ニューサトシのアニポケ冒険記   作:おこむね

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#088 『シンクロするのを拒否された』

 12歳 μ月υ日 『決勝リーグ 一回戦 VSハヅキ 後編』

 

 インターバルが終わり、試合が再開する。

 こちらの予想通り、ハヅキはヘルガーを出してきたのでこちらはリザードンを出した。相性的な問題で、クリスタルのイワークやメガニウムではほのおタイプは少し辛い。下手に数を減らしてもいいことがないし、ここまで来たらもう温存などと言っている場合ではないだろう。

 

 ハヅキが『とおぼえ』で、ヘルガーの攻撃を一段階上げると、『かみなりのキバ』を指示して突撃してくる。

 なかなかの速さだ。それに走り方も良い。あれだけジグザグに動き回られると、遠距離からの攻撃は的を絞れない。俺のデルビルも進化したらこれくらいの動きをしてもらいたいものだ。

 

 と、思いながら突っ込んできたヘルガーの首を掴んで地面に叩きつける。そのまま『じしん』を指示して、ヘルガーの上から直に振動のダメージを与えて戦闘不能に持って行った。

 

 歓声が一瞬止まる。どうやら、まさか一瞬で決着がつくとは思わなかったようだが、ヘルガーはキングラーとのバトルでダメージを受けていたし、こちらはこちらで『じしん』のダメージが一番でかいゼロ距離でくらわせたのだ。

 ほのおタイプも持つヘルガーは当然じめんタイプの技が弱点だし、いくらタイプ不一致とはいえ、体力の削られた状態で高威力の技を無防備にくらえば戦闘不能にもなるだろう。

 

 ハヅキもこれには動揺したようだが、すぐにヘルガーを戻す。それと同時に現実を受け入れた観客が一際大きな歓声をこちらに送ってきた。大変気分がいい。

 

 ハヅキが五体目として、スリーパーを出してきた。こちらは一旦、リザードンを戻してメガニウムを送り出す。

 インターバルの間に、メガニウムの張った壁は消えているし、ここは一旦壁の張り直しだ。『ひかりのかべ』を指示して、防御を整える。

 

 しかし、ハヅキも同じ手は何度も効かないとばかりに『ちょうはつ』を使ってきた。『ひかりのかべ』はギリギリで間に合ったが、これで『のしかかり』以外の全ての技が封じられてしまったということだ。

 流石に不利なので、メガニウムを一旦戻してクリスタルのイワークを出す。どうやらハヅキはインターバルの間にクリスタルのイワークについて考察していたようで、「君のイワークは通常のイワークとタイプが違う! だからこそ弱点も違うんだ! ヘルガーに対して出してこなかった所から、おそらくはこおりタイプ! ほのお・いわ・かくとう・はがね辺りが弱点と見た!」と言い放ってきた。

 

 完全ではないが当たりである。特に後ろ二つは四倍弱点なので受けたらひとたまりもない。

 

 ならばと、ハヅキが『かわらわり』を指示する。『かわらわり』は追加効果に壁系の効果を受けずに、破壊するというものがある。メガニウムの張った『ひかりのかべ』を破壊しつつ、弱点を攻めてくるつもりなのだろう。

 

 素直に受ければ大ダメージ必至なので、『アイアンテール』で迎え撃つ。タイプ不一致技だが、威力が100あるので割といい勝負になるはずだ。こちらの攻撃力がポッポのままなのが少し不安な点だが、向こうもタイプ不一致技ということで上手く威力を受け流せている。

 正直、物理よりも特殊の方が辛い――と考えていると、それがフラグになったようで、『サイコキネシス』を指示してきた。

 

 弱点ではないとはいえ、タイプ一致のエスパー技はきつい。『ひかりのかべ』も『かわらわり』で消えているので、直撃すれば大ダメージは必至である。

 まともに受ける訳にはいかないということで『まもる』で何とか攻撃を凌ぐ。それを見て、真正面からは無理と判断したハヅキは『テレポート』でスリーパーをイワークの背中に移動させてきた。

 くそ、ジムリーダー達のエキシビションマッチのせいで、エスパー技を悪用する奴が増えた。特に『テレポート』をバトルに絡められるのはとてつもなく面倒くさいぞ。

 

 おまけに、その位置では『アイアンテール』も迂闊に打てない。だが、無防備な背中に『かわらわり』をくらえばその瞬間にゲームエンドだ。

 こうなれば死なばもろともである。『がんせきふうじ』を指示して、自分を巻きこむように攻撃を仕掛けていく。

 不幸中の幸いだが、自分で自分の弱点を攻撃することで、特性が発動して火力が一段階ずつ上がって行った。これにより、スリーパーに与えるダメージも必然的に増える。

 

 ハヅキもまさかこんな自爆技を仕掛けてくると思わなかったようで、すぐに『テレポート』でスリーパーを離脱させようとした。しかし、岩によってダメージを受けているスリーパーは集中ができず、『テレポート』を使用できずにいる。

 

 確かに『テレポート』による空間攻撃は強力だ。

 だが、空間を移動するには座標の確認などが必要で、慣れていないとエスパータイプですら咄嗟に転移できないというデメリットもある。現に今もダメージのせいで集中が出来ず、スリーパーは技を発動させることが出来ていなかった。

 付け焼刃の攻撃には限界があるということだ。

 とはいえ、こちらも自傷攻撃で誤魔化しているだけに過ぎない。ダメージで言えばスリーパーより多いし、このまま続ければ先に戦闘不能になるだろう。

 

 技の終わりにスリーパーが『テレポート』で再び距離を取っていく。ダメージを与えはしたが致命傷という訳ではない。さて、どうやって倒したものかな。

 

 一度痛い目を見たし、もう『テレポート』による攻撃はしてこないだろう。と、すると、遠距離での攻撃の撃ち合いか、近距離での殴り合い――と、思考を働かせていると、再びハヅキが『テレポート』を指示してきた。

 マジか。即座に『がんせきふうじ』を指示するも、スリーパーは背中にいなかった。どこに消えた。辺りを見渡すも姿はない。前後左右にいないということは――

 

「上だ!」

 

 クリスタルのイワークが俺の声に反応して上に攻撃を向けるが、気付くのが少し遅かった。

 上空から勢いをつけた『かわらわり』が振り落とされ、クリスタルのイワークが戦闘不能になる。『がんせきふうじ』を展開したせいで、『まもる』が間に合わなかったな。

 

 一度失敗した技は使ってこないだろうという、こちらの考えの裏を突いてきた訳だ。

 

 クリスタルのイワークをボールに戻す。これで残りは二体だが、スリーパーは『ちょうはつ』を使っているのでメガニウムだと不利だ。実質、リザードン一択である。

 まぁ、メガニウムを捨て石に使ってスリーパーの体力を減らす作戦も無しではないが、それよりも万が一リザードンがバシャーモに倒された時の保険として残しておいた方がいいだろう。

 

 こちらがリザードンを出すと、逆にハヅキはスリーパーを留まらせる判断をした。おそらく、バシャーモで二体抜きするつもりで、スリーパーには少しでもリザードンを削ってほしいと考えているのだろう。

 とはいえ、ハヅキも『ちょうはつ』、『かわらわり』、『サイコキネシス』、『テレポート』の構成では、リザードンに対しての有効打は『サイコキネシス』くらいしかない。少しでもダメージや技を引き出せれば御の字という考えだろう。

 

 こちらも出来ればスリーパーにあまり長い時間をかけたくはなかった。このまま一気に勝負を決めてやる。

 

 リザードンに『じしん』を指示すると、スリーパーは『サイコキネシス』で動きを封じてきた。

 攻撃直前でリザードンの動きが一瞬止まる。が、ダメージを無視するかのように、足を振り切って『じしん』を発動させた。

 咄嗟にスリーパーが『テレポート』で上空に逃げていく。だが、空はリザードンのテリトリーだ。上空へ向かって追撃する。

 

 こちらも出来れば『じしん』だけでケリをつけたかったが、空中で『じしん』は使えない。ハヅキの狙い通りに動くのは癪だが、『エアスラッシュ』で攻撃を仕掛けていくしかなかった。

 

 スリーパーは『テレポート』を連打して攻撃をかわしていくが、ただでさえ『テレポート』は神経を使う技だ。短時間での連打は精神的なスタミナを消耗していく。

 当然、集中が切れれば技は不発となり、すぐにリザードンがスリーパーを捉えた。『エアスラッシュ』が真っすぐスリーパーに向かっていくのを、ハヅキは『サイコキネシス』で迎撃させようとする。

 

 しかし、集中が切れていることもあって、技が間に合わなかった。『エアスラッシュ』の直撃でスリーパーが地面に落下していく。

 そのまま落ちていくスリーパーに、リザードンもまた容赦なく追撃を仕掛けた。ヘルガーの時同様に、地面に叩きつけられたスリーパーを踏みつぶすように、ゼロ距離で『じしん』を発動する。

 スタミナを使い切って疲れ果てているスリーパーに耐えるすべはなく戦闘不能になった。

 

 これでハヅキは残り一体。スリーパーを戻すと、切り札のバシャーモを出してくる。ホウエン地方のポケモンが出てきたことで観客の声援がハヅキに飛んだ。

 しかし、今は相手の声援を気にしている場合ではない。が、許せん。俺のリザードンでボコボコにしてやる。

 

 とりあえず、夢特性の『かそく』ではないと思うが、ハヅキのパートナーと考えると油断は出来ない。

 ハヅキは開幕に『ストーンエッジ』を指示してきた。リザードンが四倍弱点のいわ技だ。こちらに少しでもプレッシャー与えようということだろう。

 

 もう終盤だし、きずなリザードンになって一気に勝負を付けよう――と思ったのだが、何故かリザードンと気持ちがシンクロしない。

 一瞬、動揺したが、そのまま攻撃に当たる訳にはいかないので、リザードンを空中へ避難させる。ただ、攻撃を考えて高度を抑えめにしていたこともあり、ハヅキは追撃に『ブレイククロー』を指示してきた。

 威力は75しかないノーマル技だが、当たると五割の確率で相手の防御を一段階下げる技だ。五割はほぼ十割と変わらないので、こちらも『ドラゴンクロー』で応戦していく。

 

 互いに拳を連打する。

 

 俺のリザードンはこれまでの経験で殴り合いをしすぎた結果、特殊よりも物理の方が得意になりつつある。本来、かくとうタイプを持つバシャーモの方が接近戦は有利なのだろうが、何故かほぼ互角の戦いを繰り広げていた。

 

 それを見たハヅキが、仕方ないとばかりに『ブレイズキック』を指示する。手だけの攻撃に足が追加され、流石のリザードンも捌くのが難しくなってきた。

 この『ブレイズキック』はタイプ一致のほのおの物理技で、威力は85だが追加効果に急所に当たりやすい効果と、一割の確率で相手を火傷にするというものがある。ほのお技はリザードンに半減だが、急所に当たれば話は別だ。

 

 どちらも受けたら痛い。

 

 ここは一旦離脱ということで、タイミングよく後退しようとしたが、後ろに下がろうとしたタイミングを読まれたらしく、下がった瞬間に『ブレイズキック』が直撃した。

 おまけに急所に入ったようで、半減しているとはいえ想定よりもリザードンのダメージが大きい。そういう技だから仕方ないと言えば仕方ないが、やられたままなのは気が済まないので『じしん』で反撃する。

 

 弱点のじめん技だ。発動には力のいる大技なので高速戦闘中には使えなかったが、距離を取った今ならその力を十分に活用できる。

 ハヅキも直撃を受けないためにバシャーモを大ジャンプさせて回避しようとしたが、空中で動けないバシャーモは格好の的だ。着地前に『エアスラッシュ』でバシャーモにダメージを与えていく。

 

 だが、バシャーモもすぐに起き上がった。

 

 ハヅキも、やはり距離を開けてはダメだと判断したようで、『ビルドアップ』を指示して攻撃と防御を一段階上げ、再びバシャーモをリザードンへ突っ込ませていく。当然、こちらはその前に『じしん』を撃ったが、今度は避けずに『ストーンエッジ』を撃ってきた。

 こちらの『じしん』が当たると同時に、『ストーンエッジ』がリザードンに当たる。流石に四倍弱点はダメージが大きいようで、一瞬リザードンの表情が歪んだ。

 

 向こうは『ビルドアップ』で防御を上げていたこともあって、次の動き出しが早く、リザードンが体勢を立て直す前に距離を詰めてきた。

 再び近距離戦になるが、こちらもやられたままでいるつもりはない。何故か気持ちはシンクロしないが、それならそれで戦いようはある。

 

 向こうが『ブレイズキック』で仕掛けてくるのに対し、こちらはリザードンに、『メガトンキック』を指示した。

 

 こちらにだって足技はあるのだということを教えてやれ。相手の『ブレイズキック』に合わせて威力120の大技で対抗していく。

 まさかリザードンに足技があるとは思っていなかったようで、こちらの『メガトンキック』が奇麗にバシャーモに当たる。体勢が崩れた所に『ドラゴンクロー』の追撃を入れ、倒れた所をそのまま『じしん』で一気に戦闘不能まで持って行った。

 

 いくら『ビルドアップ』で耐久を上げていても、これだけ技の連打を受けては立てはしないようで、倒れたまま動かない。

 審判によって、ハヅキのポケモンが全て戦闘不能の判定が下ると、俺の勝利が決まった。ハヅキも「まさか、蹴りでバシャーモを攻略してくるとはね……」と頭を抱えている。

 悪いな。ニューサトシは意外と負けず嫌いなんだ。

 相手が絶対の自信を持っている技を真正面から潰せば相手は動揺して隙が出来る。実際に最後のバシャーモにこちらの連打が入ったのは、その動揺による所がかなり大きかった。

 

 それにしても、勝ったからよかったものの、何故リザードンとシンクロ出来なかったのだろうか。

 不調という感じではない。むしろ、リザードン側からシンクロするのを拒否されたような感覚だった。まるで、自分の力だけで戦いたいというような――

 

 きずな現象不発の原因を考えていると、ハヅキに「次の試合も頑張ってくれ」と声をかけられたので、「優勝してやるぜ」と返しておく。

 

 ベンチに戻ると、試合中は自分を出せ出せ言っていたラティも、今は俺が勝ったことを素直に喜んでいるようだった。

 その後ろのタケシは「いいバトルだったな」と言ってくれている。だが、カスミさんは「結構ぎりぎりの勝負だったけどね」と辛口の評価だった。実際、俺はポケモンを四体も戦闘不能にさせられているので言い返せない。少し、ハヅキを甘く見すぎていたな。

 

 しかし、苦戦はしたが原作のサトシ君キラーは倒したのだ。後はもうシゲルにのみ照準を合わせていけば問題ないだろう。

 

 少なくとも、この時の俺はそう考えていた。

 

 

 

 




 原作との変化点。

・第272話『フルバトルの果てに! それぞれの道!』より、ニューサトシが勝った。
 が、何故かきずな現象が発動しなかった。原因は不明だが、不調というよりも意思疎通がうまくいかなかった感じである。リザードンはリザードンで何か目的があってきずな化を拒否したのだとニューサトシは考えている。



 現在ゲットしたポケモン

 ピカチュウ Lv.55

 ピジョット Lv.52

 バタフリー Lv.52

 ドサイドン Lv.54

 フシギダネ Lv.52

 リザードン Lv.57

 ゼニガメ  Lv.52

 キングラー Lv.52

 カモネギ  Lv.52

 エビワラー Lv.52

 ゲンガー  Lv.53

 オコリザル Lv.52

 イーブイ  Lv.51

 ベトベトン Lv.51

 ジバコイル Lv.51

 ケンタロス Lv.51

 ヤドラン  Lv.51

 ハッサム  Lv.51

 トゲキッス Lv.47

 プテラ   Lv.52

 ラプラス  Lv.51

 ミュウツー Lv.71

 バリヤード Lv.51

 イワーク(オレンジ諸島の姿) Lv.47→48

 カビゴン  Lv.46

 ニョロゾ  Lv.45

 ヘラクロス Lv.44

 メガニウム Lv.43→44

 マグマラシ Lv.43

 ラティアス Lv.30

 デルビル  Lv.43

 ワニノコ  Lv.43

 ヨルノズク(色違い) Lv.43

 カイロス(部分色違い) Lv.43

 ウソッキー Lv.43

 バンギラス Lv.55

 ゴマゾウ  Lv.30

 ギャラドス(色違い) Lv.34


 ニューサトシやポケモン達の設定、サブキャラや作中の設定をまとめて欲しいという意見が来たのですが需要あります? あまり設定資料みたいなのを書いてもなぁと個人的には思うのですが。ちょっとまたアンケートをお願いします。

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