僕の運命アカデミア   作:乙子

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第09話~職場体験その3~

 

 

職場体験五日目

 

 ミルコと仲のいいトップヒーローリューキュウの事務所に泊めてもらい、朝食を済ませヒーロースーツに着替え万全の状態で全員が集まる。

 リューキュウとミルコはチームアップという形での協力ではなく、ミルコにある事件の情報を渡し好きに動いてもらう形をよく取っているらしい。リューキュウ曰く「ミルコに足並みを揃えてと頼んでも無駄だった」らしく、実績と安心の放置形態のようだ。リューキュウが指揮を執り、危険さや迅速さが必要な所をミルコに任せて自分は警察との連携で動くそうだ。ミルコはそれを聞いて頷き、貰った資料から襲撃場所の確認を済ませると直ぐに立ち上がり出口へ向かう。オレもすぐについていく。

 

「それじゃミルコよろしくね」

 

「おう!任せとけ」

 

「運命君も頑張ってね」

 

「はい!行ってきます!」

 

 

 

 街の中心地から少し外れた目的地にあったのはボロボロのビル、窓は全て割られ電気も通って無さそうだ。ミルコはずんずんと中に入り各部屋を一瞥しどんどんと上へあがっていく、鼻と耳が動いているが何か感じているのだろうか。最上階まで到達し屋上の扉を蹴破り確認するも珍しいモノは無く、周囲も寂れたビル群があるだけだった。ミルコは一度周囲を見渡した後こちらを向く。

 

「わかったか?」

 

「え?何か手がかりありましたか?」

 

「良いか?今回の事件は薬物取引だ、非合法の個性ブースト薬が広まってるとさ。そしてその取引場所でよく使われてるってタレコミがあったのがこのビルだ」

 

「取引現場として使われてても今の時間じゃないのでは?午前中ですよ?」

 

「甘い、こういうのは夜ってのは常識だが痕跡くらいはあるもんだ」

 

「でもただの汚い廃ビルですよね、特別に汚いのも一階くらいでチンピラがたむろしてたようなゴミがあったくらいで」

 

「そうだ、そして上階には特別汚れも不審な所も無かった。つまりだ」

 

そこまで言うと笑い屋上から1階入り口まで跳び下りるミルコ、同じく飛び降りるとまた一階に入り汚れがある部屋に入っていく。

 

「わざわざビル内で取引するってーのに外から見える所で取引する馬鹿はいない、ならあるんだろうな、地下室かなんかが!」

 

部屋に残されたボロボロのソファーを蹴飛ばしその後ろの壁と床を叩き確認するとビンゴの様で地下への階段が隠されていた。

 

「な?気合い入れてけよ、何が起こるかわかんねーぞ」

 

「はい!」

 

 階段を下りると薄暗いので小さな火を発動させミルコの先を照らす。一本道を歩いていくと地面は埃だらけだが確かに最近人が通ったのであろう埃が濃い所と蹴散らされたのかほぼ無い所があった。

 突き当りとその手前に二つの扉がありミルコは耳をしきりに動かし中を伺う。そして手前の部屋の扉を蹴破り中に入るが誰もおらず机とイスが数個、そして捨てられている使用済みの注射器が数本。おそらく薬物が入っていたものだろう。

ざっと見渡した後突き当りの部屋も同様に開け中を確認する。こちらにはマットやマスク、それに何かが液体が入っているペットボトルが数本。

 

「こりゃ当たりだな」

 

中身を軽く確認しリューキュウへ現場写真と報告を済ますとミルコは両手をがっしりと合わせ楽しそうに笑う。

 

「当たり?特別な証拠ありました?」

 

「馬鹿野郎、これは血と汗の匂いがすんだよ。報告も終わったし後の手配はリューキュウが勝手にする、私達はお楽しみの時間だ!行くぞ!!」

 

言うや否やビルを飛び出し街の中心部へ走り出すミルコ、いくつかのビルの屋上に跳び上がりは鼻を耳を動かして移動する。そしてある地点で携帯を取り出し電話をする。

 

「リューキュウか?駅近くの百貨店のあるビルの地下だ、そこでもうやってるみたいだ、私達は今から突入するから手配頼むぞ」

 

言うことだけを言い返事すら待たずに携帯を仕舞う。電話を切る前にリューキュウの大声が聞こえた気もするが…ミルコはぐっと手脚を伸ばし準備をしてこちらを見て良い笑顔で笑う。

 

「というわけだ、お楽しみの時間だ、良い時に職場体験来たな運命」

 

「何がというわけか説明もありませんがとりあえずカチコミって感じですかね?しかも今から」

 

「そうだ!お前も個性使用と戦闘を許可してやるから雑魚は任せるぞ」

 

 今までと違い明確な個性と戦闘許可に緊張が走る。

装備の最終チェックをしてミルコの後に続き百貨店の中に入る、しかし向かったのは雑貨店だった。パーティ用品の棚で何かを手にするミルコ。思わず尋ねる。

 

「カチコミなんですよね?」

 

「そうだが?あ、初心者のお前はドレスコードも知らないか?お、このマスクは…懐かしいもんあんじゃねェか!」

 

「???カチコミにドレスコード?仮面舞踏会でもやってるんですか??」

 

「正解だ!お前にはこの兎マスクを買ってやろう!!」

 

は?と唖然とする間にもミルコは兎のマスクと虎のマスクを買いその場で袋から出して移動を始める、行先は階段。下に降りながらマスクを渡される。

 

「付けろ、行先は地下3階だ」

 

「オレが兎の方なんですか?ここ地下2階までしかなかったですよ」

 

「従業員や運搬用に客には知らさない地下があんだろうな。そこが目当てだ」

 

 手渡された兎のマスクをいやいやながらも付ける、ミルコは虎のマスクだが長い兎耳の部分を破って調節している。地下二階まで到達しさらに下への階段があるが途中で防火扉で閉まっており鍵がないと開かないようだ。その扉を前にして初めてオレにも地下からの歓声の様なものが聞こえて来た。ミルコも嬉々として扉を蹴破り中へ入っていく。熱気と狂騒、そして歓声が響く地下三階が目に入る。果たしてそこは目を疑うような闘技場が出来上がっていた。金網が四方に張られ中にはマスクを付けた二人の男が殴り蹴りあっている。その周囲からは同じくマスクを付けた様々な男女が数十人ほどいた。

 

「闘技場?」

 

「地下格闘場だな、個性ありだったり凶器も急所攻撃もありで戦う非合法の場所だ賭けもしてるし配信もしてたりする、結構各地にある、前も言ったな?」

 

「えぇ…本当にあるんですね、こんな街中に」

 

「人気が少ない所に集まるよりも人が多い所の方が隠しやすいのさ、おい、この防火扉塞げるか?何でもいい、中から出さないように」

 

「氷で分厚く固めるなら…」

 

轟の様に手から氷を出し氷壁で塞ぐ。

 

「十分だ、よし、それでいい!じゃ行くぞ!バニーマン!」

 

「へぇっ!?バニーマン!?!??」

 

突如首根っこを掴まれ跳躍し、金網フェンスの上に立つ。観客がいち早く気づき騒然とし戦闘していた中の二人も見上げて止まる。会場には運営なのかマイクを持った男がその登場に声を上げる。

 

『おおっと!ここでまさかの乱入者かぁ!?お前達は何者だぁ!?』

 

「ふっふっふ!私は謎の絶世の美女マスクマン!!タイガァーーッ!バニィーーーーッ!!!そしてこいつは弟子のバニーマンだァーーー!!」

 

「なんだタイガーバニーって、タイガーなのかバニーなのかはっきりしろ!」

 

「両方だ!強いて言えばタイガー寄りのバニーだ!」

 

「っていうかあれミルコだろ、ヒーローミルコ!」

 

「ヒーローじゃねーか!?ここバレてんじゃねぇかよ!逃げんぞ!!」

 

「ダメだ!出口が氷で塞がれてる!?分厚くてどうにもなんねー!誰か壊せる奴いねーのか!!」

 

ミルコの楽しそうな自己紹介に会場は騒然となり逃げようとする者も現れる。だがミルコは自信満々に周囲に宣言する。

 

「お前らが生き残る道はただ一つだ!私とコイツを倒すことのみ!!全員まとめてかかってこいやァーーーー!!」

 

「「「「「野郎ぶっ殺してやるるぁあああああ!!!!」」」」」

 

『タイガーバニーまさかの会場全体を挑発!!おおっとリング内の二人も邪魔をされて水を差され猛烈に怒っているー!乱闘!大乱闘が幕を開けたぞおおおおお!』

 

「ヤバそうなのは倒しておく、そんで私は奥の奴ら蹴ってくる、ここは任せた!」

 

「ちょっと嘘でしょ!?ミルコおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

ボソッとオレにだけ聞こえる声で喋りすぐに中の二人を蹴飛ばし他の強そうな奴らを蹴りに行くミルコ。煽るだけ煽り残されたオレは金網上から全ての殺意を向けられ泣きそうになりながらも覚悟を決めた。

 

「神衣!ノーム!!全員ぶっ飛ばしてやるぉああああああああああああ!!」

 

神衣で上書きされる服にマスクは含まれないんだなんてどうでもいいことを感じつつまずは初めて使う腰の武器の鉄棒を持ち連結させ剣ほどの長さにして振るう。見渡す限りの敵に飛びながら技を発動させる。

 

「『鳳凰天駆!』」

 

「「ぐわぁああああ」」

 

「炎出してきたぞ!やっちまえー」

 

「『虎牙破斬!飛燕連脚!!襲爪雷斬!!!』」

 

斬と言っているが鉄の棒でぶっ叩いているだけである。

 

「雷も出してきたぞー複合かー!?」

 

「バニーマンだろ!バニーっぽいことしろ!!」

 

「バニーっぽいことはあっちに言ってくれ!『空破鉄槌!エアプレッシャー!』」

 

「「「重いいいいいいい」」」

 

「重力系!?こいつなんなんだよ!?」

 

「囲め囲めー!タイガーバニーが近くにいないからこいつやっちまえば逃げれるぞ!」

 

「喰らえ!ニードルインフィニティ!」

 

飛んでくるトゲ数本

 

「サウザンドランス!!」

 

投げられる一本の槍

 

「インフェルノブレス!」

 

口に含んだ酒に口の前に置かれた100均製のライターから吹き出される火炎放射

 

「アブソリュートスラッシュ!!」

 

カニの手先でのパンチ

 

「ボウ・ガン!」

 

ボウガンでの狙撃

 

 様々な攻撃が飛んでくるが全て2本のアームで防ぎきる、というか個性使わない攻撃の方が殺意ありありでコワイ。中・遠距離がダメだとわかったのか異形型や増強系の個性の持ち主が笑いながら突撃してくる。ワニやカマキリ、岩石の様な身体、多種多様な個性が襲ってくる。基本はアームで防ぎ技や術で対応していく、まだ対応できるレベルなのが救いか、いや、ミルコが強いのは間引いてくれると言っていたのでそのおかげだろう。だがそれでも一見してわからない個性の持ち主が紛れていた。

 

「ヒャッハー触れたぜお前の肌に!俺の特殊体液はすぐに身体に周り麻痺で動けなくなるぜぇ!!!」

 

「私の酸化涙もかかったわ、皮膚なんてすぐにボロボロよ!終・わ・り・よ」

 

 多方向の近距離に対応している中で同じ観客ごと個性を使われ手を触られ液体もかけられてしまう。手に熱を感じる、奴らの言う通りなのだろう。まだ半数ほど敵も残っているのでここで倒れるわけにはいかなかった。なので使う、使うしかないのだ。せめてもの対策として見えない用にはするが…

 

「……しまった、ちっ…『土流の碑文』『ディスペル!』」

 

 間近の数人を殴り飛ばしさらに地面を殴りつけ周囲を覆うように壁を掴み出す。そして外から見えないようにして回復術を使う。状態異常なのですぐに治ったがやはり消費が大きい、そろそろ回復術も本格的に練習しなければと身に染みる。だが今は戦闘中なので切り替える。

 

「やってくれたな!『驚天動地!グランドシェイカー!!』」

 

「バカな!俺の個性が効いてないだと!?」「私のもよ!確かに皮膚は崩れていたのに!?」

 

 アームを地面に強く叩きつけ大きく揺らす、床のコンクリートは破壊されるがビルには影響を与えるほどではないはずだ。

多くの敵が揺らぎに負け伏せる、そこに炎の渦を出現させる。

 

「『ファイアストーム!』」

 

「熱ぃ!でもバカがよ!こんな所ででけぇ炎なんか出したらスプリンクラーがこうやって吹き出すんだよクソが!」

 

炎の渦が吹き荒れると同時に天井のスプリンクラーが発動し水が降り注ぐ、それを確認して地面から少し浮く。これで準備が整った。

 

「あぁ、知ってるよ、でも皆ずぶ濡れだけど大丈夫か?『ライトニング!』」

 

「「「ぐぁあああああああああ」」」

 

 スプリンクラーにより濡れた者達に雷撃が降り注ぎ気絶させる、術として下級のライトニングなら威力も低めで良いだろう。

何人か気絶から逃れた者もいたがそれはアームでの攻撃で対処できるレベルだったのでこれでこの場にいる分は鎮圧出来ただろう。ここまで他人数との戦闘は初めてで気が抜けなかったし、油断してなくても攻撃をいくつか食らってしまった。回復術まで使わされたのは反省すべき点だろう。などと思っていると上階から防火扉に設置した氷壁が壊され警察とともにリューキュウ達が突入してきた。もう大丈夫だろうと変身を解除する。

 

「運命君!大丈夫!?……ってこれ貴方が?」

 

「あ、ここはオレがやりました!奥にミルコが行ってます!」

 

「私が行くわ!何人か着いてきてください。ネジレちゃん、ここで捕縛の補助をお願い!」

 

「はーい、運命君疲れてない?大丈夫?」

 

リューキュウと数人の警察を見送り、ふわふわと浮きながら波動先輩が声をかけてくる。後ろにはさらに警察官がいて気絶している人達に手錠をかけている。

 

「大丈夫です!緊張はしましたが」

 

「ふーん初めての職場体験なのにもうここまで出来ちゃうんだ~、凄いと思うよ?」

 

「ありがとうございます、波動先輩」

 

「ネジレちゃん」

 

「…先輩」

 

「ネジレちゃん」

 

「ねじれ先輩」

 

「ネジレちゃん」

 

「ネジレちゃん」

 

顔を斜めに傾け頬に指を当てながら近づいてくるネジレちゃん。圧が強い。

 

「うんうん、それで良いんだよ、所でなんで兎さんのマスクしてるの?ねぇねぇなんで?ミルコの弟子だから?ねぇなんでなんで?」

 

「あ、それは…「それにそれに、今回の格闘場定点配信でネットに流れてたんだって、登録制だったのがミルコ来てから流出したらしくて、リューキュウと警察の人が走りながら見てたよ?」」

 

「嘘でしょ…あ、胃が…ちょっとお薬飲みますね…」

 

「あーそれリューキュウから貰ったのだよね知ってるよ、早速飲むんだねなんでなんで?何がそんなに痛いの?ねぇねぇ」

 

「ちょっと…今はご勘弁を…あ、酸っぱい気がする、あっ…」

 

 怒濤のネジレちゃんに胃を痛めつつもミルコとリューキュウを待ち何とか今回の事件は解決となった。格闘場の奥には個性ブースト薬が置かれておりミルコはブースト薬を使った敵達と戦っていたらしい。満足そうに笑っているので本人的にも良い戦闘ができたのだろう。リューキュウ達は薬の流通の一端を掴めたらしくこれからさらに本元へ警察と共に調査を進めるらしい。ミルコはまた呼ばれない限りは手伝うことはせず、全国を周るそうだ。

 

 

 

 リューキュウの所を辞し、最後の一日もミルコの気の向くままに移動し敵を蹴飛ばし周りつつ職場体験最後の時を迎えた。仮宿に戻り制服に着替え荷物を纏めて外へ出る、部屋に戻った瞬間ヒーローコスチュームを脱ぎだす人がいるのにも慣れてしまった。

 

「よし、ちょっと来い」

 

 街中の時計を見上げるとそう言い、近くのビルの屋上まで跳び上がるミルコ。オレも飛び上がり同じ場所に降り立つ。

ミルコは夕焼けを浴びながら街を見下ろす。

 

「そういや聞いてなかったな、お前のヒーロー名を」

 

「今更ですね…エレメンタル」

 

「自然や精霊を意味する言葉だな。個性は地水火風だったか、つまり四大元素ってことだな?」

 

「はい」

 

「よし!覚えておいてやろう、運命!」

 

「あれ?そこは呼んでくれる所なのでは?」

 

「馬鹿野郎!まだ仮免すら持ってない卵が生意気言ってんじゃねェ!だが…」

 

振り返りいつもの豪快で自信満々で、ニカッとした笑顔でこちらを見る。

 

「てめェがちゃんとヒーローとして生きる覚悟が出来たら呼んでやる、だからさっさと仮免でも本免でも取ってこい」

 

「はい!」

 

「あ、もう職場体験終わってるから個性使わず歩いて帰れよ」

 

「嘘でしょ!ここ何階だと思ってんですか!?ちょっといい雰囲気出したかと思ったら!!」

 

「これが免許持ちとの差だ!地に足付けて生きろ!()ァーーッ()!!」

 

言いたいことだけ言って踵を返しビルからビルへ跳び移り消えていくミルコ。だから最後に思いっきり叫んでやった。

 

「やっぱり兎なんてキラいだああああああああああああああ!!…ありがとう、ミルコ」

 

 

こうして色々あった職場体験は幕を閉じたのであった。

 

 

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