ようこそ第0護衛隊群へ   作:/Null

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ジパングのオマージュしたかっただけ


『1対40』 2/3

『右30°に履帯跡!』

 

「これは重戦車クラス。間違いありません!お兄ちゃんたちの車輌です!」

 

試合が始まって十数分

 

ようやく見つけた彼らの痕跡。その先を追って目を凝らせば平原の中に1輌の戦車が微かに見えた。

 

悠然と進むその姿は、まるで彼女たちを誘っているようにも見える。

 

「ここは私にお任せを!」

 

そう言ってみほたちあんこうチームを追い抜いたのは西の乗る知波単の九七式中戦車。その言葉は自信の表れか、それとも知波単特有の無為無策の突撃精神か。少なくとも西の眼は追い詰めたネズミを狩る蛇のようだった。

 

「わかりました。先陣は西さんにお任せします」

 

『ターゲット捕捉しました!』

 

無線機にも敵車輌捕捉の報告が次々と入る。

 

「皆さん、油断しないでください。戦車には乗っていなかったとはいえ、世界で戦っていた人たちです。どんな戦略を立てているのか分かりません。先遣隊はカバさんチーム、カモチームを先頭にアタックポジションへお願いします」

 

『了解!これより挟撃進路につく。距離200mまで接近する』

 

「カメさんチームは西さんに続いてください」

 

『流石は西住ちゃん。こんな状態でも一糸乱れぬ行軍だね。残念ながらフラッグ車である私たちの出番は無さそうだし、高みの見物といかせてもらおうかね』

 

『まぁ重戦車1輌相手にこちらは40輌。あっという間にスクラップでしょうね』

 

 

 

 

『80°、5マイル。対地目標約40輌確認』

 

同時刻。彼らの車内にも敵車輌接近の報告が上がっていた。

 

「隊長。正念場ですね」

 

「だな」

 

戦車に乗るのはこれが初めてってわけじゃない。それにみほには悪いが、俺たちにだって数々の戦場を渡り歩いたプライドってもんがある。負ける気なんて更々無い。

 

「80°、4マイル。主砲・副武装、攻撃用意」

 

『目標群アルファ-13輌、80°。距離3マイルに接近』

 

『目標群ブラボー-22輌、170°。2マイル』

 

情報が彼らの戦車の中で逐一更新されていく。それは今も昔も戦場に身を置き続けている彼ら故に、その重要性を1番理解しているからだ。現代戦とはまさに情報の質で勝負が決まる。

 

『敵車輌。射程圏内に入ります』

 

「主砲、最も近い6輌に照準」

 

『了解』

 

「作戦名はー...そうだな。AIMゴリ押し作戦で」

 

...しかし今回の彼らは脳筋であった。

 

 

 

 

《全機突入進路確保。アタックポイントまで1マイル》

 

《たかが1輌の戦車で何が出来る》

 

カバさんチーム率いる先遣隊が遂に迫るが、その火蓋はまだ切られない。それはまだ互いに撃ち合える距離では無いから

 

...というのが普通の考えであるが、彼らにとってすでにそこは射程圏内。彼女たちが経験したことのないアウトレンジからの攻撃が始まろうとしていた。

 

 

 

『隊長』

 

「よし。右対地戦闘。CIC指示の目標、撃ちー方始め」

 

『トラックナンバー“2-6-2-8”、主砲撃ち―方始め』

 

『撃ち―方始め』

 

“ドンッ!”

 

重厚な音と共にKV-1から放たれた1発の砲弾が先頭を走っていたカバさんチーム乗する戦車に命中する。

 

“ドンッ!”

 

“ドンッ!”

 

続いて2発目、3発目

 

手動装填で出しうる最速の発射間隔で狙い澄ましたかのように戦車のウィークポイントに命中し、追従していた2輌の戦車から白旗が上がった。

 

『トラックナンバー“2-6-2-8”から“”2-6-3-0”、撃破』

 

『新たな目標210°』

 

 

“ドンッ!”

 

“ドンッ!”

 

“ドンッ!”

 

 

更新されていく情報を元に、左舷へと回転した砲塔から更に3発の砲弾が飛び出した。

 

それは機械的に、しかし確実に白旗を量産していく。

 

自分たちを捉え続ける彼らの砲口を見て、先遣隊である彼女たちは何を思ったのだろうか。白旗の上がった彼女たちの反応は今になってはわからない。

 

けれどもその光景を見た本隊には困惑という2文字しかなかった。何故一瞬にして6輌の戦車が撃破されたのか。何故あんなアウトレンジからの攻撃が命中するのか。何故なんなにも早く砲弾が飛んできているのか。

 

何故...

 

何故...

 

考え出したらキリがない。

 

 

《っ!!》

 

 

だがそんな渦から抜け出した戦車が1輌。

 

 

《西さん!?ま、待ってください!》

 

 

 

『トラックナンバー“2-6-4-2”さらに接近』

 

「発煙弾発射始め!サルボー!」

 

そんな西の接近をいち早く察知したKV-1は周囲に発煙弾を発射し辺りを白煙で包んだ。

 

 

《くっ!見えない!》

 

 

先遣隊の仇打ちか、それとも闘争心に駆られたのか。しかし風下に位置していた彼女たちも風に靡かれた白煙によってたちまち囲まれてしまった。

 

 

“ドンッ”

 

 

先程から聞き慣れた発砲音が1つ。

 

KV-1を見失ってしまった彼女たちとは裏腹に、白煙の中から放たれた砲弾は無情にもの西が乗する九七式中戦車を捉えていたのだ。

 

 

《西さん!?な、何が起こってるんですか!?》

 

煙がまだ晴れぬ中、僅かに見えたもの。それは無情にも白旗を上げている九七式中戦車の姿だった。

 

 

 

《カメさんチーム。ダメージはないですか?》

 

《大丈夫よ西住ちゃん!車体も体もピンピンしてるわ!》

 

《よかった。...っあ!!》

 

“ドンッ”

 

“ドンッ”

 

“ドンッ”

 

再度放たれた砲弾。影も姿も見えないその中から飛び出してきた砲弾がまたしても3輌の戦車を道連れにする。

 

 

その光景を、みほはどこかで聞いたことがあった。

 

 

――――――――――――

―――――――――

 

それは昔、母から聞いた1輌の戦車の話。

 

ある非公式の大会で世界屈指のプロチーム相手にストリーマーとして参加した謎の戦車が勝利した。

 

その戦車が放った砲弾は追尾機能を有しているかのような一撃で、プロチームの戦車は全て沈められたらしい。

 

 

その光景を見た者たちはそれを“サジタリウスの矢”と称した。

 

 

決して外れることのない“神の矢”という意味。

 

 

―――――――――

――――――――――――

 

相手は貧弱なネズミさん?いいえ、これはハリネズミさんです!彼らには通常の攻撃では倒せません!

 

 

 

《ここは私たちが何としても食い止めます。カメさんチームは残存勢力をまとめて一時撤退して下さい》

 

《え?何故だ西住!?》

 

《私たちの戦車を見てください》

 

そうみほが促したそれは車体から漏れ出る黒い液体。

 

《オイル漏れです。おそらく西さんの戦車が撃破された時の破片でやられたんだと思います。残念ですが、油圧も下がってます。もう長くはありません。今なら彼らからの攻撃が止んでいます。撤退するなら今しかありません!》

 

《西住はどうするんだ!?まさか!?》

 

《心配しないでください。まだやられるつもりはありません。ですが、彼らはまだ奥の手を隠し持っていると思います。1つでも多く彼らの情報を持ち帰る。それが私たちの使命です!》

 

 

 

 

『目標群ブラボー14輌撃破確認』

 

『目標群エコー、6輌撃破』

 

 

 

『...!?目標群ブラボー、散開します!』

 

『45°から3輌。330°から2輌。170°から3輌接近』

 

 

戦闘開始から約10分、彼我の距離は詰まりこれ以上はアウトレンジ攻撃は不可能だ。発煙弾も底を尽き、白煙も既に晴れかけてきている。これ以上の戦闘はこちらに不利だ。

 

しかし彼女たちも既に半数を失っている。戦力5割の損失は部隊の壊滅を意味する。

 

なのに...なぜ退かないっ!

 

 

 

『トラックナンバー“2-6-5-6”急接近』

 

「何っ!?」

 

油断した。この距離では主砲の照準はもう間に合わないっ!

 

「7.62mm機銃掃射!」

 

そう言って7.62mm機銃の銃口が向いた先にいたのはあんこうのエンブレムのついたⅣ号戦車。みほたちは白煙を逆手に取り死角から彼らの戦車まで近付いてきていたのだ。

 

《距離100、センターに捉えました。75mmの主砲弾を、食らってくださいっ!》

 

“ドンッ”

 

この戦場において初めて、今までとは違う発砲音がした。その撃ち出された砲弾は煙の中を掻き分けて彼らの戦車へと一直線に飛んでいく。

 

 

 

その攻撃は到底避け切れるようには見えない。命中は必然的だ。

 

その事実を感じとり、彼の頭の中では走馬灯のようにゆっくりとした時間が流れ始めていた。

 

 

――――――――――――

―――――――――

 

戦闘は完璧ではなかった。

 

初めて搭乗することとなったKV-1戦車への不安。そして相手はまだ高校生という慢心。

 

その感情が遮蔽物の少ない平原でのAIMゴリ押しというFPSプレイヤーもびっくりな安直な理屈を導き出し、みほたちの接近を許してしまった。

 

 

俺の肉体は...

 

彼女たちの闘志を、理解していなかった。

 

 

―――――――――

――――――――――――

 

瞬間、爆発音と共に車体が大きく揺れた。

 

『くぅっ!』

 

「各員!持ち場のチェックを行え!」

 

だが奇跡的にも、彼らの戦車約1メートル手前でみほたちの放った砲弾は爆発した。それは計算通りか、はたまた偶然か、KV-1の7.62mm副武装が砲弾の信管に命中したのだ。

 

 

『砲塔部油圧装置故障!』

 

「くそっ!」

 

『敵車輌正面より急接近!』

 

「何!?」

 

 

《突撃速度は最大。愛里寿ちゃんと戦った時と同じくらいの速さ。だから私たちは、まだ正気です!》

 

みほたちの魂が乗ったⅣ号戦車は7.62mmの機銃弾を弾き返しながら彼らの戦車に迫る。それは衝突を前提とした決死のダイブ。

 

「面舵いっぱい!右転進。左いっぱい急げ!総員対ショック姿勢!衝撃に備え!」

 

『面舵いっぱい!右転進!左いっぱい急げ!』

 

『面舵いっぱーい!』

 

7.62mmの銃弾は彼女たちの装甲を貫通することはなく、無情にも甲高い音を鳴らすだけ。先程と違い彼女たちを止めることは不可能だ。

 

「みほたちがこんなにも熱い戦車乗りになっていたとは...」

 

 

驕り・慢心。相手の力量を見誤ることが戦場で何を意味するのか。自分たちは分かっていたはずだ。それでもなお高校生という型に彼女たちを当てはめてしまった。

 

彼女たちは曲がりなりにも高校戦車道の大会で優勝し、あまつさえ大学選抜を打ち破ってみせたのだ。

 

すでに高校生の域を超えている。

 

その事実を我々は、認めるのが遅すぎた!

 

 

Ⅳ号戦車との衝突まで1秒にも満たないその時間の中で彼は、自らの犯した致命的なミスに対する後悔と、迫り来る衝撃に身構えることしか出来なかった。

 

戦車と戦車の衝突。それは純粋に鉄の塊同士がぶつかり合うことと同じである。速度、重量共に申し分ないそれは、衝突と同時に凄まじい物理エネルギーが両車内を襲う。

 

「うぉっ!」

 

『敵車輌!車体左舷側に衝突』

 

『左舷履帯、7.62mm機銃故障』

 

「応急処置を急げ!!それと“2-6-5-6”は?」

 

『白旗が上がっています。恐らく衝突の影響かと』

 

幸か不幸かエンジンはまだ生きている。自走は可能だが、これ以上の戦闘行動は絶望的だ...。

 

 

 

『隊長。残存車両捉えました。やはり彼女たちは再起を図っているようです』

 

遠目から確認出来るのはブラック車を中心として再集結している戦車の群。

 

『これ以上の戦闘はこちらにとってリスクが大きすぎます』

 

砲塔も動かせず、戦闘行動もままならない。まさに満身創痍である。

 

『隊長。operation“トマホーク”によるフラッグ車撃破を具申します』

 

 

 

 

「くそ!西住たちと連絡が取れなくなった!戦況は?一体どうなってるんだ」

 

「まぁ慌てることないよ河嶋。こっちの場所はまだバレてないと思うしー」

 

しっかし彼らが戦車に乗るのはほぼ初めてと聞いた。なのに、この惨状は何なのかねぇ。

 

干し芋を食べながらも頭をフル回転させるがどうも結論が出ない。あまりにも情報が少なすぎる。

 

まぁ取り敢えずこの場所はまだバレてないみたいだし、体勢を立て直させてもらいますか。

 

彼らも満身創痍、それは間違いない。だから次の攻撃は防ぎきれない。ここにいる全員がそう思っていた。

 

 

しかし彼女たちは知らなかった。

 

サジタリウスの矢はどこにいようとも確実に命中するということを

 

...!

 

...!

 

 

「ん?今なんか音しなかった?」

 

 

遥か遠く。何かの爆発音が鳴り響く。

 

その正体は近付くにつれて金切り音となり、寸分の狂いなくカメさんチーム乗するフラッグ車に“2発”の砲弾が直撃したのだった。

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