Mixingfate(交錯する運命)   作:nao_japan_fourth

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修正


Mixingfate 第07話

「だから、その案は駄目だと言っている」

「しかし、わが国の立場が悪くなります。代表、再考を」

「くどいわが国の基本理念は変える事はしない、下がれ、これ以上の論議は不要だ」

「・・・」

 副代表はそれでも何か言いたそうだったが諦めて部屋を退室した

 部屋に残されたのは二人

「代表、ウナトの言う事にも再考の余地があるかも知れません」

「ホムラ、お前まで」

「そうではありません、私もわが国の基本理念を破りたい訳ではありませんが兄上

 プラントが我が国を敵性国と認識している以上防衛手段の1つとして考えておくのも

 必要な事ではないかと思いますが」

「連合と同調などしたら、今度こそプラントはわが国を敵対国と認識する、一度失った信用を

 再び回復するのは容易ではない」

「先に攻撃してきたのはプラントではありませんか、非難されるべきはプラントですよ代表」

 そんなホムラにウズミが言い返した

「それも中立の立場を利用して連合の兵器などを作っていたオーブが悪いと言われたら

 如何するのだ」

「そう言う事実はありません」

「無駄だ、以前ならその論法でプラントも引き下がっただろうが今回は証拠がある」

「それは強奪されたGAT-Xシリーズの事ですか」

「そうだモルゲンレーテの社名入りのMSが4機も連合の正式ナンバーをつけている」

「ではプラントと取引をしては如何でしょう、GAT-Xシリーズのノウハウを引き渡すと言う

 条件では、彼らもわが国の技術を欲しいでしょう」

「それでは連合が黙っていないだろう、それにその手はすでに使えなくなった」

「使えなくなったとは?」

「GAT-Xシリーズ5機がすべて遣られたそうだ」

 ウズミは少しため息を付きながらホムラの問いに答えた

「5機とも・・・やられた?」

 ホムラはウズミの言葉に驚いた、陣営が違う5機がどうしてと思ったのだ

「先程キサカから連絡が有った、ザフトの4機と連合の1機が所属不明のMS1機に遣られた

 AAも大気圏突入が出来なくなり連合の月基地での修理が必要だ、それも同じMSに

 遣られたそうだ」

「連合とザフトを敵にしている勢力があると言う事ですか兄上」

「詳しい事はまだ判らんがザフトと戦ったのは偶発的だったらしい、問題はそのMSがGAT-X

 シリーズよりも全ての面で上回っていた事だ、つまり我がオーブより優れた技術力を持つ組織

 または国家がプラント以外に存在すると言う事だ、当然連合やプラントの関心はそちらに向く

 結果オーブは軽視される」

「我々が今連合側に同調したらプラントは今度こそ躊躇うことなく攻撃対象にオーブを選ぶと

 言う事ですか」

「そうだ連合はGAT-Xシリーズの後継機を開発中らしいが間に合わないだろう、連合へ

 同調するとしても時期が早すぎる」

「ですが、いずれプラントと対立するのでしたら・・・」

「マルキオを通じてプラントのクライン議長と会談をセッティングしている、議長自身は

 乗り気なのだがプラントにも事情があるから極秘の会談になるだろう」

「兄上、今は時期的に不味い連合を刺激します、それに会談場所は?警備を考えると

 独立コロニーでも危険です」

「とりあえずコペルニクスの予定で調整している」

「コペルニクスですか分かりましたそのつもり準備します。そういえばカガリは今何処に?」

「馬鹿娘は月へ向かってる頃だ、キサカの目を盗んでルーオと一緒に民間機で月へ向かった」

「ルーオも一緒ですか」

 ホムラは苦々しげに、ウズミに聞いた

「ルーオには内密にカガリの護衛を頼んのであるからな、あの二人は存外仲が良いようだ

 カガリとユウナとの婚約は早まったか」

「私の立場では何とも言えませんな」

 

 バロンシティーを発ったユニウスセブン公式慰霊団は連合軍からの干渉などを退けていたが

 ある宙域で護衛の為に随伴していた戦艦1隻が故障、護衛艦5隻を随伴に残し慰霊団は

 ユニウスセブンへ向かった、連合軍・ザフト両軍ともしばらく戦艦の動向を監視していたが

 故障とわかり興味を失って再び慰霊団追跡監視を再開、離れて行く

「どうやら両軍とも故障と思ってくれたみたいね」

「そうですね艦長・・・・」

 アーサーは複雑な顔をして去って行くザフトの艦艇を見ていたが

 そんなアーサーの横顔を見ていた艦長が声を掛ける

「皮肉だわね、あの時攻撃したMSを救援する為の部隊に配属されるなんてね、あのパイロット

 私を許してくれるかしら」

「艦長の所為ではありません、すべて私が独断で・・・」

「違うわ結局承認したのは私よ責任は私にあるの素直に殴られましょうか?二人とも」

「判りました、二人で謝りましょう」

 新任の艦長の名をタリア・ヴィヴィアン、副艦長の名はアーサー・トライトン

 二人はアスランがAA攻撃後にグリスターンへ向かう途中に遭遇したザフトの哨戒部隊を

 率いていた

 アスランを攻撃したのだがすべての攻撃はかわされて逃げられた

 その事で以前よりタリアの事を良く思っていないザフト軍人事部に目をつけられタリアは

 ザフトから警備員に左遷されアーサーも資料室に左遷、その待遇に二人とも切れザフトを

 除隊してバロンへ移住した

 幸い嘗てアカデミーの同期生がバロン軍に在籍していたおかげですぐに入隊でき

 そして初任務はグリスターン救援だった

「でもバロンにMSを開発する能力があるとは思わなかった、それもあれほど強力なMSをね」

「この艦に積まれているMSのデータを見ましたがザフトのMSと共通した部分が多く見られ

 バロンとザフトは裏で繋がっている可能性があります、その事を考えるとMSが優れていると

 言うより、あのパイロットが異常に強いのでは?」

「そうなるとますます皮肉ね、私達は本当にずぶの素人にやられたと言う事よ」

「パイロットは軍人ではないからMSパイロット訓練を受けている筈がありません

 コーディネーターである事を差引いても彼自身がザフトの赤クラスより強いのではないかと」

「考えて見ればザフトのエース部隊であるクルーゼ隊が勝てなかった相手だわ、アーサーが言う

 通り強いパイロットである事は確かね」

「ただバロンのMSはメインの部分は全く新しい技術体系の基に設計開発されていると思われ

 特別な機能が有りその所為で勝てた可能性も否めませんが」

「その可能性もありね、アーサーの推測が正しければバロンとザフトは何の為に繋がっているのか

 留意しておく必要が有るけどバロンはプラントと違う、それに私たちを受け入れてくれた」

「私も始めは抵抗がありましたが彼等は分け隔てもせずに接してくれる姿を見てこのありようこそ

 ナチュラルとコーディネーターの人類が目指す未来の姿のような気がします、例えプラントと

 バロンが裏で繋がっていようとナチュラルとコーディネーターの双方の為になるから私は

 バロンに命を賭けるつもりです・・・おかしいですかね」

「アーサー、あなたは変わったわね」

「そうですか?」

「いい意味でよ私も変わらなければいけないわね」

「・・・」

 アーサーは元々楽観主義者と言うよりお調子者の処と早とちりなどをする処があった

 そんな彼だが本来は優秀な軍人である、でなければ若い年齢で戦艦の副艦長になれる筈が無い

 今回の事で彼の考え方が変わってしまったようだ

 

 

 女は何かが近続いて来るような感じがしていた、それが子供達かそれとも何か別のものか

 この世界に飛ばされてから初めて感じた感覚、心が高鳴っている事に途惑った

 もうすぐ成長した子供達に合える喜びなのか、それとも不安か実の夫から引き離されても

 あの男といる母親を子供達は如何見ているのだろう、でも夫と再会する為にはあの男と

 いるしかない、その事をあの子供達は理解してくれるかしら

             私は如何したい?如何すれば良いのでしょうか

 

 

 

 ある場所で二人の人間が怪しげな会話をしている

「では間違いないのだなコペルニクスで会談が行われる事」

「ああ、間違いないよ、僕が誰か知っているでしょう」

「それはわかっているさ、だが君の行為は所属する国家を裏切る事になるのだぞ」

「裏切る?違うよ、大勢がどうなるか予測できない指導者達は国を滅ぼすのさ、僕の行為は

 救国の為なんだよ、だからたとえ婚約者の父親でも排除しなければならない」

 まだ少年の面影を残す青年の言葉を内心不快に思いながら聞いていた

「あの方はもっと早く引退すべきだった。そうすれば歴史に僕の義父として名を残せた」

 聞いていた男は心の中でつばを吐いた

(名を残すのは確かにお前だ、義父になる男を裏切り国家を裏切った唾棄すべき存在として)

「ところで、婚約者殿の行方はわかったのかい」

「いや、あれから何処へ行ったのか情報部や軍が躍起になって捜しているらしいが

 いまだ行方不明だよ、ボートだからどこかに隠れる事は出来ない筈なのにね」

 男は青年の答えに失望した

 無理をしてまで青年と接触したのは青年の婚約者の情報が得られるかもと思ったのだ

 青年にとって義父になる筈の男の立場

 軍での影響力を考えての事だった

 情報無しか、但しBIGな情報を手に入れた

 プラントの議長とオーブ代表の極秘会談か、使えそうだな

「そうか、それは残念だ早く見つかることを祈っているよ、それではまた」

「ああ、また」

 二人は見知らぬ人のように分かれた

 この青年が男に漏らした情報によって、全ての事態が動くことになる

 その事によって己の死を招く事になるとは青年は夢にも思ってもいなかっただろう

 

 

 連合とザフトの監視船が去って、ようやく動き出した増援部隊だが

 秘密基地に直接行こうとはしなかった万が一を考えて迂回をしたのだが

 L3方面からL6方面へ移動していた時に救難信号をキャッチ、タリアとアーサーは思わず顔を

 見合わせた、秘密任務を帯びた部隊である下手な選択をしたらザフトや連合に知られる事になる

 悩んだ二人はタリアと同格のアラン・ジィーノ少佐に聞いてみた

「当然、無視すべきですね」

 ジィーノ少佐がアッサリと即答したので、タリアは思わず反発して言い返した

「この信号は民間の救難信号だわ、軍事行動とは別よ助けるべきでしょう?」

「確かに信号は民間船で中立的なスカンジナビア王国の信号、しかし民間船だからと言って

 軍人や情報部員が乗ってないと保証できますか?」

「それは分からないわ」

「艦長、我々はとても微妙な状況に置かれています、艦長の意見が正しのですが我々の救援を

 待っている人達の事をお考え下さい・・・もし、どうしても気になるのでしたらMSを偵察に

 出して見ては?救難信号を発信している船を偵察して救助が必要か確認してはどうでしょう

 機関の故障くらいでしたら放って置いても良いと思いますが」

 ジィーノ少佐の提案にタリアは少し考えて返事をした

「確かにジィーノ少佐の言う通りだけど、この艦に乗っているパイロットでそこまで技量のある

 MSパイロットは少ないのでは?聞けば訓練課程の途中の人たちが多いと聞いたけど?」

 タリアの皮肉にジィーノ少佐は考え込む、確かに増援部隊には精鋭は殆んどいない

 しかも訓練生ばかりなのも事実で才能、錬度、両方を備えたパイロットは少ない

 艦隊防衛の事も考えれば数少ない錬度の高いパイロットは残して置くべきだ

「私と、・・・・マイ・キサラギ、シュン・キサラギの3名で出ましょう」

「「え」」

 タリアとアーサーは驚いた

 ジィーノ少佐はバロン軍訓練センターの教官と言っても戦略や戦術を教えていてMSや格闘戦を

 教えている訳ではないのだ

「でも」

「大丈夫ですよ、これでも訓練はしていますから、またそうで無ければMS戦の戦術を教える事は

 出来ないでしょう?」

「確かにそうですが、キサラギ姉弟を連れて行く理由は?」

「あの二人には才能が有ります、早めにMSに慣れさせておこうかと思いまして」

「そう判りました、ジィーノ少佐の判断を優先させましょう、頼むわね」

「了解しました、それでは」

 そう告げてアラン・ジィーノ少佐はブリッジを出て行った

 

 ザフト以外にMS戦の実戦経験を持つ人間は少なく連合軍ですら数少ない人達しか居ない

 あれだけ強力なMSを開発したオーブ軍でも殆んど居ない、バロン軍はザフト出身者が多いと

 聞くからMSの基本操作くらいは訓練されているだろう

 現時点での各小隊を率いるMSパイロットに行わせた方が確実の筈なのに経験の少ない

 ジィーノ少佐が出る、そう言うことかタリアはジィーノが艦隊防衛を考えてそうした事に

 気が付いた

 考え込んでしまった艦長にMS小隊を率いるパイロット達のリーダー格の一人ボーグ大尉が

 近寄り声を掛ける

「ジィーノ少佐ならお荷物が二つぐらい有っても大丈夫ですよ艦長、」

「どう言う意味?」

「艦長はバロン軍に入隊して日が浅いでしょうから知らないでしょうがジィーノ少佐は我が軍の

 最強MSパイロットですよ」

「「?」」

 ボーグ大尉の言葉に疑問が余計に出てしまった二人

 そんな艦長と副艦長にボーグ大尉が告げた

「ザフトのカルナルバ・ビッツをご存知ですかお二人とも」

「もちろん知っているわよ、ザフト最強と言われるMSパイロット」

「それなら話が早い、少佐は現時点でカルナルバ・ビッツを倒せる唯一の人間と言われてます」

「そんな人がいるなんてカルナルバの戦闘を見たけど神業だったわよ」

「少佐はザフト出身の赤5人と同時にMS戦をやりましてあっという間に倒してしまいました」

「!・・・」

「5人共ザフトでは白服候補に挙がっていた優秀な人材で現在バロン軍精鋭部隊の各指揮官を

 勤めています」

「なんでそんな人が軍訓練センターの教官を、それもMSの教官ではない科目の」

「これ以上は上層部の許可を得ないとお教えする訳には参りませんが上層部は少佐が一緒だから

 訓練成績が良い人間ばかりを派遣したのです更に言うのなら艦隊防衛の為に我々を残したのだと

 思いますよ」

 ボーグ大尉の答えにアーサーはようやくジィーノ少佐が自ら出たのか納得、艦隊防衛の事は

 副艦長である自分が気が付いて進言すべき事だ、そして軍の上層部が何故国家の命運を

 左右する筈の作戦に成績が良いとは言え訓練生ばかりを派遣して来たか良く判った

 普段は別の科目を教えているジィーノ少佐に鍛えて貰うつもりなのだ

 

 各MSのコクピットでマイとシュンはアランに言われた通りの操作をしている

「どうだ二人とも、基本は以前に教えたからそれほど難しくないだろう」

 マイとシュンはアランにすぐ返事が出来ないくらい四苦八苦していた

 そんな二人にアランは問いかける

「二人とも本当に良いのか?MSパイロットになると言うのは人殺しになるという事で死ぬ

 可能性も高い、君達は武道の達人だが武道が強いからと言ってパイロットとして優れているかは

 別問題、キサラギ教官達と先生(イチローのこと)がパイロットとしての動作の基本を武道の

 中で教えていたから慣れれば強くなり助かる確率も上がるが戦場では生き残る為に必要なのは

 強い意思だ、違う表現を用いるのなら明確な殺意と言っても間違いじゃない

 君達二人にそれが出来るのか?本音を言えば君達を人殺しなんかさせたくは無いのだが」

「・・・判っているわアラン、でも私たちがこの世界で生き残るのには必要なことよ」

「この世界ときたか大袈裟だな、シュンはどうなんだ」

「僕も同じだよジィーノ、母上に合うまでは僕達は生き残らなければいけないんだ。」

「!シュン」

「ご、ごめん」

「二人の事情はキサラギ教官達からある程度は聞いているからそう怒るなマイ」

「「 え 」」

「そんなに詳しく知っている訳じゃないが君達がキサラギ教官達の養子になった経緯だけだ

 二人が軍に志願した理由は途中で脱走するつもりなんだろう?だから教官達に迷惑が掛らない様

 教官達を眠らせた、違うか?」

「!どうして」

「アスラン・リヒターと言ったか二人の友人の名前、その人物には会った事は無いがその彼と

 月の姫を助けたいからじゃ理由が弱い、二人が軍人に成るほどの事では無いとなれば残る理由は

 一つだけ君達の母親の事だ、幸い母親が住んでる場所は秘密基地の近くらしいからMSが

 あれば簡単に行けるだろう、違うのか?」

「ジィーノは艦長たちにその事を告げるの?」

「・・・」

「そのつもりはないが二人のせいで戦闘などに巻き込まれるようだったら、理解るな」

「何故?、軍規に違反するのにそこまで」

「まぁ先生に頼まれてたしな、俺も記憶を無くしていた処をキサラギ教官達に助けられた

 だから止めるべきと判っているが、一番の理由は君達が可愛いからだな」

 アランの言葉にマイの頬が少し赤くなり、シュンの顔色が青くなる

「何を勘違いしてる、言って置くが俺はマイのような子供を異性として見た事など無いぞ

 恋愛感情など当然無い、もちろん同性に変な興味なんて無い」

 その言葉にホッとするシュンと少し頬を膨らませているマイ

「なんだ、チョッとは期待したのに残念だわ」

「馬鹿年齢差を考えろ、俺に過去が無い事は二人とも知っているだろう」

「「 はい 」」

「自分は何者か俺は自分を見つける為に過去を捜している教官達には悪いが先生も教官夫妻も

 安心できる存在ではなかった、そんな俺が安心できたのは君達だけだから、君達の願いは叶えて

 やりたいのさ」

(それに教官達を負かした時の様にこの二人といると何かを思い出せるような気がする)

「二人とも準備は良いかそろそろ出るぞ。あまりぐずぐずしている時間は無いからな」

「「了解」」

「それから言っておくが艦から発進したらマイは前方下位へ、シュンは前方上位へ必ず

 2回ローリングをしてから予定地点の上位と下位へ向かえ、ローリングは細心の注意を払って

 行う事、誤って母艦にぶつけるなよ、さらに周囲の状況に気を付ける事」

「「なんで?」」

「やば判る、それが出来ればお前達は生き残る可能性が高くなる、俺が先に出るが出ても

 すぐにお前達は出るなよ一呼吸置いてから出ろ、ただしマイとシュンは同時に出ろこの艦は

 2機同時に出れるから艦内でぶつかる事は無い筈、それからフェイスは必ず着けろよ

 二人とも分かったな」

「「はい」」

 

 アランは何故か冷静になって行く自分が不思議だった

 MSで宇宙空間に出るのは初めての筈なのに妙に懐かしくて同時に不快になる

 この感覚はまるで宇宙空間で生きてきたような感覚、その感覚があの二人と一緒に出るからだと

 アランは気が付いた、やはり自分はあの二人と何か関係が有るのか

 そんな事を考えていたらブリッジから発進OKの連絡がきた

「アラン・ジィーノ、出る」

 カタパルトに乗りアランはバーニアを少し吹かし微調整した

 アランのMSはカタパルトの強力な磁気ドライブで射出された

 射出と同時にアランのMSは進行方向に対して360度のローリングを開始

 集結ポイント付近まで全く無駄の無い動作で移動した

 続いて

「マイ・キサラギ出ます」

「シュン・キサラギ出ます」

 2機とも無事に射出されたが

 アランから見るとマイは下への展開が大きくなり予想地点より下位に行ってしまった

 シュンはローリングをしすぎて止める為の時間が掛かってしまい予想より到達する時間が

 オーバーした

 そんな3機を見ていた、タリアとアーサー、ボーグ大尉

 まずボーグ大尉が感想を言う

「あの二人、本当に初めてなのか?長く訓練している連中でもあんな事は簡単に行かないぞ」

「大したものね、でもなんでローリングなんかしたのかしら」

「そうですね、時間の無駄としか思えないのですが」

 そんな二人の疑問にボーグ大尉が答える

「お二人ともザフト出身でも空母戦の経験が少ないようですね、あの3人が行なったのは

 航空基地や航空母艦の戦闘機乗りが行っていた迎撃時の出撃戦法です、更にジィーノ少佐が

 まず警戒及び陽動を引き受けあとの2機の安全を確保したここは宇宙空間で大気圏内では

 ありませんから、3機出撃の時は上下方向とセンター・・・・」

「「?」」

 モニターを見ながら解説していたボーグ大尉の声が突然途切れた

「如何したの?」

「敵だ」

「「 え 」」

 モニーターにはバロン軍と違う光点が3個ほど表示されている

「いくらなんでも、この状態では不味い!」

「?急いで出撃準備を!」

 突然、黙ってしまったタリアとボーグ大尉にアーサーが尋ねた

「二人ともどうかしました?」

 アーサーを見た二人はモニターを指し示す

 モニターを覗くとすでに3個の光点が消えていた

 そしてその側にはバロン軍のMSを示す光点が1個点滅している

「どう言う事?、故障ですか」

 その時、ジィーノ少佐のMSから連絡が来た

「艦長、艦隊を急いで移動して下さい。連合の別部隊が近くまで来ているようです先ほどの

 3機のMSは偵察のようでした」

「それで3機のMSは?」

「シュンが見逃したので私が処理、破壊しました」

「「「 ! 」」」

 

 

「彼等は我々がバロン艦隊から出たMSだと気が付いていなかったと思いますがバロンのMSだと

 気が付かれると面倒ですので万が一の事を考えて即時の合流は避けるべきです、艦隊は予定の

 コースで秘密基地へ向かってください」

「貴方達は如何するつもりなの」

「とりあえず民間船の様子を見てから廃棄コロニーに隠れて連合をやり過ごします」

 瞬時の判断でMSを破壊、艦隊の安全確保、更にバロンの立場を考える

 戦略と戦術を同時に考えているジィーノ少佐

 タリアは彼の言っていた通りにするべきだったと後悔した

「ごめん、ジィーノ少佐の言う事を聞いていれば」

「違います艦長は正しい判断をしたのです後悔や恥じる必要は有りません、あの時に艦長が

 民間船を見捨てていたら誰もあなたに着いて来なくなりましたよ」

「でも」

「艦長、議論している暇はありません」

 そこで通信は途切れ、同時にモニターに映っていた光点も消えた

「全艦隊に通達、L7方面に移動開始、急いで」

 艦長の言葉にブリッジに居た全員が反応した

 艦隊が動き始めてから、一息ついたタリアはアーサーに言った

「・・・・・アーサー、私は駄目な艦長だわ」

「・・・」

 

 遠ざかる、艦隊をレーダーで確認、ジィーノは二人に声をかけた

「行くぞ、二人とも」

 シュンはジィーノに謝るため、MSを接触させてきた

「ごめん、僕のミスで」

「違う一人で出るべきだった、シュンのミスじゃない二人を選択した俺のミスだそれに艦長の

 提案を拒否しなかった俺のミスだ。それから二人に言っておくが今の出撃ではマイ

 君の方がミスとしては大きい」

「え、どうして?」

「敵のMSがマイ寄りだったら俺でも間に合わなかった、マイが合流ポイントを大きく外したから

 警戒が疎かになったシュンはローリングをとめる事が出来ず敵を見逃した、二人ともMS戦では

 一瞬のミスが命取りになる自分だけならまだ良いが仲間を危険に晒す事も考えに入れておけよ」

「・・・はい」「はい」

 

 3機のMSは慣性飛行状態で救難信号が発せられた方位に向かって行く

 暫らくするとレーダーに船らしきものとデブリが映った

「・・・」

 ジィーノがデブリに取り付いた

 マイとシュンも同じように取り付きジィーノはMSからシーカーを発射、船舶側への岩壁に

 シーカーを固定した、シーカーからの映像はMS3機に同時に送らて来た

「さて、マイ、シュン、二人はあの船の状況を如何見る?」

「別に故障しているようには見えないけど」

「・・・脱出ボートが1個無いわ」

「ほうマイよく気が付いた、あのタイプの客船は常に4個のボートを接続させておくものだ

 それが3個しかない、さて・・・どう思うボートが無い理由を」

 マイとシュンは、そう問われて考える

 やがて考えが纏まったのかマイがジィーノに話しかける

「可能性としては、3通りかな」

「言ってみろ」

「まずはハイジャックか盗賊行為をした人達がボートを奪って逃げたのが1つ目、次は船内で

 騒乱が起きて一部の人達がボートで出たのが二つ目、可能性は少ないと思うけど客が何等かの

 事情でボートを奪って出て行ってしまったのが三つ目」

「だけどそれなら客船が現場に止まっている理由にならないと思うけど?」

「もし1つ目と二つ目なら操艦出来る人が死んじゃったとか負傷してるとかで動かす人がいない

 可能性が有ると思うわ、三つ目なら周囲を捜してるのかボートに呼びかける為

 止まっているのじゃないかしら」

「僕は病気と言うか伝染病が発生したのじゃないのかと思う」

「シュン、この間のDDMの見すぎじゃないの?理由になってないわよ」

「う」

「俺は1つ目の可能性は無いと思う」

「どうして?」

「盗賊だったら最初から船で襲うだろうな、ハイジャックだったら船ごと消える筈だと思うが?」

「そうかも」

 ジィーノは思った

 マイは思ったより偵察任務に向いているかもしれないシュンはデーターを与えられて初めて

 実力を発揮できるタイプで戦略家でマイは戦術家だ、即応能力はマイの方が勝る

「それで二人だったら如何する、船に近寄って連絡や確認するか?」

「当然そうすべきよ」

「僕は反対、僕達の事はまだ知られては行けないのでしょう、もう少し様子を見るべきだよ」

 実際、ジィーノは迷っていた

 遠距離からの偵察には限界がある、マイが言う通り接近しなければこれ以上の事は分からない

 しかし、シュンが言う通り私たちの事はまだ知られてはいけない

 そして連合が近くに来ている事を考えれば戦闘に巻き込まれる怖れもある

 自分ひとりなら如何にでもなるがシュンやマイ達が心配だ、それに自分の我が儘だとは

 分かっているが出来るなら二人を人殺しにはしたくない

「ジィーノ?」

「うん、如何した」

「通信が・・・」

 見るとコクピットのパネルの一部が点滅していた、国際信号を示す緑のランプが点滅している

 ジィーノは受信のみのスイッチをONにした

「こちら客船フィンランド、当艦の乗客が二日前にボートを勝手に持ち出しました近くを

 航行している船が有りましたら周囲にボートを見られませんか、発見されたらご面倒でも当艦に

 連絡をいただけませんか、繰り返します・・・・・・」

 3人は拍子抜けした

「マイが言った通りだったな、三つ目の奴だ」

「馬鹿みたい」

「近寄らないで正解だったでしょう姉さん」

「そうねシュンの言う通りだったわ」

 二人の会話を聞いていたジィーノのパネルが赤い点滅をする

 気が付かない内に連合が接近してきている

 どうも接近してくる艦艇数からすると連合はこの客船を目指していたようで遭遇したMSは

 方位を間違えたようだ

「不味い後退するぞ、確かL4方面は廃棄されたコロニー群がまだあった筈二人とも掴まれ」

 ジィーノのMSに2機ともつかまりジィーノのMSは予備のブースターを使用して加速

 L4方面へ向かって行く

 

 アランと二人は連合の索敵範囲から逃れて一時L4コロニー群に身を潜めた

 少しトラブルに巻き込まれたがとりあえずトラブルを解決、その後も遭遇した連合と戦い

 身を隠しながら秘密基地に辿り着いたのは艦隊と別れてから1ヶ月後の事

 到着したマイとシュンを待ってたのはアスランの行方不明という事態である




幻想のエスペラント

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