ようこそ第0護衛隊群へ   作:/Null

44 / 105
ロシアンティーの味は知らんけどな!


NONNA
NONNA 1/3


眼前に止まった戦闘機のキャノピーが開く。

 

降りてきたのは1人。同乗者は見えない。

 

「お待ちしておりました同志」

 

「おう。久しぶり...ってわけでもないか。お出迎え、わざわざありがとな」

 

「いえ。我が校において重要な客人をお出迎えするのは当然のことですから」

 

彼の言葉に私はそう返した。

 

何を隠そう今日は同志が公言した視察の日である。

 

数日前にみほさんや愛里寿さんとボコミュージアムへ行った日以来であるから、同志と会うのは久しぶりというわけではないが、ここプラウダの学園艦の上では数年ぶりの再会だ。

 

正直この大地?でまた会えたことが嬉しい。数年前にお別れをした時はもうここで会える感じはしなかったから。

 

「どうですか?プラウダの滑走路は?」

 

「んー。普通にいいな。地面はフラットだし長さも申し分ない。何より管制官もしっかりしてる。大満足だよ」

 

「ふふっ。そうですか、それはよかったです。あなたが来るからとカチューシャも張り切りましてね」

 

「そうか。なら、がきんちょにお礼をしないといけないな」

 

「はい。是非そうしてあげてください。カチューシャも喜ぶと思います」

 

今まであった滑走路はお世辞にもいいとは言い難いものであったが、カチューシャの一声で本格的な改修を行ったのだ。彼に無様な滑走路なんて見せるんじゃないと。どの学園艦よりも降りやすく、満足できる滑走路を作ると。

 

その目標は概ね達成されたみたいですね。

 

「ノンナも。ありがとな」

 

「いえ、私は特には何もしてないので」

 

「実働部隊はいつもお前だろ?だから、今回もありがとな」

 

「...ど、同志。そ、その少し恥ずかしい...です」

 

唐突に頭を撫でられた私は、そういう事をされるのにあまり慣れておらず、少しの恥ずかしさから声を出したが、今この時間は不思議と心地よくはあった。

 

「ん?あぁすまんな、いつもの癖で」

 

「い、いえ。嫌というわけではなかったので...」

 

彼の手が離れた。

 

やはり少し...残念。

 

「...いつもの癖、ということはミカさんに?」

 

「まぁな。あいつ、こうすると喜ぶから」

 

「なるほど。でも今日はそのミカさんが見当たらないのですが?」

 

交流会の時にあれだけドヤ顔してついて行くと言っていた彼女の姿が見えない。

 

先に乗艦しているんだろうか?でもそんな話は聞いてないし。

 

「がきんきょからの連絡でな。ミカは戦車返すまで乗艦禁止だとよ。まぁ自業自得だな。ったく、あれだけ早く返せって言ったのに」

 

「それは残念?でしたね」

 

「まぁ今回の件はあいつにもいい薬になったんじゃねぇかな。最後まで延々と悩んでたし」

 

悩むぐらいなら早く返して欲しいのだが。まぁ今まで返す気なんて全くなかったあのミカさんがそこまで悩むってのは、やはり彼の影響が大きいのでしょうね。

 

でも、そのミカさんが来ないのであれば

 

「今日は独り占め。という事ですね」

 

「んぇ?」

 

予想外の言葉だったのか彼から戻ってきたのは気の抜けた返事。

 

「ふふっ、冗談ですよ。これからカチューシャにも会う予定ですから」

 

「...この前もそうだったけど、お前そんなこと言うキャラだっけ?」

 

「?変わってる気はないのですが?」

 

「いや、変わったよ」

 

確かに出会った頃は冗談の一つも言わなかったけど、そこまで変わってないと思うのですが。

 

それとも知らないうちに何かに影響されたのでしょうか?

 

 

 

 

「よく来たわね!歓迎するわ」

 

「おう。精一杯歓迎しろ?」

 

「それ、される側のセリフじゃないと思うんだけど!?」

 

「実際客人ではあるんだから間違ってないだろ。ほらコーヒー淹れてきて」

 

「何で私が淹れないといけないのよ!それにここはプラウダよ!頼むならロシアンティーなしなさい!」

 

「んじゃそれで」

 

「わかったわ!任せなさい!」

 

何故か納得してロシアンティーを淹れに行くカチューシャ。

 

...あ、戻ってきました。

 

「ちょっと!なんで私が淹れる事になってるのよ!自分で淹れなさいよ!」

 

「いや、どこに客人に淹れさせるところがあんだよ」

 

「ムキーッ!こうなったら!ノンナ!」

 

「はい」

 

「1番いいロシアンティーを淹れてあげなさい!」

 

「もう淹れてあります」

 

カチューシャと彼のやり取りが微笑ましすぎてずっと見ていたが、私の手元には既にロシアンティーを握っていたのだ。

 

「どうぞ」

 

そう言って、2人に持っていたカップを渡す。

 

「お、いつもすまんな」

 

懐かしい...。あの頃もこういうやり取りを聞いた後に、私の淹れたロシアンティーを渡していましたね。

 

「んー。やっぱりノンナの淹れたのは美味いな」

 

「ふん!そんなこと当たり前じゃない!」

 

「お前がドヤ顔することじゃないだろ」

 

世界広しといえど、カチューシャにこうやって軽口を叩いていいのは彼だけでしょう。それ以外であればカチューシャが言わなくてもシベリア送りにしているところです。

 

私たちとの出会い方はあまり良くはなかったのかもしれませんが、それでも今では気のおける人としてカチューシャも懐いています。だから私も気兼ねなく2人のやり取りを見ていられるんです。

 

でも少しだけ嫉妬する時もある。

 

“それは彼に?カチューシャに?”

 

モヤモヤとするこの感情の正体は分からない。けど、ミカさんたちのことを見ていると少しだけ分かってしまう。

 

そして...いつかこの感情と向き合わないといけないことも。

 

目の前にいる彼は相変わらずカチューシャと戯れあっている。でもロシアンティーを口にしてから少しだけ雰囲気が変わったような気がする。

 

「同志?何かご不満が?」

 

「ん?いやいや、不満なんてないだろ」

 

「でも少し、考え事をしていたような」

 

「あー、うん。ほんとに大したことじゃないんだ。お前がコーヒー淹れたらどんな味するんだろうって思ってな」

 

彼はそう言って、申し訳なさそうにしながらも言葉を続ける。

 

「家ではミカに淹れてもらってるんだけどな、これがまた美味いんだよ。俺の好きな味に合わせてくれてるってのもあるんだろうけど、それ以上にな」

 

私も彼がコーヒー派ということは知っている。私がロシアンティーを淹れる時以外はよく飲んでいたから。

 

「だから不満があるとかいうわけじゃないんだ。これだけ美味しいロシアンティーを淹れれるなら、ノンナの淹れたコーヒーも是非飲んでみたいなって思っただけさ」

 

それは彼の本心なのでしょう。決して私の淹れたロシアンティーに不満があったわけではない。ただ、単純に私が淹れるコーヒーの味が気になったと。

 

「全く。コーヒーなんて全部苦いだけじゃない」

 

「ははっ。その苦さがいいんだよ。まぁ、がきんきょがその味を知るのはまだまだ先ってことだ」

 

「だから、がきんきょじゃないわよ!」

 

ふふっ。確かに、今のカチューシャには分からないかもしれませんね。あれは好みがわかれますから。

 

でも、コーヒーか...。

 

正直、自分で淹れてみようという気持ちは今まではなかった。けど彼が飲んでくれるのなら練習してみようかな。

 

そう思わせるほどに、私にとって彼の存在が大きくなっていたのだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。