ニューサトシのアニポケ冒険記   作:おこむね

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#046 『大変、気分が良い』

 11歳 γ月ω日 『帰ってきたマサラタウン』

 

 オレンジ諸島の長い旅を終え、遂に故郷であるカントーのマサラタウンに帰ってきた。

 ケンジはオーキド博士にいち早く会いたいようだったが、オーキド研究所に行く前に俺の家に帰るのが先だ。ママさんに報告もしたいし、荷物も置いてから動きたいしな。

 

 そんなこんなで家に帰ったのだが、オレンジ諸島で別れたタケシが何故か我が家で家事をしている。どうやら無事にウチキド博士に振られてきたようだ。

 試しに「ウチキド」と呟くと、横になって「聞かないでくれ」と固まって、トランセルのように動かなくなってしまった。「だから後悔するって言ったろうが」と言うと、カスミさんが「いつものことじゃない」と一刀両断している。

 ママさんに詳しいことを聞いてみると、やはり少し前にマサラタウンの近辺に転がっていたタケシを拾ってきたらしい。この辺はアニメとそう変わらなさそうだな。

 

 ママさんに帰還報告を終えると、とりあえずオーキド研究所にGSボールを届けに行くことになった。

 オーキド博士にGSボールを渡し、研究所にいる俺のポケモン達に会いに行く。定期的に交換していたとはいえ、オレンジ諸島は移動中心の旅だったから久しぶりの面子も居る。

 特に、オレンジ諸島でゲットしたばかりの、クリスタルのイワーク、カビゴン、ニョロモに至っては、レベルの問題もあってほぼ手持ちにいなかったので、これを機に友好を深めていくことにした。

 

 ちなみに博士から聞いた話だが、クリスタルのイワークがみずタイプの技を無効にし、ほのおタイプの攻撃を弱点にしてしまうのはやはり特性らしい。また自主トレ中に、弱点タイプの攻撃を受けた場合は、パワーが上がるという観測も出来たようで、『かんそうはだ』とじゃくてんほけんのような特性を持っているようだった。

 

 ゲーム的なテキストだと、『みずタイプの技を受けない。ただし、ほのおタイプの技で受けるダメージが2倍になり、効果抜群の技を受けた時に攻撃と特攻のランクが1段階上がる』といった所か。弱点が山のようにあるので悪くない特性だった。博士は『クリスタルボディ』と呼称していたので、これからは俺もそう呼ぼう。

 

 ポンカン島では崇められていたクリスタルのイワークも、ここではのんびり暮らせているようで、他のみずポケモン達に紛れて水場で過ごしている。カビゴンもオーキド研究所の飯を元気に食い荒らしており、ニョロモも楽しそうに水場の周りを歩いていた。

 

 ケンジが博士に研究レポートを見て欲しいということで、俺以外のメンバーが室内に戻っていく。俺はまだポケモン達と一緒に居たかったので、このまま外で過ごすことにした。

 やはり、オーキド研究所は全員と会えるので長く居てしまう。ピカ様、ピジョット、バタフリー、ドサイドン、フシギダネ、リザードン、ゼニガメ、キングラー、カモネギ、エビワラー、ゲンガー、オコリザル、イーブイ、ベトベトン、ジバコイル、ケンタロス、ヤドラン、ストライク、トゲ様、プテラ、ラプラス、ミュウツー、バリヤード、クリスタルのイワーク、カビゴン、ニョロモ、こうして改めてみると随分ゲットしたもんだ。

 

 そのまま久しぶりの触れ合いを楽しんでいると、いつものようにロケット団がやってきて、研究所のポケモンを全て頂くと宣言していた。

 お前ら、前に似たようなことして返り討ちにあったのをもう忘れたのか。と、いう訳で、俺のポケモン達の総力を合わせて、サクッとロケット団をやなかんじーしてやる。

 騒ぎを聞きつけてきたみんながいつものロケット団に呆れていたが、タケシは久しぶりということもあってか、「懐かしいな、あいつら」と感慨にふけっていた。タケシと別れて約三ヶ月、確かにそれだけ会っていなければ懐かしさも感じるかもしれない。ほぼ毎日のように会っている俺からすれば鬱陶しいだけだが。

 

「相変わらず強いな、サトシ」

 

 ロケット団を追い返した後、そう声をかけてきたのは、まさかのシゲルだった。

 どうやら、こいつも丁度マサラタウンに帰ってきた所のようで、「手こずっているようなら手助けしようと思ったんだけどね」と、モンスターボールをちらつかせている。

 残念だが、ニューサトシはサトシ君とは違うので、毎度おなじみの方法ではやられないのだ。しかし、せっかく準備してくれていたのに出番を奪ってしまったのは忍びない。と、いう訳で、久しぶりにシゲルへバトルを申し込むことにした。

 

「いいだろう。僕も前よりもずっと強くなった。セキエイ大会の時のようにはいかないぞ」

「楽しみだぜ」

 

 とはいえ、そろそろ日も暮れてくる頃だ。長丁場になりそうなバトルは止めようということで1対1のバトルをすることになった。

 レベル制限はなし。互いに今一番自信があるポケモンでバトルしようということで、悩みに悩んだが、やはりここはピカ様に行って貰うことにする。それを見て、シゲルが出してきたのはまさかのエレキブルだった。

 

「……お前、いつ進化させた?」

「僕も前のままではないと言っただろう」

 

 前のまま所か、進化しちゃってんじゃん。

 エレキブルの特性『でんきエンジン』は、こちらのでんき技をくらうと素早が上がるというヤバい特性だ。こちらのでんき技は完全に封じられたと言って良いだろう。

 これまではでんきタイプ相手でも、『ボルテッカー』は威力があるので良く重宝していたが、それも完全に封じられたな。俺のピカ様への対策はばっちりということか。

 

 だが、それで負ける程、俺のピカ様は弱くない。

 

 話を聞いていたタケシが審判をしてくれるということで、俺とシゲルの三回目のバトルがスタートする。最初は引き分け、二回目は俺の勝ちだった。まだ俺に勝ったことがないシゲルからは、今回こそは勝つという気迫を感じる。

 

 いつも通り、先手必勝とばかりに『でんこうせっか』を指示すると、シゲルはまず『ちょうはつ』をしてきた。多少攻撃をくらっても、俺の変化技を封じるつもりなのだろう。

 これで、俺のピカ様は攻撃技しか使えなくなった。おまけにでんき技まで封じられている。『ちょうはつ』の効果が消えるまではタイプ不一致の技で戦うしかない訳だが、あの計算高いシゲルが『ちょうはつ』の切れる時間を把握していないとは思えない。つまり、俺はこのバトルででんき技と変化技の二つが使えなくなってしまったということだ。

 

「やってくれるっ」

「君のピカチュウの凄さは散々見せつけられたからね。悪いが、対策は完璧だよ」

 

 今、ピカ様が使える不一致の技は、『でんこうせっか』を除けば、『なみのり』、『たたきつける』、『かわらわり』、『フェイント』、『にどげり』、『スピードスター』くらいのものである。

 このうち、『にどげり』と『フェイント』は、実質、『かわらわり』と『でんこうせっか』の下位互換なので使わない。『スピードスター』も余程必中が必要な場面にならなければ『なみのり』で十分とすると、使う技は『でんこうせっか』、『なみのり』、『たたきつける』、『かわらわり』の四つに絞られる。

 しかし、このうち、『なみのり』と『かわらわり』はセキエイ大会で見せている上、『たたきつける』も最初のバトルで見せていた。当然、シゲルも警戒しているだろう。クソ、やりにくいことこの上ないな。

 

「どうしたサトシ? 動きが止まってるんじゃ無いか?」

「笑わせんな。お楽しみはここからだ」

 

 一応、切り札はある。オレンジ諸島の旅の最中、日記にも書かずに密かに練習させていた技だ。未完成の技だが、このバトルに勝つにはあれを成功させるしかない。

 

 そのためには何とか隙を作らないと――

 

「ピカチュウ、『かわらわり』!」

「ならばこっちも『かわらわり』だ!」

 

 ピカ様とエレキブルの『かわらわり』はぶつかり合うが、やはり体格でもパワーでも負けているピカ様が不利だった。エレキブルに吹き飛ばされるピカ様だが、空中で上手く態勢を整えている。

 落ち着け。焦ったら負けだ。

 真正面から行っても勝ち目はない。それに下手にダメージを受けると後半が辛くなる。ここは辛抱強く耐えるんだ。チャンスは必ずやってくる。

 

「やはり、そのピカチュウのダメージを逃がす技術は芸術レベルだな。エレキブル、『じしん』!!」

「ピカチュウ、『なみのり』!!」

 

 大型タイプのポケモンはピカ様を見ると絶対に『じしん』を撃ってくるので、もう対応は慣れたものだった。『なみのり』は防御にも使える万能技で本当に助かるぜ。

 だが、シゲルも『なみのり』による『じしん』回避はポケモンリーグの準決勝で痛い目を見ていることもあって、特に慌てた様子も無くエレキブルに指示を飛ばしている。

 

「エレキブル、ジャンプだ!」

 

 完全にセキエイ大会準決勝の焼き直しだった。エレキブルがジャンプで『なみのり』を避けると同時に『かわらわり』を仕掛けてくる。

 こちらもタイミングを合わせてサーフボードからジャンプさせるが、下手に攻撃は仕掛けず、そのままピカ様をフィールドに飛び降りさせた。

 

「仕掛けてこないか」

「あからさまに罠だったからな」

 

 前回やられた攻撃をそのまま何の対策も無いまま仕掛けてくる程、こいつは馬鹿じゃない。もし、ピカ様が攻撃を仕掛けたら、残る一枠の技か何かで、カウンターの攻撃をくらっていただろう。

 エレキブルに進化して攻撃の種族値が上がっているだろうし、直撃をくらえばいくらピカ様でも一撃で倒される可能性もあった。

 

「しかし、電気技と変化技を封じてここまでやるとはね。予想外だったよ。『ちょうはつ』」

「こいつ、しれっと技を指示しやがって。けど、技が一つ死んだ割には余裕だな」

「別に死んだ訳じゃないさ。『じしん』一つで『なみのり』を使わせざるを得ない状況に追い込めるなら十分だと思うけどね。エレキブル、『ギガインパクト』だ」

 

 シゲルの指示で、エレキブルが『ギガインパクト』を発動させて真っ直ぐに突っ込んで来た。

 いつもなら、変化技で逃げるか、『ボルテッカー』で迎撃していたが、今回はどちらも封じられている。仕方なく、『でんこうせっか』の速度で回避に専念させるが、エレキブルの突進速度が思った以上に早く、完全に逃げ切ることが出来なかった。

 

 ピカ様の体に、エレキブルの『ギガインパクト』がかすり、小さな体が吹き飛ばされていく。

 それを見たシゲルが追撃の『じしん』を指示したが、『ギガインパクト』の反動のおかげで、ピカ様も体勢を立て直せた。『なみのり』で再度『じしん』を凌いでいく。

 再び、エレキブルがジャンプで『なみのり』をかわすと、またも先程と同じ状況になった。

 ここで逃げても、また『ギガインパクト』で攻められるだけだろう。結局、同じことを繰り返されればじり貧になるのはこっちだ。ここで何とかバトルの流れを変えるしかなかった。

 

 エレキブルの『かわらわり』を避けるようにジャンプし、脳天へ新技である『アイアンテール』を指示する。

 まだ完全に完成した訳ではないので賭けだが、『アイアンテール』なら追加効果で(三割だが)エレキブルの防御も下げられるはずだ。物理防御が下がれば、『かわらわり』や『でんこうせっか』のような物理技も生きてくるだろう。

 だが、シゲルもそれを見て、エレキブルに「『ギガインパクト』で迎撃しろ!」と言っている。

 

 ブルー戦でのガルーラのように、消えかけのボードを足場にして、エレキブルが二度目のジャンプをし、そのまま『ギガインパクト』を仕掛けてきた。

 迎撃するようにピカ様の『アイアンテール』が振り下ろされたが、まだ完全な技にはなっていなかったようで、普通の『たたきつける』が『ギガインパクト』とぶつかり、負けたこちらが吹き飛ばされる。

 いくらピカ様のタフネスでも、エレキブルの『ギガインパクト』の直撃をくらって起き上がることは出来なかったようで、倒れたまま戦闘不能になってしまった。

 

 タケシの「ピカチュウ、戦闘不能! エレキブルの勝ち!」という判定が聞こえると、シゲルが小さくガッツポーズをしている。それだけ勝ちたかったと言うことだろう。最初の『ちょうはつ』といい、今回は完全にしてやられてしまったな。

 

 倒れたピカ様を抱き上げると、申し訳なさそうな顔でこちらを見てくる。それを見て、「まだまだ俺達より強い奴なんかたくさんいる。これからも頑張ろう」と声をかけた。

 

 シゲルもエレキブルをボールに戻し、「これで一勝一敗一分けだ。次でケリをつけよう」と言ってくる。どうやらシゲルはジョウト地方のポケモンリーグに参加するということだったので、俺も次は原作通りジョウト地方に行くことにした。

 

 

 追記。シゲルとタケシにクリスタルのイワークと進化したトゲ様を自慢するととても驚いていた。大変、気分が良い。

 

 

 

 




 原作との変化点。

・第115話『帰ってきたマサラタウン!』より、ポケモン達と触れ合った。
 ニューサトシは書いていないが、触れ合い(良い所を見せる)で、カントー組がニューサトシも知らない技を披露し驚かす一面があった。また、次の選出に選ばれるために、みんなアピールしまくっている。オレンジ諸島組はそれを呆然と見ていた。

・ニューサトシがロケット団を追い返した。
 アニメでは手こずってシゲルに馬鹿にされていたが、ニューサトシはいつも通り瞬殺している。良いところを見せたいカントー組が大活躍した。

・第116話『ライバル対決! サトシVSシゲル』より、ニューサトシがシゲルに負けた。
 ガチガチに対策された。シゲルもシゲルネオになって、もはやニューサトシばりに何でも有りになってきている。ジョウトで決着をつける約束をした。

・クリスタルのイワークについて。
 特性については完全なオリジナル。元の火力がポッポなので救済したが、HPも低いのであまり攻撃をくらいすぎると上がった攻撃力を生かす前に戦闘不能になる諸刃の剣でもある。ちなみに、イーブイの特性をスキルスワップでクリスタルのイワークに移してみたが進化しなかった。おそらく、自身が進化先を明確にイメージ出来ていないため進化できなかったとニューサトシは見ている。しかし、それは通常のハガネールとは違うハガネールに進化するということでもあったが、進化条件がメタルコートとは限らないのでしばらくはこのままだった。


 現在ゲットしたポケモン。

 ピカチュウ Lv.52

 ピジョット Lv.48→49

 バタフリー Lv.48→49

 ドサイドン Lv.51

 フシギダネ Lv.50

 リザードン Lv.53

 ゼニガメ  Lv.50

 キングラー Lv.48→49

 カモネギ  Lv.48→49

 エビワラー Lv.49→50

 ゲンガー  Lv.50

 オコリザル Lv.49→50

 イーブイ  Lv.46→47

 ベトベトン Lv.47→48

 ジバコイル Lv.48→49

 ケンタロス Lv.47→48

 ヤドラン  Lv.47→48

 ストライク Lv.47→48

 トゲチック Lv.36→37

 プテラ   Lv.47→48

 ラプラス  Lv.48

 ミュウツー Lv.70

 バリヤード Lv.47→48

 イワーク(オレンジ諸島の姿) Lv.40→41

 カビゴン  Lv.38→39

 ニョロモ  Lv.25→26


 オレンジ諸島編はこの話で終了となります。詳しくは活動方向にも書きましたが、金銀編の書きため期間に入りますので本編投稿は一時終了します。出来れば、来月くらいにはまた更新したいと思っていますので、よろしくお願いします。



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