ようこそ第0護衛隊群へ   作:/Null

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ちょっとだけまほ視点


ククク、狩りの時間だ...いくぞ!

私たちは今窮地に立たされている。

 

みほは緊張からかいつもの調子を出せていない感は否めなかったが、作戦として高所を取るのは戦いの基本。だからこそガラ空きだった高丘を私たちは取ろうとした。

 

ガタガタとキャタピラの音を鳴り響かせて、何輌もの味方車輌が意気揚々と頂上に進撃。

 

そして、なんの抵抗もないままにその場を制圧。これで試合のアドバンテージを得たかに思えた。

 

 

───でもそれは大学選抜の罠だった。

 

 

 

頂上に到達するや否や、息を殺し潜んでいた敵車輌からの猛烈な砲撃。

 

私たちは足元を掬われ、身動きが取れなくなったと同時に頭上からカール自走臼砲の榴弾が降り注いだ。

 

皮肉にもその砲撃は綺麗な放物線を描き、見えない距離からの攻撃になすすべなく白旗を上げる味方車輌。

 

これでは反撃もできず、体勢を立て直すことも出来ない。

 

さらには埃被った対空レーダーに、敵機がポツポツと映り出してきている。

 

こちらが混乱状態に陥っているところを一気に叩く。戦いにおける常套手段...我々の思惑は容易に見破られていたのだ。

 

その証拠にすぐ彼方からは、まだ小さくはあるがレシプロ機の音が聞こえてきている。

 

 

事前の情報によると味方機の数は5機。対して敵は20機。継続の隊長は何故か自信満々のようだが、どうみても勝ち目なんてない様に思える。

 

空の戦いは地上の戦車と比べて立体的。味方の質がいかに良くても、敵の量が多ければ抜けてくる機体なんていくらでも出てくる。

 

だからこそ、空からの攻撃にさらされる前に決着を付けないといけない。

 

少なくとも味方の戦闘機には、それまでの間でいい...少しでも時間稼ぎをして欲しかった。

 

しかし、未だレーダーには味方機の機影は映らない。

 

 

 

くっ...!どうすれば...。

 

 

 

「た、隊長ッ!」

 

悲鳴にも似た通信手の声に空を見上げれば、焦る私の思いとは裏腹に敵の機影が味方車輌のすぐ上空まできていた。

 

分かっていたとはいえ、やはり航空機は速いッ!

 

「各車!ジグザグに逃げろ!的を絞らせるな!」

 

無線機越しに叫んだその言葉は、咄嗟に閃いた苦肉の策。逆に言えばそう叫ぶしかなかった。

 

 

今の時代、戦闘機有りの戦車道の戦い方など知っているのはおそらく私とみほだけだろう。

 

その証拠に無線を聞いた皆が慌てたように回避行動を開始している。

 

そう...。私たち戦車乗りは、空からの攻撃に対して圧倒的に無力なんだ。

 

空に勝てるのは同じ空のみ。だからこそ、何もできない悔しさに、私は歯を食いしばるしかなかった。

 

「...っ!?これは...。後方より新手の機影、数5!すぐ真後ろです!」

 

「何だと!?何故もっと早く言わなかったんだ!」

 

「それが...今まで何も映っていなかったところから突然、幽霊の様にパッと現れたんです」

 

...私達のすぐ真後ろ。

 

その言葉呑み込んだ私は、はっと後ろを振り返った。

 

視線の先にいたのは漆黒の機体。全てを刈り取るかのような重圧な雰囲気を醸すその機体は、一直線にこちらへと向かってきている。

 

瞬間、ダダダダダッと重い音が鳴り響く。

 

戦闘機の載せる機銃弾は小さくとも運動エネルギーの観点から、私達の戦車を容易に破壊してしまう。

 

だからこそ、私は終わったと思った。流石のティガーIもこれには耐えられないと。

 

しかし私の考えとは裏腹に、その弾丸は明後日の方向へ。

 

疑問に思いつつもその先を追うと、急降下爆撃を行おうとしていた敵機が黒煙を上げている。

 

...よかった。味方機だったのか。

 

レーダーに映らなかったのも超低空で奇襲を仕掛けるためのもの。だからこの5機は何もないところから突然現れたのか。

 

なるほど、継続の隊長が自信満々なのも頷ける。

 

あの瞬間、もしあの機体が敵機であれば私たちは既にやられていただろう。

 

そうならなかった事実にホッと胸を撫で下ろしつつも、先程の味方機に感謝するように私は何気なく空を見上げた。

 

 

 

───...!!

 

 

 

でも、そこで...私は見てしまった。

 

先陣をきる機体。おそらく隊長機だろう...その機体に付いているエンブレムを。

 

あれは───...。

 

「お姉ちゃん!」

 

みほからの言葉に私も頷く。

 

あの機体に付いていたエンブレム。それは決して忘れることのない...紛れもなく彼の...。

 

その言葉を呑み込んだとき、私の中にあった不安は不思議と無くなっていた。

 

...彼が居るのだ。この空に。

 

幼い頃...夢にまで見ていた、彼と一緒に戦える日。

 

あの日見た機体は今なお色褪せる事なく空を駆けている。

 

何故ここにいるのかは分からない。けど...そんな彼が空にいるというだけで私は負ける気がしなくなった。

 

みほの方へ再び視線を向けると、私と同じ思いなのか覚悟を決めたように空を見上げている。

 

 

 

空で見てて、兄さん。

 

この戦い、絶対に勝ってみせる!

 

 

 

 

「ふぅ。なんとか上手くいったな」

 

一つ息を吐いた俺の目の前には、黒煙を上げる5つの機影が。

 

今回の作戦、1番重要だったのは奇襲攻撃の成否だ。

 

敵の数は俺たちの4倍。負けはしないが味方車輌に被害が出るまでに片付けたい。だからこそ、最初の奇襲攻撃で確実に一機一殺する。

 

そうすれば開幕で5v15になるからな。

 

それに奇襲攻撃を仕掛けた理由はそれだけではない。一時的ではあるが、相手チームに混乱を引き起こすためだ。

 

統率のとれていない戦闘機など赤子の手をひねるよりも簡単。

 

だからこそ、その状況が俺たちには欲しかった。

 

一輌だって味方には被害を出させない。そう決めていたから。

 

 

 

まぁもし気付かれたら気付かれたで、本気のドッグファイトで蹴散らすつもりではあったが。

 

しかし、その考えはいい意味で杞憂に終わった。

 

 

 

 

───『Fang!』

 

俺の合図と同時に漆黒の5機が低空から一斉に敵機へ向けて喰らいつく。

 

狙いは爆撃機。

 

戦闘機なんて後からでも何とかなる。

 

問題は爆撃機だ。

 

戦闘機同士で戦っている間に、俺たちの包囲網を抜けてられるとどうしようもない。だからこそ、俺たちはまず爆撃機に的を絞った。

 

そしてその企みは成功した。

 

開始早々、味方車輌へと急降下していた爆撃機5機を撃墜した。

 

呆気なく堕ちたのは相手が慢心していたのか、それとも単純に練度が低かったのか。

 

それの理由は分からない。だが、いずれにせよこの一手を防げなかった時点でもう終わりだ。

 

それに...この漆黒の機体を見た瞬間、相手機から焦りが見えた。

 

おそらく俺たちの恐ろしさを知っているのだろう。

 

過去俺たちによって落とされた者たちか、それとも他の何かか。

 

...まぁどちらでもいいさ。

 

残りは戦闘機と少数の爆撃機。

 

軽率にも俺たちの名前を使ったことを後悔しな。

 

これから始まるのは戦いなんて生優しいもんじゃない。一方的な蹂躙だ。

 

 

 

 

「さぁ諸君...───地獄を作るぞ」

 

 

評決は今ここに下された。




Verdict War
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