかった決着をつけるバトルになりそうだった。

 

 シゲルが『かみなり』を指示するのと同時に、こちらも『かみなり』を指示する。いつもは命中率を考えてまんボルだが、雨状態なら必中技を選ばない理由はない。

 互いにでんきタイプということもあって威力は半減するが、エレブーはこれまでのダメージが蓄積されていることもあって膝をついた。

 その隙をついて『なみのり』を指示。タイプが不一致の技だが、雨で威力が1.5倍になっているなら十分にエレブーを戦闘不能まで持って行けるだろう。

 

 こちらの『なみのり』を見て、再びシゲルがエレブーをジャンプさせる。そのまま『かわらわり』を指示し、ボードに乗っているピカ様に飛びかかるようにエレブーが襲いかかってきた。

 それを見て、こちらもボードからジャンプ。

 エレブーが攻撃を外した所に、ずっと隠していた新技の『かわらわり』を脳天に決め、戦闘不能まで持って行った。

 

 これでシゲルは残り三体である。ほぼ五分に戻したと言っていいだろう。シゲルは次のポケモンとして再びキングドラを出してきた。

 まだ雨状態が続いているので有利に立ち回れると判断したようだが、キングドラもニンフィアとのバトルで瀕死寸前のダメージを受けている。いくら、今までボールの中で休んでいたとはいえ、簡単に回復出来るものではないはずだ。

 

 しかし、キングドラはそんなダメージなど欠片も見せずにこちらを早さで翻弄してくる。

 いや、我慢しているだけだ。いくら早く動いても必中の『かみなり』は避けられない。そう思ってピカ様に『かみなり』を指示すると、キングドラが『ぼうふう』を打ってきた。『ぼうふう』もまた雨状態だと必中になる技である。ピカ様が風に捕らわれ、ダメージを受けるが、そのまま風を突き破るように『かみなり』を打ち放った。

 こちらもまた必中の技だ。キングドラに『かみなり』が直撃する。やはり、ダメージは回復しきっていなかったようで、キングドラは倒れ、戦闘不能になった。

 

 これで残り2対2である。シゲルが出してきたのは最後の一体であるウインディだった。そのタイミングで丁度、『あまごい』の効果が切れる。

 雨がなくなり、ほのお技も有効に使えるようになった訳だが、おそらくこれは偶然では無い。シゲルは天候が切れるタイミングを計っていたのだろう。

 

 とはいえ、俺のピカ様が『なみのり』を覚えている以上、真正面からほのお技を打ってくるつもりはないらしい。

 シゲルはウインディに『しんそく』を指示して、高速戦を仕掛けてくる。流石の『なみのり』も、これだけの速度で動かれたらモーションに移れなかった。雨状態じゃなくなり、命中率の下がった『かみなり』も同様である。

 

 結局、こちらは『でんこうせっか』と『かわらわり』で迎撃するしか無いのだが、『しんそく』はPP的にも、体に掛かる負担的な意味でも、そう回数の打てる技では無い。

 上手くダメージを分散させながら辛抱強く耐えていると、ウインディの息も切れてきた。そのタイミングでピカ様に『かみなり』を指示し、でんきエネルギーをそのまま体に貯めさせる。技を全部使っているので、本来はもう使えないが、この状態で『でんこうせっか』を打つことで、擬似的な『ボルテッカー』が再現できるのだ。

 

 ただ、『かみなり』を無理に貯めているので、体への負担は大きいし、突撃で受けるダメージも通常の『ボルテッカー』よりも大きい。

 それでも、命中率の悪い『かみなり』を直撃させるにはこれしかなかった。だが、この一撃で倒れるほどウインディも甘くは無いようで、シゲルが追撃に『インファイト』を指示してくる。しかし、今回はこちらの運が良かった。ウインディの攻撃が当たった瞬間、ピカ様の特性である『せいでんき』でウインディの体が麻痺する。

 動きが止まったウインディへ『かみなり』を指示すると、シゲルも『だいもんじ』を指示してきた。互いの攻撃が相殺されることなく直撃し、ピカ様とウインディが同時に戦闘不能になる。

 

 倒れたピカ様を迎えに行くと、シゲルもウインディをボールに戻した。これで残りは1対1。シゲルは相棒であるカメックスを出してくる。

 カモネギの『リーフブレード』でダメージを受けているはずなのだが、そんなダメージなどないとばかりに力強い声を出していた。

 俺の最後の一体は、当然、リザードンである。

 これまでエントリーすることはあっても、出番のなかったリザードンだが、シゲルのカメックスが相手なら不足はないとばかりに空へ向かって火を噴いていた。

 

「いいリザードンだな。だが、相性は僕の方が有利だ」

「相性だけでポケモンバトルは決まらない。俺とリザードンの力を見せてやるぜ」

 

 開幕、挨拶代わりに、リザードンへ『ブラストバーン』を指示すると、シゲルもまたカメックスに『ハイドロカノン』を指示してきた。

 互いの究極技がぶつかり合い、爆発と共に相殺されていく。本来、有利なはずのみず技がほのお技に相殺されたということは、こちらの方が火力が上ということである。

 

 火力で負けているなら手数だとばかりに、シゲルがカメックスへ『こうそくスピン』からの『ハイドロポンプ』を指示している。お前もユナイトコンボか。

 こちらはリザードンを空中へ逃がしながら、『フレアドライブ』を指示して纏った炎でみず技の威力を少しでも減衰させていく。

 それでも弱点技の多段ヒットでダメージは受けるが、その程度で負けるリザードンではなかった。すぐに『エアスラッシュ』を指示し、カメックスに反撃のダメージを与えていく。

 回転中の甲羅に、『エアスラッシュ』が多段ヒットし、そのままカメックスが地面に叩き付けられた。

 

 おまけとばかりに、追撃で『ブラストバーン』を指示し、上空から究極技をおみまいする。

 だが、シゲルは冷静に『こうそくスピン』で、その場からカメックスを逃がそうとしていた。だが、追加効果で素早が上がっているとはいえ、完全に避けるのは不可能だったようで、致命傷を避けるようにカメックスが離脱していく。

 しかし、されるがままでいないのがシゲルである。すぐに『ロケットずつき』を指示し、回転状態で防御を一段階上げると、フィールドの壁を足場にしてこちらに反転してきた。

 

「避けられないのは想定内。回転の反動を利用した『ロケットずつき』だ!!」

 

 何か新無印編で見たな、そんな攻撃!

 

 とはいえ、このまま見ている訳にはいかない。壁を蹴った反動でこちらに突っ込んでくるカメックスに対し、『ギガインパクト』で反撃させる。

 互いに衝撃でぶっ飛んでいくが、リザードンの態勢が悪い。逆にシゲルとカメックスはこの状況を想定していたのか、しっかり二つのキャノンをこちらに向けていた。

 

「今だ、『ハイドロカノン』!!」

 

 カメックスの究極技がリザードンへと迫る。だが、避けるのも防ぐのも間に合わない。

 苦肉の策として、再び『フレアドライブ』の炎を纏わせるが、流石に究極技を減退させるのは無理だった。そのまま究極技が直撃し、リザードンが壁に叩き付けられる。

 

「カメックスもダメージを受けたが、リザードンほどでは無い。この勝負貰ったよ」

「だからどうした! まだ終わってねぇだろーが!」

 

 むしろ、本番はここからである。

 リザードンが起き上がると同時に、俺達の感覚と思考が一体化していく。また、体に薄い炎の膜が現れ、肌の色が赤く染まって行った。

 これが、俺達の切り札――きずな現象による、きずなリザードンである。

 

「な、なんなんだその姿は!?」

「悪いが、喋ってる時間はねぇ。この状態でいられる時間には限りがあるんでな」

 

 ミュウツーとの検証でも、この姿で居られるのは一分程が限界だった。ダメージ的にも、この状態が解除されたら俺達に勝ち目は無いだろう。

 全部の力を出し切るつもりで、『フレアドライブ』で突撃する。しかし、流石にシゲルのカメックスだ。咄嗟に『ロケットずつき』で防御をさらに一段階上げて反撃してきた。

 

 互いの頭がぶつかり合い、そのまま取っ組み合いのような状態になる。

 だが、この距離では背中のキャノンをこちらに向けられない以上、『ハイドロポンプ』と『ハイドロカノン』の二つの武器は封じたも同然だ。

 近距離で『ブラストバーン』をくらわせてやろうと思ったが、直撃寸前に首を引っ込めてかわされ、反撃とばかりに三度『ロケットずつき』をしてくる。

 こちらも『ギガインパクト』で頭突きし返すと、カメックスもダメージを受けたようでよろけているが、まだ戦闘不能になるにはダメージが足りなかった。

 

 もう時間が無い。最後のパワーで『ブラストバーン』を打とうとするが、シゲルがカメックスに『こうそくスピン』を指示して、無理やりこちらの拘束を外してくる。距離が出来たことで、カメックスもこちらにキャノンを向けてきた。

 かわしている余裕はない。このまま『ブラストバーン』で一気にカメックスを戦闘不能に追い込むつもりで一撃を放った。カメックスも『ハイドロカノン』で迎撃してくる。

 しかし、きずな現象により威力の上がった『ブラストバーン』は、カメックスの『ハイドロカノン』を貫き、そのままカメックスを飲み込んでいく。

 

「カメックス!?」

 

 究極技の直撃により爆発が起き、同時に俺達の変化も解除された。リザードンと一緒に膝をつく。ダメージを共有しているのもそうだが、完成したきずな現象じゃないということも大きいのか、この変化は今の俺達には負担が大きすぎた。

 

 煙が晴れると、中からボロボロになったカメックスが立ち上がってくる。それを見たリザードンも動こうとするが、疲労と技の反動で動けない。

 そのままシゲルがカメックスに『ハイドロカノン』を指示し、再度発射しようとした瞬間、カメックスはダメージの限界が来たのか、気を失って前のめりに倒れ込んだ。

 

 審判により、カメックスが戦闘不能と宣告され、俺の勝利と、決勝戦進出が決定する。

 シゲルも唖然とした表情を浮かべていたが、すぐに結果を受け入れたのか、カメックスをボールに戻すと、素直に俺へ拍手を送ってきてくれた。

 

「最高のバトルだった。やはり、君は僕のライバルに相応しい男だよ」

 

 そう言って、シゲルが「あの時の決着は今日ついた」と、二年前に俺が無理やり渡した半分のモンスターボールを渡そうとしてくる。そういえば、そんなんアニメでもあったな。

 

 だが、俺はそれを受け取るのを拒否した。

 ぶっちゃけ、そんな壊れたボールいらないし。

 

 とはいえ、流石にストレートにいらないと言うと角が立つので、「それを受け取ると俺は満足してしまう。これからもっと上を目指すために、お前がそれを持っていてくれ」――とか、何とか、それらしいことを言って誤魔化した。

 

「……わかった。次は勝たせて貰うよ。明日の決勝戦、頑張ってくれ」

 

 どうやら、納得してくれたようで、シゲルが半分のボールを持ったまま帰っていく。それを見送ると、俺はリザードンをモンスターボールに戻してその場に座り込んだ。

 そのまま聞こえる声援に手を振って応えていると、オーキド博士やママさん、ナナミさん、ロケット団までもが俺の勝利を祝福するように手を振ってくれている。

 観客席に居たタケシとカスミさんも、最初はパフォーマンスをしているように見えていたようだが、すぐに俺がきずな現象の反動で動く力も残っていないことに気付くと、慌てたようにこちらに向かって走って来た。

 

 

 追記。準決勝で無理をさせすぎたようで、リザードンにドクターストップがかかった。明日の決勝戦には出せそうにない。どうしよう?

 

 

 




 原作との変化点。

・シゲルに勝利した。
 ギリギリの勝負だったが、決勝進出を決めた。代わりに、無理をしたリザードンにドクターストップがかかった。


 現在ゲットしたポケモン。

 ピカチュウ Lv.51→52

 ピジョット Lv.46

 バタフリー Lv.46

 ドサイドン Lv.51

 フシギダネ Lv.49

 リザードン Lv.52

 ゼニガメ  Lv.49

 キングラー Lv.46

 カモネギ  Lv.46

 エビワラー Lv.47

 ゲンガー  Lv.49

 オコリザル Lv.47

 イーブイ  Lv.43

 ベトベトン Lv.44

 ジバコイル Lv.46

 ケンタロス Lv.45

 ヤドラン  Lv.45

 ストライク Lv.45

 トゲピー  Lv.14

 プテラ   Lv.45

 ラプラス  Lv.45

 ミュウツー Lv.70

 バリヤード Lv.44



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