「...わぁ!」
ここは、知る人ぞ知る夜景の穴場スポット。
眠気を飛ばしながら見上げれば、雲一つない満天の星空。街中では見ることの出来ない小さな星たちが私達を照らしている。
なんでこんな所にいるのかって?
それはね?今日は流れ星がたくさん見えるって情報を貰ったんだ。だから彼に運転して連れてきてもらった。
唯一の問題点は時間が遅かったってとこかな?そのせいで何度か寝落ちしかけた。
...まぁ、夜しか見れないから仕方ないんだけどね。
「空気も澄んでるし、条件もバッチリ。流石だねエリカのお母さんは」
「うん!」
ちなみに情報元はお母さんから。この場所も一緒に教えてもらった。昔、お父さんと一緒によく来てた所なんだって。
要するに結ばれた両親のデートスポット。
そしてその場所に、今回は私と彼の2人───...ふふっ。なんだか、ロマンチックだなぁ。
隣で一瞬に空を見上げている彼を見ると先日の出来事もあってか、嬉しさが込み上げてくる。
まぁ、この想いがお母さんにも気付かれてるって考えると、その...少し...恥ずかしいけどね。
「嬉しそうだね?エリカ」
「えへへ。そう見える?」
「あぁ。そう見えるよ」
流れ星はまだ見えないけど、雲一つない星空に一際輝く二つの星。それはきっとこの場所にも。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「なんだい?」
「この空を見て思うの。やっぱり私も乗ってみたいな...お兄ちゃんの戦闘機に」
彼の戦闘機に乗ってあの星たちにも見てほしい。一際輝く地上の2人を。...まぁ、それよりも純粋に乗ってみたいって気持ちが強いんだけどね。
「んー。流石に戦車道をやってないエリカを今乗せることはできないかな?危ないからね。けど、エリカが大きくなってもその気持ちが変わってなければいいよ?」
「ほんと!?絶対!絶対だよ?」
「あぁ。約束」
私が出した小指に彼の小指が絡まる。
微笑みを浮かべる彼の表情を見て、私からまた笑みが溢れた。
───そしてこの約束が、将来私が戦車道を始めるきっかけとなったという事はまた後のお話。
「あっ!」
近付いていた彼の顔に一筋の光が当たる。
見上げれば黒いキャンバスを彩るかのように、星が流れていた。
「ちゃんと願い事は言えた?」
「当たり前じゃん!」
「ふふっ。それは良かった」
「お兄ちゃんは?」
「んー。エリカたちが立派に育ってほしい...ってとこかな?」
「ふふっ。なにそれ」
頭の上にぽんぽんと優しく置かれた彼の手に、自然と笑みが溢れてしまう。
冗談っぽく言ってるけど、きっと本気なんだろうなぁ。
「じゃあ、エリカは?」
「私はね?えーっと。んー...内緒!」
「ははっ。内緒か」
言葉に出すのは、ちょっと...恥ずかしいんだ。
「じゃあエリカが大きくなった時にまた教えてくれるかい?」
「うん!」
私が成長してもずっと彼の隣にいれますように
今は恥ずかしくて言葉にできないけど、そう願いを込めた。
───まぁそれを教える時にはきっと、私の願いは既に叶ってるんだけどね。
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―――――――――
帰り道
「んぅ。...お兄ちゃん、...大好き」
「ったく。どんな夢見てんだよ」
「...お兄ちゃん、...他の女の匂いがする」
「いやマジで、どんな夢見てんだよ」
という一幕があった事は彼しか知らない。
◇
「勝手に運転とかしちゃダメだよ。ちゃんと免許取ってからね」
「わかってるって」
私の手の中には、彼の車のスペアキーが。
実はこれ、前々からねだっていたものなのだ。
遊び行く時とか基本的には一緒に行動してるけど、荷物を入れる時とか車に忘れ物をとり行くときとか、鍵が一つしかないと何かと不便じゃん?
だから彼にスペアキーが欲しいとお願いした。
いつも私が乗ってるんだし、持っても問題ないでしょ?って。
彼も条件付きだけど、それを受け入れてくれた。
まぁ流石にこの歳で運転する気なんてないよ。ただ彼とお揃いのものを持ちたいという子供心から出たお願いだから。
...でも将来的には運転する気でいるけどね。
「じゃあお母さんと話してくるから。ちょっとだけ待っててね」
「うん!」
少し手を振り、足早に家へと入る彼。
その背中を見送って私はこっそりと助手席から抜け出した。
...んー。ここがいいかな?
車の下から覗かないと見えない所。そこに小さく自分の名前をつける。
...よし。これで名実ともに私たちの車だ。
ふふんっ!...と1人ドヤ顔をかますが、この悪戯はあくまでも彼にバレないように。
まぁ、将来この車をもらった時に教えてあげようかな。
そう近い未来を思い浮かべて...。
───でもその日常は突如として崩れ去っていくのだった。
◇
彼らの出場する試合の日。その日も、私は応援に来ていた。
でも...いつになっても彼らの姿が見えない...。
いつもならもう一緒にいる時間なのに...どうしたんだろう?
『ご来場の皆様に申し上げます。本日予定されていた試合は諸事情のため中止とさせていただきます。今後の予定に関しましては...』
「え?」
その放送を聞いた会場は、突如として喧騒に包まれた。
...何かあったのかな?
彼らが現れないだけじゃなく、試合まで中止になるなんて。今までそんなこと無かったのに...。
「あ、あの!」
「あ、あぁ...きみか。大丈夫だよ?今日は事情があって来れないだけらしいから。ちょっと...お母さんを呼んでくれるかな?」
「う、うん...」
顔見知りのスタッフさんも落ち着きがないし、すごい焦ってる。きっとお客さんへの説明とかで忙しいんだろう。だから───
───いや、おかしい。
それなら私も一緒に聞けばいいのに、なんでお母さんだけ?
私に聞かせたくない何かがある...そんな気がする。
そう感じた私は、見えない位置からこっそりとその会話に聞き耳を立てた。
「...実は、彼らがここに向かう途中交通事故にあったらしく。現状を私も把握しきれてないので詳しくはわかりませんが、どうやら助かる見込みが───...」
───え?
なに...それ...。
言葉は理解できても頭が理解できない。
だってそれを理解すると彼は...
脳裏に浮かぶ彼の姿が少しずつ遠ざかっていく。
喧騒の中で1人立ちすくむ私の手には、彼に貰ったスペアキーが握られていた。
The Demon of Razgriz.
A warrior who soared through the unsung war,
inspiring both fear and admiration.
His presence filled the skies for but
a few short years before he disappered.
Apart from that,
nothing is known about him.