前世一般男性の俺が牝馬になった日   作:なんちゃらクイーンの2008

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2R.牡馬じゃなくて牝馬!

 馬に……なってしまいました。なぜぇ? 

俺の前世……前世と言っていいのかは分からないが、仮に前世だとして。

俺は普通の人間だったはずだ。最後に何をしていたかは……ちょっと思い出せないんだよなぁコレが。

最初は夢だろうと思っていたが、流石にこの状態が何日も続けば嫌でもこれが現実だと思い知らされる。

 

「ヒヒィン、ブルルゥン」

 

 口から出る声も人のソレではなく馬のものだし、脚には立派な蹄がある。

蹄を地面につけて鳴らしてやればカポカポと子気味いい音が返ってくる。

 

「おっ、ど~うした、まんげつ~元気だな~お前は。ほらほら、落ち着け落ち着け。

ミルクなら今あげるからなドウドウ」

 

 俺に声を掛けてくるこのおじさんは、恰幅のいいヒゲ眼鏡で、この小さい牧場の数少ないスタッフのフジムラだ。

フジムラはミルクの入った哺乳瓶を俺に差し出し、俺はソレにむしゃぶりついた。

そう、俺はフジムラからミルクを貰っている。

俺の母であるタキオンクイーンは俺が生まれてからすぐはお乳をくれたが2,3日もすると嫌がるようになり、終いには俺に噛みつこうとしたり威嚇をするようになったので母馬と離され人の手で育てられることになったのである。

 

 ちなみに「まんげつ」というのは俺の幼名だ、俺の生まれた日は満月だったかららしい。

 

 

「よーしよし、沢山飲んで大きくなれよ、お前には立派な競走馬になって貰わないといけないからなー」

「いや~でもフジムラ君、この子ちゃんと走るかな~」

 

 横から話しかけてきたのはウレシノ君、ひょろっとした眼鏡のおじさんだ。

……この牧場はおじさんしかいないのか? 若い人を全然見ないんだけど?

しかし、ミルク美味いな、ウマだけに(王道激ウマギャグ)

 

「そこはさ、ウレシノ君、アレだよアレ。血統的には厳しくてもさ。やっぱり期待したくなるじゃない」

「まぁ……ね、分かるよ。何たってトウカイテイオー産駒だ。夢を見たくなるよ。牡馬じゃなく牝馬だったのはすこし残念だけどね」

 

 へー、俺ってトウカイテイオー産駒なのか、かなりの有名馬じゃないか。

いやそんなことよりもだ!

そう! 俺は牝馬なのだ! 前世男なのに! 牡馬じゃなくて牝馬!

なぜ!? 創作作品などでTSモノがあるのは知っているがまさか自分にそれが降りかかってきた挙句、人じゃなくて馬!

しかも競走馬だ! 走れなければ、あっけなく消えてしまうのが競走馬だ。

俺は牝馬だから、繁殖牝馬という道もあるかもしれないが……、ああ~いやだ~、将来自分が牡馬と交尾しなくちゃいけないと思うと嫌になる。

 

「っと飲み終わったな、よしよし。なんだそんな悲しそうな顔して、ミルクはもうないぞ」

「ブルルゥン(違うよ! 将来を嘆いているんだよ!)」

「おっと、落ち着け落ち着け、ったく元気がいいなお前は」

 

 フジムラとウレシノは笑顔で俺を撫でてくるが違うんだって。

ああ~もう俺の馬生どうなっちゃうの~!

 

 

 

 どうなっちゃうの~とか言っては見たが、結局俺は馬なわけで。

アレから数か月もすればいい加減自分の境遇にも諦めが付いてくる。

飯も離乳し飼葉を食べるようになって、――嗚呼いよいよ俺はもう人ではなく馬なんだな……と再確認させられた。

 

 おじさんたちの会話を聞くに俺の将来は競走馬らしいし。

結局、ソレとして生きて行くしかないのだ、それしか道がないのならと俺は潔く馬として生きることを選んだのだ……俺は牝馬だからいずれ牡馬とうまぴょいしなくちゃいけないわけだが、そこは一旦忘れよう。

 

 そんなこんなで俺はこの小さい牧場の牧場地をひたすら走り回っていた。

というか走る感覚に取りつかれていた、馬として走り回るのは最高に楽しかったんだよ。

まあ、やることが走る事ぐらいしか無かったというのもあるんだけど……。

人間だったころは娯楽が沢山あったが、馬としての暇つぶしは走るか、飯を食うかぐらいしか無いのだ!

そのうえ母馬に育児放棄され他の当歳馬達からもハブられている俺は、イマイチ群れにも馴染めず牧場地の端をグルグルと走り回る孤独な馬と化していた。

 

「よう、まんげつ今日も独りぼっちか、かわいそうにな~まあ気にするなよまんげつ。お前は奇麗な青鹿毛だし親に似て顔がいい。将来はモテるぞ~」

「ブルルゥ……(牡馬にモテてもうれしくないよフジムラ……)」

「そうかそうか、よかったなぁよしよし。じゃあまたなまんげつ」

 

 当然ながら馬である俺の言葉が人間のフジムラに通じることはなくフジムラはニコニコで去っていった。ちくしょう……。

 

 しかし親に似て……か、俺は父トウカイテイオーで母父はアグネスタキオンという血統らしい。

まあ母馬の名前がタキオンクイーンな時点で母父に関してはある程度察していたが……。

しかし俺は血統的にはどうなんだろうか、実は俺はソレほど競走馬や血統には詳しくないのだ、ウマ娘でかじった程度といえば俺自身の知識の浅さがうかがえる。

ウマ娘的に見ればトウカイテイオーは三度の骨折があるし、アグネスタキオンは脚に不安があったはずだ。下手をすれば俺も故障からの引退、酷ければ予後不良の可能性もある。

できれば無事に競走馬生命を乗り越えたいがこればかりは運かもしれない。

そもそも俺が走れる馬なのかどうかも今の俺には分からないのだけど……。

 

 なんにせよ長い馬生だ、いずれ俺のオーナーになる人や調教師の人がうまく調整してくれることを願おう。

 

 

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 メイクデビューを無事に終えた私は、本日を完全休養いわゆるオフとしてトレーナー室でくつろいでいた。

お気に入りのゴスロリ専門のファッション誌を読みながら日当たりの良いソファの上でゴロゴロするのは至福の時だ。

そんな時にPCに向かって作業をしていたトレーナーが控えめに声を掛けてきた。

 

「なあクイーン、その……なんだ、お願いがあるんだけど……いいか?」

 

 深刻そうなトレーナーの顔を見て、私は雑誌を閉じソファに座りなおす

 

「……なんですか、急に。お願いだなんて。まあ、いいでしょう私とお前の仲です何でも言ってみなさい」

「ああ、ありがとう。いや……な? そのなんだ……あー、トモ、トモを!触らせてくれないか?」

 

 私は真顔になった。驚いた、トレーナーが年頃の娘のトモを触りたがる変態だったとは。

 

「お前は……変態ですか?」

「いや……違う、違うんだ! クイーン! 聞いてくれ、君はメイクデビューを素晴らしい逃げで勝ち切っただろう! ジュニア級とは思えないほど素晴らしい走りだった! だから君の足に異常がないか少し調べるのに触診したいんだ!!」

 

 トレーナーは一息で言い切るとゼェハァと荒い呼吸を整える、割とその姿が変態チックだけど……。

 

「……そういうことでしたら先に言いなさい。ちゃんとした理由があるなら、その……まあ、私のトモに触ることも許可しましょう。ただし! 私も年頃のウマ娘、恥ずかしいモノは恥ずかしいので手短に済ませなさい」

 

 私はそう言って足を出す。

トレーナーはありがとうと言うと私のトモに遠慮がちに触れてくる、最初は優しくゆっくりと、だんだん強くそれでいて軽く揉むように。

まずい、私が思っていたよりも数千倍は恥ずかしい。

 

「凄いな、アレだけの激走だったのに異常が見られない。俺が思っていた以上に丈夫なんだな。それに……やっぱりいいトモだ、広く太く、ハリもいい。それにこれ……」

 

 トレーナーの独り言を聞きつつ羞恥心の限界に達した私はそこで意識を落としたのだった。

 




このペースだと競走馬になるまでに時間がかかりそうなので次回から巻きで行こうと思います。

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