期末試験を全て終えた次の日
各々が登校し挨拶を交わすがいつもの元気印の数人が見るも無残なほどに落ち込んでいた。
期末試験実技において条件を達成出来なかった者達、砂藤、切島、芦戸、上鳴である。
「皆…土産話っひぐ、楽しみに…うう、してるっ…がら!」
「まっまだわかんないよ!どんでん返しがあるかもしれないよ…!」
「緑谷、それ口にしたらなくなるパターンだ…」
必死に元気づけようとする緑谷だが、同じく実技試験で何も出来なかった瀬呂も落ち込んでいる。
そんな会話を他所に運命は尾白や障子から声をかけられる。
「運命あの後大丈夫だったのか?見てたけどボロボロだったな」
「ミルコと1対1でよく生き延びたな」
「あの後数時間寝ててさ、起きたら試験場大破壊でめっちゃ絞られたよ…」
眉間にしわを寄せながら運命は答える。
「はは…あれはちょっと洒落になってないレベルだったもんね」
「相澤先生に多少の破壊は目をつぶるって言ったじゃないですかって抗議したら多少と壊滅の違い辞書で引かされてさ、下校時刻まで試験場の掃除させられてたよ…」
「来る時に気になって見たら一面綺麗に土で均されていたな」
「消火とかは直ぐにロボットでやったらしいんだけどね…」
消火された木材は加工され資材に変えられるそうだが割れた大地などは運命が個性で直して周った。
「予鈴が鳴ったら席につけ」
勢いよく扉が開け放たれ担任相澤が入室してくる。既に席につき沈黙するように調教されたクラスメイト達がそこにいた。
「おはよう今回の期末テストだが…残念ながら赤点が出た。したがって…林間合宿は全員行きます」
「「「「どんでんがえしだあ!!」」」」
顔の画風が変わるほど落ち込んでいた赤点の四人は画風が変わるほどの驚愕と歓喜の顔で魂の叫びを捻り出した。
相澤先生の伝家の宝刀”合理的虚偽”がさく裂した結果になった。
赤点組とそれに近い瀬呂は補修時間を設けられる説明がなされ、合宿のしおりが配られる。
そして紆余曲折な事件もあったりして合宿先が変更になりつつ前期が幕を閉じた。
夏休み、林間合宿当日
移動用のバスの前で一度集合したA組一同
「ヒーローを目指す諸君に安息の日々は訪れない。この林間合宿でさらに高みへPlus Ultraを目指してもらう!」
「「「「「はい!!」」」」」
担任の相澤の言葉に気合を入れ直して返事をする。出発前の準備をしていると麗日が合宿の舞を突如踊り出しノリが良い芦戸と上鳴も即座に追随して踊り出す。
そこに少し離れた所で集合していたB組が近づいてくる。
髪をかき上げながらB組の物間が話しかけてくる。
「え!A組補修いるの?つまり赤点取った人がいるってこと!?ええ!?おかしくない!?A組はB組よりずっと優秀なハズなのにぃ!?あれれれれえ!?あと運命は実技試験場大破壊したんだってね?周囲の被害を考えないなんて体育祭優勝者は増長しているのかな!?」
初っ端から煽りを入れてくる物間にA組面々は言葉を失うがB組拳藤が首をトンっと叩き気絶させ引きずってバスに入っていく。
それを見ていた運命にB組から心操が近づいてくる。
「よぉ、なんかわりぃな」
「おぉ、物間はいつも通りだな?なんか直接的に嫌味言われたけど…」
「赤点取ったの俺と物間だからな…」
「お前が?実技試験か?」
「あぁ物間と俺のコンビで相手はミルコだったんだ」
「あ」
その言葉で察してしまう運命。
「物間はミルコに無理やりコピーさせられてなおかつボコられてな、俺もある程度は戦えたんだがギア上げたミルコの蹴りで全部吹っ飛ばされて、な」
言いながら思い出したのかお腹を擦る心操に運命はポンと肩を叩く。
「痛ぇよな、あの蹴り」
「…本当な」
同じくお腹を擦りながら頷くその姿に全てを悟る心操。互いに優しく肩を叩き合う2人であった。
「なんで心操は運命と分かり合ってんの?仲良かったっけ?」
「あれじゃない?体育祭で拳交えたし男同士の~ってやつでしょ」
「オォ~レフトが心操で、ライトが運命ですか?」
「ちょっと何言ってるかわからないのこ、ポニー」
「ん」
B組が拳藤の、A組が飯田の呼びかけでバスに乗り込む一同。
各々が席に座りバスが出発するとわいわいがやがやと楽しく騒ぎ出す。
切島と上鳴が音楽をかけようとし、芦戸と葉隠があっち向いてホイゲームをし、飯田が周囲に席から立つなと直立しながら注意し、八百万はバスの席の前にモニターが無いことに不思議がり、相澤は車内の賑やかさに嫌気がさしバス下部の荷物置き場に寝袋を持ちこみ寝ようとし、その他はしりとりで盛り上がったりしながら一路目的地へ向かうのであった。
そして一時間が過ぎバスが一時停車し全員が何もない空き地に降ろされる。
固まった身体をほぐしたり外の空気に深呼吸をしていると後ろを走っていたB組のバスが無いことに数人が訝しむ。そこへ相澤が喋り出す。
「何の目的もなくでは意味が薄いからな」
「よーーうイレイザー!!」
先に空き地に止められていた車から人が降りてきてイレイザーと呼びかける。それに対してご無沙汰してますと頭を下げる相澤。
全員がそちらに注目すると
「煌めく眼でロックオン!」「キュートにキャットにスティンガー!」
「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」」
決めポーズと共に名乗り上げた二人の女性達に相澤が言葉を追加する。
「今回お世話になるプロヒーロー【プッシーキャッツ】の皆さんだ」
「連盟事務所を構える4名一チームのヒーロー集団!山岳救助などを得意とするベテランチームだよ!キャリアは今年でもう12年にもなる…」
心は18!と緑谷の頭部を鷲掴みにする顔は真顔だった。
運命は緑谷に掴みかかる女性を見て一人驚愕する、それに隣に居た蛙吹が不思議がる。
「どうしたの運命ちゃん、プッシーキャッツのファンなの?」
「いや、あの青の衣装の人、凄い土の人だなって…」
「土の人?」
言葉の意味がよく理解出来ずに首を傾げていると話は進んでいく。
「ここら一帯は私らの所有地なんだけどね、あんたらの宿泊施設はあの山の麓ね」
と遠くを指さす赤き衣装の女性。
何故遠くの宿泊地を今説明するのかと全員に不安が過る。
「え、じゃあなんでこんな半端なとこに…?」
「バス…戻ろうか…な?早く…」
「今はAM9:30、早ければぁ12時前後かしらん」
その言い方にもはやパニックを伴いながらバスへと戻ろうとする一同。
「12時半までにたどり着けなかったキティはお昼抜きね」
バスの手前には先ほどの青き衣装の女性が陣取っており両手を地面につける。
すると地面が隆起し、止まる。
「「「!?」」」
「ぐっ…オレが止める!みん、な!いけぇ!」
「「運命ナイスだ!」」
運命が片足を前に出し必死に大地を操っているようだ。
その姿に青き衣装の女性は驚き、さらに力を込める。
土がせめぎ合いをしており、先頭がバスに近づけると思った瞬間。
「悪あがきはよせ運命」
相澤が髪を逆立たせ目を赤く光らせながら運命を見る。
それはクラス中が良く知る個性の発動であった。
「「あ」」
「これが抹消ですかああああああああああああああああ!!」
土の濁流に生徒全員が飲まれ崖下に連れ去られる。
「悪いね諸君、合宿はもう、始まっている」
相澤の最後の言葉が放たれた。
「私有地につき個性の使用は自由だよ!今から三時間!自分の足で施設までおいでませ!この…魔獣の森を抜けて!!」
下に流れて行った生徒達に説明を終えプッシーキャッツは相澤に向き直る。
青い衣装の女性ピクシーボブは笑いながら立ち上がる。
「まさか準備してた私の土流操作に抵抗出来るとはね、噂の運命って子ね?」
「はい、どうでしたか?」
「あの一瞬で私と同等まで力練り上げたのは称賛に値するよ、こりゃあ将来性バッチリの子だね」
ペロリと唇を舐めナニかを思い描くピクシーボブ。
「15,6歳の子にそんな顔しないのピクシーボブ」
赤い衣装の女性マンダレイが窘めに入る。
崖下では生徒達が土の魔獣に襲われるも瞬時に数人が飛び出し対処する。
「では引き続き頼みます」
「くぅーお任せ!逆立ってきたぁ!」
一方崖下に落とされた生徒達は魔獣と戦っていた。
口田の動物を従える個性では制御できないソレを数人が即座に前進し攻撃を放つ。
轟が凍らせ爆豪が爆破し、飯田と緑谷が完全に破壊する。
爆豪が一体目を倒し周囲を見回し、後ろに向かって声をかける。
「おい運命お前サボりかクソ野郎!?」
後ろのクラスメート達の中にいない運命を探そうとすると上から魔獣の破片だったものが落ちてくる。
「上にもいた、対空も注意ね」
上空から着地する運命に舌打ちが漏れる。
「チッ…」
「まだだ!」
そして目線の先には新たに生まれてくる土の魔獣達。それを見て突破の覚悟を決める生徒達。
「施設の位置はオレがその都度上空から確認するよ!八百万、飯田、上手く回そう!」
「ええ!最短ルートで施設を目指しましょう!」
「よし!行くぞA組!!」
「「「「「おう!!」」」」」
そして約三時間後
「「ハァ、ハァ…」」
「開けた場所に出たな、少し休もう」
「賛成ですわ」
飯田と八百万の声に全員が周囲を見ながらも腰を落とす。空から運命も降りてきて息を整える。
「OK、方角は今のままで大丈夫、残り半分くらいかな」
「助かりますわ運命さん」
「下までフォロー出来ないけど怪我人出てない?治すよ」
「あ、運命ちゃんお茶子ちゃんの手お願いできる?」
「触って浮かさなあかんから土の塊に引っかかってしもて…ごめんな?」
「切れてるな、OK、『ファーストエイド』」
「おぉ、これが回復、ありがとうな運命君」
親指を立たせながら運命は笑う。
「水…どっか川ないか?」
峰田が皆から少し離れながら声を漏らす。
「いや、近くに川無かったよ、だから出すわ、皆も飲むなり洗うなり使ってくれ『水よ!』」
21名の前にサッカーボールほどの水球が現れ空中に留まる。各々が現れたそれに歓喜の声を上げる。
「いやー助かるわ!サンキュ」
「…ぷはぁ!生き返るー!」
「顔だけでも汚れ落とせるの超助かるよ、ありがと」
「運命…オイラ…言わなくてもわかるよな?」
濡れたズボンを握り涙を流す峰田。
「わかったよ峰田、あっちの陰で全身濡らして乾かしてやるから…泣くなよ」
「しのびねぇなぁ」「かまわんよ」
「なんなんだよあいつら…」
等と言いながら少し離れて木の陰に歩いていく二人。そのやりとりについ瀬呂もツッコんでしまう。
「…そうか、こういう個性の使い方もあるんだな。俺も出来そうだな」
「轟君なら運命君と同じ事容器があればお湯から冷水まで出来そうだね!」
轟も目の前の水球から水分補給してその使い方に関心する。
そして喉を潤したあとハンカチに水を浸し足のエンジン部分に纏わせている飯田を見て声をかける。
「飯田、冷却なら俺がやろうか?排気筒以外だったよな?」
「ム、すまない轟君!頼めるだろうか」
「今は遠慮する所じゃねぇぞ、ほら、これでいけるか?」
「助かるよ」
「…なんか良いな、そういう個性の使い方」
緑谷は己の拳で何が出来るだろうかと考えながら拳を握る。
「しかし今で3時間か、残り半分ってことはもう昼食は抜き確定だな…」
砂藤の言葉に全員が大きく息を吐く。そこに戻ってきた運命が声をかける。
「距離的には半分って言ったけど時間まで同じってことはないでしょ」
「確かに、今までは全員でがむしゃらに戦いながら来たが敵のパターンもわかってきた今ならもっと効率化出来るはずだ!すなわちもっと早く通り抜けることも出来るはずだ!」
飯田の言葉に皆が考えを挙げていく。
「ウチと障子が索敵してるけど被ることも多いしもっと分担しても良いかも、あと口田も索敵よりでいいかも」
「前方は前衛に、索敵は把握が難しい後方や上などを主にしても良いな」
「上鳴と青山なんかの休み必要な奴も回して上手くさせたいな」
「ぶっちゃけ魔獣もどこ壊せば動けなくなるかとかもわかってきたな」
「瀬呂ちゃんと私、常闇ちゃんで低空ももう少し対応してあげないと空が運命ちゃん一人になってしまっているわ」
「そうだな、運命も休みの時間が必要だろう、俺らにもっと任せてほしい」
「前衛の轟さん爆豪さん飯田さん緑谷さん達もローテーションで休みを入れながら連携して行きましょう、その方が結果として早く進めると思いますわ」
そう言いながら八百万はリアカーを創造しバンと置く。それは数人が座って休めるほどの許容量があった。
「特製の悪路でも動くリアカーです、休みの人はここで休憩を入れながら引きます、そしてゴールまで突き進みましょう、走りながら私が皆さんのローテーションを組みます!」
「よし!あと半分気合入れて行こうA組!!」
「「「「「おう!!」」」」
PM2:30
「結構早かったんじゃにゃい?」
ゴールである宿泊施設に到着した21人が疲労しつつもしっかりした足取りで森から出てくる。
一番先頭だった緑谷がほっとした顔で相澤とプッシーキャッツの二人が前に立つそこまで歩く。
すると障子が鋭い声を上げる。
「!緑谷!跳べ!!落とし穴だ!」
「ック!?」
「危ねぇ!?」
声のままに跳んだ緑谷がいた場所が崩れ落ちる。跳んだ緑谷は上空で運命にキャッチされ手前に引き戻される。
「ゴール目前の気の抜けた所を狙った落とし穴だったがよく気づいたな障子、見事だ」
相澤が笑いながら手を数回叩く。
「障子君、運命君ありがとう」
「障子ナイス、流石だ」
障子の注意力に救われた緑谷が障子に感謝する。運命も手を出し障子と手を合わせる。
「分担してもらったからな、集中は切らさないさ」
「いや、エグいよ先生…」
「確かに森を抜けて気が抜けた所に罠は合理的ですわね…」
ドン引きする生徒を他所にプッシーキャッツが声をかけてくる。
「この落とし穴も避けるとは、優秀ね」
「何が三時間ですか…」
「悪いね、私たちならって意味、アレ」
「ねこねこねこ…でも正直もっとかかると思ってた、倍以上だと思ってたけど5時間とは。私の土魔獣が思ったより簡単に攻略されちゃった。いいよ君ら…そこの5人は言わずもがななんだけど」
緑谷、轟、爆豪、飯田、運命を指さした後全員に向けて笑顔を向ける。
「休憩入れた当たりから統率がしっかり取れてたね、役割をしっかりわけた上での最速を目指す。良いね、戦闘力の高い5人に頼らずしっかりチームの為に考え動いていたよ、私はそこをしっかり評価するよ、プロの集団として」
プロからの正当な評価に皆が充足感で笑顔を浮かべる。
相澤がそこに続く。
「俺も聞いていてお前達は上手くやったと思うぞ、八百万や飯田にだけ頭脳担当を任せるのではなくしっかり全員が考えて話し合った点はプロでも大事な所だ。忘れずにいろ」
「「「「はい!!」」」
「あの…ずっときになってたんですが、その子はどなたかのお子さんですか?」
緑谷がおずおずと挙手しプッシーキャッツに尋ねる。
「ああ違うこの子は私の従甥だよ、洸汰!ホラ挨拶しな。一週間一緒に過ごすんだから…」
「あ、えと僕雄英高校ヒーロー科の緑谷。よろしくね」
子供の前に立ち少し屈みながら手を差し出す緑谷。
瞬間子供は目の前の緑谷の股間にパンチ一閃、踏み込みもしっかりした良い一撃が突き刺さった。一撃で気絶した緑谷に飯田が駆け寄るも洸汰はスタスタと歩き去る。
「緑谷君!おのれ従甥!!何故緑谷君の陰嚢を!!」
男子達は少し腰が引けていた。洸汰は一度振り返り怒りの顔を隠さずに言う。
「ヒーローになりたいなんて連中とつるむ気はねぇよ」
「つるむ!?いくつだ君!!運命君!緑谷君の陰嚢を頼む!!」
「いやー頼まれたくないなー…まぁ仕方ないよな…『ファーストエイド』」
「おぉ、緑谷君の顔が少しましになったな」
「茶番はいい。バスから荷物降ろせ、部屋に荷物は混んだら食堂にて夕食。その後入浴で就寝だ、本格的なスタートは明日からだ。さァ早くしろ」
相澤の言葉に従いバスから荷物を降ろし部屋で一息入れる生徒達。
休みを取りつつと夕食まで過ごしているとB組も到着し披露した姿で部屋に荷物を持って行く。
そして夕食の時間を終え入浴タイムとなった。
運命が湯につかると横に轟が近づいてくる。
「横良いか?」
「良いよ、どうしたの?」
タオルを頭に置き同じく肩まで浸かった轟は前を向きながら話始める。
「前の期末試験見た、隕石ぶっ放してたのも驚いたんだけどさ。あの二種類の変身は奥の手だったのか?」
「いや、アレはあの時初めて出来た。あの瞬間だから出来たことなんだと思う、二つの属性を使うって滅茶苦茶難しくてさ」
「同時に使うって意味なら俺もわかる、出力的な意味でも、身体の許容量的な意味でも」
「そうそう、それにオレはまだ相反する属性は同時に使えないんだ」
「炎と水、風と土って感じか?」
「指先にちょっと出すくらいならまだしも戦闘、特に神衣ではまだ出来ないな。まずは出来る二属性から試さないとだし、今後の課題かな」
「そうか、似たような感じだな」
「そうだ、今度連携技試してみないか?」
「連携、技?」
「火と炎、水と氷、もしこれで連携出来たら凄い事が起こると思うんだよ」
「膨冷熱波、緑谷に使ったあれ以上になりそうだな」
「今はオレのレベルが足りないから使えるようになったら頼むよ」
「連携か、それも面白そうだな」
そう言って轟は少しだけ笑った。
そこに露天風呂で泳ぎ出した上鳴が突っ込んでくる。
「なになに、連携?面白そうなこと喋ってるじゃん!運命俺とも連携技作ろうぜ!雷撃系の技でこうバァーってさ」
「あるよ、爆豪に体育祭で最後に使ったの雷撃属性だし、雷を上鳴に落としてそれを放電しまくるってどう?」
「それ俺死なない?」
「どうかな、やってみないとわからないな」
「試しで人を殺そうとするんじゃないよ!!」
「上鳴に雷か、面白れぇな」
「轟まで笑ってんじゃないよ!!」
等と露天風呂での会話を楽しんでいるとある一人が動き出した。というか見た時には既に終わっていた。
「ヒーロー以前にヒトのあれこれから学び直せ」
露天風呂の壁の間から顔を出した洸汰が峰田を突き落とす。
「くそガキィィィィイイイ!!?」
落された峰田は飯田の顔にお尻から落ち、何故か落ちて来た洸汰は緑谷に救助されていた。
「洸汰君!?鼻血が!?どこもぶつけてないはずなのに!?運命君来て!」
「おう!!…どこもぶつけてないなら問題なさそうだし呼吸もしっかりしてるんだけどな。それに水系の個性だろうから耐性もあると思うんだよなぁ」
「水系の個性ってわかるの!?って今はいいや、でも良かった、僕プッシーキャッツの所に連れて行くね」
「そっち頼んだ、峰田はオレらがヤるよ…」
緑谷が洸汰を連れ露天風呂から出て行く。
そして男子全員で峰田を囲む、完全に犯罪行為未遂のクラスメートに流石に誰も容赦することはないようだった。そして誓った、今後はなんとしても事前に止めようと。
火責め、水責め、雷落、虫責め、氷責め等出来る全てで峰田をお仕置きし、相澤に突き出した時男子の心は一つだった。
そして翌日の合宿二日目のAM5:30
体操服を身に纏い早朝の眠気に多くの者が囚われている中相澤はいつも通りのテンションで喋り始める。
「本日から本格的に強化合宿を始める。今合宿の目的は全員の強化及びそれによる”仮免”の取得。具体的になるつつある敵意に立ち向かう為の準備だ、心して臨むように。というわけで…爆豪、こいつを投げて見ろ。入学直後の記録は705.2m…どんだけ伸びてるかな」
言葉と共に爆豪に投げ渡された測定器、爆豪が前に出て身体をほぐしながら振りかぶる。
「おお!成長具合か!」
「この三か月色々濃かったからな!1キロとかいくんじゃねぇの!?いったれバグゴー!!」
周囲も期待してそれを見守る。
「んじゃよっこら…くたばれ!!!」
爆発と同時に測定器が消えていく。ピピと相澤の手元の端末に結果が示され表示される。
「709.6m」
「「「!!?」」」
「あれ…?思ったより…」
劇的な数値の変化が見れないことにざわつく。
「約三か月間様々な経験を経て、確かに君らは成長している。だがそれはあくまでも精神面や技術面、あとは多少の体力的な成長がメインで”個性”そのものは今見た通りでそこまで成長していない、だから今日から君らの”個性”を伸ばす。死ぬほどキツイがくれぐれも…死なないように!」
相澤は挑発するように笑うのであった。
そしてプッシーキャッツの一人ラグドールの個性”サーチ”によりA組の生徒の情報や弱点の判明により修行の内容を割り振られて行く。
様々な修行に散っていく面々。
運命の番が回ってくるが
「およ?個性が4色で滲んで見えない!こんなの初めてね…あ、でも弱点ははっきり分かるよ”心”って4色で強調表示されてる!文字に色着くとか初めて、どういうこと怖い…」
「運命については今回リカバリーガールからのお達しで回復役を仰せつかってる、メインは個性伸ばしだがヒーラーとしての訓練もあると思っといてくれ」
「はい、個性伸ばしの方はどうしましょう?」
「お前は精霊とやらと意思疎通出来るのだろう?ならそちらで決めてくれ、無ければこちらである程度考えてあるが」
「じゃあ二属性神衣の制御訓練します、宿泊施設の近くにいますので必要な時は呼んでください」
「わかった、では行け。次、尾白、来い」
そうしてクラス全員が修行に散っていく。
運命も皆から少し離れ宿泊施設の近くで精神を落ち着かせ、発動する。
「神衣『ノーム、イフリート』」
地と火を纏い安定させようと整える。
(神衣一つでも莫大な力を秘めている、その制御は上空に張った糸の上で巨大な猪を背負って歩くようなものだ。制御だ、砲台としての制御。くぅ…ダメか!)
弾かれるように神衣が解除され地面に膝をつく。時計を見ると開始時から10分、神衣を維持するだけでも10分しか持たなかった事を示す。
(ミルコとの戦闘時を思い出せ、極限の状況、あの時を…炎と大地を一つに)
再度神衣化し集中し維持に努める。
両腕の横に炎を纏った大地のアームが展開され、ゆっくりと動き出す。
ゆるゆると運命の周りを回転し、意のままに動き出す。
この動きだけで汗をびっしょりとかき、息も荒くなる。全身の火照りを吐き出すように神衣を解除し時計を見る。30分が過ぎていた。
(よし、この調子で出来る神衣を安定させていこう)
こうして属性を変え神衣化の訓練に勤しむ運命であった。
PM3:30
長時間の訓練でへとへとの生徒達に訓練の終了が告げられる。
「よし!本日の訓練終了!怪我した者は運命に言って救護室で治してもらえ、4時にもう一度宿舎前に集合だ、それまで休憩」
B組担任のブラドキングの声により多くが疲弊でその場で座りこんでしまう。
お互いの個性の強化のために尻尾で攻撃し硬化で防御し続けていた尾白と切島はボロボロになった自分の身体を見て運命の所に向かう。
「はっ、はっ、尻尾ボロボロ…」
「ぜっ、ぜっ、俺もボロボロだぜ…」
身体を引きずりながら宿舎へ戻る二人
「運命は今から回復か…大丈夫かな」
「運命は強ぇからな、でも今回ばかりは皆限界だしな…」
その足取りは遅かった。
皆が訓練を終える少し前に運命は救護室に詰めておくように言われ待機していた。
制御の訓練で精神的に大分疲れていたが回復の訓練にもなるので致し方ないことであった。
そこにコンコンとノックされ返事をすると扉が開く。
「運命、悪いけど頼むわ…」
「俺も…」
「Oops so heavy…」
心操を筆頭にボロボロなB組の生徒達、距離的な問題かまずB組が固まってきたようだった。
「OK、皆の容体見てから順番決めさせてくれ、頭から血流してる角取と全身血だらけの鉄哲から座ってくれ」
「俺は男だからよぉ!女子からやってくれや運命!!」
「鉄哲、そういうの今は良いから運命の判断に任せなって」
運命のトリアージに鉄哲が異を唱えるが拳藤が宥める。一番手の角取が頭を見せ回復をかけられる。
「オー、頭痛が痛く無くなりました!センキュー運命!」
角の生え際を触りながら角取が笑い感謝を述べ席を立つ。
「傷口は治ったし消毒も終わった、付いた血は良く洗って落してね。次鉄哲、座って…全身傷だらけだな、『ファーストエイド』あとは身体洗ってくれ」
「助かる!俺は鉄だからよ、山を全力で掘ってたらこうなってな、鉄分が足りてなかったぜ」
「切島との対決楽しみにしているよ」
「俺もさ!じゃぁありがとよ!!」
鉄哲を終え、塩崎、宍田、庄田、鱗、回原と回復をかけていく。
次に拳藤が呼ばれ運命に手を差し出す。
「おぉ、結構痛んでるな、感覚あるか?」
「正直痺れててわかんない、手の耐久力増強の為に土も岩も木も叩きまくったから…」
「武術家が拳鍛える為に似たような事するよな?心操」
「あぁ、俺もやったよ、痛いんだあれ…」
「ふふ、女の子らしい手じゃなくなって来てるけどね…」
どこか物思いにふけりながら手を見つめる拳藤。
「『ディスペル』『ファーストエイド』。女の子らしい手、か。でもこの手はこれから色んな敵を叩きのめして、いっぱいの人を救うヒーローの手になるんだろ?カッコいいと思うよ」
「そうさ姉御、血と汗と涙の結晶の手で、俺らは笑顔を守るんだからさ」
隣から掌を握り込みながら掲げる心操がニヒルに笑う。
二人の言葉を聞いた拳藤は拳を握りしめながら笑顔を見せる。
「何よあんたたち二人してさ、いつか二人にもお見舞いしてあげるんだから」
「「ひゅーこえー」」
「ふふっハモんなって、じゃあありがと運命、心操」
手を振りながら出て行く拳藤
心操はそれを見送ってから席に座らず背を向け扉へ向け歩き出す。
「あれ、お前は良いのか?心操」
「俺は慣れてるからな、このくらいの傷なんとも無いよ、自分で手当てできる範囲だ」
「じゃあなんで来た……あー付き添い?」
「そんなところだ、皆あんまし運命と喋ったことなさそうだったし」
首に手をやりながら少し気恥ずかしそうに答える心操。クラスメイトを気遣うその姿に運命も笑いながら返す。
「物間の突っかかりなかったらもっと仲良く出来そうなんだけどなー」
「アイツもA組コンプみたいなのが無けりゃ割とまともでクラスメイト想いの奴なんだがな…」
ハァと大きくため息を二人でつき首を振る。それがおかしくて少しだけ笑っているとガヤガヤと複数の喋り声が聞こえ入室してくる。
「運命ー皮膚ちょっと溶けたー治してー」
「ウチもジャック部分ボロボロ…お願い」
「オイラの頭皮が一番やべぇよ!血だらけすぎて前が見えねぇよ!!」
「俺の尻尾も頼むよ」
「俺の身体も頼む運命!!」
「己の闇との闘いが激しすぎてな…」
「私もベロが…ケロ」
遠慮の無い声達に運命も声を荒げる。
「いっぺんに言わないでくれ、あと峰田は最後だよ!」
「差別すんじゃねぇよ!!トリアージだろ!!」
ハハハと疲弊しながらも笑うA組の姿に心操も笑いながら手を振って部屋から出て行く。
こういう関係でAもBも関係なく笑い合える日も来るだろうと信じながら。
そしてPM4:00になり生徒全員が宿場外にある炊事場に集まる。
「さァ昨日言ったね、世話役のは今日だけって!!」
「己で食う飯くらい己でつくれ!!カレー!アハハハ、全員全身ブッチブチ!だからって雑なネコマンマは作っちゃダメね!」
プッシーキャッツの言葉に全員がグタ…と全身で示しながら返事を返す。
「確かに…災害時など避難先で消耗した人々の腹と心を満たすのも救助の一環…さすが雄英無駄がない!!世界一旨いカレーを作ろう皆!!」
ハッと気づいたことを言い士気を勝手に高めていくクラス委員の飯田。
「轟ー運命ー!こっちも火ィちょーだい!」
「皆さん!人の手を煩わせてばかりでは火の起こし方も学べませんよ」
「運命、俺が火付ける」
「頼むーオレ水出すわーあと爆豪君爆発で竈ぶっ壊したってマジなのですか?」
「うっせーわそうだわクソが!テメェ直しとけ」
「すまない運命、諸々頼めるか」
「悪ィ運命、俺が煽っちまった…」
「情緒やばいでしょ…すぐ直せるけどさ『ノーム』」
運命が吹き飛ばされた竈を隣と同じように直す。瀬呂と常闇が感謝を示すが爆豪はフンと鼻息荒く運命の炊事班の食材の切り分けに参加する。どうやらそれが直したお礼のようだ。素直じゃねーと瀬呂と言葉を合わし笑う運命達の姿にさらに爆豪の手が正確に速くなっていく。
「わー轟君ありがとー!」
「燃えろー燃やし尽くせー」「尽くしたらあかんよ」
轟は火を付けそれが役立つことに少し笑みを浮かべ次々に火を着火させていく。
運命は竈を直した後調味料の予備をもらいに施設内に入ると昨日の食材の残りを発見してしまう。
「マンダレイ!これ残ってるなら貰って良いですか?あと少し調味料も追加で」
「良いわよー、でも量はそれだけしかないけど足りるかしら?」
「十分です!ありがとうございます」
そして運命はカレー作成の隣で密かにソレを作り出した。
「「「「「いただきまーす!!」」」」」
見栄えは良くないカレーだが疲弊しきった身体に染みいるのかモリモリと食べていく生徒達。
「店とかで出たら微妙かもしれねーけどこの状況も相まってうめーーーー!!!」
「言うな言うなヤボだな!」
ガツガツと食べる切島と瀬呂。
皆食べている中で蛙吹がまだ炊事場にいる運命に気付き声をかける。
「あら運命ちゃん、何を作っているの?」
「ふふふ、カレーと言えば」
鍋から大皿に注ぎソレが露わになり匂いが広がる。その匂いにそれが何か気付いたのは爆豪だった。立ち上がり声を荒げる。
「この匂い、麻婆豆腐だと!?どういうことだ運命ェ!!」
「マーボー豆腐とカレーの”運命”の出会い。二つの辛さが”クロス”する究極のハーモニー!『マーボーカレー』だ!!」
「マーボーカレー?混ぜんの?」
「今さりげなく自分の名前入れてたね」
「辛いもんに辛いもんか、漢らしくてちょっと気になるな」
大皿から自分のカレーにマーボーをかけ完成したそれを食べ至福の表情になる運命。
「うめぇ~~~!あ~HPもTPも回復するぅ~!!」
ゴクリと周囲が喉を動かした瞬間誰よりも早く爆豪は動いていた。
「よこせ、味見してやる」
「食え食え、皆も一杯分はあると思うから好きに取ってくれ」
皆が爆豪がよそい食べる所を見守る。
マーボーをかけ一度匂いを嗅いでから食べる。一瞬目を見開いた後次々に口に運んでいく。
「…フン、レシピよこしとけ。まぁまぁだ」
「あの辛いものには目が無くてその評価も辛口で有名なかっちゃんがあんなに素直に食べるなんて…!?」
「デクは死んどけぇ」
「俺もくれ!」
「オイラにもだ!!」
「ウチももらおうっと」
「この辛さ癖になるー!やるじゃん運命ー!」
「尾白君私にも取ってー」
「わわ、葉隠さん揺らさないで~」
林間合宿二日目はこうして過ぎていった。
スキット~級友との夜のひととき~
「お、青山も枕投げから逃げてたのか?」
「!?ムッシュ…あの騒がしさでは寝れないからね」
「わかるわかる、爆豪投げる瞬間に地味にバレないレベルで個性使っててさ、寝る前に疲れたくないからオレも退散してきたよ」
「……そうだね」
「…?どうした青山、元気ないぞ。いや、輝いて☆ないぞ」
「ぷふっ、僕の真似かい?」
「完璧な真似でしょ」
「ノン!煌めき☆足りてないよ☆」
「あーそれそれ。あ、お前二の腕怪我してんぞ、治すよ『ファーストエイド』」
「メルシー、運命君、君は僕にも優しくしてくれるね」
「なんだよ、クラスメイトだし席も隣じゃん、オレは友達だと思ってるぞ?あ、でもお前授業分からなくなった瞬間肘ついて両手に顔乗っけて逃避すんの止めた方が良いぞ、オレと芦戸、尾白はその癖わかってるからな」
「癖なんだよね☆アハ」
「大丈夫かよ…」
「君こそ………怪我や病気に気を付けるんだよ」
「?…医者の不養生的なあれか?」
「変な人にはついていかないこと☆不審者を見たら逃げること☆」
「オレは子供か!同い年にそんなこと言われるなんて…、変な奴め。お、緑谷が枕投げ終わったサイン出してくれた、戻ろうぜ。疲れたし爆睡できそうだな」
「…そうだね。良い夢を見たいね…」
*青山君とは仲良いんです。