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飯の作れない家元


カゾク × ノ × ダンラン 4/4

ミカたちの料理を待っている中。ようやく説教が終わったのかゲッソリ顔の家元だけが居間に入ってきた。

 

「あれ?家元も一緒に料理作るんじゃないんですか?」

 

何故家元だけ戻ってきたのか。うちの父と母は料理の手伝い行ってるっぽいのに。

 

「私も行ったんだけど、娘たちから足手まといは入ってくるなと...」

 

oh...。

 

「家元。家でちゃんとご飯とか作ってます?」

 

「うっ...」

 

あっ。ちょっと同情しかけたけど、やっぱり家元が悪いわ。

 

「なんでもお手伝いさんに頼むんじゃなくて、人並み程度には作れるようになることをお勧めしますよ」

 

「はい...」

 

はぁ。そんなんだから愛里寿も家出するんだよ。

 

「まぁ俺が言うのもなんですが、折角来たことですし今日はゆっくりしていってください」

 

「おば様とおじ様がいる時点でゆっくり出来ないのだけど」

 

そこに関しては自分の蒔いた種だと思え。愛里寿の家出騒動じゃなかったら普通に歓迎されてたよ。

 

「ああそれと、ミカの事についてだけど」

 

「え?」

 

「あなたもようやく決心したようね。義母としておめでとうと言っていいのかしら?」

 

「ええまぁ。俺でいいのか正直今でも疑問ですけど」

 

「あなただからいいんでしょ?そこは自信持ちなさい」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「まったく。ここまで来るのに何年かかったのか。最近連絡がないと思えばいつの間にか婚約者になってるし」

 

それに関しては今日決まったんだから仕方ないでしょ。

 

「愛里寿も知らないうちに婚約者とか作っちゃうのかしら...そうなると私立ち直れないかも」

 

「んー。まぁ少なくともミカと同じ血を引いてますからね。否定は出来ませんね」

 

大元はあんただけどな。

 

「まぁまだ相手がいなさそうなのが唯一の救いかしら」

 

「いやいや、案外いるもんですよ身近に」

 

愛里寿本人が自分の感情に気が付いているかは分からないが、おそらく想い?相手はうちの兄貴。

 

「今回のようなことが続けば愛里寿は駆け落ち。なんてこともありえるんじゃないですか?」

 

「え!?ど、どうすれば...」

 

「まぁ愛里寿も一人で息抜きしたい時だってあると思いますし、ある程度自由にしてあげればいいんじゃないですか」

 

溺愛され過ぎててうざかったってのは、家に束縛されてたってのもあると思うし。

 

「でも愛里寿のこと構えないとなると、私の1日のうち半日の予定がなくなるのだけど」

 

おい、仕事しろ。どんな1日送ってんだよ。

 

「ともかく。愛里寿ももう13歳を超えてます。プライベートが欲しい年齢になってきてるんですから、それなりに自由にさせてあげてください」

 

「ううっ...」

 

そんなで泣き顔で言ってもダメだぞ。

 

「そもそもミカの時だって、結局あなたは背中を押してくれたじゃないですか」

 

ミカが家を出て継続高校へ進学したのだって、結局は家元がそれを認めてくれたからなんだから。だから正直、愛里寿の背中もミカの時と同じように押して欲しい。

 

「確かに...あなたのいう通りなのかもしれないわね」

 

自分の娘を大事に思う以上に、娘のことを信頼してあげている。それが家元を尊敬できる一つでもあるのだから。

 

「わかりました。私も、もう少し愛里寿の好きにさせてあげるようにするわ。あの子のこと信じてるもの」

 

「そうしてあげてください」

 

「まぁでも。ミカのように熱愛しすぎて婚約者さんの話をずっと聞かされるっていうのは、もう勘弁願いたいわね」

 

「ははっ。それは幸せでいい事じゃないですか。俺としては嬉しい限りですよ」

 

自分の娘が幸せそうに話してるんだ。それを聞くのもまた親の責任ですよ。

 

「それよりも、あなたたち。婚約者なんて回りくどいものよりも、私としては高校卒業したら結婚でもよかったと思うのだけれど?」

 

「いや、大学生なのに既婚者ってのもあれでしょ」

 

既婚者ってレッテルがあると大学生活が楽しめなくなるだろうし、正直俺としては、やっぱり人生で一度しかない大学生活をミカに謳歌して欲しいから。

 

「大学生を謳歌してもらうなら尚更結婚した方がいいと思うけれどね」

 

「というと?」

 

「だってそっちの方が悪い虫が寄り付かないじゃない?」

 

「むむむっ。確かに」

 

家元のいう通りかもしれん。ぶっちゃけ悪い虫とかきたら俺トマホークぶち込むと思う。ミカに手ぇ出すとか許せんもん。

 

「まぁ、ミカが満足してるようだから私としてはこれ以上言わないでおくわ。別に心配はしていないし」

 

「え?」

 

「ミカにはあなたがいれば大丈夫。あなたのこともちゃんと信頼してるのよ?」

 

「家元...」

 

「家元ではありません、これからはお義母さんと呼びなさい!」

 

うわっ。最後の最後でめんどくさいやつだった。

 

 

 

 

「うん。相変わらず、めっちゃ美味い」

 

「だろう?私とお義母さん、そして愛里寿の合作だからね」

 

「私も頑張って、おば様とお姉様のお手伝いした」

 

家元との話し合い?の後少しして3人の料理が出来上がった。メインは母とミカ。愛里寿はまだ料理の経験はないからそのお手伝いという形。

 

「愛里寿ー偉いなー」

 

「えへへ」

 

愛里寿撫でるとまた嬉しそうに顔を崩した。

 

13歳の愛里寿でさえ手伝いができるというのに、ここにいる家元は手伝いすら出来るビジョンも見えずに戦力外通告。

 

ほれ、ミカたちの料理食べて嬉し泣きしてる場合じゃないで家元。家事力で愛里寿にすら負けてるで?ほんま家元頼むでほんま。

 

「え?お前毎日こんな美味いもん食べてんの?」

 

「んー、まぁな。俺が作る時もあるけど」

 

最近は帰るの遅くてミカに作ってもらいっぱなしだけど、まぁどのみち独身貴族の兄貴には当分味わえん代物よ。

 

「ぐぬぬ。普通に羨ましい」

 

「お、ようやくパートナー探す気になったか兄貴」

 

「なってないわ。俺は独り身を謳歌してる方が性に合ってんだよ」

 

「え?大兄様はずっと結婚しないんですか?」

 

「そうだなー。独り身の方が楽だからな」

 

「そう...ですか」

 

おいおい、見るからに愛里寿が意気消沈しちゃってんじゃねぇか。

 

ダメよダメ!分かりやすいように説明してあげて!

 

「大丈夫だぞー愛里寿。兄貴はきっと愛里寿が大きくなるまで待ってくれてるんだ」

 

「...!?」

 

「だから焦らなくていいから。愛里寿がその気持ちを打ち明けるまで兄貴は独身を貫くと思うよ」

 

「お兄様...ありがとうございます!」

 

「礼なら後で兄貴に言ってやりな」

 

「はい!」

 

耳元で囁いた俺の言葉に、愛里寿は嬉しそうに返事をした。

 

愛里寿のことだから自分は年齢的に兄貴には不釣り合いだろうと思ってたんだろうな。兄貴にはもっと歳の近くて話の合う女性の方がいいんじゃないかと。

 

でも今日1日の2人を見ればわかる。

 

これ以上ないぐらいお似合いのカップルになるよ。

 

 

 

愛里寿。恋に年齢なんて関係ないのさ。

 

そう。俺とミカがそうだったように。

 

まぁ、今回の件でそう遠くない未来に愛里寿が兄貴に打ち明けそうではあるけどな。

 

 

 

なんせ愛里寿は、あのミカの妹だから。

 

 

 

「子供は素直だな」

 

「そうだね。誰かさんと違って」

 

「ん?それ俺も含まれてる?」

 

「ふふっ。どうだろうね」

 

おかしいな。最近は結構素直にやってんだけどな。

 

そう思いながら、ミカが淹れてくれたコーヒーに口をつける。

 

ブラックなのにミカの淹れたコーヒーは1番美味しい。コツでもあるのかと聞いたら

 

「君のことを想いながら淹れるのがコツさ」

 

と言われた。

 

ほんとこういう空気で惚気られると嬉しいやら恥ずかしいやら感情が整理できなくなる。

 

いつものように仲睦まじく2人でコーヒーを飲んでいると、気付けば全員の視線が自分たちに向いていた。

 

「ほんと新婚以上だな」

 

「そうねぇ」

 

「なんだろう。すげぇ負けた気がする」

 

「ミカのコーヒー。私も飲みたい...」

 

父母の言わんとすることはわかるが、兄貴は独身な時点で現在負けっぱなしだろうが。

 

あ、自分でコーヒーも淹れれない家元は黙っててください。

 

 

 

 

「んじゃそろそろ帰るわ」

 

楽しい家族団欒の時間も終わり、名残惜しいがそろそろ帰らないといけない。

 

ミカも愛里寿も学校あるからな。

 

「ミカちゃん。うちの子を選んでくれて本当にありがとう」

 

「これからは紛れもない家族だからね。いつでも遊びにきなさい」

 

「お義母さん、お義父さん。ありがとうございます」

 

父母からの言葉にミカも嬉しそうにそう返した。

 

「愛里寿ちゃんも。いつでも連絡してね」

 

「はい!おば様!」

 

愛里寿も完全に元気が戻ったようで良かった。

 

「大兄様!これからもよろしくお願いします!」

 

「おう。近々戦車整備しに行ってやるからな」

 

「やった!」

 

魔改造計画は潰したが、なんか嫌な予感しかしねぇ...。

 

まぁそん時は俺も一応ついていくことにしよう。

 

「ほら家元も帰りますよ」

 

「うごごご。私の母としての威厳は...」

 

「そんなの元からないでしょうよ」

 

全く。戦車道に関しては頼りになる存在なのに、こういうことに関しては鈍感過ぎるんよなぁ。

 

ほんとミカと愛里寿には反面教師として育って欲しい。

 

ん?あれ?そういえば同じような反面教師がいたような...。

 

いや、考えるのはやめよう。何故だか嫌な予感がする。

 

頭の中に浮かんだ事を振り払い蓋をしようとした時に、自分の携帯が鳴っていることに気付く。

 

画面に表示されている名前はまほ。

 

「まほか。どうした?」

 

「兄さん。詳細は省くが、みほが兄さんの家に向かってるらしいんだ」

 

「んぇ?」

 

「お母様に何か言われたようでな。私も今からそっちに向かうから」

 

まほは急いでいるようで、その言葉を最後に電話が切られた。

 

そして、時間を置かずに電話が鳴る。

 

相手はしほさん。

 

「どうしました?しほさ「そっちにみほが行ってない!?」うおっ」

 

電話口に怒鳴らないで!耳がキーンってするでしょうが!

 

「今実家にいるので詳しくはわかりませんが、うちに向かってるらしいです。まほから連絡ありましたよ」

 

「そう。よかった...」

 

よかった。じゃないんだよなぁ

 

「何か心当たりは?」

 

「うっ」

 

うっ。って言った!絶対心当たりあるやつだよこれ!

 

「じ、実はみほが中々家に帰ってきてくれないものだからつい電話をかけたのだけれど...」

 

「だけれど?」

 

「そこで少し口論になっちゃって」

 

「そのあとすぐかけ直したのだけれど、着信拒否されちゃって...」

 

はいアウトー。しほさんが悪い。

 

可愛い娘のためと思って口論になるのはわかるが、千代さんと違ってしほさんは娘に対して素直じゃなさ過ぎるんよ。もうちょっと自分の感情出して可愛がってあげた方がいいんよ。

 

千代さんとしほさんはベクトルが向いてる方向が真逆だから、その間取ったらめっちゃ良くなると思うのに。そうはならないのが2人の残念なところ。

 

「ちなみに今の会話。うちの母も聞いてましたので」

 

「え?」

 

え?じゃなくて

 

「実家にいるって言いましたよね」

 

「しほちゃん。分かってるわよねぇ?」

 

「ひぇ」

 

母の冷えた一言を聞いたしほさんが軽く悲鳴をあげている。

 

みほと連絡つかなくて追い詰められてるのはわかるが、もうちょっと周り見ないと...。

 

あと千代さんも笑わないの!あんたも同じなんだからな!

 

「ふふふ。千代ちゃんも、もう一回お説教ねぇ」

 

「」

 

ほら言わんこっちゃない。

 

はぁー。どうやら俺は同じやり取りを繰り返さないといけないらしい。

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