僕の運命アカデミア   作:乙子

23 / 28
第21話~死穢八斎會編その1~

 

 

 

 

 

 

数日後

 

朝の寮の前でインターン組の5人が偶然にも同じタイミングで出発しようとしていた。

 

「おはよう、あれ、皆コスチューム無しなのにインターン?」

 

「うん、暫く呼ばれなくって、やっと今日だよ。コスチュームいらないって言われたけど、切島君と蛙吹さ…梅雨ちゃんと麗日さんもコスチュームいらいないんだ」

 

「偶然やねー」

 

「クロスちゃんはいつもの感じね」

 

「ミルコだからね」

 

駅まで一緒に歩いていく。途中ヒーローにも同行してもらい駅に着く。

 

「あれ?皆こっち!?切島君関西じゃ…」

 

「何か集合場所がいつもと違くてさァ」

 

「私達もよ」

 

5人並んで座席に座り、同じ方面に出発する。目的地を聞くと全員同じ駅だった。

 

「奇遇だね…!」

 

「先輩と現地集合なのよ」

 

駅について歩きだすと方向も同じであった。同じすぎて楽しくなり、皆ベロがどれだけ伸びるか大会をして蛙吹に瞬殺される。

 

目的地のビルの前にはビッグ3が揃っていた。

 

「これは何だ!?」

 

驚愕する緑谷を他所にそのビルに入っていく面々。

 

運命を除く面々は制服のまま入っていき、運命は指示通りにミルコのインターン生であることを受け付けに告げ、更衣室でヒーローコスチュームに着替える。

 

そして見慣れたリューキュウやファットガム、そして担任の相澤を見つけ挨拶をする。

 

まずは相澤へ、次にファットへ、そして最後に波動に絡まれているリューキュウの元へ赴く。

 

「お久しぶりですリューキュウ!神野の時はミルコがご迷惑をお掛けしたそうで、色々ありがとうございます」

 

「運命君も元気そうね、左手の事は聞いたわ。でも頑張っているみたいね、ニュース見てるわよエレメンタル。ミルコは一緒じゃないの?」

 

ポンと労わる様に運命の左腕を触り、笑顔を作るリューキュウ。その優しさにほろりと来る運命。

 

「現地集合だったはずなんですが…っとすいません」

 

タイミング良く携帯が鳴り、確認する。ミルコからのメールで書かれていた内容に大きく頭を項垂れ、大きく息を吐く。

 

運命は一度気合を入れ直すと、サーナイトアイ事務所の人員であるバブルガールに話しかける。

 

「失礼します」

 

「あ、エレメンタル君でしたね。ミルコ来ましたか?」

 

「いえ、ミルコは近くの繁華街で事件発生したらしく、それに対処するとのことで名代になりました。よろしくお願いいたします」

 

「えー!学生を代理に!?」

 

「騒ぐなバブルガール、聞こえていた。エレメンタル、了解した。では皆さんこれより協議を行わせて頂きます!」

 

バブルガールの後ろから出て来た二メートルはあるだろう長身にメガネの男性、サーナイトアイが運命を見やった後、集まったヒーロー達に声をかけ、室内への入室を促す。

 

事務所ごとに集まって座るインターン生をしり目にプロヒーロー側、しかも知り合いの誰とも近くない位置に一人座らされる運命。

 

学生で唯一ヒーローコスチュームの運命に周りからの視線も痛いが必死で表情を作り、影を薄くしようと努める。

 

以前のヤクザ屋壊滅戦時に集まった強面のマル暴の刑事さん達に比べればまだ周りはヒーローなのだ、というかヤクザよりマル暴よりヤバいのはミルコなのだ。そう考えて精神の安定を図る。

 

そして大会議室に集まった20名以上が全員座ったことでナイトアイ事務所の相棒のバブルガール、センチピーダーが中心となり今回のチームアップの要件が初めから共有されていく。

 

 

 

 

今回の調査対象は指定敵団体『死穢八斎會』。

 

調査のきっかけは約二週間前のレザボアドッグスと名乗る強盗団の事故から始まり、その事件の不審さから調査が始まり、調べると組織拡大・金集めを目的に動いてる可能性があり。

 

すると敵連合の一人、分倍河原仁と死穢八斎會の接触が見られ、組織間のなんらかの繋がりが見られた。

 

そしてさらにヒーローなら知っていることへのインターン生への説明などを挟み、そのテンポの遅さにプロヒーロー、ロックロックが苛立ちの声をあげる。

 

それに大声で反論するファットガム、彼が以前薬物関連に詳しいヒーローとして呼ばれたことが説明され、ファットガムは今回の関わりの説明を始める。

 

個性を壊す薬。その異常さにプロもざわついてしまう。被害者が天喰ということもあり、運命も心配そうに天喰を見る。

 

通形も同じく心配し声をかけるが一晩の睡眠で回復したことを右手に個性を発現させ証明する。

 

同じく個性への抹消を持つ相澤の意見も聞き、個性への攻撃の怖さを確認する。

 

その個性を破壊する薬を弾頭にして打ち込んだチンピラは黙秘を続けており、わからずじまい、かと思われたが切島が個性で弾いたおかげで現物の証拠が手に入り、その中身を調べた結果、人の血や細胞が入っていたことが明らかになる。

 

おぞましいその内容にインターン生は顔を青くする。続けてファットガム事務所が捕まえたチンピラ達の違法薬物の流通経路を辿っていくと、そこに今回の死穢八斎會があったと告げられる。

 

「ミルコとそこのエレメンタルがぶっ潰したヤクザ屋もその流れの一つや、頑張っとんなエレメンタル!」

 

紹介と同時の激励に運命は頭を下げる。そこにナイトアイから同様のことがリューキュウ達の方でも確認されたことが告げられる。

 

そして告げられる死穢八斎會、若頭の治崎の個性『オーバーホール』対象の分解・修復が可能。

 

分解…一度「壊し」「治す」個性。そして個性を「破壊」する弾。全ての点が繋がっていく。

 

ダメ押しのように治崎の出生届もない娘の存在、そしてその少女の手脚には夥しいほどの包帯が巻かれていたという事実。そしてその娘と接触したのはナイトアイ事務所のインターン生二人、通形と緑谷であった。

 

娘の身体を銃弾にしてさばいているという可能性。

 

想像の面もあるこの推論、しかし今だ試作段階だとしたら捨て置けない最悪の可能性に多くのヒーローが怒りを表す。

 

すぐにでも子供を助けに襲撃しようと意気込むファットガム。

 

そこに冷静なロックロックが少女の存在をどこに隠すかの可能性を考える。

 

今回の協議の問題はそこであり、その為に地方のプロヒーローも招集したと告げられる。

 

プロジェクターの映像には日本地図と点在する死穢八斎會の拠点がポイントされている。集まったヒーロー達にはその拠点への調査を願われる。

 

今すぐにでも少女を助けたいファットガムの怒号にナイトアイは冷静に確実に助けられるチャンスを作り出すための調査だと言いきる。

 

その後ナイトアイの個性『予知』を使うか否かで場は荒れるが、ナイトアイの明確な拒絶により場が凍り付く。

 

そこをリューキュウが取り成し、娘の居場所の特定・保護を目的として各自に必要な詳細が渡され会議は終わった。

 

ナイトアイはミルコには調査よりもそれに付随する戦闘への助力を願うつもりだったので、特に詳しい調査は請われなかった。

 

だがナイトアイはミルコの名代の運命にそっと肩を叩き話しかける。

 

「君の事はある程度聞いている、ミルコの無茶苦茶ともいえる活動によくついていけているよエレメンタル」

 

「ありがとうございます」

 

「本番での君とミルコの戦闘力、そして君の回復能力にも期待させてもらって良いか?」

 

「!?」

 

「ふっ、そう身構えなくてもいい、ヒーラー固定の働きではなく状況によっては使って欲しいという程度だ。ミルコの獅子は我が子を千尋の谷に落とす育成方針は尊重する」

 

「ミルコは自分も谷に降りて来て積極的に蹴るんですが…」

 

「ふっ、良いユーモアだ。それについていける者は少ないよ、頼んだぞエレメンタル」

 

「ヒーローとして、しっかり動きたいと思いますサーナイトアイ」

 

「ありがとう、一応ミルコに詳細の紙は見せておいてくれ」

 

「はい!失礼します」

 

一礼の後、運命は一階へ降りて行く。

 

途中で相澤が合流する。

 

「エレメンタル、名代ご苦労。しっかり頑張れ」

 

「はい」

 

一階の談話スペースにはお通夜の様に落ち込んだ雄英生達がいた。

 

相澤が声をかける。

 

「通夜でもしてんのか」

 

「先生、クロスちゃんも」

 

「学外ではイレイザーヘッドで通せ。しかし、今日は君達のインターン中止を提言する予定だったんだがなァ…」

 

「「「!!」」」

 

相澤の言葉に驚く雄英生。

 

「連合が関わってくる可能性があると聞かされたろ、話は変わってくる」

 

「っ…」

 

連合という言葉に運命が顔を顰め、右手で左腕を握りしめる。

 

そこに蛙吹がそっと近寄り、右手に手を添える。

 

大丈夫と伝えてくるその顔に力を抜く運命。

 

隣で相澤が緑谷の顔を見て、ため息をつきながら続ける。

 

「残念なことにここで止めたらお前はまた飛び出してしまうと俺は確信してしまった。俺が見ておく、するなら正規の活躍をしよう、緑谷。わかったか問題児」

 

ビッグ3の面々も落ち込む通形を励ます。

 

「気休めを言う、掴み損ねたその手はエリちゃんにとって必ずしも絶望だったとは限らない、前向いていこう」

 

「はい!!!」

 

お通夜のテンションが払拭され、生気が満ちる。

 

そんな中運命が緑谷に声をかける。

 

「緑谷、もしかしてエリちゃんって子に会ったのってインターン初日の日曜日だった日か?」

 

「え、うん。その日しかインターンしてないし」

 

「勘違いかもと思ってたけどお前その子と接触したか?」

 

「うん、抱きしめて保護しようとしたけど…」

 

「やっぱりか…」

 

難しい顔をする運命に蛙吹が声をかける。

 

「それの何がそんなに難しい顔になるのクロスちゃん」

 

「オレあの日、緑谷の周囲に時の精霊を見たんだ」

 

「「「「時の精霊?」」」

 

「そう、オレが使役する火や水の精霊と同じく時を司る精霊さ、歴史的な時に関する造形物の奥底にしかいないと思ってたんだけどな。もしかしたらエリちゃんは時の個性の子かもしれない」

 

深く息を吐き、深刻そうな顔の運命にその場の面々が分からないながらも嫌な予感を感じる。

 

特に緑谷や蛙吹は、運命が特定の個性の持ち主を見るだけでわかっていた前例があるだけに信憑性がある。

 

「何がマズイ運命、俺等は精霊の事はわからんから簡潔に頼む」

 

「すいません、時の精霊が司るのは当然『時』、つまり戻る、止める、進ませるの権能です」

 

「その子がそれを使えると?」

 

「どこまで使えるかはわかりませんが…個性の習熟が幼い子供に出来るかと言われれば…難しいですよね、暴走なんて誰でも経験あるでしょう?それが時だと取り返しがつかないかもしれない」

 

「運命ならどうにか出来ないのかよ!?」

 

「止めることは出来るけど…」

 

「俺ならどうだ?」

 

「そうよ、クロスちゃんを止めたことがあるイレイザーなら」

 

「確かに抹消なら止めれるかも。皆はもし暴走の可能性があったら近づくなよ、生まれる前や寿命後まで飛ばされるかも知れないぞ」

 

「それって実質の死じゃ…」

 

「そうだよ、だから深刻なんだよ」

 

運命の言葉に全員が顔を引きつらせる。

 

だが緑谷は拳を握りしめ顔を前に向ける。

 

「でも、それでも絶対に助けるんだ!もう手を離したりしないって決めたんだ!」

 

「そうなんだよね!!救うのがヒーローなんだよね!!」

 

「そうだな、だが救助した後は俺か運命の所に来るのを忘れるなよ、通形は今の話をナイトアイに、情報を回してくれるだろう」

 

「了解しました!」

 

「最後に一番の懸念でもある敵連合の陰、警察やナイトアイらの見解では良好な協力関係にはないとして…今回のガサ入れで奴らも同じ場に居る可能性は低いと見ている。だが万が一見当違いで、連合にまで目的が及ぶ場合はそこまでだ、運命もだ」

 

「「「「「了解です!」」」」」

 

「じゃ、オレはミルコと合流してインターン続けてくるよ、明日の夕方に寮に帰れると思う」

 

「気を付けてねクロスちゃん」

 

「うん、時の精霊対策も考えないとね、じゃ!」

 

運命は荷物を取り、ナイトアイ事務所を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近くの繁華街のビル屋上にて

 

運命はミルコへ連絡し合流、事件の詳細を記した書類を渡していた。ミルコは書類を一読したあと紙を破り、運命に燃やさせる。

 

「ガキの身体を弾丸にか、ただのヤクザにしちゃあ無茶苦茶しやがる…」

 

流石のミルコも顰め面で遠くを見やる。

 

「前のヤクザ屋とは違いこっちは組織としてしっかりしてそうな分厄介ですね」

 

「あぁ、入念に蹴ってやるしかないな。よし!今日は水だけ使用可だ!ついてこいよ!!」

 

「水での移動は水の噴射を気にしないといけないから難しいんですが…でも頑張りますよ!!」

 

跳びだすミルコに、足から水を噴射させながら速度をつけ跳びだす運命。

 

一刻も早い救出作戦の開始を願いながら街へ駆けだしていく二人であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二日後の夜

 

人知れず帰ってきた運命は荷物を置き、私服に着替えて寮の外に出る。

 

時の精霊への対抗策、その特訓であった。

 

時計を二つ置き、時間を合わせる(・・・・・・・)

 

そして目の前の前で集中し、力を練り上げ、発動する。

 

成果を確認し、さらに発動する。

 

確認、発動、確認、発動。膨大なエネルギーの放出に最近では感じなかった精神的疲労を感じ大の字に倒れる。

 

息切れを感じながら夜空を見ていると寮の扉が開き誰かが歩いてくる。

 

「今回は遅かったのねクロスちゃん、特訓かしら?」

 

そこにはジュースを二本持った蛙吹がいた。

 

差し出されるそれを感謝を言いながら貰い、喉を潤す。

 

「時計が二つ?一体なんの特訓なの?」

 

「時の精霊への対策さ、エリちゃんという子がどこまで時の力を使えるかはわからないけど、オレが出来ることをやっとかないとね」

 

「あまり無理はしないでね」

 

「うん、梅雨ちゃんの方はどう?最近一緒には特訓出来てないけど、順調?」

 

「ええ、もう少しで私もアレ、使えると思うわ、少しの時間なら」

 

「もうそこまでいったの?オレ一年かかったんだけどな…スーパーフロッピーめ…」

 

驚く運命に蛙吹は笑う。

 

「師匠が優秀だからよ」

 

「追い抜かされるのは勘弁だよ、負けてられないね!」

 

「ふふっ、でもこの右の時計、随分時間がズレてる(・・・・・・・)けど大丈夫?遅れているわよ?」

 

蛙吹の疑問に運命はただただ笑った。

 

 

 

 

そして翌日の深夜

 

携帯に連絡が来た運命はロビーに降りて、同じく連絡が来たインターン生の緑谷、切島、麗日、蛙吹と合流する。

 

「来たか!?」

 

「うん…」

 

「決行日」

 

各々が気合を入れ直す。

 

 

 

同日早朝、サーナイトアイ事務所にて

 

ナイトアイの言葉に多くのヒーローが大声をあげてしまう。

 

「本拠地にいるぅ!!?なんだよ俺達の調査は無駄だったわけか!?」

 

詰め寄るロックロックにナイトアイは冷静にかえす。

 

「いえ、新たな情報も得られました」

 

そこから語るナイトアイは証拠として女児向け玩具を出し、それがどう救助対象がそこにいるのかを決定づけたかを説明していく。

 

決定打は予知、使われたナイトアイの個性にロックロックもツッコむが結論が出たことでヒーロー達も気合が入る。

 

ミルコも暇そうに人参を齧っていたが漸くの出番に笑いながら髪をかき上げる。

 

そして皆が着替えや準備を済まし、警察署で最終ブリーフィングが行われた。

 

警察から死穢八斎會のメンバーの名前や個性を記された紙をもらい、全員が確認していく。

 

切島は初めての大人数でのカチコミに緊張からか身震いをする。

 

「運命は流石に慣れてんな、緊張しないのか?」

 

「ん?もう3、4件目だからね、流石にちょっとは慣れたよ」

 

「いや、インターン初めて一ヶ月も立ってないのにそのペースは異常よ?」

 

リューキュウが苦笑いしながらそう言いミルコに鋭い目を走らせる。

 

「ム、実戦こそ最高の修行だろうが?」

 

「あんたって人は…」

 

胸を張ってそういうミルコにため息しか出ないリューキュウ。

 

「おい」

 

「あいッレイザヘッド!」

 

「オレはナイトアイ事務所と動く、意味わかるな?」

 

「はい…」

 

イレイザーは緑谷を中心に周りにも聞こえるようにそう言う。

 

「エレメンタル、私達は」「一番手ですね、解ってます」「最初の時の狼狽えようが懐かしいな?ええおい?半泣きだったくせに」

 

「武装した200人の間に入ってこいとか誰だって泣きますよ…」

 

遠い目をしながらお腹を擦る運命、その背中は煤けていた。

 

「うどん帝国とそば共和国の抗争のやつや…」

 

「泣いてたのねクロスちゃん…」

 

「…ミルコがもし次の子取ったらすぐにフォローに入れるようにしておくわ…」

 

資料を確認しながら話す運命達に警察から声が掛かる。

 

「ヒーロー、多少手荒になっても仕方ない、少しでも怪しい素振りや反抗の意思が見えたらすぐに対応頼むよ!相手は仮にも今日まで生き延びた極道者、くれぐれも気を緩めずに各員の仕事を全うしてほしい!出動!」

 

 

 

 

そして全員が移動し30分後の死穢八斎會の事務所前

 

「令状読み上げたらダーーーーッ!!と!行くんで!速やかによろしくお願いします!」

 

「まかせろ!!」

 

警察の言葉にミルコが戦闘態勢で笑う。

 

警官が呼び鈴を鳴らすと同時に運命とミルコは身構える。

 

前に出るミルコ、警官達を守る位置に移動する運命。

 

ガオン!!と扉ごと中から殴り飛ばして出てくる巨漢の男。

 

「「「!?」」」

 

「何なんですかァ朝から大人数でぇ…!?」

 

奇襲で数人は殴り飛ばそうと考えていた巨漢の男は振り切った右腕の違和感に気付く。

 

「そっちが先に手ェ出したんだ、もう我慢しないぞおい!!」

 

「我慢なんていつしたんですか!」

 

ミルコの蹴り上げと運命の左腕でのアッパーにより攻撃は上に逸らされ風圧で数人転んだだけだった。

 

「飛ばすぞ」「了解」

 

「何の用ですかァ!!!」

 

ハンマーの様に振り回される拳を捌き、ミルコはその男、資料にあった活瓶力也の腹を蹴り上げ上空に浮かす。運命も同じくして活瓶の立っていた足の部分の土を操作し一気に上空へ射出する。

 

「リューキュウ!!」

 

「ええ!」

 

ミルコの声に反応しドラゴンへと変身したリューキュウが上空の活瓶力也を殴り掴む。

 

「彼はリューキュウ事務所で対処します!入口で足止めなんてしてたらダメよ!」

 

「サポート!」「はい!」

 

リューキュウ事務所の面々が即座に動く。同時にミルコ達も後ろを見ずに中に入っていく。

 

「任せたァ!!」「お願いします!」

 

ファットガムの声で他のヒーローや警察もなだれ込む。

 

「ようわからんもう入って行け行け!」

 

「梅雨ちゃん麗日!頑張ろうな!」「また後で!」

 

切島と緑谷も中へ突入していく。

 

「おォいなんじゃてめぇら!」

 

「勝手に上がり込んでんじゃねーーー!!」

 

入口から事務所内への通路には数人のヤクザが待っており、怒号と共に威嚇してくる。

 

「ヒーローと警察だ!違法薬物製造・販売の容疑で捜索令状が出てる!」

 

「知らんわ!!」

 

叫びとともに近くの植物を針の様に飛ばしてくるヤクザ。

 

一番手のミルコはそれを避けながら跳び蹴りをお見舞いし、運命はその植物の針の面の攻撃を、地面の土を壁にして後ろの面々を守りながらそのまま土砂でヤクザをまとめて押し流す。

 

そして怒号に気付いたのか正面と右の建物からどんどんとヤクザ者が大挙して溢れ出してくる。

 

「正面への道確保します!」

 

「後衛は雑魚任せるぞ!」

 

運命とミルコの言葉と共に正面にいたヤクザ達が左からの土流に流され右側のヤクザ達と合流させられる。

 

そして正面玄関への間に土の壁が出来、突入口を確保する。突入組のヒーローと警官が正面玄関に突撃していき、残った面々が右側に隔離されたヤクザに対応していく。

 

「あのガキ、慣れてやがるな!」

 

「ガキやないエレメンタルや!ミルコについてける男が並みなわけないやろ!」

 

「へっ確かにな!」

 

流れるようなミルコ達二人の連携にロックロックは思わず呟き、ファットガムに同意する。

 

正面突破の一番手を無事に終えたミルコと運命は突入組に追いつき屋内へ入っていく。

 

一息ついた運命に緑谷が労いの言葉をかける。

 

「凄いよ運命くん、まるでピクシーボブみたいな土操作だったよ」

 

「実際参考にしてるよ、いつの間にか土の師匠になってくれたみたいだし。中では超パワーの新技頼むぜ、デク!」

 

「うん!エレメンタル!」

 

 

 

 

 

そして予知による未来視で地下への隠し通路を知っているナイトアイが目的の壁へ到達する。

 

「ここだ、この下に隠し通路を開く仕掛けがある。この板敷を決まった順番でおさえると開く」

 

言いながら操作して仕掛けが作動して壁が動き出す。ゴゴゴと音を鳴らしながら壁がスライドし通路が開くと同時に3人のヤクザが武器と個性を発動しながら出てくる。

 

そこをナイトアイの相棒であるセンチピーダーとバブルガールが個性を使用してすかさず捕縛する。

 

一瞬の捕縛に関心しながらも皆が進んでいく。

 

「もうすぐだ急ぐぞ!」

 

地下の階段を降り、事前に見た地下通路を通っていくと進めるはずの廊下が塞がっていた。

 

ナイトアイの言葉と違う展開に狼狽えてしまうが透過の通形がすり抜けて壁の向こうを見て戻ってくる。

 

「壁で塞いであるだけです!ただ壁はかなり厚いです!」

 

「どけ!」

 

それを聞いたミルコが通形が退くのを待たずに突込み、壁に蹴りを炸裂させぶち壊す。

 

「広げます」

 

真ん中を大きくぶち抜いた壁にすかさす左手をドリルにして通りやすく穴を広げる運命。

 

「先越されたわ」

 

「ガンガン行くなこいつら…」

 

「進みましょう!」

 

そして全員がさらに進もうとした時に通路全体に異変が起こる。

 

ぐねぐねと床が壁が天井がうねりだしたのである。

 

「治崎じゃねぇ…逸脱してる!考えられるとしたら本部長の入中!しかし規模が大き過ぎるぞ!奴が入り操れるのはせいぜい冷蔵庫程の大きさまでと」

 

「かなーーりキツイブーストさせればない話じゃァないか…」

 

「モノに入り自由自在に操れる個性”擬態”!」

 

「イレイザー!消せへんのか!?」

 

「本体が見えないとどうにも…」

 

「こんなその場しのぎ!方向はわかってる!俺は行ける!」

 

うごめく通路に対処を考えていると透過の通形が先に一人で壁の向こうへ行ってしまう。

 

そして入中が操作したのか今度は地面が無くなり、下へ落とされてしまう。

 

全員が一階層分下へ落とされ、広間らしき場所へ着地する。

 

そこへ待ち受けていたのか三人のヤクザが武器を片手に現れる。

 

ファットガムがプロヒーローの力を見せる時かと拳を鳴らすがその前にサンイーターが先立ち、自分一人で充分と言い放つ。

 

ミルコはその啖呵を切る姿勢に大きく口角を上げる。

 

「こんな時間稼ぎ要員、俺一人で充分だ」

 

「良いぞサンイーター!任せたァ!!」

 

ミルコがそう言い奥への扉に走っていく。

 

当然それをさせないと三人のヤクザが動くが、相澤の抹消で個性を封じられ、右手のタコの手で武装を絡めとり、左手のタコで三人を拘束して壁に叩きつけられる。

 

武装をカニの鋏で砕きながらサンイーターは後ろの面々に告げる。

 

「こんな所で何人ものプロが留まっていることがもう向こうの思うツボだ、一秒も無駄に出来ない!ファットガム!!俺なら一人で三人完封できる!」

 

「!?…行くぞ皆!ミルコに続けや!」

 

移動を始める面々にヤクザが個性を発動しようとするが再度抹消にあい、気絶させられた。

 

そして通形のことを頼むという言葉を最後に残しサンイーターは三人に相対する。

 

長い廊下を走り、ミルコは後ろから来たファットガムに横目で言う。

 

「おいファット!中々生意気な奴育てたじゃねぇか!!」

 

「おう覚えとけ!アイツが太陽すら喰らう漢!サンイーターや!!!」

 

ファットガムの渾身の叫びが通路中に響いた。

 

 

 

 

そして長い廊下が終わり、上への階段が見えた瞬間だった。

 

運命の前の相澤目掛けて左から壁がピンポイントで迫り、右に空いた穴が現れたのは。

 

「イレイザー!!」

 

明確に狙われた相澤を身を挺して突き飛ばす運命。相澤の抹消は今回の要なのだ、ここで失うわけにはいかないとの考えであった。

 

「ちっ!」

 

前にいたミルコも超反応で振り返り、運命を助けようとして同時に壁の穴に吸い込まれて行く。

 

「すまん!!」

 

「頼みました!!」

 

「私がお守りしといてやる!行け!!」

 

そして穴が塞がって行く。残された者達は一瞬止まるがすぐに階段に向かっていく。

 

「ミルコとエレメンタルの代償がお前だぞイレイザー、マジで気張れよ!?」

 

「わかってる!!」

 

ロックロックの痛烈な激励に相澤も大声で返してしまう。

 

「エレメンタル…」

 

切島が消えて行った運命を心配するがファットガムが叫ぶ。

 

「不安に思うんは託したアイツ等への背信や!!前向いてアイツ等の分活躍すんぞお前ら!!」

 

「おっしゃぁ!任されたぜおいいいいい!!」

 

一秒で切り替えた切島の咆哮がさらに響く。

 

そしてさらに速度を上げ、目標へ進むヒーロー達。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数メートルの傾斜の後、どこかの地面に転がり出る運命とミルコ。

 

「痛ぅ…」

 

「ったく、勝手しやがって…!?構えろ!」

 

暗闇で見えない中何かを踏みしめる音が聞こえ、即座に反撃姿勢に移るミルコ。

 

目前まで迫っていた両拳を構える男から圧倒的なパワーとスピードのラッシュが叩き込まれる。

 

「ふっ!!」

 

同時にミルコも飛び蹴りで圧倒的連撃に対応しながらその拳を相殺し続ける。

 

短時間での超衝撃に運命も余波だけで下がらされてしまう。

 

「一体何が!?」

 

あまりにも早すぎる攻防に運命も困惑する。

 

「俺は思うんだ、ケンカに銃や刃物は無粋だって。持ってたら誰でも勝てる、そういうのはケンカじゃない。その身に宿した力だけで殺し合うのが良いんだ…わかるかな」

 

ミルコと互角の攻防を繰り広げた男が拳を構えたままそう話しかけてくる。

 

「なんかそんな話をする奴昔いたな……誰だっけな」

 

「……女?」

 

ミルコが男に再度蹴りかかるも今度は到達する前に黄色いバリアーの様な物が発生し、蹴りを弾く。

 

「ム」

 

距離を取るミルコ、するとバリアーがスーッと消えて行き、奥から更なるヤクザが歩いてくる。

 

「ミルコ……とそのインターン生か、厄介なのを連れて来て…だが良かったな乱波、トップ7ヒーローだぞミルコは」

 

その言葉の終わりを待たずに再度ミルコに殴りかかる乱波と呼ばれた拳の男。

 

ミルコもまた蹴りまくり、一瞬のうちに数十もの攻撃が繰り広げられる。

 

「確かに強い…だが女だ……あーぁ最悪だ……」

 

「今のパンチ………どこだったっけなぁ……あ!?」

 

肩を落とし落胆を隠さない乱波に何かを思い出そうと必死頭を捻るミルコ。

 

運命は高度な撃ち合いに驚愕しながらも煮え切らないミルコや男に動きだせないでいた。

 

「ミルコどうします?オレがバリアーの方やりますよ?……ミルコ?」

 

「あーーーーー!!思い出した!!」

 

そして急に大声を出して乱波に指を指すミルコ。

 

「こんな所で会うとはな、やっぱり敵になってたか。パンチ男」

 

「ん?……んん!?お前まさか……キック女か!?本当にヒーローになっていたのか…世も末のはずだ」

 

乱波とミルコ、8年ぶりの再会であった。

 

「え?知り合い?」

 

一方運命は混乱していた。

 

 

 

 

 

 

 

 







ヴィジランテ見るとミルコと乱波の関係性好きなんですよね、おっさん含めて三人がIFでチーム組んでる絵とか大好きです。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。