10歳 δ月ζ日 『ニビシティ ジム戦 VSタケシ 後編』
タケシとのジム戦を終えてジムから出ると、原作通りに無能の親父が「うちにきなさい」と声をかけてきたので、大人しくお世話になることにした。
確か、水車発電施設でピカ様をパワーアップするイベントがあったはずだ。
ぶっちゃけ、タケシとのバトルには何の役にも立たないだろうが、『10まんボルト』を早い段階で覚えられるのはアド過ぎる。
どうやらこのおっさんもバトルを見ていたようで、「良いバトルだった。次は勝てるかもな」と声をかけてきた。いや、まぁ実際追い詰めていたが、レベル差があったおかげでもある。本気のメンバーを見るのはいつになることやら。
しかし、このおっさん本当に無能だな、さっさと家帰れよ。別に聞いてもいないのに、何でタケシの身の上話なんか聞かされなきゃいけないんだよ。ピカ様の強化に繋がるから黙って聞くが、これがなかったらお前ぶっ飛ばしてタケシの前に放り出す所だったぞ。
夜、水車発電施設でピカ様の強化イベントをこなす。
水がないので人力発電だが、マサラ人の体力を舐めてはいけない。これくらいなら余裕でこなせるぜ。
途中、カスミさんが自分のポケモン使えば楽に勝てるとこちらを誘惑してくるが、流石にそれはトレーナーとしてどうかと思うので丁重にお断りさせて貰った。
明日か明後日には『なみのり』も手に入るしな。
何故かカスミさんがまた鬼のように怒っていたので明日会うのが少し怖いぜ。
10歳 δ月η日 『ニビシティ ジム再戦 VSタケシ』
昨晩、無事にピカ様も『10まんボルト』を覚えることが出来たので、ポケモンセンターに戻ってポケモン達を休ませることにした。
遅い時間だったが嫌な顔一つせずにポケモンを預かってくれるジョーイさんマジ天使。
そのまま一晩休ませて貰うと、朝一で爺から『なみのり』の技レコードが届いた。どうやら特急ピジョット便を使ってくれたおかげか、一日で届いたようだ。助かったぜ。
すぐ爺に連絡してお礼を言う。向こうも約束を果たしてくれたので、そろそろ爺呼びから博士呼びにランクアップさせることにした。
博士曰く、シゲル達はもうおつきみ山の前らしい。俺も『なみのり』を手に入れたし、これ以上ここで足止め食らってる場合じゃないな。
センターにある機材で技レコードを使い、ピカ様に『なみのり』を覚えさせる。これでタケシを蹴散らしてやるぜ。
再戦のために必要な準備を全て終えると、自信満々となったピカ様を連れて、もう一度ニビジムに向かう。
そのままジムの門をくぐると、俺の顔を見たタケシがこちらに走ってきた。やる気満々だな。俺も昨日までとは一味違うぜ?
「サトシ、待っていたぞ」
そう言いながら、タケシが「忘れ物だ」とこちらに手を出してくる。見ると、手のひらの上にジムバッジが乗っていた。え、くれんの? なんで?
「昨日の試合、勝ったのはお前だ。弟達の邪魔がなければ、ピカチュウの攻撃で俺は負けていた。ジムリーダーの視点から見ても、お前のポケモン達はしっかり育てられていることがわかる。バッジを渡す理由としては十分だ。本当なら昨日渡したかったんだが見失ってしまってな」
あー、無能のおっさんと一緒に居たからな。普通はジム戦が終われば真っ直ぐポケモンセンターに帰るものだし、タケシもポケモンセンターに行ったのだろう。
いや、しかし勝ったわけじゃないのにバッジなんて受け取れないよ。バトルしよーぜ。
「昨日の試合が成立しなかったのはジム側の問題だ。これが実力の無いトレーナーならともかく、お前レベルのトレーナーならバッジを渡さない方が問題になる」
ぐむぅ。でも、せっかく『なみのり』を覚えさせたのに、戦わないなんてなんか勿体ない。やっぱバトルしよーぜ。
「いや、だがなぁ……」
「ったく。なんでアンタはせっかくバッジがもらえるのに、そんなにゴネてるのよ……」
見かねたとばかりに、どこからか様子を見ていたであろうカスミさんもやってきた。
いや、だってさ、昨日は様子見だったんだぜ。それに今日のためにいろいろ準備だってしたし、戦いたいんだよ俺は。バトルしよーぜ。
「……わかった。じゃあ、こういうのはどう? サトシはグレーバッジを貰う。代わりにタケシの本気のポケモンを使ってバトルして貰うの。これなら、ジムリーダーの本気も見られるし、サトシも満足できるでしょう?」
流石はカスミさんナイスアイディアだ。そう言うことだタケシ、バトルしよーぜ。
「お前がそれでいいというなら俺は構わんが……」
是非頼む。本気のジムリーダーとバトルする機会なんて、もうしばらく先だろうしな。
勝てないのはわかっているが、貴重な経験になるし、バッジももらえる。俺にはいいことしかない。
「わかった。付いてこい」
タケシに続いてジムの中に入ると、二階席に昨日の弟達の姿が見える。もう乱入してくることは無いと思うが警戒だけはしておこう。
タケシがジムのコンソールを操作すると、六つのモンスターボールが出てきた。どうやらあれがタケシのフルメンバーのようだ。そのうちの一体を手に取ると、「俺はこの一体。お前は手持ち全部でいいな?」と確認されたので頷く。
いくら俺が自分に自信ニキでも、ジムリーダーの本気ポケモン相手に3対3を仕掛けた所で勝負にならないことくらい分かっているさ。
タケシがモンスターボールを投げると、中から出てきたのはイワークだった。
しかし、昨日のイワークとは迫力が全然違う。隣のピカ様も力の差を感じ取っているのか、「チャー」と、耳を押さえて怖がっていた。
だが、ここで逃げていたら戦う意味が無い。ピカ様の背中を押してバトルフィールドに送り出す。「大丈夫だ、お前の新しい力を見せてやれ!」と言うと、『なみのり』のことを思い出したのか、ピカ様もやる気になってくれたようだ。
「じゃあ、バトルスタート!」
カスミさんの合図と共にバトルがスタートし、ピカチュウが速攻で『なみのり』を仕掛けた。
ピカチュウが『なみのり』を覚えるのを知らなかったタケシとカスミさんが驚いているが、ジムリーダーだけあってタケシはすぐに『まもる』を指示。イワークは冷静に『なみのり』を凌ぐ。
ちなみにピカ様の『なみのり』は、どこからか出したサーフボードに乗って波を生み出す技だった。もしかして身代わりボードか? 体力減らないよな?
ってそんなこと気にしている場合じゃなかった。切り札の『なみのり』を防がれてピカ様が動揺している。落ち着かせるためにも、『かげぶんしん』を指示して距離を取らせた。
正面から『なみのり』を打っても防がれる以上、ここは隙をついて避けられないタイミングで仕掛けよう。
タケシは次に『ストーンエッジ』を指示してきた。エッジは命中率が低い技だが、今回はそれが逆に作用しているのか、次々とピカ様の『かげぶんしん』を消し去っていく。
全てが消される前に隙を作りたい。
ピカ様に新しく覚えた『10まんボルト』を指示して目を狙わせた。いくらでんき技が効かないイワークとはいえ、目に技を食らえば眩しくて開けていられないはずだ。
本当は『フラッシュ』が良かったんだが、ないものをねだっても仕方ないのであるもので代用するしかない。さらに、その隙を突いて『なみのり』を指示した。
基本的に『まもる』はタイミングが難しい技だ。いくらジムリーダーの本気ポケモンとはいえ、視界がハッキリしなければ使えないだろう。
レベル差があるだろうから『なみのり』の一撃だけじゃ倒れないかもしれないが、これでダメージはかなり与えられるはずだ。
「イワーク、『じしん』だ」
じめんタイプの必殺ウェポン。流石に持っていたか。
イワークの視界はまだ戻っていないが、フィールドに効果を及ぼす『じしん』なら敵が見えていなくても問題ない。おまけに、地面が揺れたことで動揺したのか、まだ技に慣れていないピカ様の『なみのり』が解除されてしまった。
幸い、『なみのり』中だったことで地面からの衝撃は和らいだのか、『じしん』のダメージは受けなかったのだが、これで『なみのり』は完全に封じられたも同然である。
しかし、差があることはわかっていたが、まさかここまで何もさせて貰えないとは思わなかった。
もう数秒でイワークの目も元に戻る。
とはいえ、『なみのり』も『かげぶんしん』も効かない以上、もう打つ手は何も無い。せめて『くさむすび』でもあればまだ戦いようはあったんだが、それこそ無い物ねだりだろう。
「イワーク、『ステルスロック』だ。動きを封じるんだ」
次のポケモンへの嫌がらせも完璧かい。これでピジョンもバタフリーもフィールドに出るだけでダメージを受ける。おまけに浮いている岩が邪魔でピカ様の移動も阻害された。
「イワーク、『じしん』だ。とどめをさしてやれ」
くっそ、もう一か八かだ。
「ピカチュウ! 『なみのり』!」
イワークの『じしん』で『なみのり』は消される。だが、これでダメージは防げるはずだ。倒されなければそれでいい。
水が消えたタイミングで、タケシが『ストーンエッジ』を指示してきたので、『かげぶんしん』からの『10まんボルト』でエッジを相殺する。
いわ、じめんタイプのポケモンにでんき技は効かないが、いわタイプの技ならでんきタイプの技でも相殺できるはずだ。
目論見は正しかった。が、威力が足りなかった。レベルが足りていないんだ。
ピカ様の『10まんボルト』を突き破り、エッジが『かげぶんしん』を消していく。でも、いいんだ。欲しかったのは、この一瞬。
「ピカチュウ、『てんしのキッス』!」
先程と違い、一瞬の時間が、ピカ様をイワークまで到着させた。
大きなイワークの体にピカ様がキッスしようとする。これで混乱状態になるはずだ。後は『なみのり』連打で一気に勝負を――
「『まもる』!」
――なん、だと。
「惜しかったな。策は良かった。初見だったらくらっていただろう。前回のバトルが仇となったな」
同じ手が二度通用するほど、ジムリーダーは甘くないというわけだ。
補助技すら無効にする『まもる』によって、キッスが封じられ、ピカ様が無防備になる。そこにすかさずイワークが『じしん』をくりだし、一気にピカ様を戦闘不能にした。
「ピカチュウ、戦闘不能よ」
審判をしてくれていたカスミさんの声が響く。
だが、ピカ様だけではない。もう全員戦闘不能だ。この調子では、おそらくバタフリーの攻撃も対策されているだろう。ピジョンに至っては有効打が存在しない。今の手持ちではあのイワークとまともなバトルになるとは思えなかった。
男には勝てなくても戦わなければいけないときはあるかもしれないが、戦う意味のないバトルはいたずらにポケモンを傷つけるだけだ。素直に負けを認め、バトルを終了して貰う。
そのまま倒れたピカ様を抱きかかえると、タケシとカスミさんにお礼を言って、すぐにポケモンセンターへ走った。
悔しい。確かに、勝てるとは思っていなかった。けど、ここまで何もさせて貰えないとも思っていなかった。レベル差があるのは最初からわかっていたし、負けるのも仕方ないだろう。でも、悔しいものは悔しいのだ。なまじ、『10まんボルト』や『なみのり』を手に入れてしまったために勝機があった。だからこそ尚悔しいのだ。
五分ほどニビシティの道を走り、ポケモンセンターでジョーイさんにピカ様を預ける。
すまないピカ様。俺が調子に乗って事前にジム戦を仕掛けてなかったら勝てたかも知れないのに――いや、その場合、本気のタケシとも戦えなかったか。
ピカ様が帰ってくるまでの間、どうすれば勝つことが出来たか考えていると、ポケモンセンターのドアが開いてタケシが入ってきた。どうやら後を付けてきたらしい。そういえばまだバッジを貰っていなかったな。
「今度こそ、忘れ物だぞ」
すまんね。有り難く頂くよ。
バッジを受け取るとタケシが隣に座り、俺のことを称賛してくる。とても一週間の新米とは思えない戦いぶりだった。思わず本気を出したと。
それを聞いて少し胸が軽くなった。
そうだ。確かに勝てなかった。でも、俺はまだ新米トレーナーなんだ。そんな俺達があのタケシに本気を出させたのなら、今はそれで良いじゃないか。
しかし、このまま負けたままでいるつもりはない。いつか、必ずリベンジさせて貰うぜ。
タケシの言葉に素直にお礼を返すと、気を取り直して、先程戦った本気のイワークについてタケシに質問した。どうやってあそこまで強くしたのか、わざはどうやって覚えさせたのかと。
原作通り、タケシはバトルより育成の方が好きなようで、自分が育てたポケモンのことを聞かれて喜んでいた。聞けば、タケシは将来世界一のポケモンブリーダーになるのが夢らしい。だが、ジムや幼い家族を捨てられないので旅に出られないのだという。
まぁ、当然、アニメのことを知っているので俺は事情を知っている。
だが、そんなタケシの告白を聞いて自責の念に駆られたのか、無能の親父が出てきてタケシに正体を明かしていた。無能の親父からタケシの親父になったムノーは、これからは自分がジムや家族の面倒を見るから夢を叶えてこいとタケシの背中を押している。
そんなムノーの言葉に甘えて、タケシもまた旅に出ることにしたようだ。俺に向かって、「俺もお前の旅に付き合わせてくれ」と言ってきたので、素直に頷く。飯炊き係ゲットだぜ!
新しい仲間が増えたことに喜んでいると、いつの間にかニビジムから帰ってきていたカスミさんが後ろに居て、念を押すように「自転車のこと忘れてないでしょうね? 弁償するまで付いていくから」と、ストーキング発言をしていた。ひえっ。
原作との変化点。
・第5話『ニビジムの闘い!』より、ピカ様がなみのりを覚えた。
昔のなみのりピカチュウはレアだったが、今では普通らしい。ショックだ。
・タケシが前日のバトルを評価してバッジをくれた。
普通に勝ち寸前だったので、お情けバッジでは無い。
・タケシの本気ポケモンとバトルした。
レベル差が40近くある。ニューサトシは勝つつもりでいたが、普通に勝てるはずがなかった。
現在ゲットしたポケモン
ピカチュウ Lv.17→18
ピジョン Lv.19
バタフリー Lv.11→12