ようこそ第0護衛隊群へ   作:/Null

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ようこそ第0護衛隊群へ

兄さんたちは会場のホテルに泊まるということだったので、私たちも学園艦に帰らずに泊まる事にした。

 

明日は休みだったので私的にもちょうどよかった。

 

そしてその深夜

 

廊下でばったりと会ったエリカと共に彼の部屋を叩いたのだが

 

「んぅ。どうしたんだい?こんな夜中に」

 

出てきたのは眠そうにしている継続の隊長だった。

 

「...」

 

「すまない、部屋を間違えたようだ」

 

「そうかい、ならいいさ。誰にでも間違いはあるからね」

 

「ああそれと、今日は君のところのお母さんが夜見廻りをしてるらしいから気をつけることだね」

 

「忠告感謝する」

 

私は扉を閉めた。

 

「...エリカ。私たちは相当疲れているようだな」

 

「そ、そうですね。私にも幻覚が...部屋に戻りましょうか」

 

「そうしよう」

 

やはり今日は激戦だったからな。幻覚が見えるのも仕方ない。

 

早く戻って部屋で寝よう。

 

 

その後自室に戻ったもののやはり何かおかしいと思い返し、再度彼の部屋に向かったのだが

 

途中見廻り中のお母様達に見つかって自室へ強制送還された。

 

解せぬ。

 

 

 

 

朝───

 

 

「たっ、隊長ー!!!」

 

「どうしたんだエリカ」

 

目の下に隈を作ったエリカが部屋に入ってきた。

 

エリカも昨日のが気になって寝れなかったようだな。

 

「隊長!メール!メール見てください!」

 

そう言われてから携帯を確認するとそこには一通の新着メール。

 

『仕事あるから先に帰るけど、9時からテレビ付けてくれ』

 

彼からだった。

 

時計を見ると8時50分

 

危なかった。休みだからと油断してたな。

 

「ありがとうエリカ」

 

「い、いえ。それよりもホールの大画面でテレビを映すと家元が言ってました。急ぎましょう」

 

「ああ」

 

メールの意図はよく分からないが今は取り敢えず会場へ向かおう。

 

 

 

 

ホールには既に大勢の人。といっても全員昨日の祝勝会に参加していたメンツではあるが

 

よく見れば昨日の渦中にいた継続の隊長も座っている。

 

「あ!お姉ちゃん、エリ...逸見さんこっち!」

 

みほの手招きで私たちも席に着いた。

 

「どうしたの?2人とも隈なんかつくって」

 

「昨日2人で兄さんの部屋に行こうとしたのだか色々あってな」

 

「2人?」

 

「ああ、まだ言ってなかったな。エリカも兄さんの知り合いだ」

 

「えぇ!?逸見さんもお兄ちゃんと知り合いなの?」

 

「そうよ?悪い?」

 

「そそそんなこと言ってないよ。ただ意外だなぁと思って」

 

「なにがよ」

 

「だって、逸見さんはそういうの興味ないと思ってたから」

 

「そういうのって?」

 

「え?恋愛、的な?」

 

そう言われてエリカが一瞬フリーズした。

 

「はあ!?なななな何でそうなるのよ!あいつは関係ないでしょ!」

 

「ふふっ。わかるよ。だってお姉ちゃんとおんなじ顔してるもん」

 

私と同じというのは分からないが、少なくとも昨日からのエリカは浮かれすぎだ。みほでなくてもわかる顔をしている。

 

「あいつとは昔色々あったのよ!色々!」

 

「私としてはその色々を問いただしたい所ではあるな」

 

「た、隊長。それはその...」

 

そうエリカが言い淀んでいる間にモニターの画面が切り替わり、全員の意識がそちらに向く。

 

エリカはホッと胸を下ろしているが安心しろ。終わったらちゃんと問いただしてやるから。

 

 

 

 

映された場所はテレビでよく見る記者会見場。時折画面の中でフラッシュがたかれているのがわかる。

 

そのフラッシュの先にいるのは防衛大臣。

 

 

そして彼。

 

 

 

 

『会場にお集まりの皆様、私は国務大臣 防衛庁長官の嘉屋です』

 

『ここにいる皆様には既にご存じの方もいらっしゃると思いますが、昨日北海道にてある戦車道の試合が行われました』

 

『その内容は大洗の学園艦を廃艦を賭けたものでした』

 

『そしてその試合には、昔名を馳せたラーズグリーズ戦闘機部隊も参戦するというもの』

 

『誠に申し訳ない話ではありますが、今回の一件は我々が知った時には既に賽は投げられておりました』

 

『何故大洗の学園艦の話が出たのか、現在その原因は調査中であります』

 

『少し話を変えますが、実は学園艦を守る為に創設された1つの護衛隊群が存在します』

 

『今までその機密性故、国民の皆様には明かしておりませんでしたが、私はその艦隊の群司令を兼任しております』

 

『その艦隊の名は第0護衛隊群』

 

『話を戻します。ここで私はある決断をしました。防衛大臣としてではなく、学園艦を守る群司令として』

 

『我々の任務は学園艦を守ること。故に、その企みを阻止すべく我が秘匿艦隊における戦闘機部隊の派遣を行いました』

 

『記者の皆様の中には私の隣にいる彼を昔見たことがある人がいるかも知れませんが、彼こそが本物のラーズグリーズ隊隊長であり、そして我が艦隊における戦闘機部隊の隊長であります』

 

 

その一言で会場の視線が一斉に彼に集まる。

 

 

『彼にはこの艦隊の創設から任務に加わってもらっております。その秘匿性を守るために彼、そして艦隊における乗組員の全ては書類上、十数年前にMIAとされております』

 

 

防衛大臣がそう言ってから彼の方にマイクが移った。

 

 

『ご紹介に与りました。第0護衛隊群所属 空母ケストレル飛行隊隊長です。階級はMIAにより二階級特進後、海将補。機密上ここで名前を明かすことはできません』

 

『大臣も仰られたように今回の作戦は大洗の学園艦を守るためのもの。その作戦は大洗女学園の生徒達の活躍によって無事に成功しました』

 

『しかし、今回の一件で我々の活動は公になりました。この判断が正しかったのか、それはわかりません』

 

『ですが、そこに悔いはありません。私は、私のなすべきことをしたと考えております』

 

『これからも私は亡霊として彼女たちを、ひいては学園艦に住まう国民の皆様を、昔と変わらずに守っていくつもりであります』

 

 

その言葉とともに画面の中で一斉にフラッシュがたかれた。

 

 

『彼の言葉の通り、我々の在り方はこれからも変わりません。しかしながら、今までのように満足のいく活動が出来るとも限りません』

 

『よって本日をもって私は群司令の任から降り、後任はここにいる海将補を群司令として新しい体制を築くつもりです』

 

 

 

“───は?”

 

画面の中で彼がそんな表情を浮かべてる。

 

 

 

 

『いやいやいや、ちょっと待ってくださいよ大臣。そんな話聞いてないんですけど』

 

『いやぁわしも歳でのう。そろそろ引退を考えておったがいい機会じゃ、後進に道を譲るとしよう』

 

『あんた絶対めんどくさいからって全部俺に押し付けようとしてるでしょ。そうはいきませんよ!』

 

『リムファクシの時だってそうでしたよね!戦闘だけじゃなく事務処理すら俺にやらせやがりましたよね!』

 

『折角庇ってやっとるのになんじゃその態度は!大体お主が独断で動かなければこんな事にはならんかったわい!』

 

『なんだとこのくそじじい!』

 

『こっちのセリフじゃい青二才!』

 

 

ブツッ───

 

そこで中継が切れた。

 

 

 

ふふっ。結局最後は兄さんらしく、締まらない終わり方だったな。

 

「帰るのか?継続の───

 

「ミカ、でいいよ。彼流に言うとまだ仕事が残ってるからね」

 

私たちのテーブルにきたミカが手渡してきたのは2人への手紙。

 

「これは?」

 

中には日時と場所のみが記載されている紙1枚。

 

「彼からの招待状だよ。来るか来ないかは君たち次第さ」

 

「もちろん行く」

 

「私も行きます」

 

そうエリカも答えた。

 

「ああ、あと移動は車とヘリになるからそのつもりで」

 

「わかった」

 

彼からの誘い。断る理由はないから。

 

「ふふっ、大丈夫そうだね。それじゃあ、私は帰るよ」

 

 

 

 

 

「帰って彼と女子高生プレイをしなくちゃいけないからね」

 

 

 

...

 

...ん?今なんて言った?

 

女子高生プレイ?

 

「ちょっと待て!?それはどういう───

 

 

我に返った時、既にミカはおらずそこにはとんでもなく大きな爆弾だけが残されていた。

 

 

 

 

俺は今ケストレルの艦長室にいる。

 

俺たちの存在を公にした事で変わった事はあまり無かったが、それでも少しはある。今はその対処中だ。

 

あの日、記者会見が終わってから俺は逃げるように会場を後にした。

 

なんでかって?

 

それは新聞のインタビューだのテレビ出演の依頼だのが面倒くさそうだったからに決まってるだろ。

 

まぁ会場には大臣を置いてきたからうまくやってくれると思う。

 

会見ではああ言ったが大臣とは長い付き合いだし、あの人の言う事も分かる。

 

だから今回の話も将来的には受けてもよかった。

 

問題は時と場所よ。

 

あんないきなり言う?

 

普通数ヶ月前から辞令出すやん?

 

しかも会見で言われたらこれから下手な事出来なくなるし。

 

まぁ下手な事自体しちゃいけない事ではあるけどさ。

 

なんかもっとこう、ひっそりとやって欲しかったな。

 

今肩に乗っかってる責任が尋常じゃないぐらい重く感じる。

 

ただ、なんだかんだで信頼されてるって考えると嬉しくはあるけど。

 

 

 

 

 

コンコン

 

「どうぞ」

 

扉を叩く音に俺はそう答えた。

 

入ってくるのはおそらくあいつらだろう。

 

なんせ今日は渡した手紙の指定日だからな。

 

そして入ってきたのは予想していた3人。

 

「兄さん!何故ミカだけ専用のロッカーがあるんだ」

 

いや、入ってきて最初の言葉がそれでいいのかまほよ。

 

「あー、前までは来客用のロッカーなんてそもそも無かったからな」

 

「という事はミカさんは何度もここに来ているということ?」

 

「そうなるな」

 

2人の視線がミカに行ったが、ミカはどこ吹く風とカンテレを弾いていた。

 

「それで、どうだ?うちの艦隊は」

 

「なんかこう...思ったよりも普通ね。護衛艦とかもテレビで見たことある形してるし」

 

「まぁ秘匿艦隊とはいえ装備はほとんど自衛隊と変わらないからな」

 

そもそも弾薬系だって自衛隊に納品される名目で買ってるんだし

 

実際違うところといえば艦載機の種類ぐらいじゃないかな。

 

「そういえば兄さん。ここには戦車部隊もあると聞いたのだが」

 

「ああ、あるぞ。と言っても小数だが」

 

部類的には一応海上自衛隊ではあるが、俺たちの艦隊は特殊だからな。

 

学園艦が工作員とかに占拠されたりした時用に、強襲揚陸部隊を保有している。

 

「なら安心だ」

 

「え?」

 

「私は高校卒業後、この艦隊に入隊することにした」

 

...は?

 

「これが書類だ。お母様の印鑑も貰ってある」

 

何を言ってるんだお前は?

 

というかこの数日でよくここまで集めたな。その行動力には素直に感心するわ。

 

だが

 

「却下」

 

「なぜだ。理由を聞きたい」

 

「そもそもお前がドイツ留学決まってるのはしほさんから既に聞いてる。お前、その印鑑勝手に押したやろ」

 

身バレしてからしほさんに電話で小一時間ぐらい説教されたのはいい思い出なのだ。

 

「なら留学は辞退する」

 

「それも却下。折角の機会なんだから見聞を広めに行ってこい。辞退なんかしたら出禁にすんぞ?」

 

「わ、私のはちゃんと押してもらったから」

 

そうエリカが言ってきたが却下だ。

 

「いや、お前まだ高2やろ。しかも来年の黒森峰の隊長でしょ?駄目」

 

「あときちんと大学にも進学するように。そうしないと出禁な」

 

「ふふっ。なら私は大丈夫だね」

 

どこからその自信が湧いてくるんだミカよ。今エリカにも言ったでしょ。

 

「お前もロッカーあるけど、大学行けよ。じゃなきゃロッカーも取り壊すぞ」

 

そう言ってから3人を見ると見事に打ちひしがれていた。

 

「まぁ、別にお前たちを採用しないと言ってるわけじゃない。さっきも言ったけど見聞を広めてこいって言ってんの」

 

「でも」

 

「でもじゃねぇ。お前たちはまだ若いんだ。それからでも遅くはないだろ」

 

「それに、ドイツ行こうが大学行こうが暇な時ここに来りゃいいだろ」

 

「た、たしかに」

 

「ならそれが終われば入隊できるんだな?」

 

「まぁお前たちの気が変わらなければなー」

 

そう俺が言うと彼女たちの表情に笑顔が戻った。

 

「はぁー。それじゃあ、お前たちに改めて任務を与える」

 

姿勢を正し、室内にいい感じの緊張感が張り詰めたところで改めて俺は口を開いた。

 

「将来有望な戦車乗り諸君。君たちに与えるこれからの任務は、社会から様々な知識を学ぶ事だ」

 

「留学、大学進学、隊長職。そのどれにも当てはまる」

 

「第一志望として我が艦隊に入る道を選んでくれたことは素直に嬉しい」

 

「しかし、その期間で君たちが何を思い、どう行動するのかはわからない。もしかしたら、違う道を歩むかもしれない」

 

「だから私から今の君たちに、一言だけこの言葉を贈らせてほしい」

 

 

 

 

 

 

 

『ようこそ第0護衛隊群へ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まだ続くんじゃよ
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