僕の運命アカデミア   作:乙子

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第02話~ヒーロー基礎学~

 

 午前は必修科目などの普通の高校生の授業だった、がペースは速く高難易度の問題もバンバン出してくるあたりは流石という感じだろうか。

お昼は各自自由だ、お弁当でも購買でも雄英高校ご自慢の大食堂でも何でもござれだ。

 大食堂にはクックヒーローとして人気があるランチラッシュがいるらしい。

でも実質初日の大食堂など人がいっぱいだろうし大混雑は予想に難くない、落ち着いたくらいに行きたいと思う。

 

 

 

 

 

 適当にコンビニで買った物を食べようと席で広げると後ろ席の尾白が声をかけてくる。

 

「よぉ、運命も教室で食べるのか?一緒に食べようぜ」

 

「OK」

 

左側に身体を向けながらそう言う、そしてオレの左側の席の砂藤、左斜め後ろの障子も同様に教室で昼食を食べるみたいなので自然と4人での会話を始める。

 

「砂藤も障子も教室か、ってか砂藤お前昼飯にケーキって凄いなおい」

 

しっかりとした大きめの弁当箱に追加でケーキの入ったタッパーを出す砂藤に思わず声が出る。

 

「いや俺はほら、個性的に必要だからな」

 

 砂藤力道、180センチを超える長身にガチガチの筋肉を搭載した大柄でタラコ唇な所が特徴の男子だ。糖分があれば3分間パワーが5倍になるらしい、単純に強い。

 

「逆に障子はそんだけで足りるのか?」

 

 同じパンを二つとお茶のパックを机に出しながらこちらを向く障子目蔵、砂藤よりさらに長身で複数の腕を常時展開していて顔にマスクを付けているのが特徴の男子だ。

 最初は無口なのかと思ったが個性の複数の腕の先から口を出しそこから話しかけてくる、口数は少ないがユニークな奴だ。

 

「ここのたこ焼きパンは至高だ」

 

 顔に付いてる口でパンを食べながら腕の口でそう話す障子、こいつに食べながら話すななんてマナーは通用しない。

 

「尾白はうん、普通だな」

 

「昼飯にユニークさ求めないでくれ…運命も普通じゃないか」

 

「ぐぬぬ、オレもユニークさ出していかねば…」

 

「いや、ただの昼飯にそんなもん考えなくても…」

 

等と雑談しながら食べ終えそのまま話はよりお互いの事を知るためのものに変わっていく。

 

「尾白はその尻尾鍛えてるよな、自由自在だろ?」

 

「あぁ、最初は細くて力もなくて、でも鍛えれば鍛えた分大きく強くなってきてさ。身体も尻尾もまだまだな部分あるけど土台は出来たかなって思うよ」

 

「腕や足より明らかに筋肉ありそうだし凄いな、大柄な砂藤の胴回りくらいあるよな、鍛えてるのは武術か?」

 

「そうだよ、空手中心に柔道かな、対武器術の意味で剣道もちょっとだけ」

 

「おお!結構やってんだな、俺はプロレス系やってるんだ、ルチャもちょっと手出してるから今度手合わせしようぜ!」

 

「良いね、道場だと同門としか組手出来ないから異種格闘も良い経験になりそうだ。障子と運命は?」

 

「…俺は自力をずっと伸ばしてきた、諸事情で自然の中で索敵や生存を中心に、だから体系的な戦闘技術はあまりない、教えてくれると助かる…」

 

 諸事情の所で少し目を伏せた障子に気になるがその身体は大きさだけでなく鍛えられているしっかりとした厚みがあった。

 

「いいじゃん!自然の中での生活ってそれだけで強靭になるよね、障子の身体見たらわかるよ。今度手合わせや訓練一緒にやろうよ!オレも結構手広くやってるし、無手に剣も槍とか武器も結構」

 

「運命お前あの体力測定の時にしてた変身が個性じゃないのか?」

 

「個性は地水火風、文字通りって感じの個性だよ、いたでしょ?クラスとか学校に一人は、自然系は多いし」

 

 本当の個性の事は言えない、というか異世界のゲームシリーズの個性ってどう説明すればいいのかオレもわからない、地水火風で押し通すのが無難だろう。

 

「確かに風も水も炎も土も見たことあるけど…4つはチートじゃね?」

 

「出力自体は一つの人より劣ってたんだけどね、最近はそれも克服してきてるよ」

 

「個性プラスに体術もか、強いな」

 

「個性も大事だけど身体はやっぱり基礎だしね、それに鍛えると楽しくなってこない?日に日に大きく強くなる筋肉」

 

「「「わかる」」」

 

「「「「それに筋肉は裏切らないからな!」」」」

 

「「「「!?」」」」

 

思わず出た言葉が被り瞬時に悟る、こいつらとは仲良く出来そうだと。

 

「「「「ふっ!」」」」

 

 ゴンっとオレらは自然と拳を突き合わせていた、この日、筋肉による筋肉の為の筋肉同盟、「筋肉四重奏」が結成されたのはいうまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 盛り上がる四人とは逆サイド、尾白の右隣りで食事を取っていた蛙吹と芦戸はそれを見ていた。

 

「梅雨ちゃん、なんか汗臭くない?この4人らへん特に」

 

「三奈ちゃん、ここは暑苦しいくらいにしておいてあげましょう、ケロ。でも三奈ちゃんも体力測定の結果良かったじゃない、身体能力という意味では2位の八百万さんよりも良いと思うわよ。早く彼女ともお話して友達になりたいわ」

 

「アタシは結構身体動かすの好きだからね!それにダンスやってるし!!個性無しの測定だったら中学までは男子にもほとんど勝ってたんだけどやっぱ個性ありだと変わるよねー」

 

「そんなに卑下することはないわ。ここは雄英だもの、その中でも半分以上に入るのは凄いことだと思うケロよ」

 

「ありがと梅雨ちゃ~~ん!あ、それでどう?男子にカッコいいとか感じたのいる?」

 

「ケ、ケロロッ!?いきなり何を言うの?」

 

「え~だって男子多いしどうかな~って?」

 

「そ、そんなすぐには……あっ」

 

 蛙吹梅雨は視線に入ったある男子の背中を見るがすぐに顔を伏せる、顔の熱さを隠そうと髪を垂らした。

 

「その反応マジっ!?誰々っ、今誰見たの?ねぇねぇ!!前の方見たよね?尾白君?運命くギュ!?」

 

ラブの波動を感じた芦戸三奈、彼女の好きなものは恋バナ!

 

蛙吹梅雨から問答無用のベロ拘束で釣りあげられた芦戸は身動きが取れなくなってしまう。

 

「三奈ちゃん、トイレに行きましょう。もうすぐお昼も終わるし準備は大事だわ、ケロ?」

 

「は、はい、ごめんちゃい」

 

女子トイレで壮絶なオハナシが行われたのかは当人達しか知らない…

 

 

 

 

 

 

 

 午後を迎えついにヒーローっぽい授業の時が来た。

 

名は【ヒーロー基礎学】

 

「わーたーしーがー!!」

 

「普通にドアから来た!!!」

 

 HAHAHAHAと笑いながら入口から入ってくる2m100kgを軽く超える筋肉ムキムキマッチョマン。

日本の漫画の中に一人アメコミから輸入されてきたような存在。平和と筋肉の象徴にして日本断トツのNo.1ヒーロー。

 

「「「オールマイトだあああああ!!!」」」

 

「すげぇや!本当に先生やってるんだな…!!」

 

「銀時代のコスチュームだ…!画風が違い過ぎて鳥肌が…!」

 

 皆が羨望と感動を覚えているなかオールマイトは右手にカードを掲げながら宣言する。

 

「ヒーロー基礎学!ヒーローの素地をつくる為、様々な訓練を行う科目だ!!単位数も最も多いぞ、そして早速だが今日はコレ!!戦闘訓練!!!」

 

「「おお!!」」

 

戦闘訓練という言葉に皆静かに盛り上がる。

 

「そしてそいつに伴って…こちら!!!」

 

 両手を広げながらオールマイトが壁に視線を誘導する。

すると壁から音を立て一部がスライドしてくる、その壁の中には数字が書いてあるアタッシュケース達。

 

「入学前に送ってもらった『個性届』と『要望』に沿ってあつらえた…戦闘服!!!」

 

「「「「うおおおおおおお!!」」」」

 

「着替えたら順次グラウンド・βに集まるんだ!!」

 

 そう言い残し颯爽と去っていくオールマイト、皆意気揚々と自分の番号のアタッシュケースを取り更衣室へ嬉しそうに駆けていく。

オレも遂に憧れのあの服を着れるのでテンションが上がるぜ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、運命ちゃん、カッコいいわ、マントタイプなのね」

 

 訓練場に入った所で梅雨ちゃんに声を掛けられる。

そう、オレのヒーロースーツ、それは夢で見た彼の真似だ。

天族と呼ばれる精霊に似た存在と共に世界の汚れを浄化しようと命を懸けて戦った彼、スレイ、その容姿を受け継いだオレには彼の白いマントが良く似合うのだ。

ちなみに中の紺色のズボンとシャツは見た目は普通服だが耐火耐刃など盛れるだけ持っている。

 腰には武器替わりの鉄の棒が二つ、一つだと短刀ほどの長さで連結すれば短槍ほどになる丈夫さを重視の一品だ、刃物はヒーロー的に扱いづらいのでこうなった次第だ。神衣してしまえば上書きされてしまうのでこれくらいでちょうど良いなと思ってのヒーロースーツ、白のマントが象徴替わりになると良いかな。

 

 

「はは、ありがとう梅雨ちゃん、梅雨ちゃんもダイバースーツみたいな感じなんだね、水陸両用でしっかり対応できそう、見た目もカッコいいよ」

 

梅雨ちゃんは緑色の基本としたダイバースーツ、如何にも水系を意識した個性に合わせたスーツだった。

 

「ケロケロ、ありがとう、やっとヒーローへの道が始まった気がするわね」

 

「だね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ!始めようか有精卵共!!戦闘訓練のお時間だ!!!」

 

全員が着替え終わり最後の緑谷も来たのを確認しオールマイトが宣言する。

 

「ここで行うのは屋内での対人戦闘訓練さ!!

統計で言えば屋内の方が凶悪敵出現率は高いんだ。だから君らにはこれから『敵組』と『ヒーロー組』に分かれて2対2の屋内戦を行ってもらう!!」

 

「基礎訓練もなしに?」

 

「その基礎を知る為の実践さ!」

 

 梅雨ちゃんの疑問に拳を握りながら返すオールマイト。

それを見て皆が思い思いに質問を飛ばすがどうやらオールマイトは聖徳太子にはなれないようだ。

そして懐からカンペを取り出し説明していく。

 

「いいかい!?状況設定は『敵』がアジトに『核兵器』を隠していて『ヒーロー』はそれを処理しようとしている!」

 

「「「(設定アメリカンだな!)」」」

 

「『ヒーロー』は制限時間内に『敵』を捕まえるか『核兵器』を回収する事。

『敵』は制限時間まで『核兵器』を守るか『ヒーロー』を捕まえる事。

コンビ及び対戦相手はくじだ!!」

 

「質問があります!我々は21名います!ずっと疑問だったのですが何故定員だった20名ではないのでしょうか!」

 

「確かに、ヒーロー科の定員って推薦4人の普通36人だったはずだよねー」

 

「俺B組の奴に聞いたけどあっちも21人らしいぜ」

 

「HAHAHA!雄英はハイレベル故に自由も認められている校風だ!試験結果で満たないとなれば合格者0の年もあるのさ、まぁそれは流石にやりすぎと国から怒られたらしいけどね!

 故に除籍や復籍という形に最近は移行していたんだが…おっほん!!

つまり今年の合格者は定員を超えても欲しいと思わせた42人なんだよ、そして奇数同士にしたのは更なる苦難へということさ、くじの結果によっては2対3、3対2になるということさ!

 敵とヒーローの数が常に一緒なんてあり得ないと同じ様に訓練もそれらを踏まえていこうってことだ!いいね!?」

 

オールマイトの言葉に皆納得しつつくじを引いていった結果は

 

Aチーム 緑谷出久&麗日お茶子

Bチーム 轟焦凍&障子目蔵

Cチーム 峰田実&八百万百

Dチーム 爆豪勝己&飯田天哉

Eチーム 芦戸三奈&青山優雅

Fチーム 口田甲司&砂藤力道

Gチーム 上鳴電気&耳郎響香

Hチーム 蛙吹梅雨&常闇踏陰

Iチーム 葉隠透&尾白猿夫&運命クロス

Jチーム 切島鋭児郎&瀬呂範太

 

となり続いて

 

A対D、B対I、H対J、G対C、E対F。

 

左がヒーロー側、右が敵側となり組み合わせは決まった。

 

 各自チームとなった者と顔を合わせていく。

席が後ろの尾白、透明女子という葉隠。

 

「運命、葉隠さん、俺らが3人だな、よろしく頼むよ」

 

「尾白君に運命君だね!私葉隠!頑張ろうね!!」

 

「二人ともよろしく!頑張ろう!」

 

 

 

Aチームのヒーロー側の緑谷と麗日は対象の敵が籠るという設定のビルの前へ。

Dチームの敵側の爆豪と飯田は核を望みの場所に設置しビルの中へ。

 

 オールマイトとその他の生徒は同ビルの地下のモニタールームへ移動していた。

そして少しの作戦会議の時間を含めて準備時間を経て屋内対人戦闘訓練は開始された。

 

 

 二人でビル内を慎重に進む緑谷と麗日

 

 敵側の爆豪はそこに単身奇襲をかける、即座に避ける緑谷、追撃をかけるが逆に右手を取りカウンターの一本背負いを決める、投げっぱなしとは中々思い切りがあるな。

 会話をしている素振りを見せつつも爆豪と緑谷は戦いを再開させる、そして麗日は加勢するよりも先に踵を返し先へ進んでいった。制限時間は15分、相手を配布されている確保テープで巻くか目標である核への接触がヒーロー側の勝利条件。ヒーロー側の戦略か敵側の戦略がどうなっているか視聴を続ける他生徒達は喧々諤々でいる。

 

 一旦逃走を計る緑谷を追いかける爆豪は手榴弾を象った手甲を操りビルを大きく損壊させるレベルの爆発を起こす。

教師であるオールマイトの静止を振り切り撃ったその一撃、二階分は吹き飛ばしていたが緑谷には直撃させないように撃っていたようだった。爆破と同時に麗日も核の設置してある部屋に入り爆発の混乱の中に核への接触を試みるが一瞬早く気付いた飯田に核を移動させられてしまう、意外と核は軽そうだな。

 

「爆豪少年、次それ撃ったら強制終了で君らの負けとする」

 

 流石にオールマイトも屋内戦での範囲攻撃の危険を語り警告を出した、当然だろうと皆が頷く。

そこからは爆豪の独壇場と言えるほどの圧倒的個性を用いた戦闘センスを見せつけ緑谷を痛めつける。爆豪は緑谷に必死の形相で何かを叫び続ける、緑谷も覚悟を決めた顔で何かを叫び返し構える。明らかに常軌を逸した二人の姿勢に関係性が気になってくる。

 お互いの最後の一発がお互いに…ではなく緑谷の一撃は天井を吹き飛ばす。

おそらく麗日との連携を意識した一発は屋上まで突き抜け上階の核部屋にも影響を及ぼした。破壊した柱を個性で軽くし打ちあがる瓦礫をフルスイングで飯田に撃ち抜く、防御する飯田を跳び越し核への接触を成功させる麗日。勝った方がボロボロで負けた方がほぼ無傷、印象的な対比を残しながら勝利はヒーロー側にもたらされた。

 

「ヒーローチームウィーーーン!!!」

 

 

 

 

 

 

 その後倒れた緑谷を保健室へロボットが運び残ったもので講評の時間になった。

全員の前で今回のMVPは飯田と言い切るオールマイトに肌色が多い長身の女子、八百万百が挙手し次々と的確な指摘と評価、反省点を出していく。結果から言えば敵として最もロールに準拠したプレイをした飯田が合格点、その他は核や建物への攻撃の意識が軽んじていたことが大きく減点ということだった。オールマイトの感動したかのように震えながらのグッドポーズは印象深かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして次は俺達の番となった。

次に用意されたビルまで行き小型無線機をつけ、お互いにチェックしあう。

 

「尾白君運命君私ちょっと本気出すわ!手袋もブーツも脱ぐわ!」

 

先ほどの戦闘にあてられたのか鼻息を荒く宣言する葉隠、それにオレは待ったをかける。

 

「ちょっと待った!二人とも良いか?作戦があるんだ…」

 

敵側として悪く笑い二人にそれを話していき、そして開始時刻が告げられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方Bチーム、轟と障子はお互い無言だった、義務的に自己紹介と個性を伝えあったがそれだけだった。

流石にそれはマズイと障子は轟へ知ってる敵、尾白と運命の個性を告げる。

 

「尾白は尻尾、葉隠は透明、そして運命は」

 

「知ってる、飛翔と怪力だろ、見たよ。それなら問題ない」

 

「違う、運命はそれだけじゃない、というかそれが本質では…」

 

そこで訓練開始が告げられる。

 

「外でてろ、危ねぇから。向こうは防衛線のつもりだろうが…」

 

轟は興味も無さそうに話すと個性を発動させる。

 

「俺には関係ない」

 

 足元から出た氷がビル全体を一気に凍らしていく。

コツコツと凍り切ったビルの中を歩く轟、レベルが違う、この程度では自分の障害にならない。そう思いながら障子がその個性で教えてくれた相手の位置へ向かう、3人の内2人がいる場所が核の場所だろう、1人は遊撃で出たのだろうか。

 だが凍らせてしまえば動けないし動けてもすぐに鎮圧できる。

当然のことと考えながら目的である4階に向かう途中の3階に登った瞬間だった。

 

「っ!!?」

 

それは熱風を伴いビルを駆け巡った、思わず顔を手で防御する。

 

「これは…ビルごと溶かしたってのか…」

 

 自分が凍らせたビル全体が元に戻っている。

驚愕と少しの混乱、その最中にビルの中心の廊下から轟の正面に声と同時に衝撃波が飛んできた、いや、地面を這ってきた。

 

「魔神拳!」

 

「ちっ!」

 

 氷で衝撃を止めるが砕かれる、衝撃波自体は防げたがあと一瞬遅かったら食らっていた、そう思わせるほどの威力だった。

そしてその衝撃波が放たれた方向に目を向けると白いスーツに赤い模様が施された運命と呼ばれる男が立っていた。

 

「轟君よ、凍らせてハイ終わりなんて余裕かましながら歩いてくんのやめなよ、傷つくじゃないか」

 

「お前が溶かせたのか、運命…だったか」

 

「そう、運命クロス。改めてよろしくね」

 

 笑いながらそういう運命に警戒を強くする轟。

すると左耳に付けていた通信機から相方だった障子の声が聞こえる。

 

『轟!運命は火も使うらしい、それのせいだろう?俺も別ルートから4階に向かうぞ!』

 

「あぁ、よろしく…な!」

 

 通信相手と目の前の相手、どちらにも聞こえるようにしながら次の攻撃に移る。

足元から個性を使い先ほどよりも速く、鋭く運命へ氷を発動する轟、氷は足元から腰までを凍らし身動きを封じるかに見えた。

 

「…バーニングエコー!」

 

次の瞬間声を発した運命から炎が舞い上がり全てを蒸発させる。

 

「凄いな、お前は氷の精霊に愛されてるよ轟」

 

「舐めたこと言ってんじゃねぇ!」

 

自分の氷を茶化されたと感じ今ある最大の力でこの廊下の空間ごと凍らせにかかる。

 

「炎舞繚乱!ブレイズスウォーム!!」

 

だがそれも手をかざした運命から放たれた炎と風の巨大な竜巻により全て蒸発させられる。

 

「っ!?炎、ほのお…消えろおおおおおお!!!」

 

 消された氷に何を見たのか憎悪の瞳を向ける轟。

脳裏に浮かぶ何かを振り払うように周囲の破壊を伴いながら一面を覆い尽くす氷壁を放つ。

 

「炎壁、推現!カラミティフレア!」

 

「見飽きたんだよクソ炎!汚いお前を見せるんじゃねぇ!!」

 

 迫る氷壁に対抗するように巨大な炎の壁を出し前進させ中央でせめぎ合いが起こる。押し返されるが氷を出し続け轟は感情を爆発させた。

 

炎、炎、憎き父親、憎き血統。自分の氷が、炎に負けるのが、心底憎かった。

 

 すると炎が弱まり消しきれるかに見えた、だがそれは違った。

炎と氷のせめぎ合いの中から不死鳥の様な炎が飛んできたのだ。

 

「鳳凰天駆!!うおおおらああああああ」

 

「ああああああああああああああああああ!!!」

 

 突進してきた不死鳥は轟の目の前で運命になりもはや個性を使える状況ではなかった。一歩下がり腰を落とし、左手を引き、腰のひねりを加え少し下を目標に右拳を突き出す。

 頭で考えて起こした行動ではなかった、身体に染みついたそれは、憎き父親がしみこませた”それ”だった。

突撃してきた運命の鳩尾に深く入るその拳、一瞬運命もよろめくがすぐに左手を引き絞りこちらを攻撃してくるそれを見ながらも思わず自分の右手を見てしまった。

 

「今、なんで…俺はっ」

 

「獅子戦吼!!!」

 

 運命から放たれた獅子の形をした何かを最後に、壁に叩きつけられた轟の意思はそこで途切れた。最後に聞こえたそれが、嫌に記憶に残った。

 

「炎もお前を愛しているのに…」

 

嫌いだよ、口に出たのかはわからなかった。

 

 

 

 

 

 

「確保完了っと」

 

 気絶した轟に拘束テープを巻き横にする。

予想外の反撃に良い突きをもらってしまった腹をさすりながら火の神衣を解いて上階へ向かう。

轟焦凍、炎と氷の精霊に愛されるほどの才能を持つ凄い男だった。多分こいつは氷と炎が濃い場所に行き、精霊へと呼びかけることが出来れば契約すら出来るだろう、それほどの器を感じる。

 なぜ氷しか使わなかったのはわからないが、恐ろしいほどの出力だ。神衣化しなければ押し切られていたほどの力にまだまだ自分の未熟さを感じていた。

こちらは火の精霊イフリートを宿していたのに、例え契約の神器の大剣を手放していたとはいえ押し切れないとは…更なる修行を決意しつつ上階へ上がる。

 戦闘音が聞こえて来たのでまだ尾白と葉隠が障子と戦っているのだろう。

角を曲がり視界に入ってくると丁度終局の時だった。

 

 

「どうした障子!?気が散っているぞ?」

 

武術を使い堅実に攻める尾白と多腕を振り回しながら戦う障子。

 

「くっ!さっきまで葉隠を捉えていたのにっ!?」

 

尾白の攻撃を逸らし避けながらも他の腕の先に目をつけて周囲を必死に探る障子。

 

「そうかな、どこかな?今だ葉隠さん!」

 

それを見てニヤリと笑った尾白は大きく障子の右奥を見て叫ぶ。

 

「左!?しまっ!ッ右!!?騙された…」

 

 右手を尾白に、葉隠に左側の腕を使い対処しようとした振り回した瞬間に障子の右後方から首にテープがかけられる。

 

「はい確保完了ーーやったー!」

 

「見えなかった…嵌められたか…」

 

 尾白と葉隠の連携は簡単だった、まず尾白が対面で勝負を仕掛ける、次に葉隠が隙を見つけてテープを巻く、隙が無ければ葉隠が注意を引き尾白が攻撃する。

これを繰り返し障子を疲弊させて葉隠が最初はこれ見よがしに付けて浮かせていたインカムを見えないように捨ててテープは口の中に隠して完全に見えなくして動きを停止して音も出ないようにして障子の不安を掻き立てる。

 そこを尾白が意図的な視線誘導で騙して確保か撃破に決める。2対1の数的有利と個性を合わせた見事な作戦勝ちだった。

 

「葉隠さんナイス!」

 

「尾白君やったね!作戦勝ちぃ、はい、手出して!」

 

「いぇーい!」

 

「い、いぇい」

 

尾白が右手を上げるとそこにパチーンと叩いた音が響く、そこで終了が告げられる。

 

 

 

「敵チーム!ウィーーーーーーン!!」

 

 

 

後思った、尾白と葉隠、仲いいな。オレも挟まろっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 所は変わりビルの地下、モニタールームに残る生徒は声を失っていた。

 

オールマイトは勝敗を告げたあと上の5人を回収しに上階へ駆けていく。

そんな中で声を出したのは切島だった。

 

「…何なんだよこいつら、特に轟と運命。ビル一瞬で凍らせたり溶かし返したり」

 

「しかも運命さんは炎でビルの全てを溶かしたのではなく制御して溶かしました」

 

 八百万が口に手を当てながら言う。

モニターに映る核の周りは10mほどは最初に凍らされたままだった。

 

「運命はよ、体育測定で空も飛んでたし握力測定器もぶっ壊したよな、それに加えて炎もこんだけ使えるってあいつの個性何なんだよ、複数持ちなのかよ!?」

 

「俺軽くアイツから聞いたんだけどよ、地水火風って言ってた」

 

峰田の叫びに砂藤がぽつりと返す。

 

「地水火風?あのレベルで4つも使えるということですの?おそらく水の変身も持っていると見てもおかしくないですわ…いえ、待ってください、その個性であの変身能力は一体…」

 

「水だったら俺の友達にもいたけど、それでも水道全力で開けたレベルでそれをちょっと操れるくらいだったんだぞ、桁違いで他にもあるとか…チートかよ…」

 

「轟さんも個性は半冷半燃とお聞きしました、つまり炎も氷と同レベルで…」

 

「何なんだよこいつら…」

 

クラスメイトの実力を見て多くが驚愕と少しの畏怖を感じていた。

 

「でもさ、アタシらだって負けてないって見せてやらないとね!!」

 

「そうよ、諦めるなんてヒーローのすることじゃないわ、私たちはヒーローになるんだから。ケロ」

 

「そうだよな!ヨシッ!俺らも頑張んぞ!うおおおおお」

 

「切島ウルさい!あんたびびってたでしょうが!」

 

「それは言うんじゃねぇよ!こっからだ俺は!こっからだ!!!」

 

「はいはい」

 

しかし諦めを払拭し意気を高める生徒達、彼らにはヒーローの精神があったのだ。

 

 

 

「………」

 

ただ一人、爆豪は下を向き、悔しさに手を握りしめていた。

 

 

 

 

 

 

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