ようこそ第0護衛隊群へ   作:/Null

32 / 105
コーヒーはブラックしか勝たん


ミカの1日

朝───

 

 

「ミカー。もう朝だぞー」

 

私の1日は、彼が私を起こす声で始まる。

 

「今日早いんだろ?」

 

「んぅ」

 

「ほらほら、目ぇ覚ませー」

 

「んもう。子供じゃないんだから」

 

くしゃくしゃされた髪を直しながら彼にそう言い返す。

 

「ははっ。悪かったよ」

 

「取り敢えず顔洗いに行くぞ。ちゃんと髪直してやるから」

 

「うん」

 

 

 

 

顔を洗ってリビングにいくと既に朝食が出来ていた。

 

目玉焼きとベーコンにトースト。一般的な朝食だ。

 

「おはよう」

 

「おう。ちゃんと覚めたか?」

 

「お陰様でね」

 

彼が髪を梳いてくれるのが心地よくてまた寝そうになったのは内緒だ。

 

「「いただきます」」

 

きちんとそう言ってから2人で朝食を摂り始める。

 

「朝練は何するんだ?」

 

「簡単な射撃訓練ぐらいに留めておくつもりだよ。授業もあるしね」

 

「射撃訓練ねぇ」

 

「興味があるなら今度きみもやってみるかい?」

 

「んー。やってもいいけど、あれFCS付いてないじゃん」

 

「当たり前じゃないか」

 

「あれないと流石になー。照準も装填も手動とか大変すぎんだろ」

 

そうは言うけど

「きみだってFCS無しの戦闘機で射撃してたじゃないか」

 

「あれは違うのよ?なんかこう感覚で撃ってるとこあるし」

 

「どっちも似たようなことだと思うよ」

 

「そんなもんかねぇ」

 

「そんなもんさ」

 

そもそも操縦しながら射撃も1人でこなさないといけない戦闘機の方が難しいと思うのだが

 

まぁそこ辺りはよその庭だから難しく見えてるのかもしれない。

 

実際やってみたら思ってたより簡単。と思うこともあるだろう。

 

 

 

そういえば...

と私はある事を思い出した。

 

それは近々予定されてる各校の主要メンバーが集まる交流会。

 

うちの秘密兵器は隠しておきたかったから参加する気は無かったけど、折角だから彼に参加してもらおうかな。

 

きっと面白くなると思う。

 

 

 

 

「ほれ弁当」

 

「うん。ありがとう」

 

玄関で手渡されるのは彼の作ったお弁当。

 

「今日の帰宅時間は?」

 

「今日は早目に終わる予定だからね。18時には帰ってると思うよ」

 

「なら今日はミカの方が早そうだな」

 

「きみは何時に帰ってくるんだい?」

 

「んー。19時には帰ってくる。何事もなけりゃな」

 

「わかったよ。なら今日の夕飯は任せて欲しい」

 

うちでは基本的に先に帰った方が夕飯の支度をするのが決まりだ。

 

「んじゃ、いってらっしゃい。運転気を付けろよ」

 

「...」

 

「...どうした?」

 

「ん」

 

「ん?」

 

「んっ!」

 

「いや、“んっ!”だけじゃわからんわ」

 

「行ってきますのキス」

 

「新婚か!」

 

「この前はしてくれたじゃないか」

 

「この前はな!」

 

「してくれないと学校行かない」

 

「それやって困るのお前だろ」

 

けど私は動じない。

 

 

「...はぁ。しゃーなしだぞ」

 

 

...。

 

 

そう言って、なんだかんだでしてくれる彼。

 

「いってらっしゃい。ミカ」

 

「うん。いってきます」

 

 

ふふっ。今日の私は一味違うよ?

 

 

──────

 

 

「今日のミカ。なんだかすごい機嫌良さそう」

 

「良いことでもあったのかな」

 

「どうせまたお兄さん案件だろー」

 

「あはは。最近多いね」

 

「だなー」

 

 

 

昼───

 

 

午前中の授業も終わり、お昼ご飯の時間。

 

私のは当然彼が作ってくれたお弁当。

 

「わぁ!美味しそう!ミカのお弁当、またお兄さんの手作りでしょ?いいなー」

 

目の前に座るアキから羨望の眼差しをむけられた。

 

「ふふっ、なんでも美味しければ良いってもんじゃないさ。大切なのはそこに何が詰まっているか。だろう?」

 

「はいはい、顔が緩んでたら説得力ないよ?」

 

「〜♪」

 

そう言って私は少し鼻歌交りにお弁当を食べ始める。

 

彼のお弁当という幸福感を味わいながら。

 

「そういえばミカ。お兄さんとはどこまで進んでるの?」

 

「さあ?前と何も変わっていないさ」

 

「あれ?思ってた回答と違う。ミカにしては珍しい」

 

「アキ、それ以上やめとけ。私たちがダメージ食らうだけだぞ」

 

「えー。でも気になるじゃん」

 

気になられても、特段変わったこともないのだが。

 

まぁ女子高生というものは多感なお年頃なのだ。

 

こういう話には目がないのさ。

 

私含めてね。

 

 

「それじゃあ朝機嫌が良かったのは?」

 

「いいや?...ただ、強いて言うなれば新婚さんごっこをしてただけ、かな?」

 

「惚気だ!やっぱり惚気だった!」

 

「ううっ。正直お兄さんの話聞くまでは恋愛でミカに負けるとは思ってなかったのに」

 

「ちなみにどんなこと?」

 

「行ってきますのキ───

 

「「戦略的撤退!」」

 

私が言い切る前にアキとミッコは走り去っていった。

 

 

 

夜───

 

 

夕飯の担当は私。

 

実は家を出た時作る料理はもう決めてた。

 

「ただいまー」

 

あ、彼が帰ってきたようだ。

 

「おかえり」

 

「おう。ただいま」

 

「てかなんかすげぇいい匂いしてんだけど」

 

「今日は肉じゃがにしてみたんだ」

 

「ほぉ。あのミカが肉じゃがまで作れるようになったとは」

 

そう。彼と同居するまでは料理なんて全然だった。

 

アキの言う通り食べ専だったし。

 

でもこのままじゃまずいと少しずつ練習した。

 

そして今では肉じゃがまで作れるように。

 

劇的ビフォーアフターである。

 

「ちょうど今出来たところだから、手を洗ったらすぐご飯にしよう」

 

「おう。すぐ行くわ」

 

 

 

 

「おお!美味いなこれ」

 

「そう言ってくれると嬉しいな」

 

肉じゃがは好評だった。

 

男を落とすなら胃袋をつかめ、とはよく言うが

 

そのために母から料理を伝授してもらったんだから、当然といえば当然だ。

 

...でも、よかった。

 

美味しいと言われるとなんかこう、頑張ってよかった。そう思えるから。

 

 

「というかなんで肉じゃがにしたんだ?」

 

「なに。深い意味はないさ」

 

「男性が好きな料理ランキングを見てね」

 

「なら別にカレーとかハンバーグとかでもよかったんじゃ?」

 

「それは他に作ってくれる人が居るじゃないか」

 

「だから私は肉じゃがにしたのさ。それに、得意料理が被るのはきみとしても面白くないだろう?」

 

「あー。なるほどな」

 

そう。私は胃袋にも気を遣える出来る女なのだ。

 

むふーっ。

 

 

 

 

「それで、今日の学校はどうだったんだ?」

 

「いつも通りさ」

 

授業も練習も何事もなく無事終わった。

 

まぁ放課後の練習に関しては終わりにしたいう方が正しいのかもしれないが。早く帰りたかったし。

 

「きみの方は?」

 

「んー。ちょいと大臣からめんどくさい事言われてなー」

 

「というと?」

 

「うちの艦隊も公にしたんだから、各学園艦との連携をもっと強化しろーってさ」

 

「だから挨拶回りも兼ねて、戦車道で繋がりがある各高校回ってこいってお達しよ」

 

「へぇ。なかなか面白そうじゃないか」

 

「いやいや、どう考えてもめんどくさいやろ」

 

そう彼は言うが

「滑走路だって使わせてもらう事もあるんだから、ちゃんと関係を築くってのも大事なんじゃ?」

 

「まぁ確かにその通りではある」

 

折角だし彼には今の俗世をもっと知ってもらいたい。今回の話はそのための良い機会だと私は思う。

 

「それと君にはまだ話してなかったけど、実は前に集まった高校グループで近々交流会があるんだ」

 

「ほう」

 

「だから取り敢えずはそこに参加すればいいんじゃないかな。顔見せの意味も込めてね。申請はこっちで出しておくから」

 

「んー、そうだな。んじゃ頼むわ」

 

「うん。任せて」

 

よし。彼の言質も取った。

 

朝考えていたことがこうも早く決まってしまうとは思ってなかった。

 

彼にはどういう立場で参加申請するのか。それを確認してこなかったのだからわざわざ言う必要はないよね。

 

 

 

 

「ごちそうさま」

 

「うん。お粗末さまでした」

 

「洗い物は俺がしとくから先風呂入っとけー」

 

「そうさせてもらうよ」

 

洗い物は基本的にご飯を作ってもらった方がやる。

 

だから今日は私が先にお風呂に入る日。

 

残念ながら彼と一緒にお風呂に入ることが出来ない日でもある。

 

残念すぎる...。

 

でもお風呂を出てから彼が髪を梳いてくれるのは変わらない。

 

これが気持ちいいんだ。ほんとにね。

 

その後は彼がお風呂から出てくるまでテレビを見ながら時間を潰す。

 

最近はクイズ番組や食べ歩きとテレビも一辺倒で面白くないものばかり。

 

もっとこう何が起こるかわからないような一昔前のテレビの方が私は好きだ。

 

まぁこれも時代の流れなのかな。

 

 

 

「ミカー。コーヒー淹れといてー」

 

脱衣所から彼の声。

 

どうやら出てきたようだ。

 

 

 

 

「お、ありがと」

 

出てきた彼にコーヒーを渡した。

 

「でもそこはコーヒー牛乳なんじゃ?」

 

「風呂上がりでもブラックの方が美味しいのよ俺は」

 

「はいはい」

 

大人は何かしらにつけてコーヒーを飲みたがる。

 

正直あんな苦いもののどこがいいのか分からない。

 

「って顔してるな」

 

...どうやら顔に出ていたようだ。

 

「コーヒーだってただ苦い訳じゃない。苦味と酸味、そして香りを楽しんでんだよ」

 

「ま、そのうち分かるさ。ミカがもうちょっと大人になればなー」

 

そう言って彼はコトンとカップを置いた。

 

 

 

私だってもう大人なのに

 

そんな少しの反抗心から、そのコーヒーに口をつけてみたが

 

 

...うぇ、やっぱり苦い。

 

 

 

 

夜も更けてきて時刻は11時

 

もう寝る時間だ。

 

ベッドメイキングは既に済んである。

 

だって1つだけやればいいからね。

 

「もう何も言うまい」

 

「ふふっ♪」

 

 

 

「明日はいつも通りの時間か?」

 

「うん。朝練はないから」

 

「おっけー。んじゃ明日は一緒に家出るか」

 

「それが良さそうだね」

 

「よし。んじゃ電気消すぞ」

 

 

カチッ

 

その音と共に部屋から灯りが消え、今日という1日が終わりを告げる。

 

 

 

 

「おやすみ、なおき

 

「ああ。おやすみ、ミカ」

 

 

──────

 

 

これが私の1日。

 

何気ない私と彼の日常。

 

 

 

でもひとつだけ。

 

今日からその日常に加わった事がある。

 

 

 

 

それは

 

今朝から始まった

 

行ってきますのキスさ




皆さん見てください

うちのミカがこんなにも可愛くて可愛くて
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。