ニューサトシのアニポケ冒険記   作:おこむね

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EX02 『ニューサトシの最初の印象2』

 シゲルにとって、サトシという少年に抱いた最初の印象は、『良くも悪くも気になる奴』というレベルのものだった。

 ポケモンの知識や対応は自分の方が上なのにやけに張り合ってくる。最初はただ身の程を知らない奴だとしか思わなかったが、段々とそのポケモンへの熱意は無視できなくなるレベルのものだった。

 

 ただ、それでもライバル視する程ではない。もし、旅に出るまでずっとこのままの関係だったなら、シゲルはサトシを自分より下に見たままだっただろう。

 

 問題が発生したのは、旅に出る丁度一年前のことだった。サトシがオーキド主催のポケモンキャンプで頭を打ち、熱を出して数日寝込むことがあったのだ。そして、それ以降、サトシは急に大人びた雰囲気を出すようになり、全く自分を相手にしなくなった。

 何を言っても、どう挑発しても、今までのようにこちらを相手にはせず、ひたすらにポケモンの知識を身に着けるために本を読んでいる。終いには、オーキド研究所に毎日通うようになりポケモン達の世話までし出したのだ。

 

 面白くなかったシゲルは当然のように自分の知識をサトシに披露して、自分の方が上だとアピールしていたのだが、ある日急にサトシが反撃をしてきた。

 自分ですら知らないポケモンや技の知識をマシンガンのように叩きこまれ、シゲルは言葉に詰まる。インチキを言うなと叫ぶことが出来なかったのは、サトシの口にした知識の一部が自分の知るものと合致していたからだ。

 

 その日から、シゲルはサトシを避けるようになった。今までずっと下に見ていたサトシの変貌に付いていけず怖くなってしまったのだ。

 

 しばらくすると、久しぶりに姉のナナミが帰って来るということでオーキド研究所に顔を出した。

 その頃にはサトシは完全にオーキド研究所の住人のようになっていて、もはや我が物顔で良く来たなと手を上げてくる。思わず、いつものように「君はどれだけ厚かましいんだサートシ君」と言いそうになったが、前回のことを思い出して軽く頭を下げるだけにした。

 

 サトシはナナミの手持ちが気になるようで、しきりに見せてくれと頼んでいる。部屋が少し狭いこともあって、出してくれたのは小柄なポケモンだけだったが、久しぶりに見た姉のポケモンはまた一段と成長しているのが見て分かった。

 

 サトシはピッピやイーブイを抱えながら、目をキラキラさせている。こういう所は前とあまり変わっていないようで少し安心した。

 

 しかし、その安心はすぐに驚きへと変わる。イーブイを抱きながら、サトシが「ナナミさんはイーブイをどれに進化させるんですか? やっぱり、ニンフィアかな?」と言い出したのだ。

 ニンフィアは別の地方で発見された新種のポケモンらしいのだが、そのことを知っているのはこの場ではオーキドだけだった。シゲルは勿論、ナナミも名前すら知らなかったし、それがイーブイの進化系であることはオーキドですら知らないことである。

 

 だが、サトシはそんなことどうでもいいとばかりに、「同じなつき進化であるエーフィやブラッキーも捨てがたいし、石進化もありだな」と頷いていた。「ちなみに、ニンフィアに進化させないならフェアリー技を忘れさせる必要があるので注意です」と、あたかも常識のように話している。

 思わず、「君は何を言っているんだ?」とツッコミを入れると、小声で「そういや、イーブイの進化って、この時点だと三種類くらいしか判明してないんだっけ……ま、いっか」と、呟いていた。

 

 そのままイーブイの進化先や進化方法について、詳しく解説しているサトシを見て、ポケモン研究の第一人者である祖父オーキドですら言葉が出ていない。どこでそんな知識を手に入れたのか聞くも、「キャンプで会った知らないおじさんが話してた」というあからさまな嘘をついて誤魔化していた。

 

 後日、姉からイーブイがニンフィアに進化したという手紙と写真が届いて確信する。サトシの言葉は全て正しかったのだ。

 

 自分がサトシに劣っていると明確に感じ始めたのはこの頃だった。オーキドの伝手で、四天王のワタルに会えることになったのだが、サトシはそこでも自分がついていけないレベルの質問を飛ばしていて、二人の間に割って入ることが出来なかった自分に何とも言えない気持ちを感じる。

 

 今まで、自分はサトシよりも上だった。

 

 それは誰の目から見ても明らかで、前にサトシが自分と張り合っていたのは、こちらが上だとわかっていたからだ。

 しかし、今のサトシはシゲルのことなど眼中にすら入れていない。久しぶりに釣りをした時にそれがハッキリとわかった。

 

 その日、偶然にも一緒に釣りをすることになり、お互いの釣竿にモンスターボールが引っ掛かったのだが、サトシはすぐに身を引いたのだ。欲しいならやると言わんばかりのその態度は、兄が弟におもちゃを譲るようなもので、相手が自分より下のレベルじゃないと絶対にしない行動だった。

 最初、シゲルは絶対にこのボールが欲しいと思った。子供なら誰だって旅に出る前にモンスターボールが手に入るなら、その機会を逃したいとは思わないだろう。

 

 だが、サトシはそんな自分をあざ笑うかのように、ボールを渡してきたのである。シゲルは思わず頭に血が上った。自分の行動が子供のもので、サトシの行動が大人の行動。そう理解し、自分が負けたと思わされたからだ。

 思わず、「君から施しを受ける日が来るとは思わなかったよ!」とボールを投げ返した。すると、サトシは困ったような顔で「別に施しのつもりはねーよ。欲しそうにしてたからやっただけじゃん」と、ボールを半分にしてこちらに渡してくる。

 

「お互いに譲り合っても無意味だろ。そうだな、いつかお互いにポケモントレーナーになって、本気の勝負で勝ったらその半分を相手に渡すってことでどーだ? 言うならライバルの証って所か」

 

 その言葉は、シゲルの胸を刺激した。今までずっと下だったサトシ。いつの間にか自分よりも上にいたサトシ。そのどちらもが、自分をライバルだと言ったのだ。

 

 負けたくない。シゲルは初めてそう思った。

 

「いいだろう。君を僕のライバルとして認めよう。サトシ!」

 

 その日からシゲルは、前以上にポケモンについての勉強をするようになった。今までたまにしか手伝わなかった研究所の手伝いもまめに行い、少しでもポケモンとの触れ合いを大事にした。

 わからないことは何でも聞いたし、何でも調べた。ライバルのサトシからですら、知らないことを教えて貰うようになった。

 

 それも全ては来たるべきサトシとのバトルのためだ。絶対に勝つという高いモチベーションが、シゲルを一つ上の世界へ送り出した。

 それは本来なら、旅をして世界を知り、負けを経験してから踏み込むべき領域だったが、サトシへのライバル心や劣等感が、その本来の道筋を省略させたのである。

 

「エレブーに進化前が存在することも知らないんですかね? じゃあ、逆にエレブーがエレキブースターを持って通信交換すれば進化するって知ってます? えー、あれだけ講釈垂れてたのに知らないの? 進化すると、エレキブルというポケモンになって、電気技を受けると効果を無効にして自身の速度を上げるんですよ。ちなみに、同じ進化としてブーバーにもブーバーンという進化先が居てだね。これもマグマブースターというアイテムを持って通信交換すると進化するんだわ。で、ブーバーンに進化すると――」

「こりゃサトシ! 子供相手に何しとる!」

「ゲッ。いえ、博士。このガ……お子様がエレブーのことを自慢げに話してたから、ちょっと話をしていただけですよ」

「どこからどう見ても泣いている子供を虐めているようにしか見えんわ!」

「いやいや、博士。ゆーて子供の喧嘩よ? 俺も子供だし、ほらサトシ君9ちゃい」

「何が9ちゃいじゃ、お前さんのような9歳がいるわけないじゃろう」

「こんなぷりちーな少年を前になんたる言いぐさ」

「お前さんとシゲルは特別枠じゃ。全く、何のためにこっち側にしたと思っておる。シゲルも見ていたのなら止めてやればいいものを」

「すみませんおじい様。ただ、あの状態のサトシに近づくとろくなことにならないのはおじい様もご存じでしょう?」

「それは、そうじゃな……」

「まことに遺憾である」

「ちなみに君は今、とんでもない爆弾発言をしていたんだからな」

「そうだっけ? どうも、中途半端な知識をひけらかす奴を見ると知識の暴力で殴りたくなるんだよな。俺の悪い癖だ」

「本当に悪い癖だよ。何より性質が悪いのは、相手を屈服させるのに夢中になるから自分が何を話していたか覚えていない所だ」

 

 こうして、シゲルはエレブーの進化方法を知った。#003『ポケモン 君に決められなかった』より一部抜粋。

 

 

 




 新しいパソコンは凄いぞ、APEXがぬるぬるできる。

 とりあえず、定期的に番外編を更新しつつ、ジョウト編を書いていこうと思います。キーボードがすげぇ奇麗なので使いやすいんですが、変換が前の変換を引き継いでくれていないのか、上手く変換できないのがたまにきず。
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