「やっぱりきみは来ないのかい?」
「当たり前だろ、職務あるし。まぁゆっくりしてきな」
ミカからの質問に俺はノーと言う日本人らしくない返事をする。いや、この場合は仕事を優先してる時点で日本人らしいのか?
時は少し遡るが、ミカから近い日に実家へ帰省する旨を伝えられた。
俺を追っかけるために実家から離れてわざわざ継続高校に入ったりと自由奔放にしているように見えていたが、実家とはちゃんと連絡をとり合っていることを知り少し安心した。
そんなミカから、母もどうせ知っているんだから今回は俺も一緒に帰らないかと誘われたのだ。
正直行ってやりたい気はあるがミカの母にあわせる顔がないし、会ったら会ったでこっぴどく説教されそうだったので仕事を理由に逃げることにした。
いや、ちゃんと行きたい気はあるのよ?昔からミカの母には色々とお世話になってたし。それに挨拶もせずいなくなってしまったから。
でもあの人の圧凄いのよ。
どれぐらい凄いかって、弱体化入る前のえげつない弾幕出してきたスピリット・オブ・マザーウィルぐらいやばいのよ。並のリンクスじゃ太刀打ちできないのよ。
だから今回はミカには申し訳ないが戦略的撤退である。
きっとセレンさんも“向いてなかったのさ、お前には...”と俺の事を慰めてくれているはず。まぁゲームの中でだけどな!
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―――――――――
ミカが学園艦を離れて数時間。そろそろ実家に着いたかなーと思っていた俺の携帯の着信が鳴った。
開けば、そこには登録されてない番号が。
普通なら無視するようなその番号だが、よく見ればどこか知っているような...───ん。なんか嫌な予感するな...。
出れば最後。騙して悪いが的なやつになる予感がする。
なら見なかったことにすればいいのでは?と思い携帯をしまおうとしたのだが、これ...出なかったら出なかったで誰かに呪われそうな気が...。
うーん...どうしようか。
しかし、そう思案しているうちに着信が鳴り終わる。周りを見れば何か呪いが飛んできているようでもない。
...ふぅ。よかった。俺の思い違いだったようだ。まぁこれじゃあ着信アリじゃなくて着信ナシになっちまうけどな!はっはっはっは。
「隊長、お電話です」
「ん?」
促されて見れば確かに自分の回線に赤ランプが点灯している。
珍しいな。この回線知ってるのなんて、防衛大臣ぐらいしかおらんはずやけど...。あれか?もっと上の方からの連絡か?
不審に思いつつも秘匿回線であることから、“まさかそんなことないやろ”と電話をとってしまった。
「こちら第0護衛隊群、群司令代理です」
「私の電話に出ないなんて、あなたも随分と偉くなったものね」
───あ。終わったわ。
これアレだ。やっぱり、騙して悪いが的なやつだったわ。
「す、すみません。電話に気付かなかったもので」
「嘘ね。あなたのところの懐かしい隊員さんが教えてくれたわよ。鳴ってる携帯をただ眺めてたって」
ハッと顔を挙げると、背けた顔で吹けもしない口笛を吹こうとしている奴が1人。
お前ーッ!!
というかなんでここの番号知ってんのよミカ母。国家機密よここ!
「私に国家機密なんて関係ないわよ」
「いや、関係あってください」
機密の意味わかってます?
「まぁいいわ。それよりも重要な話があるから」
「え?...なんでしょうか」
ミカが実家に帰ってるタイミングでという事はやはり...
「あなた、うちに来るのを拒否したらしいわね」
だよね!やっぱりミカから聞いてるよね!
「積もる話は家で聞きます。今すぐに来なさい」
「い、今からと言われても職務が」
「大丈夫よ。防衛大臣には話を通しているから」
なんで防衛大臣と繋がってんのよ。どんだけ顔広いのよ。
「ここからそちらの家までだと順当に行っても数時間はかかるんですがそれは」
「昔みたいに戦闘機で来れば良いでしょう」
「いやいや。昔はレシプロ機で行ってたので短い滑走路でよかったですけど、今はジェット機なんで違うんですよ」
「問題ないわ。昔と違って滑走路は補強して距離も伸ばしてあります。今のあなたが乗る戦闘機でも着陸できます」
めちゃくちゃ準備いいなおい!完全に退路塞がれていってるよこれ。
「それとも何かしら?私の顔が見たくないと?」
「うぐっ...」
そんなこと言われたら断れないでしょ。
「...分かりましたよ。今すぐ向かわせてもらいます」
「ふふっ。あなたなら、そう言ってくれると思っていたわ」
はぁ...。結局こうなるのか...。
「甲板にF-14を待機させといてくれ。爆装は無しでいい」
ガチャりという音と共に電話が切れていることを確認して、俺は急いで発艦の準備する。
「ん?スクランブル?違う違う。呼び出されたんだよ。あの家元に」
整備士や隊員たちからはご愁傷様と哀れな目で見られるが、そもそもミカ母がここの番号知ってる時点でお前達も道連れじゃい。
◇
それから約1時間。俺は無事滑走路に降り立った。
キャノピーを開けあたりを見渡せば、広大な大地の足元には真新しいアスファルトが敷き詰められている。
改修したと聞いていたが、本当に戦闘機の離着陸に耐えられるのか正直不安ではあった。だがしかし、降りた瞬間にわかった。
めっちゃ金かけて改修してるでこれ。普通に空港の滑走路レベルなんだが。
そう思うぐらいの出来だった。
そして、管制塔の方を見れば人影が駆け足で近づいてきているのがわかる。
「やあ」
「やあ、じゃないんだわ。お前の一言で飛んでくることになったんだが」
その正体は分かり切ってはいたがミカだった。
「いいじゃないか。こうでもしないと、きみも決心がつかないだろう?」
「まぁ...確かに」
どうせとは思っていたが、やはりミカ母に言ったのは確信犯だったようだ。
「不満かい?」
「んー。いや、覚悟決めた」
「ふふっ、そうかい。なら...良かった」
まぁいずれ通る道だ。ミカのおかげでその時期が早まっただけ。そう自分に言い聞かせよう。
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―――――――――
「お久しぶりです。家元」
古風な、されど新しい洋館...といえばいいのだろうか?その家の一室に俺はいる。
「ほんと、こうやって会うのは数年振りね」
ちなみにこの構図を作った当人はというと、これから始まる修羅場を感じ取ったのか家に着くなりどこかへ姿をくらました。そのせいで今は俺とミカ母の2人しかいない。
「家元もお変わりないようで安心しました」
「そうかしら?どこかの誰かさんがいなくなってから相当苦労しましたけど」
「その件に関しては反論のしようが...」
「ふふっ。まぁいいわ...それはあなたの選んだ道なのだから」
久しぶりに会ったミカ母は昔と変わらない姿を保っている。
いや、俺だけ歳とった感がすごい。1人浦島太郎状態なんだが。おたくの家系どうなってんのよ。
「そこに関しては企業秘密よ?」
「企業秘密て」
科学で解明できるようなものでもないと思うんですが。...いや、やめておこう。これ以上踏み込むのは危険な気がする...。
何故かする寒気とドス黒いオーラを纏った家元から眼を背けながらそう思う。
「...まぁ、いいでしょう。話を戻すとあなたの居場所については、私も薄々気付いてたのよ。あなたがどこにいて、そして何をしているのかも」
「...」
「それでも私自身が直接あなたを探すことは避けていたのよ?あの子に見つけて欲しかったから。ミカも...あなたにようやく会えて嬉しそうにしてたわ」
やっぱり家元には気付かれていたようだ。
まぁそりゃそうだわな。うちの隊の結成日とか。ミカでも知り得ない情報源はこの人しかいないとは思ってたし。ミカが辿り着くまで、それとなくヒントを出していたんだろう。
「だからこそ、ね?ミカも知った今、あなたにはまた昔のように自由に家に来て欲しい。そう思っていたのですが」
...思ってたのですが?
「うちに来る事を拒否したというのはどういうことかしら」
ですよね!やっぱりそこですよね!さっきまでのいい話で終わりでよかったやん!締めでいいやん!
「いや...まだ心の準備が出来てなかったというか何というか」
しかし、そう言い淀む俺に更に追い討ちがかかる。
「だいたいあなたがいなくなって私達がどれだけ心配したことか!ミカは食事も摂らず部屋に引きこもってたし、私も最初は事実確認すら出来なくて───」
いやそれは本当に申し訳なかったですけど、国家機密だからね?国家機みt───「まぁ、たまたま私の知り合いに国家機密を扱っている知り合いがいたおかげでなんとかなりましたが」いや国家機密!!
意味わかってます!?それに、普通は国家機密を扱ってる知り合いなんていないと思いますし、居たとしても教えてもらえないと思うんですが!
「私に不可能というものは無いのよ」
「そうでしたね...」
「けど...ね?私は、今も昔もあなたの事は家族のように見ているのよ?だから...これからはまたいつでも帰ってらっしゃい。ここは...あなたの帰る家なのだから」
「っ!ありがとうございます...!」
その言葉はずるいですよ家元。
先ほどの空気はどこへやら。親としての表情を見せた家元に、思わず言葉が詰まる。
───ほんと...この人には勝てないわ...。
◇
「そういえば妹君は今日どうしたんですか?」
「ちょうど戦車道の合宿があって当分帰ってこないの。急な話だったから、あなたが来ることも伝えられなくてね」
「あぁ、なるほど」
いつもならいの1番に飛びついてくるのに、今日はその気配すらないからおかしいとは思っていたが、なるほどそういう事ね。
「あの子も昔からあなたに懐いてたからねぇ。ほんと誰に似たのかしら」
いや、絶対ミカだけど!
当時だいぶ幼かった妹君は、そりゃもう元気いっぱいで挨拶がわりにいつも鳩尾に頭突きをかましてきた。
なにをするにも、お兄様!お兄様!って後ろをついてきて可愛いのなんの。
だだそれは懐いてくれてからの話。俺に対する最初の印象は悪かったと思う。
俺とミカが一緒にいる時間が長かったから...だからお姉様と遊ぶ時間を奪った悪いおじさんって。
でもそれをよく思わなかったミカが間に入ってくれたおかげで、家にいる時は3人で遊ぶ事も多くなった。
───それからだろうな。妹君からの印象が変わったのは。
たぶんミカがいなかったらずっと絶妙な距離感保たれたまま敬語で喋られてるよ。
あの子あんなに小さい頃から戦車道に対してもストイックだったし。正直今ではどんな風に育ってるのか想像が出来ない。
まぁミカのように綺麗で可愛くなってるのは事実だろうが。
「それじゃあ、そろそろご飯にするからミカを連れてきてくれるかしら。どこにいるのか...あなたにはわかるんでしょう?」
「ははっ、そうですね」
そう言って俺は、数年振りにミカの待つあの場所に向かうことにした。
後日談
「ただいまお母様」
「あら、おかえり」
「お母様...」
「どうしたの?」
「お兄様...来てたでしょ」
「え!?な、何のことかしら?」
「タバコの匂いがする。このタバコは...お兄様の銘柄の匂い」
「あ、あのね来てたのは事実なんだけど。あなたに連絡する時間がなくて...」
「お母様...きらい」
「ガーン」
主人公の愛機はF-14ではなく実はXFA-33 Fenrir(エスコンX)