一之瀬帆波といちゃいちゃしたいだけの話 作:砂糖
遅くなってごめーーーーん!!
「あっ!藍くんー!」
「帆波っ!」
船上にあるプールサイドで、俺に向かって大きく手を振る彼女はそう、一之瀬帆波。俺の彼女である。
無人島特別試験が終わり、二つ夜の明けた今日。俺は、帆波とプールで遊ぶ約束をしていた。
こちらに駆け寄ってくる帆波は胸を揺らしていて、その場にいるたくさんの男子の視線を集めている。これはとてもよろしくない。
露出の多い鮮やかな色で彩られた水着は帆波をいつも以上に引き立てている。
笑顔で俺に駆け寄ってくれるのは死ぬほど嬉しいし、その可愛さで男子の視線を集めるのはしょうがない事だと思う。けど、俺は嫌だ。
「帆波、ストップ」
そう言って俺は声をかけて、今度はこちらから駆け寄る。
そして、そのまま帆波の前で止まりギュッとハグをした。
「にゃっ/////」
驚きで可愛い声を漏らした後、帆波は言葉を続けた。
「きゅ、急にどうしたの?」
「気分」
そう、これは紛れもなく独占欲。帆波は俺のだと、そう再確認がしたかったのかもしれない。
帆波の露出している肩に顔を
「はぁぁぁ、本当にもう。なんで帆波はそんなに可愛いの」
「にゃはは〜、照れちゃうな」
そう、一之瀬帆波はとても可愛いのである。俺はため息を溢しながらそう再確認した。
午前をプールへ費やした後、お昼にするために一度それぞれの部屋に戻った。
そしてシャワーを浴びて着替えを済ませる。
1時間後に集合と約束したので、まだまだ時間は余裕。俺は濡れた髪も乾かさず、ベットに寝転がりスマホを触る。
10分くらいゴロゴロとしていると帆波からメールが来た。内容は『やることが無くなっちゃったから部屋に行っていい?』と言ったもの。
もちろん、帆波が来てくれるのは大歓迎なのですぐに返信した。そうすると『すぐに行くね』と帆波から。
今は部屋にルームメイトは誰もいないし、何も気にすることはない。
軽く部屋の掃除をして、帆波を待つ。数分もしないうちに部屋がノックされた。
「どうぞー」
「お邪魔しまーす」
笑顔で部屋に入ってくる帆波。出迎えれば、髪の毛をシャンプーで洗ったのかフローラル系のいい香りが届く。
艶めかしい雰囲気がいつもの帆波とちょっと違って、ドキッとする。これが風呂上がりマジックというやつか……。
「何するー?」
俺がそう問いかけるも、帆波はじっと俺の髪を見つめている。
その真っ直ぐな瞳に、目が合っていないのに見つめられているように錯覚して照れてしまう。思わず目を逸らした。
「藍くんって髪濡らしたままなの嫌いじゃなかったっけ?」
「えっ?そうだっけ?」
確かに、今の俺の髪は濡れている。それはドライヤーで乾かさなかったから。
何でだろう。いつもならすぐ乾かしてるのに。
あぁそうか、多分俺は少し緊張しているんだ。久しぶりに2人っきりになれる状況。無人島試験の緊張もない。だから、髪を乾かすのも忘れるくらい緊張していたんだ。
「うわ、髪が濡れてるのに気づいたらなんか気持ち悪い。ごめん、帆波。先に髪の毛乾かしていい?」
自分の緊張に気づいて、今の状態の気持ち悪さにも気がついた。髪濡れてるのすごい嫌だ……。
帆波に一言声をかけドライヤーを取りに行くと、帆波は何か閃いたように「あっ」と声を漏らした。
「はいはいー!こっちにドライヤー持ってきてっ」
「ん?はい、どうぞ」
手を出され、ついドライヤーを渡す。
「そして、どうぞこちらにっ!」
「??」
俺は頭にクエスチョンを浮かべたまま指示に従う。すとんっとソファの下に腰を下ろした。
そして帆波がソファに座る。
「髪の毛触るよ」
そう一言言って、帆波はドライヤーのスイッチを入れた。ゴォっと音が鳴る。
優しい手つきで俺の髪を撫でながら、帆波は嬉しそうに足をバタつかせる。
「どうしてそんなに嬉しそうなんですかー、帆波さん」
「それは、藍くんの髪の毛を乾かせるのが嬉しいからですねー」
ドライヤーの音で聞き取りにくかったが、とても嬉しいことを言ってくれた。
優しく頭を撫でるような、そんな心地よさについうとうとしてしまう。流石に眠るのは嫌なので、一度頬を引っ張った。
俺の髪は短いので、4、5分のうちに乾く。帆波がドライヤーを止めた。少し名残惜しかったけど、帆波に負担はかけたくない。
「ありがとー帆波。最高でした」
帆波の足に腕を置いてそのまま上を向く。そうすると、前を向いていた帆波がこちらを向いて目が合う。
「んふふー、それは良かったです」
帆波は嬉しそうに顔をほころばせた。
んんっー可愛いっ。可愛いな、どうしよう。
俺は、腕を帆波の首に回して少し下に引っ張った。前屈みになる帆波。そしてそのまま、俺は顔を少し浮かせた。
驚きで目を見開いている帆波と目が合う。鮮やかな水色の瞳が影で暗くなっているにも関わらず眩しく輝いていた。
数秒触れ合って、俺は帆波を解放した。自由になった帆波だが、驚きから前屈みの体勢のまま。
「もう一回キスしちゃうよー」
俺がそういうと、まるで意識が戻ったかのように動いて、ピンっと背筋を伸ばす。
俺としては、もう一度くらいしたかったのでとても残念だけど、まあ今日はよしとしよう。
「……急だとさ、やっぱりびっくりしちゃうよ」
「今のタイミングじゃなかった?」
「うーん。ドキッとしたというか」
ならお
でもまあ、今日ドキドキさせられたというなら、それはとても嬉しいことだ。これからも俺は向上心を持って帆波をドキッとさせたいと思う。
「俺は今日から帆波ドキドキ大作戦を決行することにした」
「にゃっ!そ、それは心臓に悪そうだなぁ」
きゅっと腕を寄せて心臓を守るポーズをとる帆波。……しまった、今のは確実にシャッターチャンスっ!撮りたかった!
「大丈夫帆波。俺は常に帆波にドキドキして、耐性付いてるから。帆波もドキドキに耐性が付くくらいドキドキさせてみせるよ」
俺はドヤ顔でサムズアップする。
そんな俺を見て帆波は眉を寄せてへにゃりと笑った。
「シャッターチャンスっ!!!!」
「えぇっ!?」
「ふははははっ!今度は逃さなかったぞ可愛い帆波め!」
「シャッターチャンスっ!藍くんのドヤ顔貰いっ!」
「えぇー!」
そして俺たちは、数分間お互いの写真を撮りあってお昼ご飯にすることになった。
『夏季グループ別特別試験』。船上での特別試験が始まった。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ」
そんな船上試験の初めてのディスカッションの場で、俺はため息漏す。
ちなみに、俺のため息には二種類ある。幸せが溢れた時につくため息と、不満が溢れた時につくため息。
今回のは、紛れもなく後者だ。
「ため息ばかりね。何か悩み事?」
「そんな言い方だと、俺がどうしてため息をついたのか分かってるみたいだね」
俺に問いかけたのは堀北さんだ。体調は既に回復した様で、顔色はいい。しかし表情に笑顔はなく、どこか緊張している様だった。
まあ、それはそう。この部屋に集まったメンバーは学年でも優秀と言われる部類の人間。
Aクラス 葛城康平 西川亮子 的場信二 矢野小春
Bクラス 安藤紗代 神崎隆二 津辺仁美
Cクラス 鈴木英俊 園田正志 龍園翔
Dクラス 粟瀬藍 櫛田桔梗 平田洋介 堀北鈴音
「まず、学校からの指示通り、自己紹介をすべきだと思う」
そう切り出したのは葛城くんだ。異論の声が上がらなかったのでそのまま自己紹介が始まった。
葛城康平。Aクラスの二頭されたリーダーの一人。もう一人のリーダーとは異なり守り、守備を主とする戦略を打つ石橋を叩きまくる男。
その戦略のせいか否か、無人島試験ではうちのクラスの陰の暗躍者(ちょっとかっこいい)にしてやられた為、勢力が弱まっている。だから、今はもう一人のリーダー、坂柳有栖の方が圧倒的に優勢。
もう戦況がひっくり返る事はないと思うが、この試験で坂柳さんが休み故にクラスの統率は彼が行っている。
この荒れる事間違いなしのグループでも、積極的に彼が話を回してくれる。が、彼曰く。
「私たちAクラスはこのグループディスカッションに一切加わらない事を先に伝えておこう。それが私たちAクラスの方針だ」
とのことなので、今後彼が話を回してくれる事はないだろう。残念だ。神崎くんがやってくれるかな、それとも平田くんか。
自己紹介が全員周り、少しばかり沈黙が流れた。
この試験は簡単に言えば人狼探し。全員で同じ人狼を探し出せばいい。が、もちろんそんな簡単な話ではない。このグループでの俺たちDクラスの方針は既に話し合われた。
『優待者、櫛田桔梗を隠し通す』
このグループに一人存在する人狼、いわば優待者は櫛田さんだ。他クラスならば、優待者を見つけて学校に通告すればいいが、優待者はうちのクラス。その戦略は打てなくなり、隠し通すことになる。
ちなみに、全員に打ち明けるなど論外だ。裏切り者が誰かわからないのに打ち明けるメリットなどない。いや、正確にはハイリスク、ローリターン。
最初のディスカッションは正直ボロボロだった。
Aクラスの方針が『不参加』である以上、永遠に優待者を絞り込めない。
竜グループに所属するDクラスにとって、優待者を隠し通すためにはありがたい戦略だが、他のグループではそうはいかない。
Aクラスの方針は各クラスにとって厄介な戦略だろう。
「一之瀬さんのことだけれど」
1回目のディスカッション終了後、俺にそう言ったのは堀北さんだ。
言いたいことはわかる。
「どうして帆波が竜グループにいないのかって?」
「そう。竜グループは明らかに各クラスの代表が集まっている。しかし、Bクラスのメンバーの中に一之瀬さんはいなかった。貴方にはこれの理由がわかる?」
堀北さんの疑問は最もだ。帆波はBクラスのリーダーであり、それに相応しい実力もある。
では何故竜グループにいないのか。
「そんなの、俺にもわからないよ」
そう、俺にも分からない。グループ分けしたのは俺ではないし、そもそも分かるわけがない。
ただ、堀北さんが俺に聞いたのは、この学校で本人の次に帆波を知っているのが俺だからという理由からだろう。
基本的に俺はDクラスに協力的だし、理由がわかるならと聞いてみたのだと思う。
「彼女が、Bクラスのリーダー的存在ではなく、その素質もない。そんな可能性は?」
「あるわけないよ」
それだけはないと絶対に言える。俺はBクラスとそれなりに親しくしている自信がある。
交流していく中で、帆波がリーダーじゃなかったことなんて一度もないし、帆波にはリーダーに相応しい実力もある。
「そう。なら不思議ね」
堀北さんが不思議に思う気持ちもわかる。なぜなら俺も不満だからだ。
「帆波が竜グループにいない理由。それには絶対に理由があると思う。帆波のグループは卯。兎だ」
兎グループは、綾小路くんのいるグループ。何となく引っかかるが、確実な証拠はない。
堀北さんもその事実にどこか思うところがあったのか、少し眉を寄せている。
「まあただ、確実に言えることが一つある。帆波は馬鹿じゃないってことだ」
「それはどういうこと?」
先程より眉を寄せてこちらを睨む堀北さん。何を当たり前のことを言っているんだという顔。
「帆波は馬鹿じゃない。どうして自分がそのグループに配属されたのか。その理由くらいは自分で辿り着く。これはDクラスにとって少し厄介かもしれないね」
もし、帆波が綾小路くんの実力を垣間見るために送られたのするなら、DクラスのジョーカーがBクラスに知れ渡るということ。
まー、帆波は俺が口を滑らせちゃったから、綾小路くんが裏で暗躍していることを知りかけてるんだけどねー。すまんよ堀北さん。
「本当に俺も不満なんだよ。本来なら、俺と帆波はグループが一緒で共に試験を乗り越えられたということでしょ?そんなの凄く素敵じゃんか。これは一生の恨みだぞ、教師陣よ」
「……私は、貴方達が一緒のグループになるのを防ぐために、一之瀬さんを兎グループにした可能性もありえると思うわ」
それは、学校側が俺たちが試験中にいちゃつくのを事前に防いだという可能性。……いやっ?それは流石にないでしょ。と思いたいけど。
「まあ、そんな理由だとは思えないし。これはちょっとした冗談よ。一之瀬さんに関してはあまり気にしないことにするわ」
「うん、そうしな。あ、それとなく綾小路くんに伝えてみてもいいかもね。でも、彼なら自分で気づくと思うけど」
「……どうしてここで綾小路くんの名前が出るのか分からないわ」
「はははー、まぁそれでいいよ。じゃあまたね」
堀北さんは綾小路くんが裏で動いていることを隠している様。
まあ俺は結局、勘でそう感じているだけだから本当に綾小路くんが何もしていない可能性もある。
でも、俺は綾小路くんが堀北さんを隠れ蓑にしている気がしてならない。
「あーあ。綾小路くんって底が見えなくて苦手だなあ」
実力を隠してる奴ほど苦手なものはない。俺はもう一度ため息をついた。
今回さ、実は一回執筆して完成してたんよ。
でもいちゃいちゃしてるところがどうしても違和感があって全部ボツにしたの。それが遅くなった理由かな???ごめんねー。
反省するけど、次の話を投稿するのが早くなることはないと思う。ごめんねー。