頭の中で大まかな流れはできてるのに、それをいざ文章として出力しようとすると途端に上手くいかなくなるの、なんなんでしょうね。
今回は史実メジロドーベル号とは違うレースローテ出走となりますので、史実改変タグを追加しました。
なお、作中のレース名や開催スケジュール等は当時の物ではなく、アプリ内の物に合わせています。
『中山レース場第9レース、サフラン賞。芝1600m、外回りコース。各ウマ娘ゲートイン完了、体勢整いました。スタートしました。まず最初に好ダッシュを見せたのは5番サンフィッシュレイ。2番手追走は3番プニプニ、そのすぐ後に8番ミニデイジー。外から並びかけるのは9番リボンエレジー。2コーナーから向正面です。後続9人を引き連れてサンフィッシュレイがペースを作ります。10番モイストアイズ5番手、内4番シャドウストーカー、6番エレガンジェネラルは外を周ります。少し離れて2番メジロドーベル、内抑えて7番デュオタリカー、最後方から1番ラブリーパトリシアという展開。これから3コーナーカーブの外回りコース、最初の800mは49秒で通過。ここで先頭が変わって3番プニプニ、5番サンフィッシュレイは内からいきます。3コーナーから4コーナー。3番手は並んで、外に9番リボンエレジー、内に8番ミニデイジー。5、6番手には外から徐々に上がっていきます10番のモイストアイズと6番エレガンジェネラル。600mの標識を通過。4番シャドウストーカーは外に持ち出した。バ群の中に2番メジロドーベル。一団となって4コーナーカーブ。先頭3番プニプニ、そのすぐ後に5番サンフィッシュレイ追走。6番エレガンジェネラルが3番手に上がります。隊列が横に広がってバ群が詰まってまいりました、残り400m。ここでラブリーパトリシアが動いて後ろから3番手まで駒を進めます。先頭は依然3番プニプニのまま4コーナーから直線へと向きます、リードは1バ身。2番手に6番エレガンジェネラル、内から5番サンフィッシュレイ。さらには外から4番シャドウストーカー、その後ろに10番モイストアイズ。バ群を割って、中から2番メジロドーベルが良い脚で伸びてきた。ゴールまで200m。プニプニまだ先頭、しかしメジロドーベルが迫る。残り100m、先頭変わってメジロドーベル。そのまま後続を引き離しにかかる。2番手にはプニプニが粘っているか、シャドウストーカーも伸びてきた。先頭はメジロドーベル。メジロドーベル1着でゴールイン。2着にはプニプニが粘りました。3着シャドウストーカーです』
◆
「おめでとう、ドーベル。良いレースだった」
「ありがとう。デビュー戦よりは、落ち着いてレースができたかな」
インタビューが終わって、地下バ道へと戻ってきたドーベルを出迎える。息は既に整っているが、額からは滲み出るように汗が流れて、その頬は未だ微かに上気していた。しっとりとした髪が顔にペタリと張り付いていて、それを時折鬱陶しそうに払い退けている。身に付けた体操服も、汗を吸い込んでジットリと湿っていた。
「ああ。道中もしっかりと脚を溜めていたし、バ群に包まれても慌てず落ち着いて対応できてたぞ。最後も、あの短い直線でよく差し切ったな」
「ずっと、内の方を回れてたから。最後バ群が空かないで、外を回ってたらわからなかったかも」
控室の鍵を開けて中へと入ると、ドーベルは胸に着けたゼッケンを取り外し、そのまま丸めて鞄の中へと放り込んで、代わりに着替えの入った袋を取り出す。
「それじゃあ、シャワー浴びて来るから」
「ああ。今回は前と違って、ライブの準備まで余り時間がないから、できるだけ早くな」
「わかってる」
一言素気なく返して、ドーベルは部屋を出て行く。その後ろ姿をなんとなく見送って、俺はこれからについて考える。
2戦目は特に危なげなく勝つことができた。レース中に向けられる視線については、ある程度克服できたと思ってもいいだろう。阪神JFまであと2ヶ月。それまでにできれば後もう一戦、今の実力を見ておきたい。手帳を取り出し、今年のジュニア級レースのスケジュールを確認する。1つ出ておきたいレースがあるが、少しレース間隔が詰まっているのが気にかかる。メニューを軽いものにすれば、疲労はそこまで溜まらないだろうか。
パラパラとページを捲っていると、ガチャリとドアノブの回る音がして、間隔を空けずに扉が開かれる。
「ただいま。何してたの?」
「次のレーススケジュール考えてた」
「もう? 今日ぐらいゆっくりすれば良いのに」
そう言いながら、着替えた体操服の入った袋を鞄の中へとしまい込む。ドーベルの言葉にそれもそうかと思い、パタリと手帳を閉じる。そうしてなんとなくドーベルの方へと視線を向ける。ドーベルは何やらスマホをいじっている。友人達に勝利の報告でもしているのだろうか。そのまま今度は、視線を横顔から髪へと移す。走った直後には風と汗とで乱れていた髪も、シャワーで汗も汚れもすっかり流して、綺麗に整えられている。
ふと、伏せられていた瞳が持ち上がって、こちらへと向けられる。薄紫色の瞳と視線が交わる。
「……何?」
「……いや、何でも。コーヒー淹れるよ」
部屋に置かれていたドリップ式のインスタントコーヒーを、カップにセットしてお湯を注ぐ。ほろ苦い香りが湯気と共に立ち昇って、部屋の空気の中に溶け込んでいく。カップと一緒に、スティックシュガーとフレッシュを一つずつ添えて、ドーベルの前に置く。ドーベルはフレッシュを追加で一つ取ると、カップの中へと流し込んでマドラーで混ぜ合わせる。黒色の水面の下から茶色が広がって、カップの中身を染め上げていく。
「コーヒー、苦手だった?」
「うーん……。普段は、あまり飲まないかな」
そう言ってドーベルは、カップにソッと口をつけてちびちびと飲み始めた。自分の分を淹れながら、そういえばいつもは紅茶を飲んでいたな、と今更ながら思った。
「次からは紅茶も用意しとこうか」
「いいよ、別に。そこまでしなくても」
言いながらカップに息を吹きかけて、少しずつコーヒーを啜る。ドーベルはそう言うが、やはり普段から飲み慣れた物があった方がいいだろう。次回からはちゃんと紅茶を用意しておこうと心に留めて、何も入れずにコーヒーを飲む。確かな苦味の中に微かな酸味を感じ、香ばしい香りがフッと鼻から抜けていった。俺はこの感覚が嫌いではないが、確かに苦手な人は苦手だろうとも思う。
そうしてドーベルと2人で話しながら過ごしていると、控えめなノックの音がする。俺は立ち上がって、少しドアを開けて外を確認する。そこにはレース場の職員が立っていた。彼女は俺の顔を見ると、軽く頭を下げて会釈する。
「失礼します。メジロドーベル様のライブ準備に伺いました」
「ああ、これはどうも。どうぞ、中へ。俺は外で待ってますので」
「はい、失礼します」
丁寧にお辞儀をして中に入る彼女と入れ替わるように、俺は部屋の外へと出る。彼女はライブの為のメイクと、着替えの手伝いをしているスタッフだ。今から30分程かけて、ライブに向けての準備をする事になる。そうなると、俺はその間手持ち無沙汰となるが。
「……ドーベルにはああ言われたけど、こういうのは早い方がいいだろう」
俺は再び手帳を取り出すと、次のレースと、それに向けての大まかなトレーニング予定を書き込んでいった。
◆
ドアの開く音で顔を上げると、先程のスタッフが丁度部屋から出てくるところだった。彼女は俺と目が合うと、軽く一礼する。
「お待たせしました。メジロドーベル様のライブ準備、完了致しました」
「そうですか。ありがとうございます」
「それでは、私はこれで失礼します」
もう一度丁寧にお辞儀をして去っていく背中を暫し見送って、俺はドアノブへと手をかけた。軽く捻るとカチャリと音が鳴って、ノブが回る。そのまま押し開くと、ライブ衣装を身に纏って鏡の前に座っていたドーベルが振り返る。
縁が金色に彩られた臙脂色のベストに、青紫色の襟元と袖口が肘程まで折り返された、キャバリア・カフスのメスジャケットを羽織り、首にはチョーカーが巻かれている。臙脂色のホットパンツの裾からはガーターベルトが伸びて、星のワンポイントが付いたニーハイソックスまで続いている。腰にはゆったりと大きく広がるようにオーバースカートを巻き、後ろには金の刺繍が施された大きなリボンが付いている。足元は白いロングブーツで、横に蹄鉄を模した飾りが付けられている。
過度な派手さはないものの、全体的に華やかな印象を受ける『スターティングフューチャー』と銘打たれた、ライブ用の衣装だ。
その衣装に袖を通すのは2回目になるドーベルは、俺の顔を見ると少し恥ずかしそうに笑って、腰布の端をちょっと摘んで見せた。
「こういう可愛い格好って、やっぱりちょっと慣れないな……」
「そうか? 似合ってると思うけどな」
「嘘」
「なんで嘘つく必要があるんだよ」
率直な感想を伝えてみても、ドーベルは首を振って受け入れようとはしない。自分に対する自信のなさからくるものだとは思うが、ドーベルはどうにも自己評価の低いところがある。彼女の過去を考えれば仕方のない事だろうが、それでも、もう少しだけでも自信を持って貰えると良いのだが。
「……まぁ、いいか。それよりも、ライブは大丈夫か? 緊張してないか?」
「流石に2回目だからね。歌詞も振り付けも、ちゃんと頭に入ってるよ。緊張は、まあ、してるけどね」
そう言って軽く肩をすくめて、ドーベルは笑う。人前に出る事への忌避感は、以前よりも随分と改善されているように見える。これは良い兆候だろう。このままドーベルのあがり症も治ってくれれば良いのだが。しかし、今はそんな事よりもライブが大事だ。俺はドーベルの背中をパシリと軽く叩いた。
「しっかりな。ちゃんと見てるから」
「もう、うるさい。わかってるから」
バシリと俺の手を尻尾ではたき落として、ドーベルが少し不機嫌そうに俺を見やる。はたかれた手をさすりながら、苦笑混じりにそっとドーベルから距離をとる。こういう時に調子に乗るのが、一番良くないのだ。
「さて、そろそろ時間だ。ステージに行こうか」
「うん」
控室を出て、ドーベルと並んでライブステージへと向かう。周りにはこちらと同じく今からライブに向かうのか、それとも今ライブから戻って来たのか、ライブ衣装を着たウマ娘達がチラホラと見られる。
ウイニングライブは、レース場に併設された専用の会場で行われる。レース出走者の控室がある棟とは、連絡通路によって繋がれており、移動自体に手間はかからない。関係者用の通路からステージ脇に繋がる扉の前まで来ると、ドーベルは軽く深呼吸をしてから扉に手をかける。そうして扉を開けて、中へと入る前に俺の方をチラリと振り返る。
「……ちゃんと、見ててよね」
それだけ言うと、こちらの返事も聞かずにまるで隠れるようにさっさと中へと入っていってしまう。しかし俺はその肩越しに見えた頬が、微かに紅潮しているのを見逃さなかった。言ったは良いものの、途中で恥ずかしくなったのだろうか。思わず、クスリと笑いがこぼれる。
「ああ、ちゃんと見てるよ」
既に見えなくなった背中へと声をかけ、関係者席へと向かった。
◆
それから3週間。東京レース場、控室。レース直前だというのに、俺はどうにも落ち着かず、狭い控室の中をウロウロと歩き回っていた。既に着替えも終わり、椅子に座って出番を待っているドーベルから、冷めた視線が突き刺さる。
「調子はどうだ? 緊張してないか?」
「もう、大丈夫だってば。アンタの方がよっぽど落ち着きがないじゃない」
もう幾度目かの俺の問い掛けに、ドーベルは半ば呆れたように返した。
確かに自分が冷静さを欠いているのは理解しているが、それも仕方ないだろう。
「だって、ジュニア級とは言え重賞だぞ。そりゃ緊張ぐらいはするさ」
「アンタが走るって言ったレースでしょ。なんでアンタが緊張してるのよ」
「それは、そうなんだが……」
ジュニア級重賞、GⅢアルテミスステークス。今日ドーベルが走るレースがそれだ。東京レース場の芝1600で行われるこのレースは、阪神JFのステップレースとして指定されていて、上位3名には優先出走権が与えられる。その為、阪神JF出走を狙う者、果ては来年のティアラ路線を目標とするウマ娘が出走する可能性の非常に高いレースだ。だからこそ今回の出走で、ドーベルの目標であるトリプルティアラ達成の脅威となりそうな相手を探すのと同時に、ドーベルがどこまでやれるかを確かめたかったのだが……。
「担当が初めて重賞走るってだけで、こんなに緊張するもんだとは思わなかった……」
「……はぁ。……まあ、アンタがそんなだから、アタシも逆に落ち着けてる所もあるかもね」
ほら、とばかりに微かに震える手をドーベルの眼前に差し出して見せると、ドーベルは呆れを隠そうともせずに額に手を当てて深く溜息を吐いた。そのままフォローのような、そうでないような事を言って、ドーベルが立ち上がる。
「ほら。そろそろ移動するよ」
「……ああ」
促されるままに控室を出て、地下バ道へと向かう。ドーベルをパドックへと見送って観客席へ出ると、できるだけ前を確保する。パドックに立つドーベルは堂々として、観客に向かって手を振っている。人前に立つ事にも、一先ずは慣れたと思ってもいいだろう。再び地下バ道へと消えていく彼女を見送って、コースへと移動する。返しウマも問題なく、落ち着いてウォーミングアップに当てている。調子は良好。今のドーベルの実力を、問題なく発揮できるはずだ。
◆
『晴天の下行われる東京レース場、本日のメインレース。GⅢアルテミスステークス。ターフは絶好の良バ場となりました。ゲート入りは順調に進んでおります。さあ最後10番のキタラリズム収まりまして、体勢完了しました。スタートしました。まずまず揃ったスタート、最初に誰が行くのか。まずは2番フローズンスカイ、そのすぐ後に7番ネレイドランデブーが競り合う形。その後ろ4番ユイイツムニが様子を伺います。その後ですが2バ身開いて3番エーネアスと1番バトルオブエラが続きまして、それから1バ身ほど開きました10番キタラリズム、その外に6番メジロドーベル、5番ノーティカルツールが内から並びかける。そして9番ミニキャクタスが居まして、最後方に8番コードオブハートです』
ゲートが開くと同時に勢いよく飛び出していった隣の娘を横目に、アタシは少しペースを落とすと中団後方へと位置取る。このコースはスタートからすぐに緩やかな下りになっていて自然と速度が出てしまう為、序盤はハイペースになりやすい。そしてそのハイペースのまま向正面後半の坂へと入ってしまうと、体力を消耗してしまい後半に脚を残せなくなってしまう。
『残り1000m切って通過タイムは36秒2。3コーナーを回ります。先頭2番フローズンスカイ半バ身のリード。外7番ネレイドランデブー、少し開いて4番ユイイツムニ3番手。4番手3番のエーネアスは先頭から5バ身程の距離。その外から上がっていきます10番キタラリズム。3コーナーから4コーナー。前から1バ身離れて6番メジロドーベル、内に5番ノーティカルツール。1番バトルオブエラは少し順位を下げました。後方2番手に9番ミニキャクタス、8番コードオブハートは最後方です』
3コーナーから4コーナーはカーブが緩やかで、下り勾配になっている為ペースが落ちにくく、序盤のハイペースを維持したままレースが進みやすい。アタシは最内にコースを取って、なるべく脚を温存しつつ、落ち着いて仕掛けどころを伺う。そして4コーナーを抜けた所で、スピードに乗った数名が外へと振れてバ群がバラけた所を、間を縫うようにして前へと上がっていく。4コーナーを抜けてすぐに2mの坂があり、序盤に脚を使いすぎていると、ここでブレーキがかかってしまう。
『さあ4コーナー回って直線へと向きます。先頭は依然2番フローズンスカイ、外7番ネレイドランデブー、内に4番ユイイツムニが続きます。バ群が固まって混戦状態。ここで5番ノーティカルツールと8番コードオブハートが上がってくる。坂を登って先頭7番ネレイドランデブーに変わりました。ネレイドランデブー先頭、しかし後続も追い縋る』
両脚に力を込めて、思い切り坂を駆け上がる。下り坂で勢いに乗った状態から、上り坂での急激なスピード変化で、脚へと強烈な負荷がかかる。歯を食いしばりながらその負荷に耐えつつ坂を登ると、最後の直線へと入る。
『ネレイドランデブーまだ先頭。バ群の真ん中を通ってエーネアスが上がってきた。外にはキタラリズム。フローズンスカイとユイイツムニは苦しいか。残り300m。ネレイドランデブー逃げ切るか。外からコードオブハート、外からコードオブハートが2番手に上がってくる! そして最内をついてメジロドーベル凄い脚! 残り200m! ネレイドランデブー粘っているが苦しいか! コードオブハート先頭! だが内からメジロドーベルが来ている! メジロドーベル猛追! 後100m! メジロドーベルが並んだ! コードオブハートまだ粘っている! メジロドーベルか、コードオブハートか! メジロドーベルが僅かに躱した! メジロドーベル1着でゴールイン!』
ゴール直前、ギリギリ差し切ってのゴール。見上げた掲示板にはアタマ差の表示。後ほんの僅かでも仕掛けが遅ければ、届かなかっただろう。荒い呼吸を整えながら、観客席に向かって手を挙げた。一際大きく歓声が上がる。レースも3度目となると、この視線や歓声にも慣れてきて、軽く手を振りかえす余裕も出てきた。少し視線を巡らせると、最前列にトレーナーの姿が見えた。目が合ったので、小さく手を振ってからウィナーズサークルへと向かう。そういえば、今回はトレーナーはインタビューに同行するのだろうか。ふとそんな風に思って、振り返ってトレーナーの居た場所を確認してみると、既に移動したのか姿はなかった。少し気になったが、どうせすぐにわかる事かと思い直して、アタシはコースを後にした。
◆
「……勝った、か」
ドーベルがゴール板を通過した瞬間、体からフッと力が抜けて、思わず柵に寄りかかってしまう。阪神JFに出走するだけなら2着でも良かったが、やはり勝てるに越したことはない。ドーベルに視線をやると、見上げていた掲示板から振り返って、観客席へと手を挙げている。それを見た観客から、一際大きく歓声が上がる。その大音声にもドーベルは怯まずに、小さく手を振って応えている。その姿に確かな成長を感じていると、ドーベルと目が合った。小さく微笑みながら手を振り、ウィナーズサークルへと向かうドーベルを見送って、こちらも移動しようとその場を離れる。
とりあえず今回のレースで、ドーベルは重賞でも十分に通用するだけの能力がある事が証明された。後はこの勢いのまま阪神JFも獲って、来年のティアラ路線へと弾みをつけたいところだ。
と、ここまで考えた所でふと思った。
ドーベルが重賞でも通用するウマ娘である事は間違いない。それは今回のようなGⅡ、GⅢだけではなく、GⅠの舞台でだってそうだろう。彼女はそれだけの能力を秘めている。それは疑いようも無い。
もし彼女が次走の阪神JF、またはこの先のティアラ路線においてGⅠの冠を戴く事ができないような事があれば、それは、彼女の実力不足なんかじゃなくて———
「……俺の、所為か」
もちろん出走する全てのレースに勝利できるだなんて、流石にそんな事は無理だという事は理解している。GⅠともなれば周りの走者だって実力者揃いで、中にはドーベルよりも強いウマ娘だっているだろう。それは当然だ。
だが、それと来年のクラシックレースでドーベルが無冠で終わる事とは、話が別だ。実際にドーベルは同期のウマ娘と比べても、実力はかなり上の方だろう。そのドーベルが勝てないような事があるとすれば、それはつまり俺のトレーニングメニューか、作戦か、相手ウマ娘の情報のどれか、もしくはその全てが不足しているという事だ。
ドーベルはメジロ家の新たな栄光を求めている。そのドーベルがティアラ無冠で終わるだなんて、そんな事は万に一つもあってはならない。その為には、俺がトレーナーとしての職務を、これまで以上に全うしなければならない。
失敗は決して許されない。改めて自らの責任の大きさを感じ、それでも必ずやり遂げてみせると決意を新たに、俺はウィナーズサークルのドーベルの下へと向かう。
作中において関原はよくコーヒーをブラックで飲んでいますが、私がコーヒーを飲む時はコーヒーの粉と砂糖が1:1になるように混ぜ、そこに牛乳を加えています。
カフェオレだコレ。