ニューサトシのアニポケ冒険記   作:おこむね

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#072 『わからせる前にわかるんじゃねーよ』

 12歳 λ月μ日 『よし、俺を殴れ』

 

 赤いギャラドスの人間への憎しみを解消する手段の一つとして、時間をかけて話すという意見があったが、俺はもっと手っ取り早い方法を取ることにした。

 そもそも、俺は赤いギャラドスを助けはしたものの、このまま手持ちに加えるつもりはない。いや、正確にはない訳ではないが、今回は非常事態だったからゲットしたというだけで、本人が一緒に来るのを嫌がるなら逃がすつもりということである。

 

 人間のせいで無理やりに進化させられ、苦しい思いをしたのだ。進んで人間についていくとはとても思えないしな。

 とはいえ、逃がすにしても、このままでは復讐心に駆られて人間を襲う可能性がある。そう考えると、やはり早急に赤いギャラドスの怒りを鎮める必要があった。

 

 再度、いかりのみずうみに来て、赤いギャラドスをボールから出す。ジョーイさんの言っていた通り、とても怒りを感じる。人間は敵と言わんばかりの勢いで、『みずでっぽう』を放ってきたのでそれを避けずに受け止めた。

 

 痛いが、我慢できないほどではない。

 

 俺が避けもせずに攻撃を受けたことで、ギャラドスが少し動揺したが、そのまま「好きに暴れていいぞ。人間に攻撃したかったら俺にしろ。飽きるまで暴れろ」と声をかける。

 意味不明な指示に少し困惑するも、人間への怒りがそれを上回ったようで、次は『たつまき』を撃ってきた。それも避けずに受ける。体が宙に浮きそうだったが、気合でその場に立つ。

 

 俺が倒れないのを見て、次に『りゅうのいかり』を撃ってきた。だが、それがどうしたという態度を貫き通す。

 そのまま次々と技を放ってくるが、全てをこの身一つで受け入れる。流石のニューサトシも死ぬかもと思ったが、ここで引いたら意味がないので気合で耐えていく。

 人間もそうだが、怒っている時に正論で説得した所で、簡単に怒りは静まらない。手っ取り早く落ち着かせるには、暴れるだけ暴れさせてすっきりさせてやるのが一番なのだ。

 そのまま何度も攻撃を受ける。ニューサトシの防御力でなければまず即死だが、俺はこのボディの性能を信じているし、今日ほど修行してきてよかったと思った日もなかった。

 

 しかし、気分良くギャラドスが暴れていると、急にどこからか飛んできた『れいとうビーム』で湖が凍り、怯んだギャラドスが攻撃を止めてしまう。

 

 誰だと思って振り返ると、どこかで見たことあるような気がしなくもない老人が「子供が危ない真似をしてるんじゃない!」と言って乱入してきた。

 余計な事を。中途半端に攻撃を止められてギャラドスが困り果てている。俺の計画では、このまま疲れるまで暴れたギャラドスとじっくり話し合う予定だったのだ。

 

「これは俺流のコミュニケーションだ。ポケモンと分かり合うにはそのポケモンの気持ちを理解してやらないといけない。ギャラドスの怒りを理解するにはその怒りを受け止めてやるのが一番なんだよ、邪魔すんなクソじじい」

「何がコミュニケーションだ。こんなのはただの自殺だ。ポケモンと人間が分かり合うことなど出来はしない」

「あんたが出来ないだけだろ。二流のトレーナーは黙ってろ」

「何だと小僧!」

「ポケモンと人間が分かり合えるからこそ、ポケモンバトルは出来るんだ。どちらかが一方的に使役するような関係は奴隷と同じだ。分かり合うことを否定するあんたは俺が一番嫌いなタイプのトレーナーだ。そんな奴と話すことはない。とっとと失せろ」

 

 デルビルを出して、湖の氷を解かす。

 さて、邪魔が入ったが続きをしよう。再び、ギャラドスに「どうした? お前の怒りはその程度か?」と、声をかけると、再びギャラドスが攻撃を仕掛けてきた。

 だが、また爺さんが邪魔をしようとするので、ミュウツーをけしかけて動きを封じる。そのままギャラドスの怒りを受け入れていくと、しばらくしてまたギャラドスの攻撃が止まった。どうやら、今度は本当に疲れたようだ。

 

 ギャラドスに「満足したか?」と声をかけると、どう答えたらいいか困ったように身じろいている。

 近くまで行くも、もうギャラドスは攻撃をしてこなかった。逆に怖がるような仕草を見せたので、「何もしねーよ」と言って落ち着かせる。

 

「ギャラドス。俺はお前の嫌がることをするつもりはない。もし、このまま野生に帰りたいんだったらそれでもいいと思っている」

 

 本音は連れていきたい。しかし、それがギャラドスの望みでないのなら無理強いはしたくないのだ。

 

「けど、お前はロケット団のせいで無理に進化させられ、その後遺症で体が赤くなった。色違いのポケモンは人間に狙われやすい。また危ない目に合うかもしれないし、できればこのまま一緒に連れていきたいと考えている」

 

 ギャラドスはしっかりと話を聞いていた。なので、このまま選択肢を提示する。俺と一緒に来るか、野生に帰るかだ。

 野生に返すならこんな殴られ損なことする意味ないと思う奴もいるかもしれないが、さっきも少し書いたが、むやみに逃がして人間を襲うようになってしまえば、それは誰のためにもならない。

 

 だから、全力で暴れさせたのである。

 

 ギャラドスも俺への八つ当たりで大分感情がすっきりしたはずだ。勿論、根柢の憎しみは完全に消えていないだろうが、暴れるだけ暴れた今、先程までの怒りは大分薄れてきている。少なくとも、もうむやみやたらに人間を襲うことはもうしないだろう。

 凶悪ポケモンと名高いギャラドスだが、四六時中人を襲う訳ではない。自身に危険が迫るか、縄張りに無遠慮に入りでもしない限り、基本的に人を進んで襲いはしないのだ。

 

 ただ、本音を言えば連れていきたい。

 

 ニューサトシはギャラドスが大好きなのだ。このギャラドスは本来ワタルがゲットするはずだったギャラドスだが、アニメでの所有権とか言いだせば、既にニョロモの件もあるし気にしなくてもいいだろう。基本的にゲットは早い者勝ちである。

 それに、みずタイプの中でもギャラドスはかなり強い部類に入ることもあって、ニューサトシ的にも是非パーティに加えたかった。

 

「俺と一緒に来るなら、ポケモンマスターを目指してバトルの日々だ。お前を最強のギャラドスにしてやる」

 

 そう言って、ボールを前に出す。

 

「野生に帰るなら、ここでボールは破壊してやる。それでお前は自由だ」

 

 さて、どうする? と、声をかける。

 ギャラドスは考えていた。じっくり考えていた。考えた結果、ゆっくりと顔を近づけ、おでこをボールに当てた。俺と一緒に来ることを選んでくれたのだ。

 

 ボールに戻るギャラドスに、「これからよろしくな」と声をかける。同時に、ミュウツーが捕まえていた爺さんを解放した。どうやら、ポケモンを無力化して邪魔をしないように捕まえていてくれたらしい。

 

「悪いな。雑用やらせて」

『そう思うなら、たまには活躍の場を求めたい所だ』

「えー……ちょっと前にエンテイと戦ったじゃん」

『あれから大分経つ。私もテレポートばかりでは飽きてくるというものだ』

「わーったよ。そのうちお前を使ってバトルする。ったく、相手になる奴が少ないんだからそういう我が儘は困るんだよな」

『楽しみにしている』

 

 フッと笑ってミュウツーもマスターボールに戻っていく。自由になった爺さんがこちらを睨んできたので、「どうだ? 俺とギャラドスは分かり合ったぞ」とドヤ顔で言ってやった。

 

 しかし、肉体的には限界だったので尻もちを付いてしまう。慌ててカスミさんやタケシが来て支えてくれたが、流石にギャラの攻撃をあれだけくらうと立てん。

 

「お前さんは何もわかっていない。ポケモンとトレーナーは常に一線を引かねばならん。情に流されれば、すぐに戦略を見失い、何も出来ないまま倒されるからだ」

「ハッ、笑えるくらい二流だな。ポケモンと分かり合うことと、情に流されるのは関係ない。情に流されるのはただの甘ちゃんだろ。トレーナーとして未熟なことをポケモンのせいにしてるだけだ」

「では、お前はそうではないと?」

「少なくともあんた程度のトレーナーには負けないね。何なら、今からやろうか?」

「立てもしないくせに偉そうなことを言うんじゃない。いいだろう、ワシはチョウジジムジムリーダーのヤナギだ。お前が完全に治ったら相手をしてやる。現実を教えてやろうじゃないか」

 

 あ、どこかで見たことあるなと思ったらヤナギか。しっかし、こんなに目つき悪かったっけか?

 

「俺はマサラタウンのサトシだ。明日、ジムに挑戦してやるから首洗って待っとけ」

 

 しかし、売り言葉に買い言葉とはいえ、レベリングメンバーで挑戦するつもりだったのに、これでは本気メンバーでのバトルになりそうだな。

 まぁ、仕方ないか。そのままヤナギが帰っていくのを見送ると、俺達もポケモンセンターに戻る。流石にキツいのでケガの治療をお願いすると、ジョーイさんが俺の姿を見るなり悲鳴を上げていた。どうやらかなりボロボロにされたらしい。

 

 

 

 12歳 λ月ν日 『感謝の印? ひかりの石くれ!』

 

 次の日、完治とは行かないが立って歩けるくらいには回復したので、本気メンバーと入れ替えてチョウジジムに向かおうとすると、ワタルが現れた。

 どうも、昨日俺がロケット団を殲滅したことで、奴らの企んでいたプロジェクトが滅茶苦茶になってしまったらしく、その混乱に乗じたおかげでアジトの制圧が素早く済んだから、帰る前にお礼を言いに来てくれたとのことだ。聞けば、前回のトキワの時にも様子を見に来てくれたようなのだが、俺が気絶していたので黙って去ったと言っていた。

 

 で、お礼をしたいということだったので、今一番欲しいひかりの石を要求する。流石のワタルも予想外のことで驚いていたが、トゲ様を進化させるのに必要と話すと納得したようで、伝手を使ってひかりの石をプレゼントしてくれることになった。やったぜ!

 

 今すぐは無理だが、ジョウトリーグ開催までに届けるという約束をして貰った。いいぞ、これで今大会では害悪戦法をお披露目することが出来そうだ。待っていてくれトゲ様。

 

 ルンルン気分でワタルを見送り、そのままチョウジジムに挑戦しに行くと、中にヤナギは居らず、シマ婆という元気な婆さんが、ヤナギは裏山で修行中だと教えてくれた。そのままヤナギの所まで案内してもらうと、「よう、約束通り挑戦しに来たぞ」と声をかける。

 しかし、ヤナギは「傷が完治したらと言っただろう。怪我人を相手にするつもりはない。帰れ」と一蹴。「俺はいつだってベストコンディションだぜ!」と、いうも相手にしてくれなかった。

 

 ぐぬぬ、せっかくひかりの石入手の目途が立って気分が良かったのに全部台無しだぜ。

 

 仕方ないので、暇つぶしに山の中を歩いていると、いつも通りロケット団が現れた。いい暇つぶしになりそうだと、ゴマゾウとギャラドスを出して相手をする。まさか、赤いギャラドスが出てくると思わなかったようでコジロウが驚いているが、負けじと自分のギャラドスを出してきた。

 ムサシもリングマを出して戦闘態勢に入っている。二体ともまだ若干レベルが低いが、やる気は十分なので後は俺がカバーしていこう。

 

 そのまま山の中を駆けながらバトルをしていると、ヤナギがまた乱入してきた。怪我人相手に多勢も無勢とか言って俺側に立っている。いや、別に助っ人求めてないっす。

 

 しかし、何だかんだと話しているうちに、コジロウのギャラドスの『はかいこうせん』の余波で足場が崩れ、俺とヤナギが崖下に落下してしまった。

 とりあえず、ゴマゾウとギャラドスをボールに戻し、リザードンを出して何とか落下死は防ぐ。俺はともかく、ヤナギは間違いなく死んじまうからな。

 

 すぐに上へ戻ろうとしたのだが、ふと足元でポケモンの足環らしきものを見つけた。なんぞこれと持ち上げると、ヤナギがそれを見てとても驚いた顔をしている。

 すると、ヤナギが昔話をし出した。

 まだヤナギが若かった頃、かつてはこいつもパートナーのイノムーをとても大切に可愛がっていたらしい。しかし、かつて大会でほのおポケモンの攻撃からイノムーを守り、火傷を負ってしまったヤナギを、イノムーは見捨てて出て行ったのだと言う。

 

 そして、その出て行ったイノムーのつけていたのがこの足環のようなのだが、どうも俺にはイノムーがヤナギを見捨てて逃げたようには思えなかった。

 ヤナギも、この足環を見たことで、自分が何か思い違いをしているのではないかと思ったようで、近くを少し歩くと言っている。そのまま進んでいくと、近くに洞窟らしきものがあり、中には氷漬けになったイノムーが居た。

 

 結局、イノムーはヤナギを見捨ててなどいなかったのだ。ヤナギを助けるために薬草か何かを取りに行こうとして俺達同様に崖に落ち、そのまま氷漬けになってしまったというだけのこと。

 

 自分のために何十年も氷漬けになっていたイノムーを見て、ヤナギも勘違いを悟ったようで、「すまなかった。イノムー」と涙を流している。とはいえ、このまま氷漬けのままでは再会もクソもないので、リザードンにお願いして氷を溶かしてもらった。

 イノムーは年を重ねて姿が変わって尚、ヤナギが自分のトレーナーだとわかったようで、嬉しそうに傍に寄っていく。そんなイノムーに再びヤナギは涙をこぼす。

 

「おい爺。人間とポケモンが分かり合うなんて必要ないんじゃなかったのか?」

「ふん。記憶にないの。そんな二流の言葉」

 

 全く、わからせる前にわかるんじゃねーよ。

 

 これじゃ、全力バトルをする意味がない。ヤナギにはレベリング目的のジム戦をすると言い、予定通りのメンバーで明日ジム戦をすることになった。

 

 

 

 12歳 λ月ξ日 『チョウジタウン ジム戦 VSヤナギ 前編』

 

 流石に二日も休めば体も大分回復した。マサラ人を舐めてはいけない。これくらいの傷でどうにかなるようじゃ、スーパーマサラ人は名乗れないからな。

 

 と、いう訳で、いざジム戦である。

 

 ルールは三対三、レベル制限は45。こちらのメンバーは予定通りに、デルビル、ウソッキー、金角のカイロスである。ヤナギの一体目はジュゴン、こちらは金角のカイロスを送り出した。

 珍しい部分的色違いのカイロスを見て、ヤナギも驚いたような顔をしている。だが、こいつは珍しいだけじゃないぜ。『やまあらし』を指示して、ジュゴンに攻撃を仕掛けていく。フィールドが氷の上ということもあって、移動は難しいはずだが、滑るように金角のカイロスは移動している。なかなか器用なようだ。

 

 だが、その間にジュゴンは中央のプールの中へと逃げていく。

かくとう技を警戒して、接触出来ないようにしたようだが、それで逃げられたと思うのなら甘いぞ。『いわなだれ』を指示して、プールに岩を敷き詰めていく。中が見えないので直撃しているかはわからないが、出てこないならこのまま『いわなだれ』連打で身動きを取れなくさせてやるぜ。

 

 下手に直撃すればダメージになる上、避け続けてもいずれ岩で身動きが取れなくなるとわかったようで、ヤナギも素直にジュゴンを氷のフィールドに呼び戻す。

 カイロスはむしタイプ単体なので、弱点はほのお、いわ、ひこうタイプしかない。だが、ジュゴンはその技をどれも覚えられないので有効打はない。しかし、こちらは氷タイプが弱点のいわやかくとう技で攻めることが出来るので有利だった。

 

 普通なら形勢不利と判断して戻す場面だが、ジムリーダーはポケモンの交代が出来ないのでこのままバトルするしかない。ヤナギは、タイプ一致のこおり技である『れいとうビーム』で攻撃を仕掛けてきた。

 弱点を攻められない以上、追加効果で動きを封じられるこおり技が一番有効だと判断したのだろう。実際、凍らされてはたまったものではないので、金角のカイロスに回避を指示する。

 

 長期戦になると判断したのか、ヤナギがジュゴンに『あられ』を指示した。これでこおりタイプ以外のポケモンは毎ターン1/16のダメージを受ける。攻撃を避けて隙を突くというニューサトシの基本スタイルからすると、かなり相性の悪い技だった。

 

 なら、一気に勝負を決めてやる。

 

 金角のカイロスに『やまあらし』を指示して、再び距離を詰めていく。ヤナギは冷静に『こごえるかぜ』を指示してきた。広範囲技だ、これは避けられない。おまけに追加効果で素早を一段階確定で下げてくる。ダメージを取るよりも、こちらの動きを鈍らせることにシフトしたか。

 

 しかし、それでも金角のカイロスは突っ込んだ。『やまあらし』がジュゴンに直撃し、その体を投げ飛ばす。この技は威力が60しかないが、確定で急所に当たるのだ。タイプ不一致とはいえ、これはかなりのダメージのはずである。

 

 同じ攻防は続く。ヤナギは『こごえるかぜ』を指示し、俺は『やまあらし』でダメージを稼ぎに行った。『あられ』のダメージがあるとはいえ、ダメージはこちらが有利のはずだ。このまま行けば、次の一撃でジュゴンを落とせる。そう思った瞬間、ヤナギはジュゴンを再び水中へ逃がし、『ねむる』を指示した。

 

 しまった。

 

 慌てて、金角のカイロスに『いわなだれ』を指示する。だが、先ほど言った通りプールに岩を敷き詰めても直撃を取れているかわからない。いや、仮に当たってもタイプ不一致威力75の技ではダメージを与えるよりも回復される方が早かった。

 おまけに金角のカイロスは『こごえるかぜ』でスピードを下げられているせいで、攻撃も先程よりゆっくりだ。それでも『いわなだれ』を連打するが、どうもダメージは与えられなかったようで眠りから覚めて全快したジュゴンが水中から飛び出してきた。

 

「やってくれるな、爺」

「なに、二流の技よ。お前さんなら簡単に突破できよう?」

 

 目算でこちらの体力はおおよそ1/3くらいだ。おまけに、止みそうだった『あられ』を再びジュゴンに使わせているため、何もしなくても金角のカイロスはいずれ戦闘不能にされる。

 それに加えて、素早を下げられていて動きも鈍いとなると、ここは一旦金角のカイロスを戻すのが賢明だろう。まだ活躍の場はあるので、ここで倒れられても困るしな。

 

 金角のカイロスをボールに戻す。ヤナギが「流石に、ここで突っ張るようなことはせんか……」と笑みを浮かべた。

 

 次に出すのはウソッキーだ。みずタイプを持っているジュゴンに、いわタイプのウソッキーを出すのは本来ならば悪手だが、今回に限って言えば問題ない。

 ヤナギは既にジュゴンの技を全て使いきっている。『あられ』、『れいとうビーム』、『こごえるかぜ』、『ねむる』、その中にみず技はない上、ウソッキーはいわ単タイプなのでこおりタイプは弱点ではない。おまけに、こちらはこおりの弱点であるいわ技がタイプ一致で使えた。

 

 まずは挨拶代わりに『がんせきふうじ』を指示する。ヤナギも『れいとうビーム』で相殺してきた。流石に直撃を受けたらまずいとわかっているようだ。

 

 こちらもそう簡単に直撃するとは思っていなかったので、今度は『いわなだれ』で範囲攻撃を仕掛けていく。これを防ぐ手立てはないようで、ヤナギも舌打ちしながら『れいとうビーム』を撃ってきた。

 

 ワンチャン、凍れば何とかなると思ったのだろうが、一割の追加効果など早々に引きはしない。こちらに『れいとうビーム』が命中すると、『いわなだれ』もジュゴンに直撃して相手にダメージを与える。同時に、ウソッキーを突っ込ませた。

 

 こいつも氷のフィールドでのバトルは初めてだが、金角のカイロスと同様に、氷の上を滑るように移動している。

基本的に、こいつはワニノコと一緒で、踊るのが好きなタイプだ。割と器用なのもあって、フィギアスケートでもしているのかと思うくらい優雅に氷の上を滑っていく。滑りだけなら金角のカイロスより上手い件。

 

 ヤナギもまたジュゴンを移動させた。当然、こおりタイプであるジュゴンは氷の上を移動するのを得意としている。お互いに氷の上を滑りながら、相手に攻撃を仕掛けていく。

 こちらのメインウエポンは、『がんせきふうじ』、ヤナギは『れいとうビーム』である。範囲攻撃技や大技は足を止めて打つのが基本なのでこうした移動中での打ち合いには向かない。しかし、ふうじもれいビも移動しながらだと的が絞れず、なかなか直撃させることが出来なかった。

 

 だが、それでいい。こちらの目的は距離を詰めることであって、技を当てることではないのだ。

 ウソッキーも理解しているようで、タイミングを計っている。そして、ヤナギがまた『れいとうビーム』を指示した瞬間、『ふいうち』を指示して近距離戦闘を仕掛けた。

 

 ウソッキーの拳がジュゴンの顔面に命中し、顔が跳ね上げられたジュゴンの『れいとうビーム』は明後日の方向に飛んでいく。悪いな、ヤナギ。俺のウソッキーは踊るのも好きだが、割と武闘派なんだわ。

 

 完全なる『ふいうち』でジュゴンの態勢が崩れる中、追撃の『もろはのずつき』を指示する。この技は与えたダメージの半分が自分に返って来るが、威力が150といういわ技の中でも最高峰の威力を持っているのだ。

 いくらジュゴンが『ねむる』で体力を回復させていたとはいえ、『ふいうち』のダメージに加え、弱点、タイプ一致の大技を受けて立っていられるはずがなく、そのまま戦闘不能になる。

 

「まさか、高速戦闘に見せた格闘戦とは……してやられたわ」

「さっきのお返しだ」

 

 しかし、ウソッキーも大ダメージを受けた。

 見た感じ、残り体力は金角と同じ1/3くらいか。数の上では有利を取ったが、ダメージレースでは負けているな。さて、この狸爺がこのまま素直にやられてくれるかどうか、面白くなってきたぜ。

 

 

 

 




 原作との変化点。

・第236話『赤いギャラドスの怒り!』より、ニューサトシがロケット団を壊滅させたため内容がカットされた。
 アニメでは前話で捕まるが、ニューサトシが全力で滅ぼしたため内容がカットされた。

・赤いギャラドスの怒りを沈めた。
 逃がすにしろ、仲間にするにしろ、このままではいけないので、自由に暴れさせてすっきりさせた。途中、騒ぎに気付いたヤナギが善意で助けてくれようとしたが余計なお世話と反発した。価値観が真逆なのでとても相性が悪かった。

・赤いギャラドスをゲットした。
 本来ならワタルがゲットするものだが、結果的にかっさらう形になった。しかし、元は助けるのを前提としてのゲットであり、最終的には自分のためにボロボロになってくれたニューサトシの男気にギャラドスが惚れた形。

・第237話『イノムーと冬のヤナギ!』より、何だかんだニューサトシとヤナギが分かり合った。
 わからせる前にわかられた。しかし、最初の出会いがいがみ合いだったため、ニューサトシも今更な気がしてヤナギに敬語は使わなかった。ヤナギも気にしていない。気の強い孫みたいな印象を持っている。

・第238話『チョウジジム! 氷のバトル!!』より、レベリング目的のジム戦を行った。
 とはいえ、もう上限45なので結構上のレベル。ジョウトのジム戦も終盤である。


 現在ゲットしたポケモン

 ピカチュウ Lv.55

 ピジョット Lv.51

 バタフリー Lv.51

 ドサイドン Lv.54

 フシギダネ Lv.51

 リザードン Lv.57

 ゼニガメ  Lv.51

 キングラー Lv.52

 カモネギ  Lv.51

 エビワラー Lv.51

 ゲンガー  Lv.52

 オコリザル Lv.51

 イーブイ  Lv.50

 ベトベトン Lv.50

 ジバコイル Lv.51

 ケンタロス Lv.51

 ヤドラン  Lv.51

 ハッサム  Lv.50

 トゲチック Lv.44

 プテラ   Lv.51

 ラプラス  Lv.51

 ミュウツー Lv.71

 バリヤード Lv.51

 イワーク(オレンジ諸島の姿) Lv.46

 カビゴン  Lv.45

 ニョロゾ  Lv.44

 ヘラクロス Lv.41

 ベイリーフ Lv.41

 マグマラシ Lv.41

 ラティアス Lv.30

 デルビル  Lv.41

 ワニノコ  Lv.41

 ヨルノズク(色違い) Lv.41

 カイロス(部分色違い) Lv.41

 ウソッキー Lv.41

 バンギラス Lv.55

 ゴマゾウ  Lv.15→17

 ギャラドス(色違い) Lv.20→22



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