ニューサトシのアニポケ冒険記   作:おこむね

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#052 『時系列おかしくね?』

 11歳 ζ月β日 『ヒワダタウン ジム戦 VSツクシ 後編』

 

 ヒワダジム戦も佳境に入り、ツクシのポケモンは後一体。対する俺は、体力が半分以下のヒノアラシと、眠っているヘラクロスの二体である。

 数の上では有利だが、一体は消耗している上、もう一体は眠っていることを考えると余裕のある状況ではない。ただ、ヒノアラシもようやくエンジンがかかってきたようだし、まだまだ勝負はこれからだった。

 

 ツクシは最後の一体を出してくる。やはり、アニメやゲームと同じく、ストライクだった。

 記憶が正しければ、『つるぎのまい』を防御に使うとかいう謎のアニポケ殺法をかましてきたはずだ。だが、それで防げるのは遠距離攻撃のみのはず。俺のヒノアラシはアニメとは違い、現段階で『かえんぐるま』が使える。遠距離と近距離を使い分ければ、そう簡単に対応できないはずだ。

 

 バトルが開始されても様子を見ているようだったので、こちらが先手で『かえんほうしゃ』を指示すると、すかさず『かげぶんしん』で攻撃をかわしてきた。

 ならば、的を絞らせないようにと『えんまく』を指示したが、さらに『つるぎのまい』で自身を基点に風を生み出し、攻撃を二段階上げながら煙を掻き消してくる。

 

 やはり、『つるぎのまい』を利用したアニポケ殺法は健在か。今度、俺のポケモンにもやらせよう。

 

 攻撃力が上がったことで、ストライクが『つばめがえし』を撃ってきた。対するこちらも『かえんぐるま』で迎撃するが、攻撃力が上がっていることもあり、ヒノアラシが弾き飛ばされる。

 しかし、ストライクにもダメージが入っていた。炎は触れるだけでもダメージが入る。これだからほのおタイプは使い易いんだ。

 

 だが、不利なのはこっちだった。『かえんほうしゃ』は『かげぶんしん』で、『えんまく』は『つるぎのまい』で、『かえんぐるま』は『つばめがえし』で全て防がれている。

 それでも、『かえんぐるま』はダメージを稼いでいる方だが、それ以上にヒノアラシが受けるダメージの方が大きかった。このままでは先に戦闘不能になってしまうのはこっちである。

 

 もし、このままヒノアラシが戦闘不能になれば、後は眠っているヘラクロスだけだ。

 そうなれば、『つるぎのまい』の起点にされる上、タイプ一致の『つばめがえし』で簡単に倒されてしまうだろう。何としても、ヒノアラシでこの試合を勝つ必要があった。

 

 とはいえ、逃げも攻撃も封じられ、ヒノアラシにもそろそろ疲れが見えてきている。打開策を探してはいるが、ツクシのストライクには隙がない。

 いや、隙がなければ作るのみ。

 ヒノアラシに『でんこうせっか』を指示する。ただし、攻撃ではなく、ストライクの周囲をウロチョロするだけだ。翻弄されて隙が出来た所に、自慢の炎を叩きこんでやる。

 

 しかし、ツクシは冷静だった。『かげぶんしん』で逆にこちらを翻弄しようとしてくる。

 これが四天王クラスのトレーナーなら、本体の場所を見つけられるんだろうが、今の俺にはまだ無理だ。ならば、今度は直撃を狙って『でんこうせっか』で『かげぶんしん』を消していく。

 三体目の分身を消した段階で、一体のストライクが背後を取った。それを見て、ヒノアラシに背中のやる気の炎を噴射させる。攻撃するなら視覚外からだと思っていた。これをずっと待っていたんだ。

 ヒノアラシのやる気の炎で、ストライクが怯んでいる。同時に残りの『かげぶんしん』が消え、ヒノアラシに振り向きざまの『かえんほうしゃ』を全力で打ち込ませた。

 

 この距離では避けられない。

 

 勝った――そう、思った瞬間、ツクシはストライクに『まもる』を指示した。

 最後の技、ギリギリで万が一に対応するために残していたのだろう。鉄壁の防御がヒノアラシの炎からストライクを守り、逆に攻撃を終えたヒノアラシが隙だらけになる。

 もう『かえんほうしゃ』を撃つだけの時間はない。返しの『つばめがえし』がヒノアラシに直撃した。

 だが、ただでは死なんとばかりに、咄嗟にヒノアラシが『かえんぐるま』の炎を全身にまとい、ストライクにもダメージを与えている。それでも、流石に耐えきれなかったようで、そのままヒノアラシが戦闘不能になった。

 

 ヒノアラシをボールに戻す。イタチの最後っ屁のような攻撃だったが無駄ではなかった。

 ストライクを見ると、最後の『かえんぐるま』の炎で火傷状態になったようで、痛んだ腕を気にしている。攻撃力を下げてくれたのはかなり大きい。後はあいつが起きてくれるかどうかである。

 

 最後のヘラクロスを再び出した。が、やはり眠ったままのようで呑気に鼻提灯を膨らませている。

 ツクシは当然、下がった攻撃力を戻すために『つるぎのまい』を指示している。これで攻撃が四段階上がった。もう一回積むまでに起きなければ、『つばめがえし』の一撃でワンキルされるだろう。

 中途半端な攻撃で起こしてくれればまだ救いがあったのだが、俺と同じくらいの年齢でジムリーダーをやっているだけあって詰めは甘くなかった。

 

 こちらに出来るのは声をかけることだけだ。

 頼むヘラクロス、起きてくれ! 起きろやコラ!

 

 しかし、一向に起きる気配がない。その間にストライクは三回目の『つるぎのまい』を積み終わり、攻撃力を最大まで上げてきた。

 火傷で下がっているとはいえ、それでも十分な攻撃力がある。トドメとばかりにツクシが『つばめがえし』を指示すると、ストライクが眠っているヘラクロスへ飛びかかった。

 

 終わった――と、思った瞬間、徐にヘラクロスが起き上がり、角がストライクの顎に直撃する。

 

 予想外の一撃を受けたストライクがふらつき、そのまま追撃とばかりに体当たりをかましていく。

 起きたのかと思ったが、体当たりでストライクを弾き飛ばした勢いのまま、近くの木に抱き着いて木の蜜を舐め始めた。

 

 アノヤロウ、寝ぼけて蜜吸いに行っただけかよ!

 

 いや、だが、寝ぼけていたとしても体が動いたんだ。意識が覚醒してもおかしくない。ストライクが体勢を立て直す間に、全力で声をかけると、遂にヘラクロスが目を覚ました。

 近くにいたカスミさんとタケシが、俺の声量に文句を言ってくるが、今はそれ所じゃないんだ後にしてくれ!

 

 何しろ、不意を突かれたストライクも既に準備万端で待っているのだ。これでようやく、最後のバトルを始められそうだった。

 

 ツクシもまた「ここからが本当の勝負だね」と笑っている。しかし、状況は何とも言えないものだった。

 ストライクはヒノアラシとのバトルで火傷とダメージを受けているものの、『つるぎのまい』を最大まで積んで攻撃力を上げている。火傷で下がっていても、その攻撃力は驚異と言って良い。

 対するこちらのヘラクロスはまだ体力満タンである。ただ、攻撃力の上がった4倍弱点はおそらく耐えられないだろう。どちらが先に攻撃を当てるかが、勝敗の分かれ目になってくると見た。

 

 ヘラクロスとストライクが、互いに間合いを計りながらじりじりとにじり寄っていく。

 だが、ツクシも流石に真正面から仕掛けては来ないようで、『かげぶんしん』でこちらを惑わせてきた。ならば、こちらは『みだれづき』だ。分身ごとまとめて本体を狙い撃つ。

 分身の数が減ったことで本体の位置が予測できた。ヘラクロスに指示を出すのと同時に、ツクシが『つばめがえし』を指示してきたので、こちらも『つばめがえし』で迎撃する。

 

 ヘラクロスの角の振り下ろしとストライクの鎌がぶつかり合う。しかし、攻撃力で負けているヘラクロスが大きく吹き飛ばされた。

 角を仰向けに弾かれたせいで体勢が崩れたヘラクロスに、トドメの『つばめがえし』が迫る。

 ひっくり返るのを耐えているヘラクロスに避けるすべはない。だが、ストライクの攻撃が直撃する寸前、『こらえる』を指示した。ストライクの『つばめがえし』がヘラクロスに当たるが、『こらえる』の効果でギリギリ耐えて体勢を立て直す。

 

 そのまま、振り下ろしの『つばめがえし』をカウンターで決めようとするが、再び『まもる』によって攻撃が防がれた。

 ただ、『まもる』を使ってくるのは読めていたので、ヘラクロスに角を振り下ろしたまま踏ん張るように指示をする。

 

 俺の指示を聞いたツクシが苦い顔をした。

 おそらく、その意味を理解したのだろう。

 

 完全防御の『まもる』は確かに強い技だが、連続で使うと失敗しやすいというデメリットも存在する。おまけに、互いの距離が近すぎてストライクの『つばめがえし』は間に合わない。こちらの角が弾かれないまま『まもる』が切れれば、こちらが先手を取れるのだ。

 

 ツクシは何とかして角を弾きたいのか、一か八かの『まもる』を指示していたが、ストライクは五割を失敗していた。技が失敗して隙だらけになったストライクへ、ヘラクロスの『つのでつく』が直撃する。

 ヒノアラシとのバトルで受けたダメージに火傷の継続ダメージも加わり、既にストライクも限界だったのだろう。吹き飛ばされたまま動かず、戦闘不能の判定が下された。

 

 やはり、ある程度育成し終えたポケモン達と違って、育成中のポケモンでのバトルはひやひやするな。それでも、三体は頑張ってくれたし、全員の力が無ければなかった勝利だった。

 ツクシからヒワダジムを制した証であるインセクトバッジを貰い、そのままヒワダタウンを後にする。

 GSボールも無事ガンテツに渡したし、これでもう煩わしいことを気にする必要もなく、旅を続けることが出来そうだった。

 

 

 

 11歳 ζ月δ日 『ポケモンを利用したシステムなんぞ使ってんじゃねぇ!!』

 

 ヒワダの真南にあるアルトマーレという水の街にやって来た。もし、誰かがこの日記を読む機会があり、その人が俺と同じ原作知識を持っていたのなら、きっとこういうだろう。

 

 時系列おかしくね? と。

 

 この水の都アルトマーレは、映画ポケットモンスターの五作品目である『水の都の守り神 ラティアスとラティオス』の舞台となっている街である。

 時系列で言えばバッジを八個集めた後の話だが、まだ俺はジョウトで二つしかバッジを集めていないし、エンテイ竹中やユキナリセレビィといった映画の話にもエンカウントしていない。なのに、何で俺達はこんな所にいるんだと思うだろう。

 実際、もしカスミさんが「そういえば、この近くにあるのよね。水の都アルトマーレ」という単語を口にしなかったら、きっと俺はこの場所に来ようとは思わなかった。

 

 では、何故時系列を無視してまで、先にこの街に来ようと思ったのか。

 

 批判を承知で言おう。俺はこの水の都の守り神という作品が、ポケモン映画史上で一、二を争うレベルで大嫌いなのだ。

 理由は二つある。

 一つ目が『こころのしずく』と呼ばれるアイテムと、それを使ったこの街のシステム。二つ目がラティオスの死亡だ。

 

 映画の流れを掻い摘んで説明すると、サトシ君一行がアルトマーレに来る→ラティ達と仲良くなる→悪役がラティ達のこころのしずくを奪おうとする→こころのしずくを使った街の防衛システムが暴走する→それを止めるためにラティオスが死ぬ、である。

 

 人間関係などは端折ったが、流れは大体こんな感じだ。最終的にポケモンが死ぬとわかっていて、危険度の高い原作通りの流れに沿うなど馬鹿のすることである。

 ニューサトシはラティオスの死を回避するためだけに、わざと映画の時系列を外してこの街にやってきたのだ。原作知識を最大限に悪用した原作崩壊ルートである。

 

 では、その方法について記述していこう。

 

 このアルトマーレという街は、大昔に厄災が起こり、ラティアスとラティオスが『こころのしずく』というアイテムを人間に渡してそれを救ったというおとぎ話がある。

 正確には『その昔、この島に住んでいた老夫婦が、波打ち際に倒れていた二人の子供を介抱した。その後、島に邪悪なものが迫った時、子供達はその正体、ラティオスとラティアスの姿を現し、仲間達と共に邪悪なるものを追い払った。彼らは老夫婦にこころのしずくという邪悪を払う宝石を渡した。その後、島が邪悪なるものに襲われることは二度となかった。島には今でも、ラティオスとラティアスやその子孫が時折訪れているという』というものだ。

 

 まぁ、これはいい。

 

 老夫婦に優しくされたラティ達が人間を助けることに俺だって否はない。問題はその後の、『ラティオスやラティアスやその子孫が時折訪れているという』である。

 これが正しいのであれば、本来ラティ達はこの街以外の場所で暮らしており、たまに様子を見に来るくらいの感覚だったはずだ。しかし、この映画のラティ兄妹やその先祖はこの街を守るために、ずっとここで暮らしているようにしか思えない。

 

 何故か? それはこの街の人間が、こころのしずくを使った防衛システムという謎の牢獄を作り上げたからだとニューサトシは思っている。

 

 映画では、アルトマーレには先祖達によって作られたラティ達を使った防衛システムが存在し、悪しきものが使用すると災いが起こるようになっていた。

 このポケモンを利用したシステムがそもそも気に入らないのだが、災害が起こる危険のある防衛システムをそのまま使っているのも頭がおかしいとしか思えない。結果として、その防衛システムとやらは古すぎるが故に、最新の科学技術に勝てず、大した働きもせずに敵に奪われて暴走し、挙句の果てに街を救うためにラティオスがその命を犠牲にする。

 おまけに、ラティオスの命は新たなこころのしずくとなってまたこの街を守るのに使われるのだ。控えめに言って狂気の沙汰である。今度はラティアスが死んでもおかしくない。

 

 音楽や絵が綺麗、ラティアスが可愛いということで、この映画はとても人気があった。俺も、その部分は否定しない。しかし、それとラティオスの死を認めるのは別の話だ。

 

 防衛システムなんぞ捨てさせてやる。そんなものよりも、ラティ達にこころのしずくを持たせればいい。

 何せ、ゲームのこころのしずくというアイテムは、ラティ達専用のアイテムでドラゴン、エスパー技の威力を上げるものだ。変な防衛システムにするよりも格段に力になってくれるだろう。

 また、こころのしずくによる秘密の庭の水の制御とかいう特別な力も、ラティ達がこころのしずくの力を使えば、今までと変わりなく出来るはずだ。機械に出来て、本体であるラティ達に出来ないなんてことがあるはずがない。こころのしずくは彼らの命なのだから。

 

 まとめると、災害を起こす危険のある防衛システムではなく、ラティ達にこころのしずくを管理して貰う。それで、映画の悲劇は回避可能なはずなのだ。

 

 ポケモンが意味もなく死ぬなど間違っている。だからこそ、仮にラティ兄妹と敵対することになっても、俺はこころのしずくを彼らに返すつもりだった。

 兄のラティオスの方は、命をかけて街を守る男気溢れる奴だったが、あいつだって自分の力が悪用されることなど望んでいないはずだ。その力がどれだけ危険なものかがわかればきっと理解を示してくれると信じている。

 

 適当に水の都を観光しながら、一旦タケシとカスミさんと別れて自由行動を取ることにした。作戦を遂行するには一人の方が都合がいい。

 二人共、急な提案に首を傾げていたが、特に嫌ではないようで頷いてくれた。カスミさんは原作でもあった水上レースの練習に興味があるようでそちらに向かい、タケシは買い物をすると言って街を歩いていく。

 

 俺もまた、人の居なさそうな路地裏に入ると、ミュウツーを出して事情を説明した。死ぬかもしれないポケモンがいる。助けたいと。

 だが、原作知識をどう説明すればいいのかわからない。どうしてそれを知っているのかと聞かれたら上手く説明できる自信がなかった。なので、こいつには素直に俺の記憶を読み取って貰うことにする。

 

 ミュウツーの超能力なら、俺の頭の中を覗くことなど簡単に出来るだろう。本当は誰にも伝えるつもりはなかったが、ポケモンを無駄に死なせるよりはマシだ。

 ミュウツーには、俺が元々はこの世界の人間ではないこと、物語という形で未来を知っていることを、記憶を読み取らせながら心の中で説明する。

 

 ピカ様が状況を理解できずに首を傾げていたが、深く説明するのが難しいので、曖昧に「この街を狙ってる悪い奴からポケモンを守る」とだけ軽く話した。

 

 しばらく黙っていたミュウツーだが、『もし、お前に会っていなかったら、私はああなって居たのだな』と呟いている。どうやら、逆襲ルートの自分を見たようで、何となく気持ちを共感しているようだった。

 見るのは水の都の記憶だけで良かったのだが、やはり興味には逆らえなかったらしい。とはいえ、それはあくまでも可能性の話だ。

 ミュウツーに「今のお前は違うだろ」と伝えると、すぐに『そうだな。我々がいる今こそが現実だ』と頷いている。続けて、『状況は理解した。このラティオスというポケモンを救えばいいのだな?』と確認を取って来た。

 

 頷きを返す。しかし、俺も彼らが居る秘密の庭の詳しい場所までは覚えていない。どうするかと頭を悩ませていると、ミュウツーが『伝説や幻と呼ばれるポケモンには独特な波長があるものだ』と言って、ラティ兄妹の位置を探り始めた。

 

 そのまま『見つけた』と呟くと同時に、ミュウツーによって俺達はラティ兄妹の前まで『テレポート』する。

 周囲を見渡すと、映画で見た秘密の庭そのものの場所で、目の前ではラティオスとラティアスの二体が侵入者である俺達を警戒していた。

 

 俺達が来たことで、カラカラと鳴子のようなものが鳴る。このまま誰かが来ると騒ぎになるため、ミュウツーに頼んで近くの人間は『さいみんじゅつ』で眠らせて貰った。

 それを見た二体は俺達が悪人だと思ったようで、今にも攻撃を仕掛けてきそうだったが、ミュウツーの力がわかるのか、迂闊には近寄っては来ない。

 先に無礼を働いたのはこちらなのですぐに謝罪をする。素直に頭を下げたことで、ラティアスの方は少し態度が軟化したが、ラティオスの方はまだ油断しないとこちらを睨みつけていた。

 

『で、どうするつもりだ? 真正面から説得しても、兄の方は納得しないだろう』

「何のためにお前に原作知識を与えたと思ってんだよ。水の都の話だけでいいから、ラティオスに見せてやってくれ。それで話が伝わるはずだ」

『フッ、便利に使ってくれる』

 

 と、口では文句を言っているが、憎まれ口のようなものだった。

 そのままミュウツーがラティオスを超能力で動けなくさせ、強制的に水の都のストーリーをラティオスの頭の中に流し込んでいく。

 

『これは数か月後に起きる未来の可能性だ』

 

 いきなり知らない映像を頭に流されて最初は驚きを露わにしていたラティオスだが、次第にその反応も落ち着き、最終的には眉間に皺を寄せている。

 ラティオスの反応を見て、ミュウツーも拘束を解除したが、兄が捕まった姿を見て妹の方はあわあわしており、「大丈夫?」とばかりに体に顔をこすりつけていた。

 

「俺は、こころのしずくをお前達の一族に返還したいと思っている。これは本来、人間が持つべき力ではないんだ。今までは平気だったかもしれないが、科学技術が発展した今悪用は容易だ。当然、悪用されればこの街は簡単に滅ぶ。そんな危険がある防衛システムなど災い以外の何物でもないだろう?」

 

 彼らが自分の意思でこの街にいるのなら、それはそれでいい。俺も彼らの意思を縛るつもりはなかった。ただ、こころのしずくを防衛システムに組み込むのは駄目だ。あれは災いしか起こさないパンドラの箱である。

 パンドラの箱は最後に希望もあったが、この映画の希望はラティオスの命と引き換えになる。そんなものは認められるはずがなかった。

 

 ラティオスもずっとこの街を守っていた一族という誇りがあるのだろう。すぐには頷きを返さない。しかし、こころのしずくが持つ危険性は認識できたらしく、盲目的にこのままで良いとも思えなくなったようだ。

 話についていけないラティアスが首を傾げているのを見て、ミュウツーがラティアスにも同じものを見せている。最初は驚いていたラティアスだったが、すぐに映画のサトシ君が自分達の味方だったことを理解したようで、俺に顔を寄せてきた。

 

 ラティアスの頭を撫でながら、ラティオスの説得を続ける。

 

 先程も言ったが、別にこの街から離れろという訳ではない。万が一、危険が訪れた時はお前達がこころのしずくの力を使えばいいだけの話だ。それだけの力はこれにはあるし、またそれだけの力があるからこそ、これはお前達が管理すべきである。

 

 先程出した結論を再び伝えていく。俺はこころのしずくをラティ達に返し、危険のある防衛システムで人間に力を制御させるのではなく、彼らの意思で力を使用するようにして欲しいのだ。

 そうすれば、仮に悪者に狙われたとしても最悪はラティ達が逃げるだけで済むし、防衛システムの暴走もなくなるだろう。映画のようにラティオスも死なずに済むはずだ。

 

 と、必死に説得したおかげもあってか、俺の言葉に嘘はないと伝わったようで、ラティオスの表情から段々厳しさが消えて行った。どうやら理解してくれたらしい。

 

 ちなみに、ラティアスの方はもうすっかり警戒心がなくなってしまっているようで、話に付いていけていないピカ様を背中に乗せて遊んでいる。何のために映画の内容見せたんだって言いたくなったが、まぁいいだろう。

 

『しかし、こころのしずくとやらを外せば人間にすぐばれるぞ。どうするつもりだ?』

「精巧な偽物を作って嵌めとけばいいさ。結局、力を使うにはラティ達が必要なんだ。それに合わせて力を使えばバレやしないだろう。まぁ一番は、悪い奴に見つからないことだな。そこのお転婆は隙が有り過ぎてこの場所がバレたみたいだし」

 

 そう言うと、「お転婆じゃありません!」とばかりにラティアスが怒って来たので、鞄の中からおやつを出して話を逸らす。

 ラティオスも流された俺の記憶から、最初に悪者にバレた原因がラティアスにあるのはわかっているようで、おやつを喜んで食べる妹を見ながら何とも言えない顔をしていた。

 

 実際、ラティオスだけなら映画の悪役達も簡単にこころのしずくの在り処に気付くことはなかったはずだ。あれ? そう考えると、ラティアスをどうにかすれば問題解決するんじゃね?

 

 どうやら同じ結論に至ったのか、ラティオスがラティアスを呼んで何やら話をしている。多分、これからは人間の姿になって外に出るなと話しているのだろう。今の人間の技術はラティ達の擬態や透明化すら見破って来る。外に出ないことが唯一の安全策でもあるのだ。

 

 しかし、自由に外を歩けないことが嫌なのか、ラティアスは盛大に駄々をこねている。

 今まではそれに根負けして自由を許していたラティオスも今回ばかりは駄目だと怒っていた。何せ、映画通りにならなくても、誰かに見付かればそれだけで危険になるのだ。俺の記憶から映画の内容を知ったラティオスにしてみれば、受け入れられるものではないだろう。

 

 とはいえ、それで納得できるのならば、今までも外に出ていない訳で。

 

 ラティアスはラティオスの注意を聞かず、「もう知らない!」とばかりに外に飛び出してしまった。おいおい、行っちまったぞ、どうすんだよ?

 

 

 




 原作との変化点。

・ジム戦での技について。
 ヘラクロスが寝ぼけて体当たりをしているが、これは技のたいあたりとは別物なので技には含んでいない。勿論、寝ぼけて技を出した場合、技使用に含む時もあるが今回は別物。


・劇場版水の都の守り神より、ニューサトシが映画を崩壊させに来た。
 時系列が合わないのと、ニューサトシの性格的にポケモンの死を認めないので、内容を崩壊させることにした。この時期に悪役が来ているかはわからないが、とりあえず事前に全て解決させるつもりである。大昔に作った欠陥兵器など怖くて使えたものではない。ポケモンが死ぬのはダメである。

・ミュウツーの力を全面的に借りた。
 普段は自重しているが、今回はラティオスを救うためにニューサトシの全てを出した。ミュウツーは地味に秘密を共有して頼ってくれたことを嬉しがっている。ニューサトシの原作知識を他人に伝えるのは賛否があると思うが、ミュウツー以外に伝えるつもりはない上、ミュウツーも原作ではサトシ君と一緒にいないので今回の件以外では大きな問題にはならないと見ている。

・ラティオス、ラティアスと仲良くなった。
 必死の説得の末、理解を示してくれた。ニューサトシ自身がこころのしずくを欲しているのではなく、ラティ達に持たせようとしたのが正解だったらしい。悪人ならそんなことせずに持って行くだけだと気づいてくれた。

・ラティアスが家出した。
 喧嘩して飛び出して行った。


 現在ゲットしたポケモン

 ピカチュウ Lv.52

 ピジョット Lv.51

 バタフリー Lv.50

 ドサイドン Lv.51

 フシギダネ Lv.50

 リザードン Lv.53

 ゼニガメ  Lv.50

 キングラー Lv.50

 カモネギ  Lv.50

 エビワラー Lv.50

 ゲンガー  Lv.50

 オコリザル Lv.50

 イーブイ  Lv.48

 ベトベトン Lv.49

 ジバコイル Lv.50

 ケンタロス Lv.49

 ヤドラン  Lv.49

 ハッサム  Lv.49

 トゲチック Lv.40

 プテラ   Lv.49

 ラプラス  Lv.49

 ミュウツー Lv.70

 バリヤード Lv.49

 イワーク(オレンジ諸島の姿) Lv.44

 カビゴン  Lv.41

 ニョロモ  Lv.38

 ヘラクロス Lv.29→31

 チコリータ Lv.27

 ヒノアラシ Lv.26



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