という事で、昨日に引き続き今日も3人でのお風呂。
いそいそと最初に服を脱ぎ捨て浴室へと入っていったのはミカさんで、そのすぐ後から彼が続く。
私だってもう耐性もついた。だから昨日の今日で緊張なんて。緊張、なんて...
「...おーいエリカ?」
「してないっての!」
「うぉ!?」
声を荒げ返事をしながら、バンッと強く開け放つように浴室の扉を押せば、中ではすでにくつろぎモードになっている2人の姿。
浴槽の中に彼が足を伸ばして先に入り、その上からミカさんが嬉しそうに座っている。昨日の私と同じ状態である。
「ふふっ。特等席、今日は譲ってもらうよ?」
「ぐぬぬ」
「ぐぬぬ、じゃねぇだろ...。及び腰なお前はどこいった」
「ふん!昨日までの私じゃないってことよ」
「いやいやいや。ついさっき“も”だったろ...って、おい。まだ入るなよ?お湯無くなるだろ?昨日の二の舞だろ?」
見透かしていたその呆れ口調も、私が荒っぽく身体を洗い始めたのを見て慌て出したがもう遅い。
制止の声も無視して、湯船の縁に手をかけて一気にざぶんと2人の対面側に腰を落とす。すると分かっていたことだが3人分の体積には耐えきれず、ざばぁーっとお湯が溢れ出した。
それを見て彼は言わんこっちゃないと額に手を当てるが、ミカさんは特に気にするようなこともなく。
それはきっと、溢れるお湯から浮き上がる身体を、彼が優しく腰に手を回して抑えてくれているからであろう。
昨日やってもらったとはいえ、その時のことを思い出してしまい羨ましさが増してしまう。
「ちなみに特等席ではこういうことも許可されているよ?」
「いや、別に許可した覚えはないけどな?」
そして悲しいかな彼の反論は届くわけもなく、ミカさんはするすると器用に身体の向きを変えて、抱き合うように彼の背中辺りに手を回した。
「おい」
「むふぅー」
彼の胸元に頬を擦り、見える横顔はへにゃりと緩みまくっている。
その光景に少し...というか大分嫉妬して彼の膝にげしげしと蹴りを入れてみるが、湯船の中で威力は下がり、彼は痛がることも無くただじゃれ合うような感じになってしまった。
「ミカ。エリカが代わって欲しいってさ」
「んなっ!そ、そうは言ってないでしょ!?」
「今日は譲りたくないかな?最近こういうのはご無沙汰だったからね?」
「最近て、この1週間だけだろ...」
ピタリと張り付くミカさんは動く気配もなく、少し膨らませた頬が彼の胸元から浮く程度。
「なら、身体洗ってからはエリカと交代でいいか?」
「エリカがそこまで言うなら仕方ないかな?」
「だから言ってませんけど!?」
「じゃあ代わらなくても?」
「いいわけじゃないです!」
この1週間でお決まりになりつつあるそんなやりとりも、本当にしないとミカさんは代わってくれないから仕方ない。
仕方ないのだ。
だからあんたもわかりやすいなーとか、最近は素直になったーとか。そういう視線を向けるのはやめなさい。足蹴りは不発だったけど、つねることは出来るんだから。
「いやまぁ最近というか別に、俺からしたら昔からお前は分かりやすいし素直だと思うし、何考えてるのかすぐ読めるけど───...っておい、マジでつねるな」
「ふん」
やはり足蹴りよりも、どうやらつねりの方は効果的だったようだ。湯船の中で彼がビクッとしたのがいい証拠だ。
ただ、そのせいでミカさんを抱える腕まで力み、強く引き寄せられたミカさんが一瞬驚いた表情をしたもののその後、さっきよりももっと溶けたような表情に変えてしまったのは誤算だったが。
「ほら。早く出て、さっさと身体洗うわよ」
「まだ浸かったばっかりだろ...。いや、これは早く代わりたいって方か?」
「ばっ...!そういうのは分かっても心の中に留めとくもんでしょ!」
「ははっ。やっぱりか」
そうして的確に私の本心を突いてくる当人は悪びれる様子もなく嬉しそうに笑い、抗議しようにも結局その笑顔に毒気を抜かれてしまう。
気付かれていると分かってても、いざ言葉に出されると恥ずかしい。けどまぁ、屈託のないその笑顔が今私“だけ”に向いていると考えると...えへへ。
「───って思ってるんだね?」
「だ、か、ら!」
残念ながら、この2人を前にして私のプライバシーはあるはずもないのであった。