12歳 λ月ξ日 『チョウジタウン ジム戦 VSヤナギ 後編』
ヤナギがジュゴンを戻すと、次にニューラを出してきた。ニューラはあく・こおりタイプだ。かくとう四倍、いわ二倍、ほのお二倍、むし二倍と、今日連れてきたメンバーなら全員有利が取れる。
ただ、スピードが速く、攻撃がそこそこ強いので油断すると、体力の少ないウソッキーと金角はすぐに戦闘不能にされる可能性があった。
最後の一体が、もしイノムーだった場合、まだウソッキーは残しておきたいので、ここは一旦ウソッキーを戻して休ませる。出すのはデルビルだ。
デルビルもしばらくオーキド研究所で先輩達に揉まれたようで、少し逞しくなっている。体中傷だらけのデルビルを見て一瞬、顔に皺を寄せたヤナギだが、デルビルの俺への態度を見てすぐに表情を戻した。別に虐待してねーよ。
先手必勝で、『かえんほうしゃ』を指示する。ヤナギは『こうそくいどう』を指示して、こちらの攻撃を回避してきた。元々早いニューラだが、さらに動きが早くなっている。おまけに、氷の上を気にした様子もなく走り回っており、姿を捉えきれない。
止まっていたら的になるので、デルビルにも動いてかく乱させる。しかし、氷の上だと上手く動けないようで、いつもより動きが鈍い。うーむ、こいつは足場に弱いタイプだったか。
しかし、これに関しては慣れてもらうしかない。金角のカイロスやウソッキーくらい器用ならすぐに慣れるだろうが、滑る感覚というのは難しいからなぁ。
こちらがまごまごしているのを見て、ヤナギが『かわらわり』を指示してきた。デルビルはあくタイプも持っているので、かくとう技は弱点だ。咄嗟に『ニトロチャージ』を指示し、スピードを無理矢理上げることで変速を起こさせて何とか攻撃を回避する。
とはいえ、これも一時的な対処に過ぎない。どうにか、デルビルに氷の上で動いてもらわないとただの的にされる。だが、そんな簡単に滑れるようになるなら、世の中はスケートの達人で溢れているだろう。
こうなれば、足を止めてバチバチのインファイトに持ち込むしかない。攻撃が当たれば、いくらニューラでも足は止まる。そこを狙い撃つ。
相手の『かわらわり』に対し、こちらも『ほのおのキバ』で反撃していく。しかし、ヤナギもこちらが相打ち作戦を狙っているのをすぐに読んだようで、一旦ニューラをデルビルから距離を取らせた。
遠距離戦に切り替える気か?
「ニューラ、『いやなおと』だ」
そう来たか。『いやなおと』は物理防御を二段階下げる技だ。遠距離戦だと『かえんほうしゃ』によるワンチャンがある。ならば、威力の低い『ほのおのキバ』を受けた方がまだリスクがないと考えたのだろう。その上で、確定で勝ちを拾うために、こちらの防御を下げてきやがった。
「『ちょうはつ』」
技を全て使ってしまうが、これ以上防御を下げられる訳にもいかないので、変化技を封じていく。
しかし、最初の一回が通れば十分とばかりに、ヤナギは再び『かわらわり』を指示してきた。
こちらも『ほのおのキバ』で反撃する。ここで『かえんほうしゃ』を使っても、ニューラに避けられるだけだ。攻撃を受けた上で、相手に攻撃を当てる相打ち戦術だからこそダメージを取れている。
だが、ダメージレースは圧倒的に不利だ。この状況を立て直すには、運を味方にする以外にない。
そうして三度、『かわらわり』と『ほのおのキバ』が交差した時、それは起きた。一割の確率で発生する追加効果、火傷を引いたのだ。三回で引けたのは運が良かったな。
火傷状態になると、攻撃力が下がる。
それを見て、このまま続けても不利になると判断したのか、ヤナギは素直にニューラを下げた。ダメージはこちらの方が受けているが、これで近距離戦は制したと言っていい。遠距離戦に持ち込めばまだチャンスはある。
「こうなれば仕方ない。私のニューラはあまり特殊攻撃を得意としてはいないが……『なみのり』だ」
みず技だと!?
確かに、ニューラも覚えられはする。しかし、ここで『なみのり』かよ。ニューラで特殊技とか想定外にもほどがあるっての。
「飛べ! デルビル!」
その場から跳躍させ、『なみのり』を回避する。そのまま追撃の『かえんほうしゃ』をお見舞いし、ニューラを戦闘不能まで持って行く。
「ならばこちらも飛べ! ニューラ!」
しかし、『かえんほうしゃ』が当たる直前、ニューラが『なみのり』状態から跳躍し、デルビルの頭を取る。そのまま『かわらわり』でデルビルを氷の上に叩きつけた。
火傷で攻撃力が下がっているとはいえ、上空から地面に叩きつけられたのはダメージが大きく、デルビルが倒れて目を回している。戦闘不能状態なのは一目瞭然だった。
デルビルをボールに戻す。これで数は互角だが、ダメージレースは不利。だが、デルビルはいい仕事をしてくれた。
ニューラは技を全て使いきった上、攻撃技の『かわらわり』は火傷で威力低下中、『なみのり』は弱点技ならまだしも等倍なら大した脅威にはならない。
当然、こちらは金角のカイロスを出した。ウソッキーでは『なみのり』でワンチャンが起きる可能性がある以上、当然の選択と言っていいだろう。
ヤナギは『いやなおと』を指示した。『ちょうはつ』は解除されたし、少しでもダメージを与えようという狙いだろうが、そんなの関係ないとばかりに金角のカイロスがニューラに向けて直進していく。
そのまま金角のカイロスに『シザークロス』を指示する。対するヤナギは『かわらわり』を指示したが、むしタイプの金角のカイロスにかくとう技は今一つだ。いくら『いやなおと』で防御を下げているとはいえ、火傷状態で効果今一つの技など脅威になり得ない。
自慢のツノでニューラを捉える。当然、耐えられるはずがなく、ニューラは一撃で戦闘不能になった。
これで、二対一だ。とはいえ、こちらはジュゴンとのバトルで二体ともダメージをかなり受けている。最後の一体が何であれ、油断するとすぐに倒されそうだった。
ヤナギがニューラをボールに戻す。こちらも『いやなおと』の効果を消すために一度金角のカイロスをボールに戻した。
「ふっ、追い詰められたな。だが、ここからが本番だ。いけ、イノムー!」
やはり、イノムーか。
「昨日、氷から戻ったばかりのイノムーをバトルに出すのかよ」
「ポケモンセンターでの検診でも問題ないとのことだ。むしろ、久しぶりのバトルに興奮しているよ」
そうかい。ならば、こちらはウソッキーを出す。ウソッキーはジュゴンとのバトルで技を全て使ってしまっているが、こおり・じめんタイプのイノムーにいわ技は等倍だ。じめん技が少し怖いが、十分に立ち回れるだろう。
挨拶代わりに『がんせきふうじ』をお見舞いする。対するヤナギは『ストーンエッジ』を指示してきた。向こうの方が威力が高いとはいえ、こちらはタイプ一致だ。何とかごり押しで向こうのエッジを相殺させている。
いわ技で返してきたのは、おそらく金角のカイロスへのけん制も兼ねてのことだろう。むしタイプはいわ技に弱い。向こうは有効打を持っているぞとアピールしてきたのだ。
続けて、ヤナギが『じしん』を指示してきたので、こちらも『ふいうち』で距離を詰めていく。イノムーの頭を殴り、そのままの勢いで自身を宙へ浮かせることで『じしん』を回避した。
だが、回避されるのは計算内だったようで、『つららおとし』を指示している。空中にいるウソッキーにそれをかわすすべはなく、つららが直撃して地面に叩き落された。
ウソッキーが体勢を立て直そうとするよりも先に、ヤナギが追撃の『じしん』を指示してくる。今のウソッキーの体勢だと、『ふいうち』は無理だ。つまり、回避は不可能。ならば、迎撃しかない。『がんせきふうじ』を指示してワンチャンに賭けた。
先に『じしん』が放たれ、少し遅れてウソッキーが『がんせきふうじ』を撃つ。『じしん』の衝撃でウソッキーは戦闘不能になったが、イノムーにも『がんせきふうじ』が当たってダメージを与えている。勝負はまだまだこれからだ。
ウソッキーを戻し、最後の金角のカイロスを出す。残り体力的に、エッジが直撃すれば終わりだろう。対するイノムーはダメージこそあるが、まだまだ余裕がある。弱点の技を受けたとしても、二、三発は耐えられるはずだ。
ただ、向こうはウソッキーとのバトルで、『ストーンエッジ』、『じしん』、『つららおとし』の三つを使っている。どれも大技だが、接近戦に持ち込めばまだまだ勝負はわからなかった。
バトル開始と同時に、金角のカイロスがイノムーとの距離を詰めに行く。しかし、ヤナギもそうはさせるかとばかりに、『ストーンエッジ』を撃ってきた。回避を優先すれば、距離は詰められない。一撃を覚悟して突っ込むには残り体力が少し怪しかった。
だが、『ストーンエッジ』は威力こそ高いが命中率が若干低い技だ。隙を縫って、金角のカイロスが少しずつイノムーとの距離を詰めていく。ヤナギもエッジで動きを止め続けるのは無理だと判断したのか、『つららおとし』に技を切り替え、壁を作るように金角のカイロスの動きを封じてきた。
待っていたぞ。技を変えるのを。
金角のカイロスに、『シザークロス』を指示し、つららを破壊する。大きな岩は厳しいが氷柱くらいの氷なら、自慢のツノで十分破壊することが出来た。そのまま一気に距離を詰め、『やまあらし』をお見舞いする。
倒れるイノムー。この距離ではもう三つの技は使えないだろう。続けて『シザークロス』でダメージを与えていく。しかし、ヤナギは最後の一つの技として、『あばれる』を指示してきた。
高威力のターン技だ。全てを受けたら金角のカイロスでも耐えられない。こちらも最後の一つの技として『ばかぢから』を指示した。攻撃後、攻撃と防御が一段階下がるデメリットがあるが、威力が120もあるかくとうタイプの大技だ。この一撃に全てをかける!
暴れ回るイノムーを捕まえるように金角のカイロスがハサミでその体を挟む。だが、苦しみながらも、イノムーは暴れ続けた。共にダメージを受けている。こうなれば、先に倒れた方が負けの我慢合戦だ。ヤナギも手に汗握ってイノムーを応援している。
爺――確か、勝敗を分けるのはトレーナーの冷静な判断力だったな。今、それを見せてやる。
金角のカイロスに『ばかぢから』のパワーを維持したまま、『やまあらし』を使うように指示し、イノムーを投げ飛ばす。
重量のあるイノムーを持ち上げるのはかなり難しい。実際、最初の『やまあらし』は投げるというよりも転ばせる感じだったが、今回は理屈抜きでイノムーの体を持ち上げて地面に叩きつけた。
まさか、そんなトンデモ技を使うと思わなかったのか、ヤナギも言葉を失っている。正直、『ばかぢから』を使っていなければイノムーを持ち上げることは出来なかっただろう。しかし、その甲斐あって、イノムーは戦闘不能になり、目を回して倒れていた。
「技から技への派生。これを最初から狙っていたのか?」
「まさか、今思いついたんだよ」
「くっ、全く恐れ入る。思いつきに負けたか」
だが、それでも勝ちは勝ちだ。ヤナギも文句はないようで、素直にチョウジジムを制した証であるアイスバッジを渡してくる。
倒れたイノムーに語り掛ける姿は、つい先日までポケモンと人間は分かり合うことなど出来ないと言っていた人物とは思えないくらい優しい。俺のイメージのヤナギはこんな人物だった。
最初が喧嘩腰だったせいで、もう態度を変える気にはならないが、向こうも特に気にしていないみたいだしいいだろう。「じゃあな、爺!」と捨て台詞を吐いて、チョウジタウンを後にする。すると、「ポケモンリーグを楽しみにしているぞ」と素直な返事が返ってきた。
12歳 λ月ο日 『お、喧嘩だ』
最後のジムがあるフスベを目指していると、何やら傷を負ったナゾノクサを数体見つけた。
事情を聞いてみると、どうもこの辺りの草原ではラフレシアとキレイハナが縄張り争いをしているらしい。縄張り争いは野生の常とはいえ、下のナゾノクサ達は毎日毎日飽きずに喧嘩を続けているラフレシアやキレイハナに困り果てているという。
可哀想なのでどうにかしてやりたいが、一体のポケモンならともかく、何体ものラフレシアやキレイハナを説得して回るのは現実的ではない。
ここは一つ、共通の敵に対して団結してもらうことにした。自分達だけでは敵わない敵が現れればラフレシアもキレイハナも喧嘩所ではなくなるだろう。
オーキド研究所に連絡を取り、やられ役を募集してみると、乗り気だったのはゲンガーとプテラだった。ゲンガーはバトルも好きだが、こういうイタズラも好きなようで、プテラは単純に暴れたいようだ。最終的には適度に負けてくれよと頼んであるが、調子に乗ってやばそうな時はピカ様にお願いして成敗してもらおう。
ゲンガーとプテラが縄張りで大暴れを始めると、ラフレシアやキレイハナが出てきて勝負を挑んでいる。しかし、俺のゲンガーとプテラが野生のラフレシアやキレイハナの五体、十体に負けるはずがなく、次々とKOされていく。
予想通り、お調子に乗っているようで、やられるそぶりが欠片も見られなかった。さて、このままでは壊滅してしまうな。そろそろテコ入れしないと駄目か?
と、思っていると、ナゾノクサが集まって、倒れているラフレシアやキレイハナに説教をしている。
聞けば、『こんなに大変な時に喧嘩してどうするんだ。今こそ力を合わせる時だ』と言っていた。どうやら、俺の話を聞いていたナゾノクサ達が気を利かせてくれたらしい。ポケモン達の気がそれているうちに、二体に接触し、「お前ら、そろそろ負けろよ」と注意をする。
そういえば、最後は負けるんだったなというような顔をする二体に、「よろしく頼むぞ」と話すと、ラフレシアとキレイハナの協力『ソーラービーム』をワザとくらって草原から逃げて行った。
団結したことでわだかまりもなくなったのか、ラフレシアとキレイハナが握手をして仲直りしている。
これでもう心配はいらないだろう。隠れていたゲンガーとプテラを回収して、またフスベに向かって旅を続けることにした。
原作との変化点。
・イノムーはレベル制限を受けていない。
ヤナギがまだ若い頃に長年氷漬けにされたため、レベル自体がまだ45に達していないという設定。なので、今回のジム戦では制限なしで戦った。とはいえ、十分な強さを持っていた。
・第239話『キレイハナVSラフレシア! 草原の平和!』より、ラブリーでもチャーミーでもない仇役を買って出た。
アニメではロケット団を一丸となって撃退することで仲良くなるのだが、何故かロケット団がいなかったので、代わりをゲンガーとプテラにお任せした。今まで結構暇だったようでお調子に乗って壊滅する寸前だったが、最終的にはうわーやられたーというような感じで逃げてきてくれた。
現在ゲットしたポケモン
ピカチュウ Lv.55
ピジョット Lv.51→52
バタフリー Lv.51→52
ドサイドン Lv.54
フシギダネ Lv.51
リザードン Lv.57
ゼニガメ Lv.51
キングラー Lv.52
カモネギ Lv.51
エビワラー Lv.51
ゲンガー Lv.52→53
オコリザル Lv.51
イーブイ Lv.50
ベトベトン Lv.50
ジバコイル Lv.51
ケンタロス Lv.51
ヤドラン Lv.51
ハッサム Lv.50
トゲチック Lv.44
プテラ Lv.51→52
ラプラス Lv.51
ミュウツー Lv.71
バリヤード Lv.51
イワーク(オレンジ諸島の姿) Lv.46
カビゴン Lv.45
ニョロゾ Lv.44
ヘラクロス Lv.41→42
ベイリーフ Lv.41→42
マグマラシ Lv.41→42
ラティアス Lv.30
デルビル Lv.41→42
ワニノコ Lv.41→42
ヨルノズク(色違い) Lv.41→42
カイロス(部分色違い) Lv.41→42
ウソッキー Lv.41→42
バンギラス Lv.55
ゴマゾウ Lv.17→18
ギャラドス(色違い) Lv.22→23