ようこそ第0護衛隊群へ   作:/Null

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ボコミュージアムってなんだ?(今更)


最終章までのお話はまだまだ続くんじゃよ
ボコミュージアム


「なんだ、思ったより綺麗な施設じゃねぇか」

 

目の前にあるのは怪我したクマがそびえ立つ建物。不気味ではあるが、結構ちゃんとした施設だった。なんかリニューアルしてるっぽいし、それなりに人気があるのかもしれない。

 

まぁ、何故か俺ら以外に来場者っぽい人が見当たらないのが気になる所ではあるが。

 

「あ、お兄ちゃーん!」

 

「おーう」

 

声を掛けられた方を見ればみほと愛里寿がいた。2人揃ってこちらに手を振る姿は相変わらず可愛い。

 

「お兄ちゃん。わざわざありがとう」

 

「お兄様。今日はありがとうございます」

 

「いやいや、全然大丈夫よ。可愛い妹たちのためだから」

 

何度でも言おう俺の妹たちは相変わらず可愛い。ほんま五臓六腑に染み渡るで...

 

「愛里寿は祝勝会の時以来だな。元気だったか?」

 

「はい!」

 

「おぉ、そうかそうか。お兄様も嬉しいぞー」

 

そう言って頭をわしゃわしゃしてやると少し照れながらも、気持ちよさそうに身を委ねてくる。

 

あー、癒されるわー。昔と変わってなくてお兄様嬉しいわー。

 

しかし辺りには先程と同様にひとけは無し。こんな可愛い妹たちがここにいるというのに。

 

となると考えられうる要因としては

 

「もしかして入場時間間違えた?」

 

リニューアル出来るぐらい儲かってるであろう施設で来場者がいないってのもおかしいし、今日休館日だったとかのオチじゃないよな。

 

しかし、そんな俺の懸念に対して愛里寿が首を横に振った。

 

「時間は合ってる。人がいないのは今日私たちの貸し切りだから」

 

はい?

 

「え?ここ全部?」

 

「そう。お母様がここのスポンサーになってくれたから」

 

おい家元。親バカすぎんだろ。程々にしとけ

 

「日程決まらなかったのも、実はリニューアル工事してた」

 

マジかよ。これ全部家元の仕業かよ。

 

まさかと思うが西住流も出資してんのか?

 

「う、うちは多分携わってないよ」

 

多分て。しほさんのことだ、陰でこっそり関わってそうやなぁ。あの人も相当親バカやし。

 

「それでお兄ちゃん」

 

「ん?」

 

「今更なんだけど、なんでノンナさんが一緒に?」

 

「ご無沙汰してます。交流会以来ですね、みほさん」

 

「い、いえこちらこそ」

 

そう。次はプラウダの学園艦でお会いしましょうって言われておきながら、今日の為にわざわざ来てもらった。

 

その理由は交流会からケストレルへと戻った日に遡る。

 

 

――――――――――――

―――――――――

 

 

「で、誰が兄さんと一緒にボコミュージアムへ行くかということだが、やはりここはみほの姉である私が同行するのがいいと思う」

 

「それをいうなら私もそうなるね」

 

「なら、間をとって私が行くべきではないでしょうか」

 

(いや、4人全員で行きゃいいやん。そっちの方がみほも愛里寿も嬉しいやろ)

 

交流会の後ケストレルへと戻った俺たちだったが、見ての通りボコミュージアムに誰が一緒に行くかで揉めていた。

 

そもそもこの話、俺の執務室でやる話じゃないと思うの。せめて俺いないときにしよ?全部聞こえてるよ?心の中でツッコミ入れちゃってるよ?

 

「ミカさん。わかってるとは思いますけど、今回は抜け駆け禁止ですからね」

 

「はいはい、わかってるさ」

 

おい、気付け。これ絶対わかってないやつやぞ。

 

「はぁー。全く、油断も隙もないんですから。だいたいミカさんは同居してるんですから、少しは自重して欲しいです。わ、私たちだって―――「お、いたいた。エリカ嬢ー、次の訓練スケジュールの資料持ってきましたよー」

 

「あ。ありがとうございます」

 

入ってきたのはうちの隊員。持ってきた資料とコーヒーをエリカの机にコトンと置いた。

 

「あぁ、それとどうでした?先日は?」

 

「へ?」

 

「隊長との遊覧飛行ですよ!楽しかったです?」

 

「い、いや。そんなつもりでは」

 

「またまたー。顔見ればわかりますよー」

 

顔見ればわかりますよーじゃないんだわ、しれーっと爆弾落としていくなよ。タイミング悪すぎだろ。

 

「それじゃ用事も済みましたし、部外者はお暇させてもらいましょうかねー」

 

そう言って出て行ったあいつは扉が閉まる瞬間にサムズアップしているのが見えた。

 

ああ、これ明日には艦隊中にこの話広まっとるわ...。

 

「...エリカ。お前も抜け駆けしてるじゃないか」

 

「」

 

「全く。やはりここは私に譲ってもらわないと釣り合わんな」

 

まほは目を閉じて腕を組みながら言葉を続ける。

 

「だいたいエリカもエリカだ。私の知らないところで―――ん?電話か」

 

「まほです。 ―――はい。―――ええ。―――そのつもりです。―――わかりました。―――はい。では」

 

「家元からですか?」

 

「あぁ。今度留学の為の買い物に行くのだが、折角なんだから服とか選んで貰えとな」

 

「誰に選んでもらうんだい?」

 

「それは兄さ...あっ。いや、それはその...」

 

「きみも抜け駆けしてるじゃないか」

 

 

 

「「「...」」」

 

「「「はぁー...」」」

 

 

 

「私たちがここで牽制しあっても仕方ないか」

 

「そうだね」「そうですね」

 

「そもそも兄さんも兄さんだ。自分は亡霊だからといつも逃げて、そろそろ腹を括ってほしい」

 

「まぁ、それは否定出来ないね」

 

まてまて、何故その話から俺が悪いみたいな流れになるんだ。事実亡霊なんだから仕方ねぇだろ。

 

「た、隊長...」

 

「なんだ?エリカ?」

 

「今気付いたのですが、逆に亡霊だからいいのではないでしょうか?」

 

「というと?」

 

「亡霊であるから誰か1人という決まりはないのかと思うのですが...」

 

 

 

「「...ハッ」」

 

 

 

「そこに気が付くとは流石だ!エリカ!」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「よし!そういうことだから、兄さん。こっちは意見は纏まったからあとは兄さん次第だぞ」

 

そう言って彼女たちの視線がようやく彼に向いたのだが...

 

そこに彼の姿はなく机には紙一枚。

 

「はぁ...また逃げたか」

 

「ほんと、肝心な時にいつもこれなんだから...」

 

「それで?何て書いてあるんだい?」

 

「『お前らが将来いい人見つからなかったら、考えておいてやるよ』だとさ」

 

「「...はぁ。もう見つけてるんだよなぁ」」

 

「まぁいいんじゃないかな。実際の所、彼もわかってると思うよ。ただ心の準備が出来ていないだけさ」

 

「ミカさんは余裕ですね...」

 

「彼を1番理解できている。と言って欲しいかな?」

 

「むぅ」

 

「ミカ。最後の文を見てみろ」

 

「ん?」

 

『P.S. 話長くなりそうだから今回はノンナと行きますんで』

 

「...」

 

「ミカさん?ミカさーん?」

 

「...ダメだ。立ったまま気を失ってる」

 

 

 

―――――――――

――――――――――――

 

 

「という事で、選ばれたのはノンナでした」

 

「ごめん、1人で回想されてもわかんない」

 

そりゃこんな痴話を人前で言えるわけないじゃない!

 

「まぁあれだ。いつもの3人は色々あって結局誰が行くかで最後まで揉めたから無理言ってノンナに来てもらったのよ」

 

「都合のいい女のようで釈然としませんが、今日1日よろしくお願いします」

 

「いやいや、そういう意味じゃないのよ?ノンナさんや」

 

「ふふっ。わかっていますよ。折角ですし私も今日1日楽しませてもらうつもりなので、よろしくお願いしますね同志?」

 

「おう。俺もボコっての全く知らんけどな」

 

「え?お兄ちゃんボコ知らないの?」

 

「残念ながら」

 

まぁ予習とかした方が良かったのかもしれんが、全く知らない状態で行った方がまだ楽しめるかなと思ったから真っ白の状態で来ました!

 

「そっかー。じゃあまずはボコの歴史から見に行かないとね!」

 

「お兄様。こっちです」

 

2人に引っ張られて向かう先には資料館と書かれた建屋。

 

え、何?そんな歴史資料館的なのもあるの?てかそんな昔から存在してたの?このクマ。実は俺より歳上?

 

 

 

 

「オイラはボコ!ボコられグマのボコられグマのボコだぜ」

 

「わぁ!ボコだ!」

 

施設内を大はしゃぎで周る2人の目の前にいたのはボコ3体。

 

生で見るボコに2人のテンションは爆上がりである。

 

ボコについての説明を受けた後でも、この奇怪なキャラクターを見ると何がこの2人のツボに入ったのか理解が難しい。

 

だってあれよ?クマのぬいぐるみが青あざ作って包帯ぐるぐるなんよ?敵と戦ってもいっつも負けるんよ?友情・努力・勝利ちゃうん?って2人に聞いたら

 

ボコが勝っちゃったらそれはもうボコじゃないの。お兄ちゃん、分かってないね。

 

って言われました。

 

愛里寿はみほの言葉にコクコクと頷きボコの良さ?をアピールし、ノンナは時折相槌を打ちながら微笑ましく見守っていた。

 

まぁなんだ、何やっても妹たちが楽しけりゃそれでいいわ。

 

と俺はボコについて考えることをやめた。

 

「ボコー!」

 

ボコに抱きつく愛里寿を見るのは確かに微笑ましい。大学選抜の隊長やってるとはいえ、まだ13歳だもんな。

 

「ふへへ、大隊長のハグ...」

 

...ん?今何かよからぬ声が...

 

愛里寿が抱きついているボコを訝しげに見つめると、俺の視線に気付いたのか少し顔を逸らした。

 

「...あー、ちょっと。そこのボコ3体、こっちに来なさい。2人は向こうで遊んでてなー。ノンナ、ちょい頼むわ」

 

「お任せください同志」

 

俺の言葉にみほと愛里寿は渋々ではあったが物販コーナーの方へと行ってくれた。

 

すまんな。ここからは夢の国では決して見てはいけない着ぐるみの中との話し合いがあるから。

 

「...んで?何しに来た?」

 

「オ、オイラはボコ。ボコられグマのボコだぜ...」

 

「あー...うん、わかった。んじゃお前らのこと、これからはボコって呼ぶな?周りに誰がいてもちゃんと返事しろよ?館内放送で迷子のボコ3姉妹様って放送してもらうな?それでもいいか?」

 

「い、いえ。よくないです...。」

 

着ぐるみの頭を取ると中から後輩くん3姉妹が...うん、知ってた定期。

 

「じ、実は家元から様子を見てこいと」

 

まーた家元か。あんまり過保護が過ぎると口聞いてくれなくなるよ?愛里寿だっていつかは反抗期迎えるよ?...あ。やっぱダメ反抗期来ないで。お兄様ーって言ってる愛里寿から兄貴うぜぇとか言われたらもう立ち直れなくなっちゃう。

 

「まぁ、今回は楽しい家族サービスの時間だ。大目にみよう」

 

「「「ほっ...」」」

 

「ただぁし!うちの妹たちに正体バレてみろ?お前らの人権はないと思え?次の日にはSNSで有名人だからな。死ぬ気でボコになれよ」

 

「えぇ!?」

 

お前たちはその着ぐるみを着た時点で今日1日ボコなのだ。それ以上でもそれ以下でもない。

 

「ううっ。鬼!悪魔!ラーズグリーズ!」

 

ふっ。なんとでも言え。もとより悪魔隊の1番機。妹たちのためには何にでもなってやるさ。

 

 

 

 

結局その後の3姉妹はアクションショーに出たり、着ぐるみ状態でアトラクション乗ったりだの色々やったことで、マスコットキャラクター?らしからぬゼーハーゼーハーと息も絶え絶えではあったが、なんとかバレずに任務完了となった。

 

まぁ息切れしているのもみほたちから言わせるとボコらしさが出てて逆に良かったのかもしれない。

 

俺的には、あいつら中々やるじゃねぇか。と、ちょっと感心した。

 

 

え?もっとアトラクションとかについて話すことあるだろって?

 

そりゃあれだ。某ネズミーランドのパクリ過ぎてここじゃ言えんようなやつだったからな。

 

イッツ・ア・ボコワールド

ボコーテッドマンション

スペースボコンテン

 

などなど

 

マジそのうち消されるでほんま...。

 

 

 

 

「お兄ちゃん、ノンナさん。今日はありがとう」

 

「2人ともありがとうございます」

 

「いやいや、2人が楽しかったのなら良かったよ」

 

「それでね?折角だから2人にプレゼントがしたくって」

 

「「はい!どうぞ!」」

 

そう渡されたのは戦闘機に乗ったボコ

 

「これはね、最新作の戦闘機ボコ。ピンチの時に駆けつけてくれるんだけど、結局やられちゃうんだ」

 

「え?ダメじゃん」

 

「ふふっ。それがボコだから」

 

「ノンナさんにも」

 

「え?あ、あぁ。ありがとうございます」

 

「大事にしてくださいね」

 

「はい。カチューシャと同じくらい大事にします」

 

いや、めっちゃ大事にするやん。最上級やん。まぁ俺も妹たちからのプレゼントは最上級に大事にするけどな!

 

「んじゃ気を付けて帰れよー」

 

「はーい!」

 

一日中遊び回ったとは思えないぐらいの元気な返事と共に、2人は仲良く黒塗りの車で帰って行った。

 

どこぞの御曹司みたいやな。...いや、2人とも御曹司やったな。

 

「ノンナも、今日1日ありがとな」

 

「いえ。全然大丈夫です。それに、なんだかんだで私も楽しめましたから」

 

「そうか?ならよかった」

 

正直無理言って来てもらったノンナにはめっちゃ感謝してる。そのノンナが楽しめたと言ってくれたのは俺の気持ちを少し軽くしてくれた。

 

今度出来ればどこかで埋め合わせしてやりたいな。

 

「んじゃ帰りは送ってやるよ」

 

「いいんですか?」

 

「おう。早く帰らないとガキンチョも寂しいだろ」

 

「それが...今日に関してはゆっくりしてこいとカチューシャから言われておりまして...日が暮れるまでは帰ってくるなと」

 

「ん?そうなのか?珍しいな」

 

と言っても行く当てなんて無いんだが...

 

「なら帰る前に久しぶりにお茶でもして帰るか」

 

「ふふっ。そうですね、ぜひお願いします」

 

結局2人が帰った後、日が暮れるまでの間俺たちはカチューシャが与えてくれた機会を存分に堪能し、昔話に華を咲かせるのだった。

 

 


 

 

「なんだい?これは?」

 

「戦闘機ボコらしい。ピンチの時に駆けつけてくれるけど結局やられちゃうんだって」

 

「駄目じゃん」

 

「だよなぁ...」

 

―――家に帰ってからミカとのそんな1コマがあったそうな。


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