Mixingfate(交錯する運命)   作:nao_japan_fourth

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別世界の人物がこの世界に来た理由の一部が明らかになりますがその別世界は2つ
一つはこのseed世界と似た世界、もう一つはコーディネーターの概念が存在しない宇宙世紀世界


Mixingfate 第06話

 その時男は嫌な予感がした妻になった最愛の女性を街中で見失しなったからだ

 あの日からよほどの事が無い限り妻は夫から離れる事は無く

 心当たりを探すが見つからず日も暮れ、もしかして家に帰っているかと急いで家に帰ったが

 やはり妻の姿は見つからない

 自分も妻もこの世界の存在ではないのだから当然この国に友人や知人も居ないから焦りが募る

 その時

「ジオンのスパイがいるのはあの家だ」

 どこかで聞いた声がしたがそれどころでは無く急いで逃げなくてはならない

 自分も妻もこの国にとっては招からざる客なのは事実だ

 もしかして妻は彼らに捕まってしまったのか?

 何かあった時の為に決めてた場所を男は必死で目指して逃げた

 ようやく約束の地に着いたがそこには気を失った妻と嘗ては妻の婚約者だった男が居た

「ようやく来たね」

「なぜだ?」

「決まっているでしょう彼女を返してもらう為だよ、彼女には君は相応しくない」

 その時、妻の身体が光り出した

「何をした」

「君のいない世界に行く為だよ、彼女の望みは叶えられたからね次は僕の番だよ」

 妻の婚約者だった男も光り出した

「二度と・会う事・は無い・さよな・ら・ア」

 妻も妻の婚約者だった男も消えた

「彼女は、彼女が選んだのは・必ず見つけ出す」

 そして男も光り出しやがて男も消える

 

 男はベッドから飛び起きた

「夢か」

 着ていたシャツが汗でびしょ濡れだった

 男はモニターのスイッチをONにした

 隣の部屋、元婚約者の部屋が映る

 あの男から彼女を奪い返した、しかし彼女は決して自分を許そうとしない

 彼女を無理やり自分のモノにしようとした事も有ったが彼女に触ろうとするとまるで見えない

 壁が在るように彼女に触る事が出来なかった

 そんな時、裁定者と名のる存在が二人の前に現われて裁定者は自分に告げた

{お前は罪を犯した、罰として永遠に彷徨う地獄を与える}

 彼女は次元漂流者になったと裁定者は彼女にも告げた

 彼女が心を開かぬ限り誰も彼女に触る事は出来ない傷つける事も出来ない

 触る事が出来るのは次元漂流者として生まれた彼女の子供達だけだと

 そして裁定者は知っていたのだろう彼女に何かを告げて去った

 あの時あの男の子供を彼女は妊娠していた

 異空間に入り込んだせいか分からないが彼女のお腹は直に大きくなりやがて彼女は双子を産んだ

 あの男と彼女によく似た容姿の子供達

 子供達は直に大きくなったが何故か5歳頃で成長が止まってしまった

 自分達が居た世界によく似た世界や自分達が存在しない世界

 幾つもの世界を渡り歩いたが子供達は相変らず5歳位だ

 やがて子供達の目の輝きに自分への憎しみを感じ、この世界に流れ着いて偶然知り合った

 夫婦に預けた

 この世界は自分達が居た元の世界に似ているせいか時折来る連絡で子供達は成長を始めたと

 

{お前は罪を犯した、罰として永遠に次元漂流する地獄を与える}

 自分はそれほどの罪を犯したのだろうか?

 確かに自分の所為で散った命は少なくないけれどそれは自分と彼女の為だった

 悪夢を見る為に男は再び眠りに就く

 

 グリスターンが隠れた秘密基地の近くにある廃棄されたコロニー群

 その中の一基はコロニー外部から見れば廃棄されて当然に見えるが内部の設備は生きていた

 ここに生活している人間が二人居る

「痛みは治ったかい?」

「えぇもう大丈夫ですわ、でもどうしてでしょう今までこのような事無かったですのに

 あの子達を手放した罰でしょうか」

「罰が当たるとしたら僕だ、確かにあの夫妻が言う通り子供達を育てる環境では無かったからね

 君の所為ではないよ」

「あの人達に預けて10年になりますわ、あの子達は元気にやっているでしょうか」

「大丈夫、あの人達は信頼できると思う」

「あの子達も大きくなったでしょうね」

 モニターを見ていた目が一点に集中した

 表示されているのはプラントと月の通信量

「ここも同じような状況見たいだけどどこか違うね」

「あの二人は私達と同じようになるのでしょうか」

「罰を受けるのは僕だけでいい、彷徨えるオランダ人になるのは僕だけでいいよ」

「・・・」

「彼から引き離し巻き込んだ事で本当は君も僕の事を恨んでいるのだろ?」

「私は」

「素振りは見せないけど判っているよ、君は今でも僕を受け入れてくれない次元漂流者となった

 君を僕が力ずくで望んでも君自身が望まない限り受け入られる事はないけど永遠に会えない彼を

 君が忘れる日は来るのかな、あの子達と父親である彼を永遠に逢えなくしたのだからね

 人と関わりを持てば僕がした事が如何に不条理か理解る筈だよ、あの子達も僕を恨む事になる」

「・・・」

「人生は永き旅と誰かが言っていたけど僕の罪の旅は何時まで続くのだろうか」

 

 

 マイスとグラディスの心配してた通りアスランは軍属になる事を拒否し私室に閉じ籠もり

 ナイトが説得しても駄目だった、その所為で一時的に二人の仲が険悪になってしまう

 マイスとグラディスはシャロンに説得して貰おうとしたが彼女は説得する事自体を拒否した

 時間的にまだ余裕があるとはいえ早急に確定しなければ困る事になるので二人は焦る

 私室に閉じこもってしまったアスランを外に引っ張り出したのは意外な人物だった

 探索と称し基地の外でボートを操作して貰う為と称してアスランを連れ出した人物はアスランが

 会う事を避けていたラクスである

 

 基地を少し離れてからアスランはボートを止めた

 窓から宇宙を無言で眺めている歌姫の横顔はハロと戯れている時とはまるで別人で神秘的な

 雰囲気すら感じられるのだが、ただ何故かマイとどこか似ているように思え親近感を感じるのだ

 どこがと問われたら答えようは無いのだが

「私は宇宙を見るのが好きですわ」

 アスランに向けて喋ったのではないラクスの独り言のようだ

 ラクスは振り返りアスランをじっと見つめた

 何時もラクスと視線が合うと頭痛がするアスランだったが今はしない

「ラクスさんもそうですか僕も好きです。嫌いなMSに乗った時でも宇宙空間に出た時は

 何故か落ち着きました」

 アスランがそう答えるとラクスは少し微笑むが

「アスラン様、今日は私をお避けにならないのですね」

「え、避けてなど」

「いいえアスラン様は私を避けていました、今日こそは理由を知りたいと思いまして

 マイス中佐とグラディス少佐に許可を頂いてボートをお借りしました」

「・・・」

 アスランはシャルやマイならまだしも女性と二人きりになるのは苦手だ

 このような状況に追い込んだマイス中佐とグラディス少佐を恨みたくなった

「アスラン様、私の父はプラントの指導者の一人です」

「?それがどうかしましたか」

「プラントと地球連合の戦争をどう思います。アスラン様は私の父が憎いですか」

「意味がわかりませんがラクスさん」

 本当に分からないのかアスランは首をひねった

「アスラン様のお母様は戦争の犠牲となってユニウスセブンでお亡くなりとお聞きしました

 片方の指導者である父は憎しみの対象になります、違いますか」

 アスランはラクスの言いたい事が判った、プラントの指導者が憎いからその娘であるラクスをも

 避けているのかと聞きたいのだ

「たとえラクスさんがプラントの指導者の娘さんでも関係はありません、確かにプラントの一部の

 指導者に少しは恨みもありますがラクスさんを避けていた理由は違います」

 ラクスが少しホッとしたような顔をするよほど気にしていたようだ

「アスラン様、それではどうして私を避けていらっしゃるのでしょうか」

 ラクスと視線が合うたびに頭が痛くなり幻覚が見えるなどと言っても信じて貰えないだろう

 アスランは告げても良いのか困ってしまった

「それからアスラン様、フレイさんやミリアリアさん見たいにラクスと呼んでいただけますか

 私だけ敬語では差別ですわ」

 ラクスは頬を膨らませていたがそう言われてもアスランには呼び辛い

 彼女はプラントの民間人とはいえアイドルでそして歌姫と呼ばれるのに相応しい容姿と声、

 彼女の歌はバロンでも良く聴かれている、そんな女の子を呼び捨てに出来るはずも無かった

「そう言われてもラクスさんこうしませんか、ラクスさんが僕の事を呼び捨てにしてくれたら

 僕もラクスと呼びます」

 幼馴染のラスティーですら呼び捨てにしない程ラクスは男に対して礼儀正しい事を知ってる

 故に彼女には出来ないと思い提案したのだが

(ラクスが二人の時だけだがイザークを呼び捨てにしてる事をアスランが知ってる筈もない)

「はいわかりましたアスラン、約束ですわ」

 少し頬が赤かったがラクスはアッサリとアスランを呼び捨てにしたので困ったのはアスランだ

 だけど約束は約束である

「わかりました、ラ、ラクス」

「はいアスラン」

「私がラ、ラクスを避けていたのは、シャロンや他の皆には内緒にして貰えますか」

「はいアスランと私だけの秘密ですわね♪」

「それほどの事ではありませんが、初めて貴女とあった時の事を覚えていますか」

「はい、もちろん覚えておりますわ」

「貴女と視線が合った時の事です、幻覚と言うのか良く分かりませんが妙なビジョンや会話が

 頭の中で浮かびただの疲れから来たのだと思いました、でも医務室で再びお会いした時やはり

 同じ事があり貴女に合う度に頭痛がするのです、だから貴女に合うことを避けていました

 何故そうなるのかわからないのです」

「そうでしたか、どの様なものでしょうか」

「ハッキリと覚えていませんが貴女と僕が知り合いのような会話でしたが奇妙な事に今の年齢位の

 僕と貴女だった気がします」

「私も、初めて・・・きゃ」

 アスランに近寄ろうとしたラクスは床を張っていたコードによろめいてしまう

 そのラクスをアスランが抱きとめた、腕の中の視線が絡み合うラクスとアスランだが

 アスランとて男である無意識だろうが抱きしめている腕に力が自然と入る

 ラクスは抱きしめられた事が恥ずかしかったのか異性としてのアスランが怖くなったのか 

 慌ててアスランから離れた

「ご、ごめんなさい、ありがとうございます」

「だ、大丈夫ですか」

 女の子を抱きしめてしまった事がアスランも気まずかったのか狼狽え返事が吃る

「ア、アスラン、ありがとうございます」

「いえ、こちらこそ」

 ラクスは始めて男女二人きりだと言うことを認識した

 もしアスランが邪な気を起こせばラクスには抵抗できない

 でも心の何処かでそれを望む自分がいる事も気が付いてしまいラクスの動悸が止まらない

 ふと父シーゲルの顔が浮かぶ

 【流されては駄目です私には婚約者がいる居るのです、父の期待を裏切る事は出来ない】

 やがてラクスは乱れた心を静める為に宇宙を見た

 そんなラクスにアスランが

「もうだいぶ離れてしまいました、もう戻りましょう」

 ラクスに告げると同時にアスランはボートを反転させる

 落ち着きを取り戻したラクスは星を見ながら語り出す

「何故人は争うのでしょうか?私は戦いが嫌いです身を守る為と称する武器も嫌いです

 武器も無ければあの方は戦争に出る事も無くあの方を理解する為の時間も増えるのに」

 アスランは黙ってラクスの言葉を聴いている

「何故あの方は軍人に成ったのでしょうか?あの方はよく自由に生きると言っていました

 自由とはそれほど大切なのでしょうか?あの方が何を望んでいるのか私にはわかりません

 アスランにはわかりますか?」

 あの方と言うのはラスティーが言っていたラクスの婚約者の事だとろう

 嘗ての同級生であるキラがラクスの婚約者だともちろんアスランは知らない

 婚約者の事を知らない筈のアスランに問うほどラクスは悩んでいる

 そしてラクスが言っている事の一部はアスランが悩んでいた事でもある

 母を失ったアスランはもちろん戦争が憎い、地球連合が彼女達に行った行為を目の当たりにして

 考えた事が二つあった

 ラクスが言った通り人は何故争うのか?

 戦争を望んでいるのは利益を得る人達と一部の狂信者達だとマイやシュンも言っていた

 あの戦艦のクルー達も戦いなど望んでいないと思うけど

 戦いになれば人間としての良識など必要無いどんな卑怯な事をしてでも生き残ろうとする

 アスランにはその事自体が戦う事を正当化している気がした、

 身を守る生き残る為といいながら武器を敵に向け、守る為の武器であっても相手を死に至らす

 では彼女の言う通り武器が無くなれば戦いは無くなるのか?守る為と言う大義名分が存在する

 限り戦いは無くならない、人は自分の身体ですら凶器とする事が出来るつまり肉体ですら武器に

 成るのだから武器を無くす事などできるはずが無い

 まだアスラン・ザラと呼ばれていた頃に父パトリックから言われた言葉

《人には役割がある、人の為に何かを生み出す者安らぎを与える者望みの為に人を導く者

 人を守る者、お前は何になりたい》

 まるで今の状況を予言していた言葉だ

 シャルや歌姫は人々に安らぎを、でも今の僕には人の為に生み出す者になれない

 バロンに帰れなければ何も出来ない、ラクスの婚約者もそう思い人を守る者になったのか

 それともラクスが言うように自由を求める為に軍人に成ったのかもしそうならばおかしい

 軍人とはある種の必要悪で守るために必要な暴力だ僕もそう思う

 でも自由を求める為に自分達以外の人達を武力で押さえつけまた敵対する

 そこに相手の自由は無い、自分が自由なら他人の自由は無くてもよいのか

 信じるものや価値観など人によって違う筈なのに

「ラクス、その方とは貴女の婚約者の方ですか」

「はい」

「僕はその人の事を知らないので批評できる立場ではないけど婚約者の方も貴女が大事だから

 貴女を守る為に軍人に成ったのではありませんか?」

「あの方は私を好きではありません、あの方から私は好きだと言われた事がありませんわ」

「そうでしょうか、それは一方的な考え方ではないですか?本心を人には明かさない人もいます」

「・・・」

「では伺いますが何故婚約をされたのです?それともさせられたのですか?貴女の意思は

 無かったのですか?」

 この事を聞くのは嫌だったのだが知りたかった父パトリックとラクスの父親が二人の意思に

 関係なく婚約させたのかアスランはどうしても知りたかった

「私の意思です、確かに政治的な配慮というものによる婚約でしたがあの方が嫌いでは有りません

 好きというより憧れでしょうか自由を失わないように生きてゆく姿に憧れました

 私も本当に嫌いでしたら拒否は出来ました」

 選択権は与えていたのだな父上もラクスの言葉に少しホッとしたアスランだった

「ですが何故、軍人に成る必要が有ったのでしょう、確かに私は戦いが嫌いですが現状では

 戦う方が必要なのを否定するほど愚かでもありません、それでもあの方は軍人に成らなくても

 指導者としての道もあった筈です、私と結婚の約束をしたと言うのはそう言うことなのです」

 おそらくラクスは今まで誰にも相談できなかったのだろう

 父親は婚約者との結婚を望んでいるから、相談できる筈も無かった

 母親はラクスが幼い頃に他界していたおりラクスが相談できる人は誰もいなかった

 出会ったばかりのアスランに問うほどラクスは心が追い詰められていたのかも知れない

「婚約者の方が何を考えてザフトに入ったか分りませんがラクスを守る事も心の中にあったと

 思いますよ」

 アスランはラクスにそう告げたがラクスの婚約者がラクスの為に入ったとは思えなかった

 何故ならラクスが人質に成っていた事を知っていながら攻撃をしたからだ

 勿論、軍人だから命令に逆らえなかったのかも知れないがボートを何度も攻撃したのは

 ラクスが死んでも良いと考えたからではないだろうか

(これはアスランの誤解である、ラスティーが指摘した通りキラは状況判断を誤っただけだ

 脱出ボートに乗っているのを連合の兵士と思ったから攻撃した

 もっともラクスも一緒に居た可能性を最初から考慮していないのはキラの浅慮

 アスランがいなければラクス達は死んでいたからアスランの言う事も間違ってはいない)

「私はあの方に見捨てられたのでしょうか」

 やはりラクスもアスランと同じ事を考えたのだろう

 この時のラクスは初めてあったフレイの時と同じように儚く感じられた

 ラクスはアスランをじっと見つめていたがやがて周囲の視野が狭くなり

 《アスランと私の子供は紫の髪になるのでしょうか》

 《ハロはアスランと私の婚約の証ですわね》

 《私はアスランの妻になります》

 ただ呆然としながらもラクスはアスランが見た幻覚とはこの事かと思う

「アスラ・・・・・」

 言葉を出そうとしたラクスだが声を出し切る前にラクスは倒れた

 アスランが抱き止めたので床に倒れる事は無かったがラクスを見ると既に意識を失っていた

「ラクス、ラクスどうしました」

 声を掛けてもラクスはビクともしない

 少し躊躇いながら胸に手を当て鼓動を確かめる心臓はとりあえず正常のようだ

 精神的な疲れかもしれないとアスランは思った

 アスランは腕の中で意識の無いラクスを見つめる

 腕の中の体温と重さ触れた胸の隆起、出会ってから初めてラクスに女を感じる

 アスランも健康な男だ魅力的な女性が無防備で腕の中にいる状況で変な気を起こしても

 仕方無い

 ラクスの顔にアスランは近続く、しかし頭を振り顔を離した無防備の女の子にそんな事を

 するのは卑怯者のする事だ

 それでも暫らくラクスの顔を見つめていた

         この娘もフレイもミリアリアも今は守ってくれる人がいない

 ・・・母上、許してくださいますか僕はこの娘もフレイもミリアリアも守りたい

 生きていて欲しいと思います、今のこの娘達には守る為の力が必要です

 望んで得た力ではないですが僕にも少しは力があります、再び合う時には怒ってもいいです

 だから許して下さい僕はMSに乗ることにします母上

 ラクスを抱いたままアスランはコントロールパネルを操作する

 秘密基地が出すビーコンに合わせ自動操縦に切り替えた

 通信で連絡をしたいが何処で遠距離通信を傍受されるかもしれないだからそれは出来ない

 椅子に座りラクスを抱え直すがそれでもラクスは目覚めない

 アスランは焦りつつも冷静になる、邪念を祓うためにも必要だった

 この時アスランが欲望に流されていたらラクスの人生は変っていたと後に語っているように

 この時がラクスの転換点だったのかもしれないがアスランにとっても転換点だった

 やがて秘密基地に接近、近距離通信のできる距離に近き通信回線を開いた

「アスラン遅かったな」

 予定より帰還の遅いアスラン達を心配して待機していたグラディスがモニターに映り

 声をかけてきた

「少佐、医療班を用意してもらえますか。歌姫が倒れました」

「なに、大丈夫か」

「心音などは正常ですからおそらく疲れだと思います」

「そうかわかった、用意させる」

「それからマイス中佐に通信回線をつなげて貰えませんか・・秘密回線で」

「?わかった」

 暫らくしてマイスが顔を出す

「どうしたアスラン君、歌姫は無事か」

「はい大丈夫だと思います」

「話があるのだろう」

「マイス中佐、約束してくれますか」

「何をだ」

「例えどんなに困ってもラクス達を犠牲にしないと連合のような事はしないと約束できますか」

「?状況にもよるが彼女達が望まない事は絶対しないと約束しよう」

「男として元ザフトの誇りに賭けて約束してくれますかマイス中佐」

「約束しよう、私の人生全てを賭けても良い」

「・・・中佐、臨時の軍属の件ですが了解しました」

 ラクスは説得などしてはいないが皆はアスランがラクスに説得されたと思ったらしい

 

 女が急に倒れ男は慌てた

「どうしたんだ、再びだなんて」

「何でもありません、もう大丈夫ですわ」

「そうは言っても」

「本当に大丈夫、・・・・ただ」

「?」

「ただ何かが始まった気がします、あの頃の私が見えました」

「・・・」

「私達に関わる何かが」

「おそらく君の子供達にも関わる何かだろう」

「でも今まで通りにするしかありませんわ」

「そうだな君は干渉してはいけないのだ、次元漂流者なのだから」

「辛いですわ」

 

 

 月面、地球連合宇宙艦隊基地

「それで彼等はどうした」

「はいユニウスセブンで慰霊団を攻撃した連中の指揮官や士官達は大半が事故で死んだそうです」

「そうか・・・残るはAAの連中だな」

 副官は苦々しい顔をしている司令官に話を続けた

「艦長だった人間は軍を退役後、祖国に戻りましたが予定通り何者かに誘拐され行方不明に

 副官だった女性士官は退役後捕捉前に月の独立都市バロンに移住しました

 彼女から漏れる可能性がありますのでスパイを潜り込ませようとしましたが無理でした」

「バロンか目障りな都市国家だな」

「そうは言っても独立国です」

「わかっている、オーブに匹敵する技術を持ちプラントとも親密でオーブと違い政権首脳の多くは

 コーディネーターだ我々に力を貸す訳が無い」

「例のプラン、発動しますか」

「まだ早いな、先にオーブだ」

「私見ですがオーブよりバロンを先に片つけた方が良い気がします」

「無理だな理由が無い、オーブを取り込んだ後で無ければ他の都市国家の反発が考えられるから

 時期尚早だ」

「わかりました」

「しかしAAを攻撃したMSは何処の所属だったのかまだわからないのか」

「情報が少なすぎますねフラガ少佐が言うにのは全く新しい技術体系の基に作られたらしいと」

「少佐?彼は大尉ではなかったか」

 指令官は首をひねりながら副官に尋ねた

「飴と鞭、口封じですよ」

「彼等が使えるようになるまではエンデュミオンの鷹はまだ必要だからな」

「アズラエル理事の部隊ですか」

「そうだ彼等が使えるようになればザフトのMSを恐れる必要は無い」

「残るのは謎のMSを開発した国家、いや組織ですか」

「ザフトでもない、連合でもないとなれば後はオーブしかないがそれもありえない」

「バロンと言う事はありませんか」

「確かに技術力は高いがMSの基礎技術があの国には無い筈だMSを製造するのは簡単ではない

 最新の技術と基礎技術の蓄えが無ければ開発する事すら出来ないそれがMSだ考えても見たまえ

 MSの基礎技術を作ったアジアの島国は今でもMSを製造できない

 バロンはその逆なのだオーブとは基本的に違う」

「そうでしたね」

 副官はそう返事をしたが別の事を考えていた

 確かにMS製造や開発には基礎技術が必要だが何処からか手に入れたらどうなる?

 オーブより技術力があるとされるバロンだそうなれば強力なMSを開発するかもしれない

 その可能性まで否定しても良いのだろうか?少し探りを入れておくべきだな

 副官は真実に近い事を言い当てた

 ザフトからの基礎技術の提供によりバロンは独自でもMSを開発できる能力をすでに得ていた

「アラスカ作戦は順調のようだな」

「そうですね、あとは餌をどうするかです」

「アズラエル理事はプラントに情報網を作ったと聞いたがなんと言っている」

「あまり上手く行っていませんね、情報網を統括させようとした人物に接触できないようです」

「ふん民間人に何が出来る。情報戦は素人が考えるような甘いものではない」

「しかし、だからこそザフトやプラントの油断を突けるのではないでしょうか」

「兎に角ザフトの主力を一気に叩く事が出来る少ない機会だ慎重に進めろよ」

「はい」

「成功すればプラントなどすぐに消滅させれるのだ、この宇宙には不純分子などは要らない

 奴らなど消し去ってしまう事が出来る」

「・・・」

 司令官はブルーコスモスの強硬派でありそしてユニウスセブン攻撃を直接指揮した男だった

 

 

 バロンシティー防衛軍本部、防衛軍の総参謀長室

「プラント政府は例のMSを我々の開発したMSと疑っているのだな」

「間違いありませんね、市内にいるプラント政府の情報員の動きが活発になっています」

「ザフトの技術部はなんと言っている」

「公表はまだ待って欲しいとだけです」

「緊急事態だというのがわからないのか全くこれだから技術者と言うのは」

「そうですが総参謀長。かえって良かったかも知れません」

「?」

「バロンとプラントが一部とはいえ繋がってる事が公になれば地球連合の攻撃対象にもなります」

「そうだな地球連合も黄道同盟の嘗ての主力がバロンへ移籍しているとは思ってもいないだろう」

「問題は彼らの処遇です、判断を誤ると連合・プラント双方から攻撃されます」

「精鋭部隊を出すか?使用された艦やMSは破壊して乗員達とゲストを連れ帰る」

「彼らから連絡があった時点で実行しすれば上手く言ったかもしれませんが今からでは遅いです

 彼等も監視を強化していますから部隊を動かせば追跡されますね」

「ザフトに連絡を入れてゲストを迎えに行かせるのは・・・・・駄目か」

「そうですね、ザフトにも面子がありますから彼等はただでは済まないでしょう」

「如何にも成らないか」

「賭けですが二つほど手があります」

「どういう手だ」

「一つ目は先程の総参謀長が言われた手の応用ですが彼らを我々が葬り去る」

「ば、馬鹿な」

「もちろん一つ目は行う気はありません、もう一つはバロンと証明されるものを全て排除し

 独立集団として動いてもらう」

「それしかないか」

「補給等は秘密の補給基地を数箇所使用して貰えれば2~3年は持つ筈人的補充はする心算です」

「兵装の補充はどうするのだ、制式機の補充は楽だろうが実験機の補充はどうする」

「実験機は現在あるのが最後で補充は出来ません、共同開発のMSを改良した別の実験機を

 データ収集の意味も兼ね与えようかと思っています」

「そうか、人選はどうする」

「訓練センターのキサラギ夫妻と部下のアラン・ジーノが名乗り出ていますし夫妻の双子の子供が

 臨時に軍属になりました、両親と友人を心配したのだと思います」

「大丈夫なのかキサラギ夫妻はわかるがまだ子供だろう、18歳だったなあの双子はもう子供と

 言えないか、それにアラン・ジーノの正体は未だ明らかになっていないのだろう」

「双子に関しては大丈夫です適正検査を済ませました、優秀ですねあの双子達は

 アラン・ジーノに関しては少し奇妙な事がありますがおそらく大丈夫でしょう」

「君の判断に間違い無いだろう、問題は連合・プラントを誤魔化して彼等と接触させるかだな」

「それが最大の問題ですね」

「船団を組ませてユニウスセブンへ向かわせようか」

「?」

「前回の慰霊団参加は公式ではなかったしブラフにもなる、途中で脱落艦が出る事は良くある」

「しかし合流に時間が掛かりますが」

「しかたがない我慢して貰おう」

「指揮官はどなたにしますか?」

「マイス中佐を准将に昇進させて指揮を取らせよう、グラディスも中佐に昇進させる」

「何故でしょうか」

「キサラギ夫妻は二人とも中佐だぞ忘れたのか?アラン・ジーノも確か少佐だったはずだ」

「失念していました」

 戦略が決まって落ち着いたのか二人はくつろいでいたが総参謀長がふと思い出したように

 副官に尋ねた

「そう言えば、アラン・ジーノの奇妙な事とはなんだ」

「プラントの婚姻統制局から連絡が有りまして登録されている者に同一遺伝子保持者がいると

 言う事です」

「なんだそこまで判ったのなら」

「同一遺伝子保持者の年齢が16歳で該当者でないと何処の誰とも教えてくれませんでした」

「恐ろしく確率の低い偶然の一致なのか、彼はどう見ても25~6歳だからな」

 

 

 増援部隊出発日、キサラギ邸前

「姉さん薬は?」

「効いているはずよ、4人とも明日まで起きないしメイドの皆さんもね」

「でもどうして?それにジィーノにはどう言い訳するの」

「お母様から連絡が来たの時満ちるとね、ジィーノには何とか誤魔化すわ、それにジィーノは

 何時も私達に優しいから大丈夫よ」

「そうだね、義母さんや義父さん、義兄さん、義祖父様とはこれでお別れだね」

「そうよ寂しいけど、私達も次元漂流者なのだから仕方がないわ」

「僕はあの男が赦せない」

「私もあの男は恨んでいるけどお母様は望んで次元漂流者に成ったのではないのよ」

「わかっているよ」

「お義母さんやお義父さん達はこの日が来る事を覚悟していた筈よ」

「そうだね、未練を残さない為にも行こうか姉さん」

「「・・・」」

 二人は無言でキサラギ邸を離れるが一度振り返る

 少しの間見ていたがやがて振り切るようにキサラギ邸を離れて行く

 二人がここに戻る事は二度と無いのだ

 

 

 プラント、某所

「それで歌姫の消息はまだ分からないのか」

「ああ、クルーゼ隊の邪魔をした連中の正体もまだ不明だ」

「困ったな、次のステップに進ませようとしたのに」

「本気なのかその計画は」

「本気だ、それには歌姫を味方に付ける必要がある」

「しかし歌姫が思惑通り動かなかったら終わりだぞ」

「その時は情報を市民にバラすと脅す、歌姫は全て失う事になる」

「だからと言って歌姫をレイプするなんて事がばれたら我々も全て終わりだぞ」

「分からないようにやるさそこは抜かりない、元々シーゲルが悪いのだ」

「だが肝心の歌姫が行方不明では」

「プランBの実行準備をしていた方が良いかも知れないな」

「それは最終手段でまだ早いがシーゲルの動向はリークしてある」

「どちらが人類を指導するのに相応しいかナチュラルの愚か者どもに思い知らせてやる」

「そうだ、ユニウスセブンの報復を、ナチュラルを全て滅ぼすのだ」

 

 ラクスが目覚めた時、側に居たのはラスティーとミリアリアの二人

 最近、この二人は仲良くて会話も多い

 なんとなくラクスは目を開けず二人の会話を聞いていた

「だからさっきの事は決してラクスに言っては駄目だよ、ラクスは見かけより頑固なんだ」

「でもラクスさんの婚約者はラスティーさんの仲間でしょう?その方が良いのじゃない」

「キラって言うのはラクスの婚約者の名前だけどあの二人が一緒に居るのを見た時違和感が無くて

 お似合いだと思った」

「それなら何故なの」

「ラクスが無理をしている事に気付いたからだ」

「無理を?何を無理しているというの」

「ラクスはキラを理解しようとして無理してる、だがキラの考え方を受け入れる必要は無い」

「でもそれはラクスさんの自由だわ、少なくてもラスティーさんが決める事ではないと思うの」

「そんな事わかっているさ、でもアスランとラクスが並んでいるのを見るとラクスは自然なんだ

 あのラクスは俺が幼い頃から見ていたラクスだ、アスランは初めて本当のラクスを知人以外で

 引き出した男じゃないかな、それだけじゃなくラクスはアスランを異性として意識している筈だ

 本人はまだ気が付いていないと思うけどな」

「でも何故?その事をラクスさんに告げてはいけないの」

「幼友達だし俺だってラクスの幸せを願っている当然だろう、でもなラクスの婚約にはプラントの

 政治が絡んでいる、プラントがその事でガタガタになるのを黙って入られない」

「脱出ボートを攻撃してきたのはラクスさんの婚約者の人なんでしょう?つまりラクスさんが

 どうなっても良いと考えていたからではないの」

「あれはキラの勘違いだ、冷静になって考えればあの状況では俺でも攻撃したかも知れない」

(ラスティーは根本を間違えてる、その前にイザークから情報を得ているのだから勘違いでは無く

 自身が叫んだ通り状況判断の重大なミス)

「でもその事をラクスさんは知っているのよ、ラスティーさんが叫んだ事を聞いているのだから

 例え誤解であろうと事実でしょう、今まで通りに接することなんか出来無いと思うわ」

「本音を言えば俺はキラは嫌いだ、ラクスが望むならアスランと付き合って欲しいくらいだが

 アスランはフレイさんの方が気になっている見たいだからラクスが泣く事になる」

「そう?でもアスランさんはフレイにそんな感情を持っていると思えないけど」

「まさか」

 その時、医務室のドアが開かれ、シャロンが入って来た

「ミリアリアさん交代ですよ」

「え、もうそんな時間?それではお願いねシャロンさん」

「はい、わかりましたお疲れ様」

 ミリアリアが出るのに合わせラスティーも医務室を出たが先に廊下に出てたミリアリアが

 出てきたラスティーに再び声を掛ける

「確かにアスランさんはフレイを気にしているけど、フレイを恋愛対象して見てるのか分からない

 フレイもアスランさんを気にしているけど好きになったと思い込もうとしてる気がするの」

「そんな馬鹿な事が」

「アスランさんのお母さんはユニウスセブンで亡くなったと聞いたわ、その事がフレイの中では

 消化しきれていない気がするの」

「!贖罪か?」

「ええ、アスランさんとフレイは出逢うべきではなかったのかも」

 

 ミリアリアとラスティーが出て行き、狸寝入りをしていたラクスは起きようとしたが

 シャロンが独り言を言い出したので起きるタイミングを失ってしまう

 

「全くお兄様も意気地が無い、たとえ眠っていてもラクス様にキスのひとつ位しても

 罰は当たらないのにね、それにしてもお兄様はモテモテだねラクス様といいフレイさんといい

 どうして皆お兄様を好きになるのかしら?ラクス様、寝たふりしてないでお答え下さる?」

 突然シャロンに狸寝入りをしていた事を見抜かれて恥ずかしそうにベッドで起き上がる

 シャロンがラクスを見ている瞳に嫉妬の色は無い、純粋に疑問?と言う感じだ

「シャロンさん、私は別にアスランの事を好きという感情はありません

 でも誤解なさらないでアスランの事を嫌いと言うわけでもありませんから」

「!ふ~ん、それはどうでも良い存在と言う事なの?」

 シャロンはラクスの言葉を聞いて何故かニコリとした

(昨日まではお兄様の事をアスラン様って言ってたのにねぇ)

「先日お話した通り私には婚約者が居ります、私は他の男の方をその様な対象として

 見てはいけないのです」

 ラクスは先ほどのラスティーが言った言葉が頭から離れない

 《ラクスの婚約にはプラントの政治が絡んでいる》

 

 

 アスランがフレイさんを好きなら彼の側に私の居場所は無いのですね

 そうならばプラントの為に生きる事は間違い無いのでしょうか




初期のアスラク好きでした
少し急展開前の手詰まり感ですか、上手くいきません
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