Mixingfate(交錯する運命) 作:nao_japan_fourth
初期段階では作者の意図は分からないと思います
物語の全体像が判るのは連載中盤辺りかな
あの日から5年が経ち俺も22歳になった、プラントに別れを告げて3年あまり
久しぶりにプラントへ降り立つ
ターミナルから覗くアプリリウス市内の姿はあまり変っていない
入国検査で一悶着あったがアッサリと通してくれた
(他国の外交官が申告もしないで個人の資格で入ろうとしたのだから当たり前)
イザークに連絡を入れたら誰か迎えに寄こすと言っていたが到着時間からすでに30分も過ぎ
考え事をしていたらいつの間にか人だかりが出来ていた
「?」
俺を見ているような気もする
なんだろう?ファッションなんて気にした事が無いから服装が流行遅れだったかと
そんな事を考えていたらいきなり肩を叩かれた
「おいアスラン、待ち合わせ場所が違うだろう」
振り返ったら、ディアッカがいた
「5番ターミナルじゃなかったか」
「3番だ、おかげで捜しまくったぞ」
「すまない、悪かった・・・・・・・・久しぶりだなディアッカ」
「本当に久しぶりだな、アスランは公式な用が無いと全くプラントに顔を出さないから」
「仕方が無いだろう、これでもオーブの外交官だからな」
「お前がオーブなんかに逃げちゃったから俺が苦労すんだよイザークのお守りにキラのお守り
ついでにシン達のお守りまでもだ」
「何だそれは?俺は逃げたわけじゃないぞ」
「そんな言い訳が俺に通用するとでも?」
「なに」
二人は口喧嘩をしながらもエレカに乗って目的地へ向かっていた
「まぁキラのお守りも後三日でバトンタッチだからいいけどよ」
「その事に関しては謝る、白服の事は俺が辞退させておけば良かったとは思っていたんだ」
「そんな一言で済ませられてたまるか今はそれ程でもなくなったが一時は険悪だったんだぞ
あの二人の仲が悪くなったのはお前のせいでも有るんだから」
「どういう意味だ」
「特別入隊のキラは能力を示さないと行けないし相当なプレッシャーだったろうよ
イザークの奴が最初はキラに色々教えてやっていたんだがあまりにもアスランと比較するから
その内にキラが反発したラクス・クラインの恋人と分かっているから風当たりも強かった
更にアスランと比較されたら堪らん俺だって逃げ出したくなる」
「なんで?キラなら十分その力はあるだろう」
「MS操作や情報工学の方面ではアスランと同じくらいできるけどな格闘技や戦略とか戦術は
簡単に習得できないだろうが」
「そうだけどディアッカ、キラの能力は俺以上だぞ教え方が悪いんじゃないのか」
「確かに最初の頃は嫌がらせなんか受けて居た見たいだ」
「それじゃぁ」
「俺は正直に言うとキラはザフトに入るべきじゃなかったのかも」
「?」
「キラが何を考えてザフトに入ったのか知らないがプラントやザフトの為じゃない事は確かだぜ」
「そうだな・・・それより俺が逃げたと言うのはどう言う意味だ、ディアッカ」
「それを今さら俺の口から言わせる気?」
「なんだ」
「アスランお前はラクス・クラインから逃げたんだろう」
「!」
ディアッカの言葉に思わず黙るアスラン
「なんで奪い返そうと思わなかったんだ、まだキラのものと決まっていた訳じゃないだろ
そりゃぁキラはお前には親友でラクス・クラインにとってはお前は・・・・この話は無しだ
それでもアスランはラクス・クラインが好きだったんだろう」
「何を言っているディアッカ、あの時の俺にはカガリがいただろう、別にラクスは関係ない」
「嘘を付くな、それならカガリと何故結婚しなかった?アスハ家もお前の事を認めていただろう」
「そんな暇なんか無かったよ、カガリは代表、俺は外交官として各国を飛び回っていたから」
「それこそいい訳だろうカガリが結婚した時のホッとしたお前の顔、俺は今でも覚えてるぞ」
「・・・」
「アスラン、お前はキラとラクス・クラインが仲良くしている所を見たくなかっただけだろう」
アスランはディアッカの言葉に少しの間、沈黙した
「確かにディアッカの言う通り逃げたのかも知れないがラクスとキラの事じゃないぞ
二人が仲良くしていようが別に気にしていた訳じゃない俺が戻らなかった理由は別にある」
「?」
「俺は事情があったとはいえ一度ならず二度も裏切った、俺の所為で死んだザフト兵士達もいる筈
どんな顔をして遺族の人達に会えば良い?そんな俺がプラントに戻る事など許される筈が無い
俺はそれを乗り越えて理想の為に生きるなんて事が出来るほど俺は強く無い、それに・・・」
「それに?」
「俺は恥知らずじゃない」
「!」
アスランの一言は現在プラント政界を支配しているクライン派を非難している言葉で
ディアッカはその言葉にこそアスランがプラントに戻らなかった真の理由があると思った
ラクス・クライン
二つの大戦を止めたプラントの英雄、市民達は熱狂してラクス・クラインの帰還を諸手を挙げて
喜びその市民達に支持されてラクス・クラインは現在、最高評議会議員であり国防委員会顧問と
外交部顧問を務めて次の議長選挙には当選するとも言われている、ラクス・クラインはまだ良い
たとえ考え方がずれていても真剣だ、だがラクス・クラインを持ち上げている
クライン派はそれほど支持されるべき人間達なのか
5年前と3年前に彼等が行ったプラントに対する裏切り行為、物資の横流し技術情報の漏洩
更に情報操作によりプラント及びザフトを混乱させ要らぬ犠牲者まで出している
勝てば官軍の論理で関わった人達は罪にすら問われていない代わりに旧デュランダル派は
容赦なく公職やザフトから追放された、この事は公平で公正といえるだろうか
「当時の事を持ち出しても仕方が無いさ三日後にキラとラクスは結婚する、婚約していた時も
婚約者と言う関係でしかなかったラクスの心の中には始から俺はいなかったよ
まぁ俺も同じだからラクスの事を言えないさ、皆誤解しているようだが俺はラクスを好きとか
愛しているとか思った事は一度も無いよ」
「え、本当に?あれほど仲が良く見えたのに信じられないな」
ディアッカは疑うようにアスランを見る
「仲良く見えたとしたらお互い恋愛感情が無かったからだ、嫌いでも無かったしな将来結婚する
相手としか思って居なかった」
「そうなの?・・・それでか?アスランがラクス・クラインの結婚式に出席する気になったのは」
「あぁ多分な、それに自分以外の私用でプラントに来るのはこれが最後になる」
「?」
「ラクスにこれを渡す為に今回は来たんだ」
アスランはバッグを少し開けて見せる、中に入っていたのはピンク色と紫のハロが二つ
「そういえばキラが修理できないって言っていたな」
「そのままだ修理はしていない」
「なんで?」
「ハロは鎖だ、だからもう修理する気は無いとラクスに直接伝える為だよ」
「鎖か」
「俺の心を縛る鎖さ、昔の婚約者のプレゼントなどいい加減に捨てればいいものを何時までも
持っていられてはこっちも迷惑だ」
「それでも直してくれと言ったら?」
「直してやる、そして同じピンクのハロを大量生産してやるさ価値がなくなるくらいに安く」
「それはいくらなんでも意地悪しすぎじゃないか」
「どうしてだ?キラの気持ちも少しは考えてやれよ」
「そうか、そうだな」
目的地であるプラント公共墓地に着いた、アスランはプラントに来た時は必ずここに来る
ここにはアスランが失った思いの全てがあった
ニコルやラスティー達と両親に挨拶をしてから最後は必ずミーアとレイの墓の前に立つ
助けたかった人と助けることが出来なかった人、二人に祈りを捧げる
墓から戻る途中、アスランはディアッカに告げる事があった
「イザークもいれば良かったんだがディアッカ、イザークにはお前から伝えてくれないか
俺は結婚するかも知れないとな、まだプロポーズをしていないがオーブに戻ったらするつもりだ
決まったら招待状を出すその時はよろしくな」
ディアッカはアスランの何気ない言葉を頭で理解するのには少し時間が掛かった
「え、誰と、・・・まさか」
「安心しろコーディネーターの女性だ、ミリアリアじゃない」
「だ、誰もミリーの事だなんて言っていないだろう」
「ディアッカ、もっと積極的に動かないとミリアリアを誰かさんに盗られる」
「誰かさんってお前の事じゃないのか?二人は既に出来ていて同棲までしているとか噂が
プラントまで流れてくるぞ」
「確かにミリアリアとは仲が良いから妙な噂が流れたらしい、今でも二人で街を歩いていると
恋人同士に間違われる事もあるからな、だけどなミリアリアが俺の事をどう思っているのか
判らないし残念ながらトールを死なせた俺では彼女を幸せには出来ない」
「・・・そうだったな」
「相手はディアッカも良く知っているよ、オーブでプラント領事館付き武官をしている娘だ」
「俺が良く知っている娘?」
「再会した時にお互い飲み比べし過ぎて俺が先にダウンした、何度も会って意識する様になってな
思い切ってプロポーズしようと思っている、彼女も受け入れてくれると思うし婚姻統制局で
確認したら俺と彼女の相性は悪くないそうだ」
「酒がお前より強くて武官と言う事は赤クラスでオーブ!イザークの秘書だったシホちゃん?」
「当たりだ」
「八つ当たりされる俺の身にもなってくれよイザークはシホちゃんが秘書に戻ってくる事を
期待していたんだぞシホちゃんが秘書を辞めてからイザークの秘書は皆、長続きしないんだよ」
「仕方が無いだろう感情だけはコントロールできないからな」
「それで今日の予定は?」
「このままホテルに直行だ、周辺の散歩ぐらいするだろうけど式の日まではなるべく外に
出ないつもりだ」
「なんだ独身最後のキラに会ってやらないのか?キラも喜ぶぞ」
「さっきのディアッカみたくラクスとの事を蒸し返されるのも嫌だよ、下手に会ったら
メディアの餌食になるだけさ、新郎の友人として式に出ると言っても俺はオーブの外交官だぞ
簡単に外出なんか出来るわけが無いだろうが」
ホテル前までディアッカに送ってもらいフロントで別れた
だがディアッカへの話と違いアスランは部屋に入り荷物を置いてすぐに出かけた
エレカを借りて向かった先は今は住む者がいない筈の旧クライン邸である
一応修理はした見たいだが誰も住んでないようだ、 庭に立つと色々と思い出されてくる
シーゲル様あなたを死に至らしめた男の息子の妻になるよりラクスの心を守る事が出来る
キラの方がラクスの夫には相応しいです、シーゲル様これで良かったですよね
イザークに聞きましたラクスとキラの間に子供が出来ない事を例え貴方の血を受け継ぐ
子供が出来なくてもラクスにはキラの方が俺より相応しいですよね
真顔で嘘を付けるようになった自分を喜んで良いのか悲しむべきなのか、俺も大概嘘吐きだな
ディアッカの言う通り俺はラクスとキラが仲良くしている姿を見たくなかったからオーブでも
二人と離れていた、カガリを手伝うと言うのは単に言い訳だ
今でも俺はラクスの事を忘れられない、カガリやメイリンに逃げようと思った事もあるけど
態度に出るのだろな二人とも俺から離れて行った
・・・イザークが婚約した事でシホは自棄になってたけど今は俺に心を開いてくれている
シホは好きだしシホを大事にしたいとも思ってる、プロポーズすれば良い返事は聞けると思う
でも何故だろう、何で俺はラクスを忘れられない?何で何時までも未練を引きずっている?
3日後にラクスはキラの妻になるのだからもう手の届かない所へ行ってしまうのに
そんな事を考えながらぼんやりしていたら周囲が暗くなっていてもう夜の時間だ
久しぶりでプラントの環境を忘れていたようだ
ホテルに戻ろうとエレカに向かおうとしたら屋敷の中から人の声が微かにした気がした
浮浪者か?プラントにそんなものが存在する筈が無く気になったアスランは屋敷に入る
ドアにはかつての物と同じセキュリティーでラクスの事だ変更はしていないだろう案の定ドアが
開き屋敷に入ってそのまま進むとやはり微かに声が聞こえ
2階から聞こえてくるようで音を立てないように階段を上がる
音が聞こえて来るのはかつてラクスの部屋からでドアの前に立つがこの部屋だけは完全に
修理されている事が分かる
女の偲び声がする、幽霊?それこそまさかだろう
ドアのノブに手を掛けようとした時に微かに声が聞こえてきた
「・・けて、私を助けて・・・・アスラン助けて・・・・」
微かに聞こえた声はラクスの声?、アスランはドアのノブを静かに廻した
ノブには指紋認証式の装置が付いている事に初めて気がついたが何故かドアは開いた
部屋の中に入ったアスランが見たのは机に伏せて泣いていたラクスの姿だった
突然入って来たアスランをラクスは驚きの目で見るが二人に言葉はいらなかった
やがて二人は抱きしめあいお互いを求めベッドに倒れる二人の視線が絡み合い
求めているものを理解し全てをさらけ出していた
始めて求めていたのがお互いと理解した二人の意識の中に3日後の事は無かった
明後日にはラクスは結婚式の新婦となり純白の衣装に身を包む、その身を新郎ではない
アスランにすべてを委ねた
親友の妻となるラクスをアスランはその腕の中に抱しめる
二人は初めて望んでいたものを得たのだから今の二人に裏切りと言う言葉は頭の中に無い
それは一瞬の夢、陽炎のように短くて儚い夢
明け方、アスランの腕に抱きしめられながらラクスは目覚めた
このままこの腕に抱かれていたい、でもそれは決して許されない
起き上がろうとするとアスランが無意識にラクスを抱きしめようと腕に力が入る
大切なものを離さないように
それでもラクスはアスランの腕から逃れるように起き上がり二人の行為の結果を見た
初めての証の色がベッドのシーツにある
ラクスはアスランを起こさないように居た証拠を消す、幸いにもシーツはラクスが包まって
寝たので処理は簡単だ
私物を全てバッグに詰め服を整えたラクスはアスランを見た
その姿を焼き付けるかのように見てからその頬にそっと唇を重ね無言で部屋を出て行く
到着していたオートエレカに乗って屋敷を振り返りラクスは初めて涙を流した
愛していた筈の男を裏切った事にではない、自分がアスランを愛していた事に気が付いたからだ
初めて抱かれた喜びと二度と抱かれる事の無い悲しみ、既に手遅れな事に気が付いて泣いた
ラクスは結婚式の日が近くになるにつれて後悔している自分に気が付いていた
最初はマリッジブルーだと思ったラクスは警護の人間達だけに旧クライン邸に居る事を告げて
三日が経っていた、でも求めていたのはキラでは無く自ら拒否した筈のアスランだと気が付いた
そしてアスランが突然目の前に現われたときラクスに言葉は要らなかった
「ご免なさいアスラン」
ラクスは新クライン邸に帰り着くまで泣いていた、まるでこれからの人生で流す全ての涙を
今出してしまう心算だったのかも知れない
アスランが目を覚ましたのは昼少し前でラクスが居ない事に気が付く
ラクスが居た形跡も無く、昨日あれほど貪欲に抱いたラクスの匂いもしない
慌てて周囲を見るが自分の荷物があるだけだ
「・・・・夢?、・・・・幻か?」
あまりにも鮮明に思い出す事が出来るラクスの泣き声と歓喜の声
この手にまだ残るラクスの柔らかい感触、あれが夢?やはり夢なのだ
二日後にラクスはキラの妻になるのだから有ってはいけないのだ
ラクスが俺に抱かれるなんてある筈がない、キラを裏切るなどする筈がない
ラクスを忘れる事ができない俺に誰かが見せてくれた夢
アスランはそう考えながらホテルに戻るためエレカに乗り屋敷を後にした
この時二人は監視されてた事に気が付かなかった
本来は監視ではなくラクスの護衛だったのだが突然現われた男の事を報告すると
その監視も役目となった
「ただいま屋敷を出ました」
「・・・」
「はい、間違い無くアスラン・ザラです」
「・・・」
「ええ、クライン議員も」
「・・・」
「はい流石に記録は残しませんでしたがクライン議員とアスラン・ザラは男女の関係を持ちました」
「・・・」
「報告書に書きますか?」
「・・・」
「わかりました、特秘として書類に書き処理します」
ラクスの護衛を担当していたのはある国防委員の直属の部下
国防委員の元へ緊急報告として上げられた報告書の内容が洩れてしまう
結婚式当日式場に予想より早く着いたアスランとディアッカ・イザークは花婿の控え室を訪問
「「「おめでとう、キラ」」」
「アスラン、それにディアッカ、イザークもありがとう、まだ3時間もあるのに早く来たね」
「ディアッカが急かすからだ、どうせ結婚式は二の次で女の子が目当てだろうお前は」
「イザーク、ラクス・クラインの花嫁姿を早く見たいと言って信号を悉く無視したのは誰だよ」
「二人ともこんな所で喧嘩するな、キラが困った顔をしているぞ」
「ねえ、二人とも悪いけどアスランと二人きりで話がしたい少しの間だけ席を外してくれる?」
「ああ二人とも久しぶりだったな、俺達はラクス嬢の処にでも先に行っているか」
「悪いね二人とも」
アスランを残して二人は部屋を出たが何故かイザークがその場から動かずドアの側に立ったまま
珍しく緊張している、イザークが動かないからディアッカも一緒にいることになる
二人が出て行った後
アスランは一昨日の夢の事があり流石に気まずく無言、キラも何故か無言
やがてキラが先に口を開いた
「ねえ、アスラン」
「どうしたキラ」
「カガリもメイリンもアスランの事が好きだったのにどうして結婚しなかったの?」
「その事かタイミングが合わなかっただけだよ」
「正直に答えてアスランは今でもラクスの事が好きなんでしょう」
「な、何を言っているラクスとキラは結婚するのだぞそれも今日だ」
「親友として友情の全てを賭けて本当の事を教えて嘘を付いたら絶交だよ」
「あぁ今でも好きだよ、でもそれは友人としてだ」
「友人として本当に?・・・・・・アスラン、その服を着てくれないかな」
キラに言われて指差された服を見た、それは花婿が切るべき純白の服だ
「何を冗談言っているキラ、これは今からお前が着る服だろう」
「違うよラクスもアスランの事を好きだよ、だからこの服を着るのは僕じゃなくて君だ」
「キラ、冗談は止めろ」
「冗談じゃないよアスラン、僕は知ってるアスランがラクスを女として抱いた事をね
それも僕と結婚する二日前だよそれともアスランにとっては唯の遊び?」
「あれは夢だ」
「どうして夢だと思うの?アスランにはラクスの感触がまだ残っているよね」
「!しかし」
「ねえ僕はいつもアスランから大切なもの貰ってばかりいるからラクスは君に返す
ラクスは僕と結婚する前にアスランに抱かれた余程の覚悟がなければそんな事をしない
ラクスは素直になってやっと自分の気持ちに気が付いた、それに僕ではラクスの望みを叶えて
上げられないからね」
「俺だってラクスの望みなんか知らない、知らないものを叶えらる筈がないだろう」
「ラクスの望みは自分の産んだ子供に子守唄を歌う事だよ、僕では無理だからね」
「だけど」
キラはドアに向かって声を掛けた
「イザークにディアッカ、二人ともそこで聞いているだろう?入ってきていいよ」
部屋に入って来た二人、アスランはディアッカにいきなり殴られた
「俺を大嘘付いて騙した罰だ、反省しろよ」
無言だったイザークがキラ・を見て話しかけた
「間男は殺されても仕方がない決闘でもするか?今のアスランになら勝てると思うがどうする」
そんなイザークにキラは寂びそうに微笑んだ
「僕は賭けに勝ったことになるのかな」
「賭けって何だよキラ」
キラの独り言にディアッカが質問する
アスランとイザークも首をひねったがやがてイザークはある事に気が付いた
「キラ、お前は最初からそのつもりだったのか」
アスランとディアッカはイザークの質問の意味がわからない
「1年前に婚約してから暫らくして気が付いたよラクスが見てたのは僕じゃなくて僕を通して
アスランを見ていた事にね、僕だってラクスの事は好きさでもね心がないラクスと結婚しても
耐えられるほど僕は強くはない直ぐに離婚する事になる多分ね、もしラクスがアスランを好きと
気が付いたらどっちを選ぶのか賭けだったよ、ラクスが選ぶのはアスランだと思っていた
まさか偶然に再会した二人が関係しちゃうとは思ってもいなかったけどね」
そんなキラの言葉にイザークが以前からの疑問を聞く
「アスハ代表や母親も呼ばない、この結婚式を計画したのはキラの考えだったのか」
イザークの言葉にアスランとディアッカもハッとなる
そうキラとラクスの結婚式なのにカガリも母親のカリダも招待されていなかった
されていたのはアスランとイザークとディアッカ、そして3人の事を知っている人達で
3人とごく親しい人物達だけだ
「他の人達にはどんな言い訳も出来る、だって母さんに結婚の事は伝えていない
カガリにはアスランに内密の話があるから結婚すると嘘の招待状を出したからと言ってあるしね
だから結婚式で新郎がアスランに変っても大丈夫、さあアスラン行って花嫁が待っているよ
もうラクスを泣かしたら承知しないからね」
キラとイザークに部屋を追い出され
茫然としていたアスランはディアッカに片腕を取られて行くが残された二人はしばし無言
「見直したぞキラ」
「元々ラクスは初めて会った時に僕に宣言したんだアスランの妻になるってね、僕との事を
ラクスも愛情と勘違いしていたし僕もラクスが愛してくれていると思っていた」
「でも普通は出来ないぞ、結婚式の当日に花嫁を他の男に渡すなんて惨めになるだろう」
「惨め?アスランに抱かれたのならラクスは死ぬまでアスランを忘れないよ、抜け殻のラクスと
結婚した方がもっと惨めさ、僕はそれ程お人好しじゃない
ラクスが自分の気持ちに気が付かなければ結婚する気にもなれたけど長続きはしないだろうね
・・・イザークだろう?ワザと情報をリークしたのは」
「気が付いていたか、キラが言う通り情報を流したのは俺だ、キラは賭けに勝ったと言ったが
それは俺も同じだ、キラと少し意味は違っていたが俺も賭けた」
「イザーク、君はラクスがアスランを本当は好きだと分かっていたんだ」
「当たり前だ付き合いが長いからなラクス嬢とは本人より俺の方が知っている」
そして二人は無言で部屋を出た
キラの代わりにアスランが新郎姿で現われその場に居た全員が驚き
それからが大変だった
ラクスはアスランに抱きついて泣き出しルナマリアとメイリン、ヒルダがラクスを宥めている
アスランはバルトフェルトに吊るし上げられ特にダコスタには延々と説教をされ
皆が落ち着いたのは式が始まる一時間前だった
「二人とも覚悟は出来た?僕に恥を掻かせてくれるのだから幸せにならないと承知しないからね」
「キラ、すまん」
「大丈夫、アスランにも罰があるから」
「キラ、罰って何だ?」
「アスランにはオーブを離れてプラントに復帰してもらうからね」
「しかしそれは」
「ラクスはプラントの重要人物なんだよ、結婚したからと言ってオーブに行ったら困る
別にザフトに戻ってとは言わないよアスランはラクスと一緒にプラントの舵取りをする
これが罰だよ」
「・・・わかった、カガリには謝る」
「ご免なさいキラ」
ラクスはまた涙を流している
「こらキラ泣かすのならアスランしろ真面目な顔をしているくせに結婚式直前の花嫁を
喰っちゃったど助平だからな」
特秘も何もあったものじゃない
イザークが秘密をばらしてしまったおかげでアスランはヒルダとダコスタに再び説教されている
よく見るとイザークもディアッカもそしてシンも顔が赤くキラも似たようなもので
式の前だというのに大分酒が入っていた
女性陣も相当飲んでいるようでメイリンは酒癖が悪かったのかアスランに絡んでいる
(振られた?恨みもあるよ多分)
どうやらルナマリアは泣き上戸のようでラクスに泣きながら抱き着いていた、
意外な事に一番騒ぎそうなヒルダは飲み始めて静かになりバルトフェルトとダコスタも
寡黙になった、そしてはしゃいでいたのはやはりディアッカとシンだった
そんな式場の喧騒から少し離れた所で
「どうだ、システムは正常に働いているか」
「入力エネルギー量が少し足りないが大丈夫、テスラコイルは正常だ」
「フィラディルフィアの時と違い1000Ghzの装置だ、確実にキラ・ヤマトを殺せる
惚れた女と共に死ねるのだ、慈悲を与えて上げるのだから感謝して貰いたいくらいだな
ひょっとして天国へ行けるかもな」
「そうだな、プラントの歌姫ラクス・クラインと一緒に逝けるのだからな」
「パトリック様とアスラン様の仇がようやく討てる」
「少し予定が早くないかモニターに花嫁が映っている・・・映りが悪いな」
「仕方ないさ、これ以上接近すると警戒装置に気付かれる」
祭壇に二人が昇り、誓いの言葉を交わしている
「やるぞ、システムON」
「了解」
凄まじい勢いで電気が消費され変換されたエネルギーが蓄積されてメーターは振り切れそうだ
メーターの横についている赤いランプが点灯した、充填率105%を示し二人はお互いの顔を見た
そしてお互いに頷きレバーが引かれ高周波と磁場発生装置が作動し正常動作を確認した
二人は先行している仲間に合流する為、武器を手に走り出した
しかし二人が装置から離れた後システムを制御するコンピューターが異常な反応をした事に
気が付くものは誰もいなかった
アスランとラクス
宿命なのだろうか
神は
宇宙の意思は
高貴な生贄を欲していた
そして悲劇の幕が切って落とされる
二人は仲間達に見守られて婚姻の誓いを立て指輪の交換、アスランが用意されていた指輪を取り
ラクスの指に填めようとした時に突然指輪が光り出した、
それだけではないラクスが身に着けていた耳飾も光り出している
そして強烈な頭痛がアスラン達を襲う、イザーク達は何が起きたのか判らなかった
アスランとラクスは靄が懸かったようになり発光した
発光現象が始まった時、同時に武装した男達が入り込んできて銃を乱射した
「キラ・ヤマト死ね」
男達は発光現象が治まり出した靄に向けて銃弾を打ち込む、現状を把握したイザーク達の中で
シンがすぐに応戦し緊急事態を察知したイザークの部下達が応援に駆けつけた
銃撃戦の結果暗殺者達の内3名は即死、残り4名の中で軽傷で済んだのが2名、2名は重傷
イザーク達に負傷者はいなかった
やがて発光現象が治まり出したが7色に発光を繰りかえし放電現象が起きていて近寄れない
比較的軽傷の男をイザークとディアッカが尋問した
「何をした貴様、答えろ」
男は素直に白状した
「は、は、は、無駄だ1000Ghzの高周波帯の磁場をまともに浴びた、もう生きちゃいない
何も残らないさ」
「なんだと貴様ぁ」
「これでキラ・ヤマトは死んだ、パトリック様の仇も取れた」
男の言葉にイザークは思わずよろめき男の事を思い出した
嘗てザラ邸で警備をしていた男だ
この男達は逆恨みでキラを殺そうとして二人を間違えたのだ
突然、男が倒れる
「この馬鹿野郎僕を殺すつもりならちゃんと確認してよ」
起き上がった男は自分を殴った男を見て唖然とした
「キラ・ヤマト、な、何故生きてい・・」
男は最後まで喋る事は出来なかった
イザークが殴りディアッカが蹴ったからだ
拘束された者への暴行は厳禁の筈だが誰も止めようとしない
勿論二人がやらなければ他の誰かがやっていただろう
発光現象が完全に治まり皆は祭壇を見たが何もなかった
用意された祭壇の燭台も何もかも存在していない
祭壇の下に何かが落ちていた
イザークが落ちていた物を手で掴もうとしたがどういうわけか床に食い込んでいる
それはアスランがラクスの指に填めようとしていた指輪の台座
残ったのは床に食い込んだ台座だけだったのだ
「ふん、キラ・ヤマトを殺せなかったがアスラン様を裏切ったラクス・クラインを殺せた
もうどうにでもしろ」
再び、男は殴られた
「貴様等のくだらない逆恨みでなんでアスランとラクス嬢が死ななきゃならない」
イザークの言葉に男は何を言われたのか理解出来なかった
「ここで結婚しようとしていたのはアスランとラクス嬢の二人だったんだ
やっと二人とも幸せになれる筈だったのにアスランが貴様等に何をした」
イザークの絶叫に近い声に男は愕然とした
「アスラン様?まさか、嘘だアスラン様はオーブに・・」
男は黙った、額に銃を突きつけられたから
「アスランとラクスを死なせたんだ望みどおり殺してやるよ」
銃を突きつけたのはかつてない殺意を出していたキラ
その殺気にイザークですら思わず後退するが
「止めろキラこんな下らない連中の為に手を汚すなアスランもラクス嬢もそんな事
望んじゃないだろう」
イザークの言葉にキラは引き金を緩めた
暫らくして男達はイザークの部下に拘束され連行されていった
残された者、その場に居た者
皆、無言だった
言葉が出ない
言葉が出るわけがない
「僕が悪かったのか?僕が邪魔をしなければ、僕が早くラクスの気持ちに気が着いてやれば
こんな事にはならなかったのか」
そう呟いてキラは涙を隠しもせず式場を出て行った
再び、皆無言
一人去り
また一人が去る
やがて誰もいなくなった
残されたのはお祝いの為に用意されたた花束だけである
一ヵ月後
プラント市民によりアスランとラクスは夫婦として葬儀が行なわれ
二人に起きた悲劇に市民の多くが涙した
葬儀を終えたキラはザフトを除隊してオーブへ帰る前にイザーク達と共にアスランとラクスの
慰霊をしようとしたが祭壇で再び発光現象が起きキラだけが巻き込まれる
キラが巻き込まれてから時々放電現象が起きる為にホールは閉鎖された
キラが巻き込まれた日から数日後
閉鎖されたホワイトシンフォニーホールの祭壇で再び発光現象が起きたが
その事は誰にも知られる事は無く
発光現象が治まった時、祭壇下には一枚の写真が落ちていた
淡紫色の髪をした双子らしい子供達で写真の裏側にはクラン、アインと
書かれていた
あとがき
「フィラディルフィアの時」の意味を知りたい方はお手数ですが
フィラディルフィア実験にて検索してください
説明すると専門用語ばかりで長い文章になるので