数日後
10月になり、インターン組はオールマイトと相澤の引率のもと、ナイトアイのお葬式へ。
インターンは学校とヒーロー事務所の話し合いの末しばらく様子見となった。連合の存在は看過できなかったようだ。
そして運命は相澤と共に車に乗り、件の少女壊理の元へ向かっていた。
「俺は今回で会うのは三回目だ、漸く喋れるようになった所だ」
「オレは初対面になりますね、柔らかくいこうと思います」
「まぁその辺お前は上手いから心配はしてない。問題は精霊とやらの方だ」
「一応簡単に精霊の関係性とか書いたつもりですが」
「全て読んだがまぁ、ファンタジーモノだな、『原初の三霊』『クロノス』ねぇ」
運命は今回の壊理という少女が時の精霊に愛される存在で、それは運命すら凌ぐかも知れないと思ったのだ。
だから精霊の成り立ちと世界を創った『原初の三霊』や時の精霊の頂点である『クロノス』の存在を記し相澤に提出した。
「まぁ事態の重要性は分かったよ、お前の神衣、あれが時の個性で行われる可能性があると書かれちゃあ無視なんて出来ないよ」
「端折った部分もありますがまぁそんな感じですね」
「そういえば神衣を抹消したことなかったな、帰ったら試させてくれ」
「はい、繋がり消されるんで解除されると思いますけどね」
「よし、着いたな。紹介したら入って来てくれ」
病院に車が到着し、相澤が手続きをして壊理がいる部屋へ入っていく。
開いた扉から壊理と相澤の会話が始まり、運命が呼ばれる。
ゆっくりと歩いて入室する。
ベッドの上で正座し少し緊張した壊理が顔をのぞかせる。
運命は入口で立ち止まり、笑顔を作りながら優しく声をかける。
「こんにちわ」
「…こんにちわ」
「オレは相澤先生の生徒で運命クロスって言います」
「…あなたのこと知ってる」
最初は警戒した様に話していた壊理だが、見覚えのある運命の顔に少し驚いている。
「?あそこで会ったの覚えてるのかな?」
緑谷の背で必死にもがいていた少女がこちらを見て覚えていたことに運命は少し驚く。
しかし壊理は違うと首を横に振り、何かを思い出しながら答えた。
「……あのとき、止めてと思ったときに止めてくれた人?私動けなかったけど、見てた」
「!…そうだよ、オレとそこの相澤先生で君を止めたんだ」
その会話から『時が止まった中でも意識があった』ことを理解してさらに彼女の時の個性の強さを知る。
「あの時は、止めてくれてありがとう」
あの時を思い出して悲しい顔をする壊理に運命は少し近づき、目線を合わせるためにしゃがむ。
「はい、どういたしまして!で、今日はちょっと壊理ちゃんに見て欲しいモノがあるんだ?」
「見てほしいモノ?」
「うん、この子達だよ」
運命は両手を広げ、何も無い空間を示す。
相澤からすると何も見えないが壊理は違ったようで目を見開く。
「!キレイ…」
まるで何かが見えているかのように顔を動かしている姿に運命の確信が深まる。
「でしょ?今度はこの数字見えるかな?」
運命が指を2本立てて前に出すと、壊理は頷いて見たものを答えていく。
「…2、5、1、7、0?」
「……」
相澤は運命の指の2しか見えていないが二人は当然の様に会話を進めて行く。
「せいかーい!凄いねー全部正解だよ!壊理ちゃんは頭良いね!正解した良い子さんにはこの飴をあげよう、リンゴにミカンにブドウ、どの味が好き?」
「リンゴ」
「じゃあこの赤いのだ!他のは明日また舐めてね?」
「あの、ありがと」
「クイズに正解したから良いんだよ!じゃあ次はこのふわふわさん達の色を当ててみようか?目の前にいるのは何色かな?」
「ふわふわさん。あか、みどり、きいろ、あお?」
「またまた正解!今度はももとミルクの飴をあげるね」
「いっぱい、ありがと。ふわふわさん達もありがと」
目の前の空間に手を振っている壊理。
「うんめーさん、ふわふわさん達さわれる?」
「試してみようか?優しくね」
「うん………ルミリオンさん?」
「ん?あぁ、すり抜けるからね。似てるけど違うよ。壊理ちゃんがご飯いっぱい食べて元気になったら触れるようになるよ、こんな風にね」
掌を上にして何かを触っている素振りの運命に壊理も目を見張る。
「おぉ、がんばる」
「うん、がんばろうね」
「壊理ちゃん、そろそろ俺達は帰る時間なんだ。また来るよ」
「はい、あ、あの…」
「どうしたの?」
優しい声音で話す相澤。
壊理は少し躊躇したあと言葉を続ける。
「ルミリオンさんとあのみどりの人に会いたくて…」
「わかったよ、今度連れてくるよ」
しゃがんで目を合わせて言う相澤に壊理も頷く。
「おねがいします」
「うん、それじゃあね」
「オレもまた来るよ壊理ちゃん、ふわふわさんともまた遊ぼうね」
「うん、ばいばい」
手を振りながら出て行く運命と相澤。
病院側へ報告を済ませてまた車で帰っていく。
「で、どうだった?」
「奇妙ですね」
「見えていたのだろう?」
「地水火風の精霊は見えてましたが、時の精霊が見えてなかったみたいですね」
「自分の個性なのにか?」
「時の精霊は透明で見にくくのはあるんですが、ガラスみたいな感じで縁取りとかでわかるんですよね。彼女の傍に常にいたので見えないってことは意識的に感知してないのかも知れないですね」
「自分の個性が嫌いだからか?」
「その線強そうですね」
「状況次第ではお前にも彼女の個性制御を手伝ってもらうかもしれない」
「了解です。…それにしても壊理ちゃん、笑いませんでしたね」
驚きはしても笑わなかった壊理に、運命は思いをはせる。
「あぁ、だが彼女が要望を言ったのは病院側に聞いても初めてだそうだ」
「通形先輩と緑谷には特別に感情ありそうでしたね」
「期待して手配するよ」
「オレも考えあるんで動いてみます」
「何をするかは知らんが必要なら言え」
「はい」
「ま、これからしばらく補習漬けだがな」
「うっ……シヴィー!」
「2倍な」
「本当にすいませんでした!」
交渉の末1,5倍で済んだ運命であった。
翌日
「「「「おはよう」」」」
寮の扉で一緒になった運命、緑谷、麗日、蛙吹が挨拶をして教室へ向かいながら雑談する。
「そういえばクロスちゃん昨日相澤先生と二人で出かけた件はどうだったの?」
「壊理ちゃんの所だよ」
「!それ本当!?もう会えるの!?」
「元気やった?」
「身体の方は元気だったよ、力の放出口の角がコブみたいに小さくなってたから今は暴走の心配もないって。オレが行ったのは精霊関連の確認かな」
「身体の方は?」
蛙吹の声に少し声のトーンが落ちる運命。
「ずっと真顔、というか悲しみよりの顔でさ、心の方は正直…」
「そうなんや…」
「何か出来ることはないかな…」
「これはまだ確定じゃないんだけど、緑谷と通形先輩に会いたいって言ったんだよ。病院側からすれば初めての要望だったらしい。だから相澤先生が手続きして今日か明日あたりに緑谷にも確認来るはずだよ」
「本当!?行く行く!!」
食い気味に返す緑谷に運命も苦笑する。
「先生に言ってくれな?あと補習もあるからオレ達」
「あ、ごめん」
「壊理ちゃんを笑顔にする為、オレもオレなりのアプローチするからそっちはそっちで頼むな」
「うん!まずは会って会話してみるよ、あ、お見舞い何が良いだろう?好みのモノとかあるかな?運命くん知ってる?」
「飴上げた時にリンゴ好きって言ってた、一番かはわからないけど」
「リンゴか、フルーツの盛り合わせが定番かな」
「うさぎさんに切ってあげると喜ぶかも知れないわ緑谷ちゃん」
「それ良いね!切り方調べておかなきゃ」
そして教室へたどり着き、入っていくと何故か青山を見て動揺する緑谷に3人で疑問を浮かべるのであった。
午後
TDLにてずっと続いている必殺技開発やその先へ行くための授業が始まる。
緑谷が青山と会話しているのを横目に運命は自分の割り当てられた場所に立ち、死穢八斎會突入時の乱波と戦闘中に成功した反発する属性の神衣の調整を行っていた。
神器の都合上、大剣の火と大弓の水ではどちらかに絞らなくてはならずどう活用していくか考え中である。
一方のアームの土と風の翼は相性が良く、速さと力強さの両立でより機動力が確保できている。
しかし乱波を倒した時のあの神器を内蔵した状態、あの状態には一度も成れておらず手がかりがない状況であった。
あの時出現した黄金の籠手は大地のアームより硬く強く、風の翼より速さを感じた。あれは推測ではあるが到達点の一端。
壁を越えたと思ったら新たな壁が見えてくる状況に喜ぶべきなのだろうが取っ掛かりが無いのが辛い所だった。
二属性のさらに先の三属性神衣を視野に入れつつあの黄金化も考えつつで、まだまだ頂きは遠そうであった。
授業の時間が終わり、着替えて教室へ帰り、HRが終わる。
そしてその日からだった、運命の奇行が始まったのは。
それを見たのは上鳴であった。
提出が遅れた書類を職員室に提出しに行き、お小言を貰いようやく解放されたと廊下を歩きだした時だった。
少し離れた所をオールマイトが歩いており、そこに運命が現れ、オールマイトに声を掛けながら流れるようなスライディングからの土下座を披露する。
運命少年!と悲鳴の様に叫ぶオールマイトに運命が何かを言っており、周囲の目を気にしたオールマイトはすかさず近くの仮眠室へ誘っていった。
驚くべきものを見てしまった上鳴。
誰かに相談して良いモノか悩みを抱えてしまう。
翌日
「文化祭があります」
「「「「「ガッポォォオイ!!」」」」」
歓喜の声が教室に響き渡る。
「文化祭!!」
「ガッポイの来ました!!」
「何するか決めよー!!」
「いいんですか!?この時世にお気楽じゃ!?敵隆盛のこの時期に!!」
「切島…変わっちまったな…」
相澤は切島の意見に同意しつつも今回の文化祭の意義を説明していく。
「もっともな意見だ。しかし雄英もヒーロー科だけで回ってるワケじゃない」
そして続けて文化祭はヒーロー科以外が主役であり、現在のヒーロー科主体の動きにストレスを感じてる者も少なからずいると、そしてだからこそ簡単に自粛することはできず、対策としてごく一部の関係者を除き学内だけでの文化祭になる旨を告げる。
「主役じゃないとは言ったが決まりとして一クラス一つ出し物をせにゃならん、今日はそれを決めてもらう」
相澤は寝袋に入り言い終えると横になり睡眠に入った。
それを見て飯田と八百万の委員長副委員長コンビが前に来て仕切りを始める。
意見を求めるとスゴイ勢いで意見が発せされていく。
上鳴がメイド喫茶を。峰田がオッパbと言いかけて蛙吹に袋に詰められて吊るされる。
「重りあるかしら」「窓の外に直下で墓掘ったから埋葬しない?」「クロスちゃん流石よ」
切島が腕相撲大会を、芦戸がダンスを、葉隠がビックリハウスを、砂藤がクレープ屋を、口田が触れあい動物園を。
等とさらにどんどん案が出されていく、一通り出た中から不適切・実現不可なものが八百万により一刀両断されていく。
さらに勉強系は無いわーや食事系は纏められるのでは?などとわいわいしていて結局意見はまとまらずチャイムがなり終わりを告げる。
チャイムと同時に動き出した相澤が凄い眼力で言葉を放つ。
「明日朝までに決めて置け、決まらなかった場合…公開座学にする」
そしてインターン組の補修が始まる。
補習用の会議室に相澤が入ると切島、緑谷、麗日、常闇、蛙吹しかおらず運命がいなかった。
眉を寄せそれに言及しようとすると扉が開き汗だくの運命が入ってくる。
「すいません!遅れました!」
「…まぁいい、始めるぞ、座れ」
早足で空いていた蛙吹の隣に座り用意を広げる運命。
皆何か言いたそうだったが相澤が補習を始め出すと前を向くしかなかった。
補習の時間が終わると先日の運命と相澤の壊理訪問の事が相澤から語られ、緑谷にお見舞いの意思の確認が取られる。
ブンブンと頭を上下に振り肯定の意を示す緑谷。訪問は休日だった。
寮に帰るとインターン組以外により文化祭は生演奏とダンスでパリピ空間の提供であることが伝えられた。
そして翌日
緑谷が私服に着替えて壊理の所へ向かおうと一階に降りると運命と口田が虫取り網と籠を持っているのを見つけ思わず声をかける。
「おはよ、あれ、運命君壊理ちゃんの所一緒に行かないの?」
「おはよ、おう、今回は二人に任せるよ。あんまり多くで行ってもアレだしな。オレはまた別日、そっちは任せた!」
コクコクと頷く口田。運命はそう言うと口田と共に寮を出て、近くの森の中へ入っていく。
この時期に虫取り?と不思議に思うが時間を見て緑谷も慌てて走り出す。
少女の笑顔を取り戻すために。
授業を終えて放課後の寮にて
文化祭の出し物は決まったので、メンバー決めがロビーで行われていた。
ベースは耳郎が、キーボードは八百万、ドラムが爆豪とまず決定する。
残りはギターとボーカルが必要となり、残りはダンサーになるかと話し合っていると轟と芦戸がパソコンの映像を見せて演出の必要性を語る。
芦戸が楽しそうに例を挙げる。
「例えばー、麗日が轟、切島を浮かしとくでしょー!?でね!轟の氷を切島がゴリゴリ削るの!んで青山がミラーボールになってるから…スターダストみたいに光がキラキラ舞い落ちるんだよ!チームスノーマンズ!それに運命がいればファンタジー空間になりそう!」
「アッハハハハ氷カキ器」「前話してたチームコンボだ!?」
「そうなると演出の裏方も要るねぇ」
わいやわいやと話していると補習組が帰ってくる。
「うーす」
「補習今日でようやく穴埋まりました本格参加するよー!」
「運命その紙束は?」
「プレマイ先生の真似を相澤先生にした結果の課題…シクシク」
「アホかな?」
「あのシヴィーは前の一発ギャグ大会でやった時もそんなにウケなかったのにどうしてやったんだよ…」
「今皆の担当決めよーってやってる所!」
芦戸の軽い説明を聞き、麗日が歌う素振りを見せながら聞く。
「へ?うたは耳郎ちゃんじゃないの?」
「いや、まだ全然…」
そこに歌いたい欲全開の峰田、青山、切島が出てくる。
各自の歌を聞いてみようとなったが圧倒的歌唱力で耳郎が満場一致で決定される。
恥ずかしがりながらも承諾し、残りのギター二名を選定にかかる。
上鳴と峰田が勢いよく挙手してギターを担ぐが、峰田はキャラデザ的に手が届かず涙を流す。
「ホリーが悪いよホリィが!!何が絵の上手い峰田だ!えっぐい画力とえっろい性癖しやがって!!いつもありがとうございます!!!」
「誰だよホリーって」「泣きながら感謝してるぞこいつ」
峰田が地面に置いた持ち上げジャランジャランとかき鳴らす常闇。
一度挫折したが峰田の分まで弾こうと言う常闇。
望むパートが全てダメだった峰田が呪詛を吐きながら文化祭を憎む。
そんな峰田を見かねた麗日と芦戸が近寄っていき、ダンスでのハーレムパートを提案する。即承諾する峰田。
二人の優しさに峰田の涙の意味が変わっていく。
それからは流れでどんどんと役割が決まっていく。
「えー運命ダンスやんないの?」
「そうだよお得意の神衣でパーッと行こうぜ?お前ファンもいるじゃん。体育祭にミルコインターンで露出多いし」
演出組に立候補した運命に他から声がかかる。
「うーん今ちょっと忙しくてさ、ダンスやバンドはやれないかなって。バッチし演出で盛り上げて見せるよ!」
「お前最近色々走り回ってるもんな、まぁ本人が良いなら良いけどよ」
そして話し合いは深夜一時まで続き遂に決定する。
「よし!全役割決定だ!!」
疲労困憊顔の飯田が叫ぶ。
バンド隊の耳郎、八百万、爆豪、上鳴、常闇。
ダンス隊の芦戸、麗日、蛙吹、葉隠、峰田、障子、砂藤、尾白、青山、飯田、緑谷。
演出隊の瀬呂、切島、口田、轟、運命。
演出に兼役の青山なども含めて全てが決定した。
「明日から忙しくなるぜ!!」
「「「「「オオーーー!!」」」」」
皆の心が一つの方向へ向いた日だった。
それから数日後の土曜日
爆豪達の仮免補講も休みだったのでひたすら練習が行われていた。
バンド隊は耳郎が、ダンス隊は芦戸が、演出隊は瀬呂が中心になりドンドンと練習を積んでいく。
そして午後になり、運命は制服に着替えてロビーに降りてくる。
すると寮の外では相澤と通形、そして壊理が綺麗な服を着て緑谷やA組の生徒達と話していた。
そこに近づくと知らないA組の面々に少し気後れしていた壊理が通形の後ろから顔を出してくる。
「うんめーさん、ふわふわさんもこんにちわ」
「こんにちわ壊理ちゃん、今日が学校に来る日だったんだね。ようこそ雄英へ、今日もふわふわさんチャレンジする?」
「する!………むぅ」
運命の言葉に顔の前に手を出して何かを触ろうとする壊理。しかし触れず少し頬を膨らせる。
周囲はふわふわさんってなんだと思っているが一生懸命手を伸ばす彼女を優しく見守る。
「ははは、またチャレンジしようね。じゃオレは行く所あるから、通形先輩お願いしますね」
「うん!君も手伝ってくれてありがとね!環達によろしく、多分後で寄るけどね」
「はい、了解です。じゃ壊理ちゃんまた後でね」
「うん」
手を振りその場を後にする運命。
校内へ入っていき、3年A組の開いている扉から中を覗く。
様々な生徒が何かを作っているのを少し見ていると聞きなれた声が届く。
「あれー運命君だー!なんでいるの?ここ三年生の部屋だよ?ねぇなんでなんで?」
軽やかなステップで運命に近づいてくる波動、そしてそれに追従する様に天喰も声をかけてくる。
「俺が声をかけたんだ、今回の事で協力を仰いだんだよ」
「こんにちは、お手伝いに来ました。これからですよね?」
「あぁ、もうすぐ俺達の時間なんだ」
三人で話していると奥から短髪の女生徒が話しかけてくる。
「おお、来たね運命君!私
「はい!よろしくお願いします!」
「じゃあ用意出来てるし行こうか!ねじれのミスコン写真の為に備品室へ!」
そして数人が荷物を持ち備品室まで移動していき、準備を始める。
運命の近くには天喰がおり、カメラのセットだけを終えて話しかけてくる。
「今回は本当にありがとう、波動さんのミスコン撮影に皆全力なんだ」
「波動先輩綺麗ですもんね、それで毎回負けてるってのも驚きでした」
「うん、優勝者の
視線の先には波動が様々なタイプの服を着て、甲矢と意見を交わしている。
一度写真撮影してみることになり、運命も今回の目的の手伝いを開始する。
ポーズを決めて立つ波動、そこに事前に頼まれていた術を発動する。
「『フェアリーサークル』」
波動の足元や周囲に白き花が咲き誇り、波動の美貌と合わさり幻想的な空間が出来上がる。
「「おおおお!」」
「…流石だねエレメンタル」
天喰は周囲が驚く中撮影していく。
今回の写真撮影に置いて運命に助力を頼んだのは天喰であり、対価も運命と話し合い用意したのだ。
以前体育館での戦闘や大阪での共闘を経て運命が適任だと思ったゆえだった。
「凄い綺麗ね運命君!よし!これならもっとねじれの良さが引き出せる!もう少しお願いね!」
「了解です!」
「運命君ありがとうね、でもでも、何かお返しした方が良いよね?何か私に出来ることあるかな?」
「いえ、今回の話は天喰先輩からだったので、対価は貰ってますよ」
「天喰君が?良いの?」
波動が天喰に顔を向けると眩しいのか両手で顔を隠す天喰。
「あぁ、今回は俺が出来る事が少ないから。それに対価も簡単なものだったよ」
「えーなになに、何が対価だったの?」
「あーえっと…」
目を泳がせ口ごもる運命に天喰が答える。
「雄英周辺の飲食店の情報さ、俺はミリオと良く食べ歩きしていたし、どんな店があるかを教えるだけだったよ。デート用のお店かはわからないけど覚えている範囲を正確に書いて送ったよ」
「あ、そこまで言わなくても…」「デートぉ?デートするの?梅雨ちゃんと!ねぇねぇ!そうだよね一年生まだ周辺良く知らないもんね、そっかーデートかぁ、良いね良いね青春だね天喰君!」
「うぅ、眩しい、俺は今太陽に焼かれている」「絶対どこからかバレるじゃん…」
波動の笑顔をまじかで見た天喰が顔を両手で覆い俯く。
運命もバレたくなかった部分が見事に暴露され顔を赤めて同じく両手で顔を覆っている。
甲矢はその光景を見てこの二人似てるなと思ってしまう。
「そういえば私もあんまりこの辺の店知らないかも、有弓とはいつも近くの大型施設中心だったし、ねぇ今度私とも一緒に行こうよ天喰君!」
「え、甲矢さんと行った方が…」
運命は一瞬で空気を読み切り言葉を放つ。
「そうですね、男女のお二人が行ってくれて、よりリアルタイムな情報があると助かります!」
「え、なにを」「ほらほらー運命君もこう言ってるよ!後輩の為にも行こうね!ね!私がお金払うから!ね?」
「いや、お金くらい俺が払うけど…」「じゃあ決まりね!楽しみなんだー何食べようかなーお勧めある?ねぇ?」
「運命君…GJ!」
甲矢からのGJを貰い正解だったことに頷く運命。
そうして写真撮影を続けていると扉がノックされ、通形、緑谷、壊理が入ってくる。
波動はそれに気づくとすぐに飛び寄り、壊理ちゃんに声をかける。
華麗な衣装を着た波動に壊理は羨望の眼差しを送り、緑谷はセクシーさに動揺してしまう。
今年こそグランプリを取ると気合の入る波動、その真剣でまっすぐな笑顔に壊理も何かを思いながら見ていた。
他を回るといい出て行く三人を笑顔で送り、納得のいく写真を撮る為にギリギリまで粘り、何とか自信作が完成し撤収の時間になった。
荷物を持ち部屋へ帰ろうとする三年とここで別れる運命。
ではと、挨拶をしているとキラキラというかギラギラ光る集団が前からやってくる。
天喰はひっと恐怖で下がり、他の面々も顔を鋭くする。
そして最も先頭でギラギラ光る衣装を着た女性が運命達のまで立ち止まる。
衣装や髪の毛もギラギラだったが、一番印象的なのはその腕の長さほどあるまつ毛を前面に押し出した女生徒。
「あら波動さん最後の戦い、楽しみね」
「絢爛崎さん、そうだね。楽しみだね」
ただの挨拶だけではない二人の会話に運命も何故か息を呑む。
バチバチとした視線が絡み合ったあと何故か脇にいた運命に絢爛崎が視線を、というかまつ毛を向ける。
「まぁ、あなたは一年生の体育祭優勝者ね」
「ひぃい!は、はい!」
「あなたの変身、実に豪華だったわ。面白い男の子ね、また会いましょう。ごきげんよう」
まつ毛で運命の顔をチクチクと刺しながらそう言い、たっぷり運命の顔をチクチクした後備品室へ入っていった。
あまりの圧力にへなへなと腰を落とす運命。ミルコといい絢爛崎といいまつ毛が長い女性は怖いと身体に刻んだ瞬間である。
天喰のぽんと肩を叩く姿が印象的であった。
そして夜
演出隊の話し合いを終え、自由時間になるとすぐに何処かへ消えていく運命が寮に帰ってくる。
誰もいない薄暗いロビーで靴を履き替え、エレベーターを待っていると近くのソファーからベロが伸びてきて運命を拘束する。
「っ!?梅雨ちゃん!?何を!」
ベロで浮かされ、ソファーへ座らされる。
するとパッと照明が付き、隠れていた数名が姿を現す。
「緑谷に麗日、切島まで、どうしたの!?」
「運命、お前一体何こそこそこんな夜まで動いてるんだ?」
「色んな所から運命くんの情報集まるんやけど…」
「オールマイトに土下座していたり、ミッドナイト先生から高そうなジュラルミンケース受け取ってたり、二年の女生徒に何か頼んでたり、口田君とも虫取りに行ってたよね、轟君とも火の神衣で何かしたって聞いたよ」
「私は手芸部にお邪魔して作業してると聞いたし、モモちゃんにGPSの作成お願いしたりしたと聞いたわ。それに風神衣で空飛んでるのも目撃されてるわ」
全員が話していき最近の運命の行動を挙げていく。
「………」
無言の運命に緑谷は意を決して言葉を出す。
「壊理ちゃんの事だよね?」
「インターン以降から動き回り出したもんね」
「それは私達には話せないことなの?」
「そりゃ俺等は精霊とかよくわかんねぇけどなんか手伝えないか?」
皆の心配顔と言葉に観念したのか大きく息を吐き、話始める。
「結構バレてんだね、こっちはそーっと動き回ってたつもりだったんだけど」
「クロスちゃん自分への評価低いのね、アナタ色々ド派手よ?」
「そうだぜ運命、二年の女子の先輩と二人っきりで話してたのとか噂で結構回ってるぞ?」
「嘘でしょ…不和先輩に謝らなきゃ…」
「梅雨ちゃんそれ聞いてちょっとおこやったよ?」
「あ、だからベロ拘束結構締め付けて来てる感じですか?ミシミシって音鳴ってます梅雨さん」
「説明してくれるわよね?」
「はい…」
そして運命は一から説明を始めるのであった。