一之瀬帆波といちゃいちゃしたいだけの話   作:砂糖

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5話 顔面偏差値一億

 部屋に、インターホンが連打された音が響いた。

 誰だろうか、池か山内か、それとも須藤か。もしかしたら櫛田、なんてことも。

 いや、櫛田ならまだしも池達はインターホンなんて押さずそのまま入ってくるか。

 誰か入ってくるのか、予想も定まらないまま扉を開けた。

 

「助けてくれ綾小路くん!」

 

 なんとなくデジャヴを感じながら、オレの部屋に入ってきた客人を部屋にあげる。

 

「どうしたんだ、粟瀬。そんなに慌てて」

 

 慌てて入ってきたのは我がクラスが誇るイケメン粟瀬藍。隣の部屋だから訪ねてくることも珍しくないが、インターホンを連打するほど慌ただしく来ることはない。

 

「Bクラスの柴田くんと神崎くんと遊んでてさ……そしたら」

 

 俺は友達と遊んできたんだアピールか?喧嘩するか?お?

 

「重い人って嫌われるんだって。それって本当?」

 

「重い人?」

 

 体重がか?確かに肥満気味な人は嫌われるとまではいかずとも避けられ気味になるかもしれない。だが、粟瀬は肥満体質ではないし。

 あれか?実はそのモデル体型の下は膨らんだお腹が隠れてるとか?……いや、水泳の時に腹筋割れてたっけ。

 

「愛が重い人のことだよ。柴田くんに指摘されてさぁ。俺、帆波に嫌われるかな?」

 

 いつもは凛々しい粟瀬の眉は垂れ下がり弱々しい。

 愛が重い人が嫌われるかか……ちょっとオレには荷の重い質問じゃないか?

 しかしまぁ、この恋愛マスターに任せてくれ(大嘘)。友人に頼られたら答えたくなってしまうものだからな。

 

「俺も分からないが、勝手な予想で言うなら、彼女が受け取る愛が多いと負担に思ってしまう。だから愛が重い人は嫌われるって言われてしまってるんだと思う」

 

「なるほど……」

 

「ただ、それは人それぞれだし、粟瀬の彼女がそう思ってるのかも分からない。だから、相手のことを少し気にかけるようにすればいいんじゃないか?まぁ、確証はないが」

 

 深く頷いた粟瀬の眉はいつも通りに戻り態度から安心していることが伝わってきた。

 しかし、粟瀬たちは仲がいいって有名だし、彼女も粟瀬のこと好きなのは間違いないと思うけどな。

 というか、なんだ。このオレと粟瀬の生活の違い。オレは須藤の件の目撃者を探してるのに、こいつは愛の重さについて悩んでるんだ。これがリア充と非リアの違いか?

 

「粟瀬は須藤の目撃者探し、協力しないんだな。少し意外だった」

 

 粟瀬は基本、誰に対しても優しい。だからこそクラスで人気もあるし頼りにされてる。だから最初、須藤の件の目撃者探しに協力しない粟瀬を意外に思った。

 

「あぁ、あれは須藤くんの身から出た錆でしょ。俺、自分のせいなのに他人に迷惑かけるやつ嫌いなんだよね。平田くん達は迷惑だと思ってないかもだけどさ」

 

 確かに、これは須藤が招いた種。そういう意見が出るのも当然か。

 やっぱりDクラスは曲者揃いだな。性格に問題がある堀北や高円寺。だが、未だにどうしてDクラスなのか分からない生徒もいる。平田や粟瀬だってそう。

 

「話は変わるんだが、粟瀬は自分がDクラスになった理由って思い当たるところはあるか?」

 

 堀北は最初、自分がどうしてDクラスなのか茶柱先生に問い詰めてた。粟瀬や平田のような生徒こそ、そう思うはず。

 

「Dクラスにいる人全員、少なからず思い当たる節はあるんじゃない?もちろん俺だってDクラスになった理由は予想できるよ。俺は()()()()()()()入ってたからねー」

 

 粟瀬の口から言われた言葉はあっさりとしていて、なんの躊躇もなく語られた。それはまるで当たり前のことのように。

 粟瀬は犯罪を犯したということか。

 

「そうか、悪い。聞き出して」

 

「いいや、別に俺が勝手に言っただけだから。それにしても、聞き返さないんだね。俺、別に隠してないから話すよ?」

 

 粟瀬は笑いながら言う。少年院に入ったことを()()()()()()()()()()だ。

 

「いや、いい。別に追求することじゃないしな」

 

「そう?じゃ、相談ありがとね。俺、部屋戻るわ!」

 

 終始変わらぬ態度で粟瀬は部屋に戻っていった。

 今日オレは粟瀬の欠点を見た気がした。それは非常に脆い、ガラスのように思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいっ、ハンバーグできたよー」

 

「うわっ、相変わらずなんでもできるね。美味しそう」

 

 テレビを見ていた帆波に声をかけて完成したハンバーグを机に置く。

 今日は俺の部屋で勉強した後、ゲームをしてたらいい時間になったので帆波に晩御飯をご馳走することになった。

 何にしようか考えていたが材料的にハンバーグが作れそうだったのでハンバーグを作ったのだが、俺の得意料理はハンバーグだ。それはもう、お店のにも引けを取らないほど美味しいと自称している。

 なんせ、この肉汁を閉じ込めるのには3年の月日を費やしたからな。帆波も俺のハンバーグは美味しいと言って食べてくれる。

 帆波がいただきますを言ってハンバーグを一口食べた。

 目を大きく見開いて、ご飯を二口食べる。ほっぺが少し膨らんで俺はついほっぺを触る。好奇心で押したくなかったが、流石にそれはしなかった。

 

「かわいい。ゆっくり食べていいからね」

 

「ん」

 

 首をコクンと動かして頷く。えぇ可愛い。

 口にはいっぱいハンバーグが入っているが、さすがの帆波。口の周りにご飯粒をつけるなんてことはしなかった。残念。

 

「おかずが美味しいとご飯をたくさん口に入れたくなるよね。私は今それだったよ」

 

「えぇ、かわいい。本当、毎日作るよ」

 

「……んふふ、かっこいい」

 

 最近の帆波は俺がかわいいと言うのに慣れてきて多少紅潮するだけになってしまった。

 だが、その代わりに俺にかっこいいと言ってくれる。その時の顔はどこか満足げでちょっとドヤ顔をしている。俺を照れさせたいのかな?あぁ、可愛すぎだろ俺の彼女。えぇ?仕返しってことだよね?かわいいって。なんでそんなにかわいいのさ。

 

「あ、そうだ。うちのクラスにDクラスの生徒が須藤くんの暴力事件の目撃者はいないか聞きに来たんだって。私はちょうどいなかったんだけどさ」

 

「そうなんだ。でも、目撃者はうちのクラスだよ」

 

「えぇ!?見つけたの?」

 

 俺がそう言うと帆波は声を上げる。

 俺が見つけたのは本当にたまたまで、櫛田さんがクラスに呼びかける時、ただ1人視線が机だった人がいた。それは、うちのクラスでもあまり目立たない生徒の佐倉さん。

 目立つのが苦手そうだから放っておいたけど、本人が言い出さないんだからそのままでいいと思う。

 

「それはDクラスのみんなに言った?」

 

「言ってないよ。俺は、ポイントを失ってでも須藤くんに痛い目を見てほしいからね。あいつは少し自己中すぎる」

 

 と、言うのは嘘で説明するのが面倒だからだけど。うちのクラスにも優秀な人は何人もいるから誰か1人は気づいているだろう。その人が言ってくれるはず。佐倉さんも自分から言うかもしれない。

 とりあえず、俺にできることはないってことだね。

 

「でも、同じクラスの仲間でしょ?停学になっちゃうんだよね須藤くん」

 

「あ、あぁ。そうだったっけ」

 

 まぁ、夏の大会に出れないのはドンマイだけど自己責任だと割り切ってもらうしかないな。

 帆波の方を見ると少し寂しそうな顔をしていた。そうか、帆波ならそういう生徒も絶対見捨てないもんな。うーん。

 

「あー、明日言うよ。須藤くんの無実の証明も頑張ろうかな」

 

「うん、いいね!私も手伝うよ」

 

「それは心強いですね」

 

 俺もハンバーグを食べ始める。

 いやぁ、帆波には一生勝てないわ。なんか口座の番号教えてって言われても教えちゃうもん。や、そんな事はしないけどね!?

 

「そうそう、隠し味なんだと思う?当てれたら俺のお料理食べ放題権を贈呈しまーす」

 

「えぇー、味覚は自信ないのに」

 

 帆波はハンバーグを一口食べてよく噛む。考えてるようで、頭を捻っている。

 隠し味は俺の愛だと言ってもいいが、流石に恥ずかしいので言わない。ちゃんとそれとは別で入ってるからね。

 そして、これで帆波が正解すれば、次の約束が自然とできるわけですね、はい。俺って策士ぃ。

 

「えっと……藍くんの、愛…とか?」

 

「ん゛〜〜!正解!かわいい!」

 

 顔を真っ赤にして答えた帆波には一生分の俺のお料理食べ放題権を贈呈します。俺は満足です。はい、かわいいですね。顔面偏差値一億だね。

 

「藍くん、顔真っ赤だよ」

 

「絶対に帆波の方が赤いよ」

 

 2人して顔を真っ赤にしてハンバーグを食べる。世界一美味しいハンバーグだったと思う。

 

 

 




一之瀬と一緒に食べれば、どんな料理も世界一美味しいよね。
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