一之瀬帆波といちゃいちゃしたいだけの話   作:砂糖

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甘すぎて休憩してました。糖分の取りすぎもよくないですね。


7話 欲しいモノ

 スマホが手放せない。

 でも俺は決してスマホ依存症というわけじゃない。パソコンでも構わないし、スマホである必要はない。

 ただ、インターネットが俺たちの生活から手放せないほど重要な役割を担っているというだけだ。

 

『恋人に贈る誕生日プレゼント』『カップル 初めての誕生日 何が嬉しい』『彼女がほしいプレゼント』『女の子 人気 アクセサリー』

 

 これが、俺の最近の検索履歴。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たくさんネットで情報調べたんだけどさ。調べれば調べるほど何がいいか分からなくなっちゃって」

 

「結局、俺たちは男だからな。俺は一之瀬ならなんでも喜んで貰ってくれると思うけど」

 

「そうだな。ネットの情報も、結局はその人の意見だからそれだけを参考にするのも良くないかもしれない」

 

 パレットの窓側の席。俺たち3人は帆波にどんな誕生日プレゼントを贈るか話し合っていた。と、いうより俺が勝手に相談していた。

 誰に?神崎くんと柴田くんに、だ。

 

「そりゃあ、帆波のことだからなんでも喜んで貰ってくれるよ。でもそれは毎年のことなんだよね。恋人になってからの誕生日は初めてだから、少し特別感があった方がいい気がしてさ」

 

「手作り料理とかは?得意なんだろ?」

 

「ケーキとかもいいかもしれないな。手作りだから特別感もある」

 

「んー、毎年作ってるんだわ、ケーキ」

 

「うわー、特別感ねーっ」

 

 本当難しい。ネックレスとか、ブレスレットとかも考えたけど。俺が日々ポイントがないとひーひー言ってるせいで、貰ってくれない可能性もある。いや、貰ってはくれるが、心から喜んでくれないかもしれない。

 

「デートに行けばいいじゃん。特別な思い出もプレゼントだろ?」

 

「いや、誕生日はみんなでパーティした方が良くね?帆波はその方が嬉しいでしょ」

 

「粟瀬はバカだなぁ。一之瀬も粟瀬にベタ惚れだぞ?誕生日にデート誘われたら嬉しいって」

 

 帆波の誕生日は7月20日。夏休みの前日。

 なんかバカンスに行くみたいな話、結構噂されてるよね。夏休みのいつからか分からないけどテストに帆波の誕生日にバカンスって。忙しいなぁ。

 

「夏休みのバカンスって本当にバカンスだと思う?俺はただ遊ぶだけじゃないって思うんだけど」

 

「同感だな。一之瀬も話していたが一つのターニングポイントになることは間違いないだろう。ただ気になるのは、前提がバカンスということだ」

 

「そうだね。例えば、無人島にバカンスだって連れてかれて……ここでサバイバルしろ!とか?」

 

「さすがにそれはないだろ!……いや、この学校ならあるかもしれない」

 

 どんな可能性も捨てきれないのが怖いよね。

 帆波とこの学校を選んだのは間違いだったかもなぁ。いちゃつけないじゃん。サバイバルとか!

 

「まあ、誕生日プレゼントは自分が満足いくまで考えたらどうだ?」

 

「一之瀬はどんなもの貰っても喜ぶぞ?」

 

「まあ、帆波だもんねぇ。相談ありがと!また頼むわ」

 

 ありがたい友人の言葉を胸にしまう。特別感のあってあまりお金はかからず、素直にもらって嬉しいもの。

 そんなものあるかぁ?神崎くんも言ってたし、満足がいくまで考えてみよう。とりあえずまだ時間はある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えぇー!粟瀬くんに誕生日、デート誘われてない!?」

 

「うん……まあ、毎年友達と集まってパーティしてたからね」

 

 期末テストの勉強会。否、その休憩に始まった女子会もとい恋バナ。内容は一之瀬の誕生日についての話題だった。

 

「ダメだよ!パーティは別の日でもちゃんと開催させるから、二人っきりで過ごして!」

 

「さ、誘えるかなぁ……」

 

 白波たちは心配していた。粟瀬と一之瀬は仲がいいことで有名だ。しかし、恋バナをしてみれば……ほっぺにキスをされたと嬉しそうに話す一之瀬。それだけか!?あんなにいちゃいちゃしておいてそれだけなのか!?と。

 粟瀬何やってんだよ、男か?本当に男か?いや、あいつは(チキン)だ。一之瀬と仲のいい女子は全員そう認識してる。

 

「ちゃんと誘うんだよ。一之瀬さんなら大丈夫!」

 

「うん。頑張ってみるっ」

 

 一之瀬が意気込んだのは、神崎たちの男子会と同時刻だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『今から部屋にこれる?』

 

 突然、帆波からそんなメールが来た。

 ついベットから起き上がって正座をする。

 

『行く』

 

 考えるより早く返信して着替え始める。

 元々神崎くんたちと遊んでいただけで汗などかいていないが、制服で部屋に行くのはなんだか嫌だ。

 着替えるといっても、ラフなTシャツにラフなスキニーパンツ。だけど制服よりは幾分かマシなはず。

 軽く鏡で前髪チェックを済ませて部屋を出た。

 

 帆波の部屋には何度か遊びに行ったことがある。俺の部屋と作りは変わらないのに何故か別の部屋のように感じる帆波の部屋。うん、楽しみ。

 

「あっ!藍くん!まだメールしてから3分くらいしか経ってないのに、すごいね。上がって上がって」

 

「帆波に早く会いたくてさ。お邪魔しまーす」

 

 相変わらずおしゃれな部屋ですね、帆波さん。

 帆波に促されてベッドに座る。もちろん他意はない。ちょっとここで帆波が寝てるとか想像しちゃうくらいで他意はない。

 

「ごめんね?呼び出しちゃって。何か飲む?」

 

「うーん。あ、この前言ってた美味しいブドウジュースは?あるならそれがいいな」

 

「おっけー。ちょっと待っててね」

 

 帆波が冷蔵庫からパックに入ったブドウジュースをコップに注ぐ。

 俺はついスマホをむけて写真を撮る。パシャっという音に気づいた帆波は俺の方を向いてピースをした。そして俺はもう一枚写真を撮る。

 

「もー、写真ならいつも一緒に撮ろって言ってるのにー」

 

「ふっふっふっ。帆波の可愛い写真に俺が写ったら台無しだよ。わかってないなぁ」

 

「それなら私だって藍くんの写真撮っちゃうもーん!」

 

 そう言っていたずらっ子のような笑みを浮かべた帆波は俺の方にスマホをむけてパシャパシャと写真を撮り始めた。

 そして数分、帆波と写真の撮りあい兼いちゃいちゃをした後、ブドウジュースを飲んで一息つく。

 はぁ、今日も俺の彼女可愛いな。

 

「それでさ、部屋に呼んでくれたのは嬉しいけどまだ用事を聞いてなかったなって。どうしたの?」

 

 特に用事はなく、俺に会いたいから呼んだという理由でも全然おっけーだけど。むしろめちゃめちゃ嬉しいよね。

 

「うんっ。あ、あのね。……ちょっと恥ずかしいんだけどさ」

 

 改った感じで帆波が姿勢を正した。妙に緊張した様子で、俺も緊張してしまう。……うーん。写真を撮りたい。そのちょっとモジモジと気恥ずかしそうにしている帆波を写真に収めたいっ。

 まあ、そんな場違いなことをする勇気はありませんけど。心のメモリーに保存したので大丈夫です。

 

「私の誕生日ってもうすぐでしょ?その日は私とデートして欲しい————」

 

「しよう。デートしよう」

 

「す、すごい食い気味だね。でも大丈夫?夏休みの前日で忙しくない?」

 

「もー、わかってないな帆波さんは。どんなに忙しくても、帆波とデートするためなら暇にできる特殊能力を俺は持ってるんだよ。だから安心して」

 

 そういうと帆波は嬉しそうに笑った。

 

「私も、実はその特殊能力を持ってるよ!藍くんとデートするためならいつでも暇にできる!だから、次は藍くんのわがままでデート決めてね」

 

 俺の心に帆波が矢を放つ。グサリと心に刺さって、刺さったのその部分からぽかぽかとしてくる。うーん、かわいい。

 というか、誕生日にデートして欲しいなんていうわがままならどんだけでも聞ける。わがままってこんなに可愛いものなんだなって改めて知ったよ。

 

「ありがとう。それでさ、誕生日プレゼントって何がいい?本当はサプライズにしたかったんだけど、やっぱり喜んで欲しくて」

 

 俺はついでに聞こうと思っていたことを聞いた。

 神崎くんと柴田くんに相談しといてなんだが、結局帆波に聞くことにした。

 考えても考えても結局いいのは思いつかなくて、喜んでもらえない変なものを贈るより、欲しいと言われたものを贈ろうと決めたのだ。

 

「んー、そうだなぁ。あっ、当日言っていい?」

 

「当日一緒に買いに行くってこと?いいね。そうしようか」

 

「いや、そうじゃなくてね。当日に用意……じゃないけど、できるものをお願いしようかなって。それでもいい?」

 

 当日に用意できるものか。まあそれが帆波の要望なら従う以外の選択肢はない。もちろん全然おっけー。

 

「了解。じゃあ、デート楽しみにしてるね」

 

「うんっ!私も楽しみ!」

 

 笑って帆波がいう。可愛い。というか部屋着だよね、それ。今更だけど制服のスカートより足出てるね。生足だね。うっわ、白い。透明だ。透けてないけど透明だ。

 なんとなく、良くない思考をしている気がしたので話題を振る。

 

「それにしても、珍しいね。わざわざ直接会ってデートの約束をするなんて。俺に会いたかったとか?なーんて」

 

 半分冗談で茶化しながらそう聞いた。きっと帆波なら『もーっ』とか言って笑ってくれるだろう。

 そう思って帆波の方を向いたら、真っ赤に赤面している帆波がいた。ぱちっと目が合うと明らかに動揺して目を逸らされる。

 あ、あれぇ?嘘っ、当たってた?

 

「い、いやっ、なんていうか、その。あのね?今日って朝一緒に登校しただけでそれ以外会ってなかったでしょ。だ、だから。少し藍くんパワーをチャージしたいなぁ……なーんて」

 

 真っ赤にした顔を手で隠しながらそう言われる。

 

「かわいい」

 

「ちょっとバカにしてるよね!」

 

「かわいい」

 

「恥ずかしいから……」

 

「かわいい!!!!」

 

「やめて!恥ずかしい!」

 

 どうやら、俺の彼女は俺の想像以上に俺のことが好きだったようです。かわいいですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これで5回目になる前髪チェック。普段はしない前髪に分け目を入れて念入りに確認。うん、イケメンだ。

 服装もチェック。埃もついてないはず。ポケットをそっと触って()()()の存在も確認。しっかりある。

 

 準備は万端。よし、行くか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 集合場所に近づくにつれて、ある人物が一際注目されていることに気づく。

 黒のスキニーにオーバーサイズの白のTシャツ。その上には少し明るい色のジージャンを着ている。まるでモデルのようで通りすがる人が必ず二度見するほど。

 そう、彼は私の彼氏である粟瀬藍くん。彼氏がかっこよくて注目されてしまうことは百も承知だけど、やっぱり少し寂しい。

 少し藍くんを観察してみると、何かを考えているような表情をしていて、たまに微笑んでいる。

 一人で笑っている様子は怖いけど、きっと何か面白いことを思い出して笑っているんだと考えると可愛く思えてくる。

 少し近づくと藍くんは私に気づいて手を振ってくれた。

 

「帆波!」

 

 まだ20メートルくらい離れていたのに、何故か私に気づいた藍くんは私に駆け寄ってきてくれた。

 

「ごめん、お待たせ!」

 

「本当だよー。うーん、3時間くらい待ったかな」

 

「ダウトっ!その時終業式でした!」

 

 いつも通り軽く会話をしながら歩き始める。歩き始めるとスッと手が擦れる。その手を藍くんはパシっと掴んだ。いつも通り手を繋いで歩く。……って思ってたけど、藍くんは私の手と藍くんの手を絡めて握った。

 

「ね!今日はこっちで手を繋がない?」

 

「うんっ!」

 

 その繋いだ手は恋人繋ぎで、いつもとはちょっと違う。それがなんだか嬉しくて、つい笑っちゃう。

 

「誕生日おめでとう。今日は俺の部屋で夜ご飯兼()()()()の誕生日パーティーをしない?」

 

「いいね!絶対楽しい!」

 

 二人だけ。それが頭の中でぐるぐる回ってる。心がぽかぽかしてきて変な感じだけど、最近はもう慣れた。というか、慣れざるを得なかった……かな。

 口説き文句をこうも言ってくる藍くんだから、慣れてしまうのもしょうがない。

 

「今日の服、似合ってるよ!デニムショート。ちょっとお揃いだね」

 

「藍くんはジージャンだもんね。嬉しいね」

 

「かわいい」

 

 藍くんは何かあるたびにかわいいと言ってくれる。それは彼女として以前に女の子として嬉しい。

 だけど、赤面してしまうので最近はやり返すようにしている。私はもう対処法に気づいてしまった。

 

「藍くん、かっこいいよ」

 

 目を合わせながらそう言うと、藍くんは恥ずかしそうに真っ赤になった顔を手で隠しながら目を逸らす。

 よしっ、藍くんに勝った!しかし、藍くんには油断はできない。やり返されたことが数え切れないくらいあるからね。

 

 デートはなんの問題もなく楽しく進んだ。午前は学校があったから2時に集合したけど、もう時間は5時くらい。あーあ。楽しい時間ってあっという間だなあ。

 隣を歩く藍くんを見上げると、視線に気づいた藍くんと目が合う。「どうした?」と優しく問いかけてくれる藍くんに「なんでもない」と言ってまた笑う。

 もし、私が人生で一番大切な出会いはと問いかけられれば迷わず藍くんと答えると思う。それだけ、私は藍くんのことが好き。

 

「帆波が欲しい誕生日プレゼントってなに?さっき聞いたらなんか誤魔化されたし」

 

「あ、あのね」

 

 夕陽は沈みかけていて、藍くんがオレンジ色の太陽に照らされて輝いて見える。それだけで心拍数は上がっちゃって心を落ち着かせるのにまた手間取る。

 

「藍くんってさ。私のこと可愛いって良く言ってくれるでしょ?あ、あの」

 

「うん。なになに」

 

 うまく言葉を繋げられない私に藍くんは優しく笑って、次の言葉を待ってくれる。

 

()()って言って欲しいなって。今更言うことじゃないかもしれないけど、告白された時に言ってくれてさ。それ、すごく嬉しかったから」

 

 私の欲しい言葉(モノ)が変だったかもしれないと、心配になって藍くんを見上げた。

 藍くんの顔は目を見開いていて、私の言ったことに驚いてるようだった。やっぱり、言わなきゃよかったかも。付き合ってるのに、今更だよね。

 

「あ、あぁ、やっぱり嘘—————」

 

 私が言い切る前に藍くん私の肩を優しく掴んで、顔を近づけた。そして耳元で。

 

「大好きだよ」

 

 そう呟いた。私が驚いて言い返す前に私は言い返せなくなった。私の唇は塞がれた。

 

 そっと、優しくて、でも少し強くて。

 ほんの数秒だけど、私のファーストキス。

 

「世界で一番、帆波が大好きだよ」

 

 そう言って藍くんは笑う。

 

「と、溶けそう……」

 

 今にも体が崩れ落ちそうなほどの甘さが私を包む。

 キスの味が甘いんじゃない。キスをされた時の心が甘いんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一之瀬さん!」

 

「千尋ちゃん!」

 

 豪華客船のデッキで朝食以来会っていなかった千尋ちゃんと会った。

 千尋ちゃんは何かに気づいた様子で私の方を向いてニヤッと笑った。

 

「一之瀬さんがアクセサリーを付けるなんて珍しいね。その()()()()()は粟瀬くんからの贈りもの?」

 

「う、うん。実は誕生日プレゼントをこっそり用意してくれてたみたいで」

 

 私がお願いした『好き』という言葉とは別で藍くんはネックレスを用意していてくれた。中心には銀に輝く小さなハートがついている。

 そしてその前には……キスを。

 思い出してまた顔が熱くなる。

 

「その顔じゃあデートは楽しかったんだね!じゃあちょっと詳しく……」

 

「千尋ちゃん!?」

 

 身体を寄せて耳を傾ける千尋ちゃん。デートのこと、なんていえばいいんだろう……。

 

『生徒の皆様にお知らせします。お時間がありましたら、是非デッキにお集まりください。間もなく島が見えて参ります。しばらくの間、非常に意義ある景色をご覧頂けるでしょう』

 

 

 

————もうすぐ、無人島での特別試験が始まる。

 

 

 




一之瀬の欲しいモノ以上のモノを贈れる粟瀬は優秀。
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