ニューサトシのアニポケ冒険記   作:おこむね

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番外編
EX01 『ニューサトシの最初の印象』


 カスミにとって、マサラタウンのサトシという少年に抱いた最初の印象は、『とんでもないくらいのバトル狂い』というものだった。

 いろいろな事情があって、一緒に旅をすることになったカスミだったが、その変人ぶりに最初は対応できていなかったくらいである。

 

 何しろ、サトシは強い相手を見つけたらとにかくバトル。強そうなポケモンを見つけたら何を置いてもバトル。もはや、バトルをしないと死んでしまうのではないかと思うくらい毎日のようにバトルをしていた。

 

 ニビシティで運良くバッジをゲット出来る機会に恵まれても、サトシはバトルを求めて我が儘を口にしており、ついお節介を焼いてしまったくらいである。

 

 しかし、一緒に旅をしていると、サトシにはポケモンに対してとても真摯に接する一面があることもわかった。

 手持ちポケモンに無理はさせないし、困っているポケモンがいたら必ず助ける。代わりに人間に対しては厳しい所もあり、特に常識がなかったり、トレーナーとして不適格だったりする人間に対しては暴力に訴えることも少なくなかった。

 正直、怖いと思ったことがないと言えば嘘になる。ただ、サトシは意味も無く暴力を振るう人間じゃないというのはわかっていたので、それで態度を変えることはなかった。

 

 まぁ、流石にポケモン相手に真っ向勝負をし始めた時は本当に人間かどうかを疑ったが。

 

 一緒に旅をしているタケシももうわかっていると思うが、サトシは大人っぽい雰囲気を出している割には子供っぽい所が多い。

 目上の人に敬語は使うものの、基本的に口は悪いし、意外と我が儘でこっちを困らせてくる。だけど、新しいポケモンにあった時の笑顔は割と嫌いではなかった。

 

「何してんだよ、カスミ。置いてくぞ」

「アンタの歩くペースが速すぎるのよ! 少しは女の子を労いなさい!」

「じゃあ、10秒だけ待ってやるよ。1、2、3、4、5、10!」

「ちょっ! 10秒待ってないじゃない!? 待ちなさいよ、サトシ!」

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

 タケシにとって、マサラタウンのサトシという少年に抱いた最初の印象は、『ポケモンバトルの天才』というものだった。

 普通、新人トレーナーは相性を駆使してジム戦を勝ちに来る。特に最初のジムはレベル制限でジム側のポケモンも弱くなるし、公式戦としてのバトルの仕方を学ぶ場という目的の方が大きいからだ。

 

 しかし、サトシだけは違った。あいつはいわタイプのジムにバタフリーやピカチュウで挑戦して、尚勝利を収めたのだ。

 最初は相性も知らない素人と思ったが、すぐにその考えは否定された。変化技や攻撃技を上手く工夫して相性の不利を覆すのは、とてもトレーナーになって一週間の人間とは思えない技術である。

 おまけにタケシの全力ポケモンであるLv.51のイワークを相手に、精々Lv.15くらいしかないピカチュウで互角の勝負を繰り広げたのだ。これを天才と言わずに何という。

 

 家族の問題が解決したこともあり、タケシはサトシと一緒に旅をすることになったが、この天才という考えはすぐに否定されることになった。

 

 勿論、知識はある。技術もある。だが、それ以上にサトシは努力を重ねていた。

 バトルが好きというのもあるのだろうが、戦って、自分に足りないものを分析して、ポケモン達と一緒にレベルアップしていく。サトシは要領がいいだけで、別に天才という訳ではなかった。異常とも思えるバトルの数と、努力でここまで強くなっていたのだ。

 

 長く旅を一緒にしていると、その辺りのことも良くわかって来る。今のタケシのサトシに対する印象は、『ポケモンバトルの天才』から『扱いに困る弟』に変わっていた。

 たまにとんでもないことをする時もあるが、基本的にサトシは子供だ。やりたいことをやるという意思を貫いて来るから我儘が多い。けど、我儘を言ってくれるということは、それだけこちらを信頼してくれているということでもあった。

 サトシに振り回されるのは大変だが、一緒に居ると楽しいことも多い。タケシは何だかんだ、三人で旅をしている今が嫌いではなかった。

 

「タケシ、腹減ったー」

「はいはい。もうすぐ出来るから、皿を並べておいてくれ」

「カスミー」

「アンタが頼まれたんだから、アンタがやりなさいよ!!」

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

 ロケット団の三名にとって、マサラタウンのサトシという少年に抱いた最初の印象は、『ポケモン育成の達人』というものだった。

 捕まえたばかりであろうポッポを巧みに使い、自分達を翻弄していく姿は今でも記憶に新しい。あのポッポはどこにでもいるようなポッポだったが、それをあのサトシというトレーナーが強く育成しているに違いなかった。

 後をつけるようになってから、その考えは間違いではなかったと確信する。時が経つにつれて、サトシはポケモンを増やし、そのポケモンはどんどん強くなっていた。つまり、そのポケモンを奪ってボスに献上できれば、出世は間違いなしということである。

 

 とはいえ、そう簡単に勝てれば苦労はない。失敗は続き、ボスからはお叱りの声も多かった。

 真正面から戦いを挑んでも負け、メカを使ったり、罠を張ったりして搦め手を使っても、出し抜くことが出来ない。たまに、自分達が弱いと本気で落ち込むこともあった。金はなくなり、生きるので精一杯。そんな中、ロケット団に転機が訪れる。

 

 それが起きたのは、ポケモンリーグが開催される頃だった。一人のガラガラ使いからジムバッジを奪い、リーグに参加することになったのだ。

 やはり、ポケモントレーナーとしては一度くらいポケモンリーグに出てみたい。ガラガラ使いも大した実力ではなかったし、あいつが出るくらいなら自分達が出た方が大会も盛り上がると言うものだろう。

 

 実際、その通りで、多少苦戦したが何だかんだ一回戦を突破することが出来た。いつも戦っているサトシに比べたら大したことない相手である。

 フィールドが変化すると対応が難しく、いろいろ苦戦を強いられたが、自分達はポケモンリーグのベスト8まで残ることが出来た。ここで、ロケット団の三名は意外と自分達は弱くないんじゃないかということに気が付く。

 

 初出場、おまけに準備も何もなしでベスト8まで行けたのだ。普通に考えれば強くないと不可能だろう。

 

 ロケット団の三名は自信を回復させた。そして、今度こそサトシを倒してポケモンを奪おうと再び決意を固めたのである。そのおかげもあってか、サトシの関わっていない場面ではあったが、上手くポケモンをボスに献上したり、資金を手に入れてウハウハになったりと運気は上向きになってきていた。

 

「何だかんだと聞かれたら」

「答えてあげるが世の情け」

「世界の破壊を防ぐため」

「世界の平和を守るため」

「愛と真実の悪を貫く」

「ラブリーチャーミーな敵役」

「ムサシ」

「コジロウ」

「世界を駆けるロケット団の二人には」

「ホワイトホール、白い明日が待ってるぜ」

「にゃーんてな!」

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

【おまけ】

 

 

 それはカントー、ポケモンリーグセキエイ大会決勝が終了してすぐのやりとりだった。

 勝利者である少女は、与えられた自室に戻るなり、鞄の中からポケギアらしきものを取り出して電話をかける。

 

 出ないかとも思ったが、数コールの後、無事に電話は通じ、少女は相手に声をかけた。

 

「もしもーし、私だけど。今へーき?」

『………………』

「あれ、見ててくれたんだ?」

『………………』

「そういえば、出るって話したっけ。ご覧の通り、何とか無事に勝ったよー」

『………………』

「うん。みんな、強かったね。最後なんて、結構ギリギリだったし」

『………………』

「あ、やっぱわかるんだ。何かね。エースのポケモンが前の試合でドクターストップかかっちゃったんだって。それがなきゃ勝負はわからなかったね」

『………………』

「そんなこと言ってー、最強さんの前では赤子みたいなもんでしょ?」

『………………』

「あーはいはい、ごめんごめん。最強って言われるの嫌いなんだよね。わかったからそんなに怒んないでよ」

『………………』

「勝つよ。今年のチャンピオンリーグ本戦の枠は私が貰う。四天王になりたいんだよね」

『………………』

「いや、そんな称号とかには興味ないけど、四天王になると結構融通効くからね。ハナダの洞窟に興味があるんだ。あそこは危険地域だから個人じゃなかなか入れないし、もしかしたら新種のポケモンがいるかもしれないしね」

『………………』

「君も、そろそろシロガネ山にばっかこもってないで、いい加減外に出てきなよ。他の地方にだって、強いポケモンはたくさんいるんだから」

『………………』

「興味はあるのね。けど、一人じゃ面倒だから行きたくないと」

『………………』

「嫌だよ。私だって、ハナダの洞窟に行きたいんだから。君のために外に行く時間なんてありませーん」

『………………』

「そだね。グリーンが今、シンオウに武者修行の旅に出てるみたいだし、お土産話に期待しよう」

『………………』

「うん。またね、次会うときはチャンピオンリーグの本戦だから。期待しててね、レッド」

 

 

 




 ニューサトシを客観的に見ると、やべー奴にしかならない件。

 一旦投稿は終わると言ったが、本編以外を投稿しないとは言っていない。とはいえ、これで本当に打ち止め感はあるので、また気まぐれに番外編を思いつかない限りはこれで終わりです。

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