ようこそ第0護衛隊群へ   作:/Null

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ここら辺はすらーっと書く予定


まほの過去
彼との出会い


地面を叩くような音。人工的に風をきる音。そして重厚な音が鳴り響いているここは、戦車道の試合が行われている会場である。

 

西住流の出ていないこの試合に、本当は来る予定はなかったが、敵情視察だということでお母様に連れられてきた。

 

「まほ。西住流たる者、彼を知り己を知れば百戦殆からず。自らを鍛えることは当然ですが、相手のことも知っていなければ足元を掬われかねません」

 

「はい。お母様」

 

この歳から敵情視察だの後学の為だので、こうして戦車道を見にくる私は珍しいと思う。

 

普通は誰かを応援したり、純粋に観戦しにくるのが年相応というものだろう。

 

遠くてよく見えないが、ちょうどあそこで応援してる銀髪の子のように。

 

その光景は誰か知り合いでもいるのか、応援に熱が入っているのがここからでもわかる。

 

「まほ。あれを見なさい」

 

お母様にそう促され視線を変えた先には、先程の子が応援している戦闘機。漆黒のカラーリングで、異質な雰囲気を醸し出している5機の戦闘機だ。

 

「あれは、あの島田流と縁が深い部隊よ」

 

「島田流...」

 

西住流と相対を成す流派、島田流。

 

西の西住流、東の島田流とも言われるその流派は、確か...臨機応変に対応した変幻自在の戦術を得意としている...だったはず。

 

でもお母様の言い方だと、あの人たちは島田流じゃないような感じだった。

 

「お母様。先程縁が深いと言いましたが、彼らは島田流ではないのですか?」

 

「ええ。正確には違います。ただ、彼らと共に戦う戦車を見てみなさい」

 

 

...確かに戦車に乗っている人たちは島田流のようだ。

 

「彼らと島田流は二つで一つ。いわゆる相補関係にあるのよ。空は彼ら、地上は島田流。そうやって時代を築いてきた。彼らの仲が良いから同じ流派に見えるだけで、実際は違うのよ」

 

「それでも西住流は勝てるんですよね?」

 

「当たり前です。撃てば必中 守りは固く 進む姿は乱れ無し 鉄の掟 鋼の心 それが西住流」

 

不安を出す私に、お母様は強くそう言い切った。西住流はやはり強いと。けど、何故かその表情は固い。

 

「...ですが、今の現状それができるのは戦車のみ。認めたくはありませんが」

 

「そんなに強いんですか?」

 

「最初に言ったはずです。彼を知り己を知れば百戦殆からず。相手を知っているからこそわかる。空は彼らのナワバリよ」

 

固い表情を崩さないお母様は、諦め...というよりも覆せない事実として受け入れるしかないという気持ちなのだろう。

 

認めたくないが、空には大きな壁がある。悔しいがそれを理解していながらも、私たちは空を見上げることしか出来ない...と。

 

 

 

...ただまぁ味方にも辛辣なお母様が、敵である彼らをここまで評価していることには驚きを隠せない。けど、その裏を返せば彼らはそれだけ優秀な部隊ということ。

 

だから私は...少し興味が湧いた。お母様をここまでさせるあの漆黒の機体に。

 

 

 

 

さぁ、もうすぐ試合が始まる。

 

彼らの戦闘が観れるという楽しみの反面、怖さもある。

 

彼らはあくまでも島田流...。───そう。今後試合で合間見える時、彼らは敵なのだから。

 

 

 

 

結果だけ言うと、試合は彼らの圧勝で終わった。

 

量より質という中々考えれないような、まるでゲームのような世界。

 

照準アシストなんてついていない機体で、一機ずつ確実に葬っていく。

 

そして気が付けば、空はあっという間に彼らのものとなっていた。

 

その光景は一言で表せば無双ゲーム。自分達が主人公で雑魚敵を蹴散らすだけ...そんな感じの。

 

そんな彼らの中でも一際目立っていたのは、桜の花びらを背景に女性が写っているエンブレムをつけてた機体。

 

動きから察するにおそらく隊長機なのだろう。

 

先陣をきって敵を撃墜したかと思えば、高度を上げて指示を出す。そしてまた自分も敵の編隊に斬り込む。

 

地上の戦車であれば、行うのは容易いのかもしれない。

 

そこまでのスピードも出ず、地上は平面だから。

 

 

問題はそれを戦闘機という高速の世界でやっているということだ。

 

彼らの世界では、1秒で数百メートルも移動してしまう。

 

だから咄嗟の作戦変更や、様子見をしながら戦い方を変えるのは至難の業だ。

 

でもその機体はそれを軽くやってのけている。

 

 

 

───すごい綺麗...。

 

 

 

何かの為に洗練されたフォルムは美しい。

 

戦車だったり...戦闘機であったり...軍艦であったり。

 

それは人であってもそうだと思う。

 

彼らの動きはナイフの様に鋭利で洗練されている。にも関わらず人を魅了する様な立体的な軌道を描く。

 

そんな彼らに、私の目は釘付けだった。

 

彼らを見てみたい...話を聞いてみたい。

 

そして気が付けば、私の足は戦闘機が置いてある格納庫へと動いていた。

 

 

 

 

「あのッ、い、今...いいですか?」

 

「...ん?どうしたんだい?」

 

格納庫に着いてすぐ。慣れない場所に緊張しながらも私は、近くにいた男性に声を掛けた。

 

オイルで汚れた作業服を着ているこの人は、服装から見てもおそらく整備士の人だと思う。

 

だからちょっと、声を掛けやすかった。だってこれが搭乗員の人とかだと、なんかこう...ね?

 

「突然ごめんなさい。この機体が、さっきの試合で飛んでたのを見て」

 

そう私が指を差したのは、特徴的なエンブレムがついた機体。先程の機体だ。

 

「何かあった?」

 

「いえ、実は───...

 

 

 

 

そこで私は、先程見た試合で感じたことを正直に打ち明けた。

 

彼らの飛んでいる姿はまさに変幻自在で神出鬼没。洗練された技術がこの機体に詰まっている。

 

空という立体的な戦場の中、戦車とは違う世界であっても分かる強さ。戦闘機乗りでない私にもそれは十分過ぎるほどに伝わってきた。

 

 

そして私が1番言いたかった事。それは...何よりも綺麗だったという事。

 

 

 

そんな人に一度会ってみたい。話をしてみたい...と。

 

私の心を焚きつけた、その人に。

 

 

途中から恥ずかしくなって、尻すぼみになっていく私の声は、最後まで聞こえていなかったかもしれない。

 

けど、私の話が終わると同時に目の前の男性からは何故か笑い声が上がった。

 

 

「最近じゃ、やれ悪魔だのやれ亡霊だの言われていたけど、綺麗だと言われたのは初めてだよ。これに乗っている人も嬉しいだろうね」

 

「そんな...私みたいな子供に褒められても」

 

「いや、だからだよ。君みたいな子供からの褒め言葉が、1番嬉しいものさ」

 

 

膝を折って私の視線に合わせてくれるその人は、私の言葉を自分のことのように喜んでくれている。

 

それはチームの一員としてなのかもしれないが、その光景が私にとってたまらなく嬉しかった。

 

私の言葉が少なから伝わった。そして、こんな見ず知らずの子供の言葉に喜んでくれることが。

 

 

 

「───隊長。そろそろ時間です」

 

「ん、あぁ。わかった。今行く」

 

「...え?」

 

「ははっ。騙して悪かったね。私がこの機体のパイロットさ」

 

ポカンとする私に対して、目の前の人は私の頭をぽんぽんと撫でながら立ち上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「───ありがとう。君の言葉は確かに届いたよ」

 

 

 

 

それが彼との初めての出会い。

 

その時の彼は、子供のような悪戯な笑みを浮かべていたのを今でも覚えている。




なお予定は未定
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