今日彼が帰ってくるのはいつもより少しだけ遅い予定。だから、戦車道の練習を無理矢理休みにした私の方が早い。
ふっふっふ。いよいよ作戦を実行に移す時が来たみたいだね。
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「ただいまー...ってどしたよ」
彼が玄関を開けてすぐ。出迎えたのはもちろん私。
「どうかな?」
フリルを少し揺らしながら彼に聞いてみる。
「いや、めちゃくちゃ可愛いけど」
「ふふっ、ありがとう。そう言ってくれると思っていたよ」
「いや、それよりも何故にメイド服?今日なんかそういう日だっけ?」
そう。現在私はいつもとは違いメイド服...ではなく、ウェイトレスの格好をしているのだ。
「特別な日...というわけではないけれど、これは交流会で貰った紙袋の中身さ。この前きみが見たいって言ってくれたからね。聖グロの隊長に頼んでいたんだよ」
まぁ私にとって毎日が特別な日というのは間違ってないけどね。と、さりげなく惚気を挟んでみる。
「てことは他の学園艦のやつも?」
「もちろん入っているよ」
「ひゅー」
大洗、黒森峰、聖グロ...etc
制服の他にパンツァージャケットも入っており、これなら買収された甲斐もあったというもの。まさに至れり尽くせりだ。
「それと、これはメイド服じゃなくてウェイトレスの服だよ。前に戦車道の広報として着ていたものさ」
「広報で何故ウェイトレスなのか...」
「協賛が大手ファミレスだったからね。何故ファミレスとコラボしたのかは私にもわからないけど」
「おおう。どうなっとるんや最近の戦車道は...」
まぁなんだかんだで他の皆も楽しんで着ていたし、悪くはなかったとは思う。
「ちなみにどこのファミレス?」
「ココス」
「そのコラボまだやってんの?」
「もう終わってるね」
「なん...だと...」
私の言葉を聞いた彼は目の前で残念そうに肩を落とした。
「なんだ行きたかったのかい?」
「まぁお前らのコスプレ姿見れるなら普通行きたいと思うだろ」
「なら大丈夫。今日の私を見たまえ」
そう。何を隠そう今の私はココスのウェイトレス姿。当時と同じココス気分?を味わえるのはここだけなのだ。
「おおー!流石ミカ。改めてめっちゃ可愛い」
むふーっ。もっと褒めたまえ。
「と、いう事は今日の夕飯は鉄板を使った?」
「オムライスです」
「ハンバーグちゃうんかい。てかココスにオムライスあるんか?」
「ある。...と思うよ」
「おい広報担当」
◇
「はい。どうぞ」
「お、流石!美味そう」
まだまだ料理の腕を上げ続けている私にとって半熟オムライスなんてお手のもの。ウェイトレスではなく厨房でだって働ける。
「んじゃあ、いただきます」
「ちょっと待って」
「え?」
「よく見て欲しい。ケチャップがかかってないだろう?」
「かかってないな」
「今から私がかけるから、それが終わってから食べるのがマナーさ」
「お、おう?」
これはこのオムライスを完成させる上で1番重要な最終工程なのだ。なんせ今日はココス顔負けの料理にするつもりだから。
「───はい。出来たよ」
「...何故にハート形?」
「さぁ、一緒におまじないをしてこのオムライスに萌え萌えパワーをためよう」
「いや、なんや萌え萌えパワーって」
「とにかく、私に続いておまじないをしてくれたらいいから」
「おっさんにはそれきついで...」
「はい、せーの」
『おいしくな〜れ、おいしくな〜れ、萌え萌えキュン』
ふう、決まったね。これでこのオムライスは今、世界で一番美味しいものとして完成した。そう。これが萌え萌えパワーなのだ。
「ココスの店員はそんなことやらんだろ」
「やる。...かもしれない?」
「いや、絶対やらねぇよ。逆に、やったら大問題だわ」
「ともかく、味は保証するよ?是非食べて欲しい」
「へいへい。じゃ、改めていただきますかね」
今なら萌え萌えパワーもたまっているから美味しい事間違いなしなのである。
「うん。めっちゃ美味いわ」
ほらね。
「何?誰かに習ったの?」
「ちょっと清流房でね」
「それはラーメン店だろ」
「きみはオムライスを食べてるんじゃない。情報を食べてるんだ?」
「それはラーメンハゲだろ」
ラーメンハゲとは失礼な。芹沢さんは髪の毛がラーメンに入らないために剃っているというのに。
と、ラーメン発見伝はおいといて
「そろそろ私も食べたくなってきたな」
「ん?いいz...あのさ。ここ俺の席、てか俺の膝」
そう。私がぽすん、と腰を下ろしたのは彼の膝の上。
「本日の特等席は貰ったね」
「残念ながらこの席は別料金です」
「私はVIPだから問題ないね」
「誰か。店員さん呼んでください」
「店員は私だよ」
「当店ではお触りなどのサービスは禁止となっております」
「それは私がいう言葉じゃないかな」
「「...」」
「「...ぷっ。ハハハハッ」」
結局、お互いの目が合って2人揃って笑ってしまった。ちょっと長めのコントもここで終わりのようだね。
「食事中は行儀悪いからな、今日だけだぞ?」
「うん」
手慣れた感じで私がバランスを崩さないように左手を腰に回し支えてくれる彼。実をいうと食事中以外ではよくこうしてもらっているのだ。
「ほれ。あーん」
「あーん」
「...どうだ?」
「うん。きみの萌え萌えパワーが注入されてて更に美味しくなってるね」
「おいやめろ。恥ずかしいわ」
「ふふっ」
今更恥ずかしがったって無駄さ。さっきの光景はこの目にしっかりと焼き付けさせてもらったからね。
「次は私が食べさせてあげよう」
「へいへい」
「はい、あーん」
出したスプーンに彼が少しだけ顔を前に出してくる。そんな隙を私が逃すわけわなく、彼がスプーンに口を付けた瞬間、その頬にキスをした。
「どうだい?」
「どっちのこと?」
「さぁ?どっちだろうね」
まぁ正直どっちも感想が欲しかったという下心はあったけど、それは少し求めすぎ。
「それで?オムライスの評価は?」
「んー...。堺正○も納得の星、3つ!」
「ふふっ。それはよかった」
若干例えが古いが、彼の口に合ったのなら私はそれでいいのさ。
◇
「ミカー。コーヒー淹れといてー」
「はいはい」
脱衣所から聞こえる彼の声に私はいつものように返事をする。
ちなみに今はコスプレはしていない。お風呂入っちゃったからね。
「お、ありがと」
「うん。どういたしまして」
お風呂から出てきた彼にコーヒーカップを手渡すまでが一連の流れ。
「そういえば、服くれた人。聖グロの隊長の...ダージリンだっけ?」
「そうだね」
「今度お礼でもせんといかんなー」
「まぁ別に大丈夫だとは思うけどね」
これは聖グロの学園艦に視察に来て欲しい...というか、おそらくは彼らとのパイプを作る為に私を買収した訳であって。
その目的は粗方ではあるが、こうして達成されているわけだし。
「いやー流石に何もなしはまずいやろ」
「ならお茶菓子とかでいいんじゃないかな?ほら戸棚に入ってるあれとかで」
「いや、あれはあかんやろ。茶菓子じゃなくて普通のお菓子やん」
「んー。きみもわかってると思うけど、相手はあの聖グロだからね。行動には何かしらの裏があるだろうし、付かず離れずぐらいがちょうどいいと思うよ」
「確かに。てか俺が視察行くって話の発端もあいつだったな...あ、わざわざ茶菓子買う気失せてきた」
「イギリスにも似たような名前の料理もあるし、繋がりも良いんじゃないかな?」
まぁ名前が似てるだけでイギリスの料理はとても不味いらしいけど。
「そうだな。んじゃそれでいっか」
よかった。彼も納得?してくれたようだ。
「それじゃあ贈り物も決まった事だし、後はゆっくりテレビでも見ようじゃないか」
「だな。しかも今日のロードショーはあれらしいぞ」
そう。今日のロードショーは宇宙人の襲来に戦艦で立ち向かうあれ。戦艦がドリフトして主砲斉射するシーンは何度見ても飽きないんだなぁこれが。
「ほれ、ミカ」
ソファーの上でぽんぽんと自分の膝を叩く彼。そして私もその膝にいつものように腰を下ろす。流石にチキンブリトーの用意はしてなかったけど、これで準備万端だ。
あとは...今のうちに明日着る服も考えておこうかな。まだまだ着る服はいっぱいあるからね。
「ダージリン様。例の彼から贈り物が届いていますよ」
「ええ、ありがとう。そこに置いてちょうだい?」
「わかりました。...でも何故わざわざこんなものを贈ってきたのでしょうかね」
「?」
「これですよこれ」
そう促されてダージリンが見た中身は
うなぎパイと蒟蒻ゼリー。
「え?どういうこと?まさか私先日の一件で嫌われたままなのでは!?」
戦艦が簡単に沈むか!