ただいま、行ってきます   作:雪須

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エピローグ的


つながったぁ

「石崎、お疲れ様、二人はどうだったかしら?」

「特に問題や外部からの干渉はありませんでした。ただみちるさんの実家で、本人であることを明かしたようです」

 

朝の市長執務室、ソファには士郎が座っている。

市長席の背後、シティの街並みが見下ろせる大きなガラス窓の前で、ロゼ市長は戻ってきたばかりの石崎からみちるとなずなの動向について報告を受けた。

 

「あら。まぁしょうがないわね、みちるさんのご家族はみちるさんが獣人化したことを元々ご存知だし、そしてそれを外部に言ってしまうとSNSみたいなことになってしまうこともご存知。ご家族の方以外に広がる心配はないでしょう」

 

市長は人間が獣人化したことをみちる、なずな本人から第三者に漏れ出ることを心配していた。だが今回そのようなことは起きなかったし、起こさないように注意もしていることが確認できた。

 

ソファに座っていた士郎が市長の方を向き問いただす。

 

「どうして二人を人間の街に行かせた?わざわざ危険にさらすこともないだろう」

 

市長は窓の外に視線を向けて答えた。

 

「だから石崎について行ってもらったの。試したいこともあったし」

「それに……」

 

体勢と視線を士郎の方へ向け直す。

 

「家族への心配を思い止めさせるのはいいこと?家族思いなのが獣人の信条なんじゃなかったかしら?大神君」

 

その答えに、士郎は額に手を当てて目をつぶり、しばらくして苦笑いを浮かべた。

 

「ふっ、全く。いつもおまえは正しいことを言ってくれる。そのとおりだ」

 

士郎の言葉を受けてニコリと微笑み、市長は続ける。

 

「今回のSNSの炎上騒ぎも、我々が干渉して収束するように努めてみたけど、結局はご家族の件で二人をアニマシティ市外に向かわせることになってしまった」

 

「みちるさん、なずなさんは、私たちにとって大切な、なくてはならない子たち、ご家族ともどもサポートしていかないと」

「そしてみちるさん、なずなさんの家族がいつでもどこに住んでいても会えるような、そういう社会にしていかないと、このアニマシティも長く続けていけない」

「そのためにも私たちがしっかりと取り組んでいかなければならないわ」

 

人間と獣人の両方の経験を持つ唯一の例、そして人間と獣人をつなぐ象徴となりうる二人。その二人を失うわけにはいかない。この街のためにも。

 

だから、今回は人間の街に行ったときにシティに戻りたくなくなるか、自分を見失わないか試させてもらった。確かに少し危ないこともあった。でも二人で乗り越えることができたようだ。

 

そして嬉しいことに、みちるはしっかりと獣人の行く先を自分の目標として考えてくれていた。少なくとも今までの行動からもそう判定できる

 

「ごめんなさいね、みちるさん、なずなさん、あなたがたを試すようなことをして。でもこれで安心できる。二人とも、これからもよろしくね」

 

 

 

 

 

銀狼公園の人が多く集まっている場所から少し離れた、地面がむき出しになっている狭い広場。

 

みちるとなずなは、とあることを行うために人目のないここへ来た。

 

「ねぇみちる、昨日ニナから聞いたんだけど、例のSNSの件、ついに警察が動くことになったみたいだよ」

 

「へー、やっぱりそうなったんだ、だってあんな貼り紙してさぁ、ムカつくったらありゃしない。あああ今思い出してもムカっ腹が立ってきた!ううう、だめ、腕が大きくなってきちゃった……んがぁっっ、でぇいっ!」

 

巨大化した右腕で地面を思いっきり殴る。

 

ドゴッという重い音が響き、軽い振動とともに地面から土片が飛び散る。腕を引き上げたあとには、拳の形をした深さ20cmほどのクレータが形成されていた。

 

地面さん八つ当たりしてゴメンナサイ。

 

「気が済んだ?でね、どうもそのきっかけってのが、怪しい女子2人組が家の周りをうろうろして、家の庭のものを拾ったりしてたから、ってことらしいのよね。ようやく騒ぎが収まったと思ってたのに、また怪しいやつらがって」

「ん?それって……」

 

え?もしかして、やばい?

腕が急速にしぼんでいつものサイズに戻っていく。

 

「うん、きっかけは私たちみたいね、あは。まぁ、私たちは変身してたから見つかることはないと思うけど。紙を家に貼り付ける器物損壊だったり、不法侵入して家を撮影投稿した人はやばいんじゃないかな」

 

意図せずSNSの不届きものに対抗できたような……

ということでSNSはその件で吊し上げ祭りになっているとのこと。何やってんだか。

 

まぁSNSはもう置いといて、今日は重要なイベントが。

 

「じゃあなずな、かけようか。電話」

「うん、いいよ」

 

「すーっ、はぁー」

 

なずなは深呼吸をひとつした。

 

もらったメモの連絡先は070で始まる電話番号。そこに、みちるのスマホからコールしてみる。

 

呼び出し音が数回鳴った後、呼び出し音の途中でプツッと音が入った。

 

「はい」

「おかあさん?わたしだよ、なずなだよ」

「え!なずな、なずななの?」

 

みちるは叫んだ。

 

「やったぁ、なずなんちにつながったぁ」

 

 

 

今日はいい日になりそうだ。

 

 

 

後日談

 

あれから幾日、つい今しがたマリーさんからスマホ(非正規)の請求書がみちるに届いた。

 

【挿絵表示】

 

 




BNA、放映時にネットでもあまりパッとしなかったようで、自分も設定や展開が強引、投げっぱなしなところを感じました。ですが自分にとってキャラクターや世界設定などは非常に好みでしたので、自分で不明なところを捏造してみようと考えたのが本作を書いた動機になります。他も書けそうなところがありますが、公式コミカライズぜひ頑張ってほしいです......
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