玄関の外までのお見送り。継続の学園艦であるここからそれぞれ帰るために、お義母さん達は車でヘリポートまで行くことになる...のだとばかり思っていたのだが、状況を見るにどうも違いそう。
「はい、千代ちゃんとしほちゃん。身体にこれ着けて」
「「へ?お、叔母様。これ何ですか...?」」
「大丈夫よぉ?そのうち分かるから」
意味深な笑みで取り出したハーネスを家元の2人に渡すと、2人は困惑しながらもどこか嫌な予感がしたのか、外れないようにとしっかり装着した。その背中からは頑丈そうなロープが伸びており、その先を辿ると太く一本に纏まり、さらにその先にはいつからあったのか見慣れないコンテナが一つ。
不思議に思う時間も無く、遠くで聞こえる重低音をバックミュージックに、そのコンテナの中から気球が空へと浮かび上がる。
3つのハーネスと繋がった頑丈なロープ。浮かび上がる気球。腕時計を確認するお義母さん。遠くから聞こえてくる航空機の音。
その織りなす意味を理解したのだろう、家元の2人の表情がみるみる青くなっていく。
しかし、嫌な予感がしてももう遅い。足は既に、今にも浮かぼうとしているのだから。
「「ま、まさか...」」
「うふふ。そのまさかよ?」
ゴォォオオ
「「ひぃぃいやぁぁああ!!」」
一瞬影が私たちを包んだかと思えば、既に地上に3人の姿はなく、見上げると飛び去った航空機の後方にポツンと黒い点が見えるだけ。
「行ったな...」
「そうね...」
「そのようだね...」
見事なフルトン回収に呆気に取られていた私たちも、エンジン音に負けない2人の悲鳴が聞こえなくなったことで、ようやく現実へと戻ってきた。
「お義母さんって、何者...?」
「いや、今は普通の主婦...のはずなんだけどなぁ...」
戦車道に身を置いていたとはいえ、それも何十年前の話。家元の2人よりもよっぽどいい歳のはずなのに、あのフィジカルはどこからきているのか。
そもそもフルトン回収って...。今時ゲームでしか見ないわよ。
「...取り敢えず家入るか」
「「...うん」」
まぁここは、流石お義母さん。という言葉で締めくくるべきだろう。
サウナハット被り、その上から器用に私の略帽を乗せ(られ)ている彼に同調して、私も考えることをやめた。
こういう時は深く考えないのが1番なのである。
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寒風吹く外気から逃げて暖かい室内へと戻った私たち。夕飯は食べ終わったが、夜はまだ始まったばかり。今日は久しぶりに3人で過ごす事になりそう。
「つっても、別にやる事ないんだけどな」
「まぁそうね」
「なら先にお風呂にでも入ろうか?」
「んー。それでもいいけど、お前何か企んでね?」
「ふふっ。そんな事ないさ。ね?エリカ」
「ま、まぁそうネ?」
「おい。絶対なんかあんだろ」
怪しげな紙袋をそそくさと後ろ手に回し、片目を瞑り微笑むミカさんにそう相槌を打つが、隠しきれていないその紙袋と思わず上擦った私の声に彼も疑いの目を向けざるを得ない。
「大丈夫。お風呂では何もしないよ?」
「お風呂ではって...。じゃあ風呂から出ないって言ったら?」
「ふふっ。嬉しいね。それだけ私たちとの身体の付き合いを望んでるってことかな?もちろん私はウェルカムだけど?」
「やましい様に言うのやめろ。俺は何もする気ないぞー」
「むぅ」
聞き捨てならない台詞も彼にはひらひらと軽くあしらわれて、そう不貞腐れるように口を膨らますミカさんだが、彼の意識を逸らす事には成功したようで、どうやらこれ以上の詮索はしないみたい。
そんな気になる紙袋の中身。それは彼へのプレゼント...とはまた違い、どちらかというと得をするのは私たちの方ではあるのだが、それはまぁお風呂から出たあとのお楽しみってことで。