僕の運命アカデミア   作:乙子

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第03話~USJ~

 

初めてのヒーロー基礎学が終わり次の日

 

 登校時に雄英の入口でマスコミの群れに集られたが、向かいの森の陰にオールマイトの等身大土人形を作ってデコイになってもらった。

本人を間近で見たことで正確な土人形で作れるようになった、咄嗟に作ってみたけどこれは使えそうだなと考えながら部屋に入る。土の大精霊ノームはこういうお遊び的なことにも力を貸してくれる優しいモグラの様な体に鼻が長くて大きくてふわふわでのんびりした顔の素晴らしい精霊なのだ。

 既に来ているクラスメイトに挨拶しつつ席に着く、そして先ほどの土人形オールマイトを思い出しつつ縮小させつつ掌の上でこけしサイズのオールマイトを作成してみる。

縮尺がおかしい、顔がデカすぎる、机に置く。顔を小さく、今度は上半身に対して下半身が貧弱すぎる、小型化は難しいなと小さいミスを連発し机の上が失敗作で埋まりそうになるがなぜか作る先から消えていく。

 

「うひょー顔がデカすぎるオールマイトに貧弱マイト、こんもりマイトにもっこりマイト、ハゲマイトに昇天ペガサスMIX盛りマイトですか、おいおいおい、死ぬわ僕、希少さマイトに溢れて死ぬわ僕、ぶつぶつぶつぶつ」

 

小さく呟きながら失敗作マイトを次々に懐に収めていく変質者、というかクラスメイト緑谷出久だった。

 

「おはよう緑谷、気持ち悪いよ」

 

「え!?うわぁ!?運命君!おはよう!これ土属性の個性の特訓だよね?失敗作みたいだし僕が責任を持って保管、いやいや、処分しておくよ?それにこのサイズのオールマイト人形なら僕が時代別、コスチューム別、塗り別で31体くらいあるから参考にどうかな?明日持ってくるね!あ、それとそれと、この造形だと最近のオールマイトだと思うんだけど思うんだけどこの顔の部分の皺がね、少し気になってて、そうだ、僕の顔真似でわかるかな?ぬん!!こんな感じで、ここがこうなってて、上の方が小さくて下の方が長いんだよかっこいいよね!あ、あとね一応なんだけど、こういう作るのは自由だけど売ったら著作権的に当然アウトだし友人に譲るとかも対価発生するとグレーゾーンから外れちゃうから全部僕に渡してくれて良いからね??ね?あと今度奴隷になるから僕の想像通りのオールマイト人形作ってくれないかな?」

 

「緑谷ちゃん、言葉で運命ちゃんが溺れ死んでるわ、もうやめてあげて、あとオールマイトの造形の顔早く戻して、物理的に死人が出ちゃうから」

 

言葉のタイダルウェイブに溺れていると梅雨ちゃんが助けてくれた、流石個性蛙!

 

「あ、蛙吹さんもおはよう」

 

「梅雨ちゃんと呼んで、おはよう」

 

「あっぶねー、言葉って溺れるとか出来るんだね知らなかった、救助ありがと梅雨ちゃん」

 

「ケロ」

 

「ごめんね、本当にごめん!」

 

 

 

 

 

「HRの時間だ、ん?緑谷早く席につけ、あとなんだその土塊は?」

 

「なんでもありません!!!」

 

 朝礼に入ってきた相澤先生にぴゅーっと席に戻る緑谷、暫く視界に入れたくないなぁなんて思いながら先生の発言を静かに聞いていく。

 昨日の戦闘訓練の結果を見て爆豪と緑谷へ注意と忠告を言い渡す相澤先生。

 

「さてここからが本題だ…学級委員長を決めてもらう」

 

「「「「学校っぽいの来たーーーーー!!!」」」」

 

 皆がこぞって挙手し自分を委員長へと言葉を発する、集団を導く役割ってのはトップヒーローに欠かせない素地だからだろうか。

 わいわいがやがやと自薦していくクラスメイトに飯田が投票を提案し先生の許可が下りる。八百万がさっそく投票くじを作ってくれるがそれと同時にオレは声を出して皆に聞こえるように告げる。

 

「オレはこの委員長決め、降りさせてもらうね、ちゃんと投票はするから」

 

「「「えぇーーーー!!」」」

 

「良いのか運命!委員長だぞ?」

 

「そうだ運命君!!誇り高き雄英ヒーロー科の学級委員長を決める歴史的な瞬間なんだぞ!?」

 

「ごめんね、オレ実は図書委員になりたくてさ」

 

「「「図書委員!?」」」

 

「うん、そうなんだ。だから学級委員長だと兼任出来ないだろうしここは降りさせてね、あぁだからって無理に図書委員にしてくれとは言わないよ、ちゃんと別でそれは決めよう。それにオレが他の人に入れれば絶対差が出来るだろうし」

 

「本人の希望やしええと思うんやけど図書委員に何かあるん?本好きなん?」

 

「趣味なんだー読書、特に古文書系統」

 

「雄英の大食堂と大図書館は超目玉って宣伝あるもんねー」

 

「むぅ、自己申告だし尊重しよう、では対象20名で投票始めよう!紙は行きわたったね?」

 

そうして結果は緑谷が委員長で八百万が副委員長になった。緑谷ガッチガチだったが上手く行くといいな。

 

 

 

 

 なんて思いながら昼食を昨日さっそく出来た筋肉仲間と筋肉談義しながら食べていると初めて聞く警報音が鳴り響き教室、同じフロアにいた生徒全員が騒然としだした。

火事か何かと皆廊下に出て周囲を見回す、すると校内放送で屋外へと避難を促された。即座に八百万が非常階段の方で避難を誘導しだすと皆そちらに誘導されていく。恐らく元いた生徒の半分は食堂に詰めていたからか教室棟内での混乱は少なかった、そして職員からの事情説明が放送され安堵の息を吐くのであった。

 

 その後なぜか緑谷が委員長を飯田に譲ったりしたことがあったが上手く納まったという感じだろうか、ただ一点を除いて

 

「あ、運命君。今日は土の個性の訓練は良いの?オールマイト…じゃなかった土人形の後片付けなら僕がするから気軽に言ってね!」

 

オールマイト土人形作成を期待する緑谷のチラ見と催促はいつ止まるだろうか…

 

 

 

 

 午後、ヒーロー基礎学の時間

 

「俺とオールマイト、そしてもう1人の3人体制で見ることになった」

 

相澤先生がレスキューと書かれたカードを見せながら言う。

 

「災害水難なんでもござれ、人命救助訓練だ!」

 

 教室の壁からせり出してくるコスチュームを出しながら、しかしコスチュームの着用は各自の判断に任せてくる。

そして訓練場へは距離があるのでバスに乗っていくことを告げて出ていく。

 

 

 

 

 すぐさま準備を終了させバスに乗り込む、委員長に決まった飯田の仕切りは中々のものだ、バスのタイプを知らなかったゆえに空回ったが…

 

「水難なら私の独壇場ケロケロ」

 

「お、自信あるねぇ!オレも水得意だよ、どっちが速いか競おうよ」

 

「いくら運命ちゃんでもここは譲れないわ、負けないケロよ」

 

梅雨ちゃんと喋りながらバスへ乗り込む。

各自がイスに座り俺も流れで青山の横に座る、個性レーザーの青山優雅、教室では俺の右隣りの男子。ピカピカの鎧と各所に取り付けられた発射口、美学を持ってる青山は一挙手一投足が洗練されている、独特だ。ボックス席のように向かい合わせで8人が座っており各々が授業を楽しみにしながらも雑談を楽しむ。

 

「緑谷ちゃん、あなたの個性オールマイトに似てる」

 

「そそそそうかな!?でも僕はそのえー」

 

突然の梅雨ちゃんの言葉に緑谷はきょどる。

 

「待てよ梅雨ちゃん。オールマイトはケガしねぇぞ、似て非なるアレだぜ。しかし増強型のシンプルな個性はいいな!派手で出来る事が多い!」

 

腕を出し個性の硬化を発動させる切島。

 

「俺の硬化は対人じゃ強ぇけどいかんせん地味なんだよなー」

 

「僕はすごくかっこいいと思うよ、プロにも十分通用する個性だよ」

 

緑谷の言葉にオレも自分の意見を伝える。

 

「そうだよ、オレも良い個性だと思うぜ切島」

 

「運命は自分で何でも出来そうじゃね?」

 

「なんでもは出来ないよ、出来ることだけさ。それにオレがクラスでコンビ組むなら切島が第一候補だよ」

 

「え、俺が?」

 

「誰よりも硬い壁、それなら前衛任せられるじゃん、信頼できる前衛なら、中衛や後衛は十二分に威力を出せる、今度連携技作ってみない?」

 

「連携技!?なにそれかっけぇ響き!作る作る!でもそっか、俺が壁で後ろが輝く、か…」

 

自分の手のひらをギュッと握りそれを見る切島。

 

「でもやっぱ派手さもプロには必要よなー人気商売的なとこもあるし、やっぱ派手って言ったら運命、轟、爆豪だな」

 

「ケッ」

 

「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気でなさそ、ケロ」

 

「んだとコラ!出すわ!!」

 

言われた爆豪が身を乗り出して猛る。

 

「この付き合いの浅さで既にクソを下水で煮込んだような性格と認識されるってすげぇよ」

 

上鳴が恐れを知らずように爆豪に笑いながら言う。

 

「てめぇのボキャブラリーは何だコラ!殺すぞ!!」

 

「ははははは!」

 

「笑ってんじゃねぇぞ自然野郎!てめぇもいつかぶっ飛ばすからな!!」

 

初めて、初めて爆豪と目を合わす、そのギラギラした瞳は本気さを秘めている。

 

「オレもお前と戦ってみたいよ、本気で」

 

「!?ケッ、そん時ァぶっ殺してやるよ」

 

その目をまっすぐ見据えて返す、爆豪はそれを受け止めるとつまらなそうに外に視線を向けた。

 

「なんかお前らがそういう事言うとピリッとすんぜ」

 

「まぁ、野蛮で低俗な会話ですこと!」

 

「あっはっは、でもこういうの好きだ私」

 

朗らかな雰囲気のバスに相澤先生の言葉が響く。

 

「もう着くぞ、いい加減にしとけよ…」

 

「「「ハイ!!!」」」

 

 

 

 

 そしてオレ達1年A組は目的地に到着した

 

「水難事故、土砂災害、火事…etc」

 

現場に待っていた宇宙服を纏ったヒーロー。

 

「あらゆる事故や災害を想定し、僕が作った演習場です。その名も…USJ(ウソの災害や事故ルーム)!!」

 

「スペースヒーロー『13号』だ!」

 

「災害救助で目覚ましい活躍をしている紳士的なヒーロー!わー私好きなの13号!!」

 

 ヒーローを見て盛り上がる緑谷と麗日、他の皆も楽しそうにヒーローの話をしている。

相澤先生が13号先生に会話し二人が生徒に向かい話始める。

 

「えー始める前にお小言をひとつふたつみっつよっつ」

 

どんどん増えるそれを全て聞いていく。

 

 13号先生の個性『ブラックホール』どんなものでも吸い込んでチリにする。それを操りどんな災害からも人を救いあげる力、だが簡単に人を殺せる力でもある。

超人社会では様々な個性を持った人達がすぐそばで生活している。その危うい成り立ちを忘れてはいけないと13号先生は警告する。

 

「相澤先生の体力テストで地震の力が秘めている可能性を知り、オールマイトの対人戦闘でそれを人に向ける危うさを体験したかと思います。

この授業では心機一転!人命の為に”個性”をどう活用するかを学んでいきましょう。君たちの力は人を傷つけるためにあるのではに、助ける為にあるのだと心得て帰ってくださいな。

以上!ご清聴ありがとうございました」

 

そう終えて恭しく一礼する13号先生に各々が反応を返す。

 

「そんじゃあまずは…」

 

実技に取り掛かろうとする相澤先生は施設の中央を見て態度を一変させる。

 

「ひとかたまりになって動くな!!13号!!生徒を守れ」

 

釣られて中央を見るとそこには大きく、黒い靄が広がっていた、そしてそこから這い出てくる悪意を隠さないそれらがいた。

 

「動くなあれは敵だ!!!…やはり先日のはクソどもの仕業だったか」

 

 ゴーグルを降ろし捕縛布を展開する相澤先生。

下れと言われれば下がるけど多勢に無勢だ、戦闘開始前に出来ることをしよう。

 

「『バリアー』『シャープネス』」

 

「!この感覚は!?」

 

能力向上の術を相澤先生にかける、個性抹消だ、身体能力を上げて悪いことはないだろう。

 

「相澤先生、防御力、攻撃力が上昇します、10分」

 

「お前…、いや、わかった。これ以上は良いから下れ」

 

突如溢れてくる力に戸惑うもすぐに理解し支持を出す先生。

 

「はい」

 

 

 

「敵!?バカだろ!?ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホ過ぎるぞ!!」

 

 上鳴が叫ぶも黒い靄から続々と出てくる敵と思われる集団、数十人が中央の広場にいた。

相澤先生と13号先生はすぐに対処方針を作り相澤先生が敵へ単身向かう。

 

「先生!正面戦闘はいくら敵の個性を消してもあの大人数じゃ…」

 

「一芸だけじゃヒーローは務まらん、13号、任せたぞ!」

 

 そう言い颯爽と単騎特攻をかける、もちろん敵達から集中攻撃をもらいそうになるが先生の個性は抹消、見える範囲の敵は個性を消され戸惑っている。

当然そんな戸惑っている隙を逃す先生ではなく敵陣に潜り込み捕縛布と立ち回りで奮戦していく。後ろ髪を引かれながらもオレ達生徒は入ってきた入口へと走る。

 だが敵からすればそれも想定済みだったのだろう、明確な意図を感じる動きだった

 

黒い靄が入口を後ろに隠すように現れる、ワープのような移動の個性持ち。

 

「初めまして、我々は敵連合。僭越ながら…この度ヒーローの巣窟雄英高校に入らせて頂いたのは、平和の象徴【オールマイト】に息絶えて頂きたいと思ってのことでして」

 

重く、明確な殺意、物理的なプレッシャーを伴う宣言が行われる。

 

「本来ならばここにオールマイトがいらっしゃるハズ…ですが。何か変更あったのでしょうか?まぁそれとは関係なく…」

 

 風の神衣を展開し13号のすぐ後ろに構える、対処しなければ、殺される。

皆も身構えるが敵は黒靄を展開する、13号先生も指を前に出し対応しようとするが…切島と爆豪が先手必勝と個性で攻撃を加える、加えてしまう、問題はその立ち位置だった。

 

「その前に俺達にやられることは考えてなかったか!?」

 

「危ない危ない……そう…生徒といえど優秀な金の卵」

 

「ダメだどきなさい二人とも!!」

 

 指を掲げながら13号の個性ブラックホールは発動されない、敵と先生の間に生徒が入ってしまったから。その躊躇の瞬間に黒靄がオレ達の周囲に展開される、咄嗟に近くにいた芦戸と瀬呂を掴み上空に飛び逃れる。黒靄が収まるが半分も皆はいなかった、この場にいるのは13号先生に飯田、障子、砂藤、芦戸に瀬呂、麗日とオレだ。

 

「皆いるか!?確認できるか!?」

 

「上から何人か確認出来た!各施設に数人ずつっぽい!」

 

「…散り散りになっているが施設内にいる」

 

「物理攻撃無効でワープって…!最悪の”個性”だぜおい!!」

 

13号先生は周囲を確認し敵からは目を離さずに後ろのオレ達に告げる。

 

「委員長、運命君。君達に託します、学校まで駆けてこの事を伝えて下さい」

 

「しかしクラスを置いていくなど委員長の風上にも…」

 

「行くぞ飯田!!すぐそこだ!上のオレと下のお前で確実に最速で行くぞ!!」

 

「救うために個性を使って下さい!!」

 

13号の言葉に授業前の言葉が思い出される、個性の使い方、その意義。

 

「手段がないとはいえ、敵前で策を語る阿呆がいますか」

 

「バレても問題ないから語ったんでしょうが!!」

 

黒靄が動き13号もブラックホールを展開する。同時に飯田とオレは駆ける。

 

「13号、災害救助で活躍するヒーロー、戦闘経験を劣る、自分で自分をチリにしてしまった」

 

「13号せんせええええええええええ!!」

 

後ろから聞こえる悲鳴を無視し空を飛ぶ、下のドアは飯田に任せオレは壁ごとぶち抜く姿勢で突撃する。

 

「この状況で空を飛ぶのは悪手でしょうに!!良い的だ!」

 

敵からの声と同時に周囲から大量に飛んでくる様々な攻撃、入口付近にまだ伏せられた敵がいたようだ。

 

「幻影空散!ウェザリング!!」

 

 敵からの攻撃を風の刃を自分の周囲に発生させ全て弾くと同時に敵の狙いを定めさせない風を纏う。

すぐに目の前の壁を破壊し雄英へ向けて最速を出そうとするが下から声がかかる

 

「運命君!!ここは僕が行く!!君はその翼で皆を守ってくれ!」

 

足を止めず走りながら叫ぶ飯田に下も成功していたことを察する。

 

「わかった!頼んだぞ!」

 

「そちらもな!!」

 

 すぐにUSJ内へ戻り入口を見るがそこには背中をチリにされた13号が倒れており麗日芦戸が縋っていた。

砂藤と障子、瀬呂は周囲を警戒している、黒靄は飯田を逃したのを追ったかと一瞬思ったが既に中央広場に黒靄が展開されていた。

 

「二人とも退いて!!」

 

「先生が、背中が!!」

 

13号先生の背中は骨が見えているほどにチリにされ出血している、このままじゃ失血死もあり得る。

 

「どうしよう!こんなに広いと出血も止めらんない!!」

 

必死に止血を行う麗日、何かないか焦る芦戸。目の前で失われていく命を前に、オレは…

 

「…大丈夫、オレがやる」

 

「え、運命君?」

 

「『彼の者に注げ!安らぎの光輝!ヒール!!』」

 

聖なる光が傷口に集まり瞬く間に傷を癒す。

 

「傷が…塞がっていく…」

 

「あんた一体…」

 

 こんなに消費するのか…神衣も持たない…解除。

汗だくで大地に両手をつき呼吸を整える。初めて使う回復技、負担が段違いだ。回復の練習してなかったからか…?

 

「良くやったぜ運命、立てるか?」

 

「あぁ、まだ行ける。芦戸、13号先生見ててくれるか?」

 

「うん、わかった」

 

「俺が護衛でいるわ、入口でいつでも動けるようにしとく、救助も来るしな…っておい!来たぞ!!」

 

周囲を確認しながら言う瀬呂が入口を見ながら言う。

 

 

 

 

 

「もう大丈夫、私が来た」

 

 

 

「「「オールマイトォオオオオオオオ!!!!」」」

 

いつもの万民を安心させる笑顔ではなく明確な怒りを顔に出した平和の象徴がいた。

 

「嫌な予感がしてね、来る途中で飯田少年とすれ違って全て聞いた」

 

 そこからは一瞬だった、入口付近の敵を即座に制圧、黒靄と手を付けた異様な白髪、脳が見えている明らかな異形。

その下で倒れている相澤先生を救出し、水辺にいた緑谷達三人も掻っ攫い敵から距離を取った。そこからはオールマイトが3人の敵主力の敵を圧倒していた、もうすぐ敵を倒すだろう、全員がそう確信した。

 

 だがあの脳が見えている異形型の敵はオールマイト共互角に撃ち合うというシーンがそこにはあった。

すると近づいてくる峰田と梅雨ちゃん、背負っているのはボロボロにされた相澤先生か、攻撃防御のバフをかけたがどうやらあの敵達を一人で戦い抜くには足りなかったか…

見えた二人に麗日と砂藤障子が駆け寄り個性を使い相澤先生を浮かしてこちらに連れてくる。

 

「運命君!さっきのまた使える!?」

 

「…わかった」

 

 顔面を潰され両腕を見るも無残な姿にされた相澤先生、生きているのが不思議なくらいだ。

大きな破砕音と振動が訪れそちらに目を向ける、オールマイトと敵の戦いに緑谷、爆豪、轟、切島が加勢していた。向こうはオールマイトがいる、ならオレがやるのは加勢ではなく回復だ。

 

「相澤先生、私達を守るためにあの敵達に一人で…早く病院に」

 

「そうなんだよ!砂藤!障子!早く外へ」

 

「いや、運命なら…」

 

「全身は無理だ、頭が先だな。砂藤、障子。こっちに来てくれ」

 

「どうした?」

 

「…何か手伝えるか?」

 

「オレと相澤先生をあの中央の敵達から見えないように間に立ってくれ、目立ってこっちに来られたらどうしようもねぇ」

 

「…よくわからんがわかった」

 

両腕を広げ屈み向こうからは見えなくしてくれる、砂藤もそれに倣う。

 

「あと皆、出来ればオレの”これ”は秘密にしてほしい、頼む…」

 

「え、何で…」

 

疑問の声の麗日に答えず力を籠める。

 

「今出せる…全力で!」

 

白き魔法陣が展開され光を放つ。

 

「『癒しの恵みよ!キュア!!』」

 

「おぉ!相澤先生の頭が!治っていく」

 

「これは…回復能力…?」

 

 最大の回復法術を放つが腕まで全て行き届かない、それだけ頭部へのダメージが深刻だったのか、力量不足か…

全てのマナが身体から抜けていき視界は真っ白になって後ろに倒れていく、頭部に柔らかい感触を最後にオレは意識が遠くなっていった。

 

「ありがとう、貴方は私のヒーローよ」

 

聞こえた声が優しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 手を多数つけた男、死柄木弔は銃撃による複数の痛みに耐えながらその身を床に投げ出す。

 

「ってえ…両腕両脚撃たれた…完敗だ…」

 

 死柄木弔はUSJでの雄英高校の生徒を襲撃し平和の象徴暗殺を試みるも失敗し手痛い代償を受ける。

適当に裏社会で使える小物を手下にして頭数で生徒たちを圧殺、プロヒーロー陣の3人の先生は対平和の象徴と黒霧、そして自分で対処するつもりだった。

だが結果はこれだ。

 

「平和の象徴は健在だった…話が違うぞ先生……」

 

「『違わないよ、ただ見通しが甘かったね』」

 

オールマイト並みのパワーを施された脳無は回収すら出来ないほどに吹き飛ばされた、回収できなかったことに黒霧は悔しがる。

 

「パワー、そうだ、1人オールマイト並みの速さを持つ子供がいたな……」

 

怯えながらも何度も立ち向かってきた緑髪のもじゃもじゃの生徒を思い出しながら言う。

 

「それに!イレイザーヘッドは確かに頭部をぐちゃぐちゃにしたはずなのに”回復”してやがったぞ!ヒーラーがいるはずだ…」

 

「『……へぇ。それは興味深い話だね』」

 

心底興味深そうに、モニター越しの声はそう言った。

 

 

 

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