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優しい君に 桜キッス


継続高校ホスト(クラブ)
継続高校ホスト(クラブ) 1/5


「ねぇミカ。この写真、お兄さんに似てない?」

 

「うん?」

 

継続高校の旧校舎。長年使われていなかった教室で見つけた1枚の写真。古い手記に挟まっていたそれは、いつのものかすら分からない。

 

だが辛うじて読めたそのタイトルにはこう書かれていた。

 

 

 

 

“継続高校ホスト(クラブ)”と

 

 

 

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ー月○日

 

 

今日この日から記録を残していくこととする。

 

何故今日からかだって?

 

それはつい数分前のこと。生徒会から、部員数が集まらないようなら□月末を目処に廃部にすると言われたからだ。

 

チッ。生徒会の奴ら、人が居ないから廃部廃部って簡単に言ってくれる。ここは私にとっての居場所である大切な場所だぞ。

 

...まぁ今現在、この部に在籍しているのが私1人なので仕方ないのかもしれないが。

 

...ともかく部員だ。そこさえクリアすれば文句は言われまい。

 

だからこれからは部員を集める為。そして生徒会連中の鼻を明かすためにその記録をつけていく。

 

ふっ。見てろ?私にかかれば部員の増員など容易いということを知らしめてやる。

 

 

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ー月×日

 

 

何故だ。

 

ポスターを貼ったり、色んな生徒を勧誘に行ってみたりしたが成果はゼロ。

 

これといった逸材も見当たらず、そもそも興味すら持たれなかった。

 

まずい。非常にまずい。このままでは廃部まで一直線である。

 

あぁ。なんとかならないものか...。

 

明日は戦車道の履修生を勧誘しに行く。ここが最後だ。

 

これがダメだともう打つ手がない。

 

はぁ。少しだけ憂鬱だ。

 

 

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ー月△日

 

 

見つけた!見つけたぞ!

 

あれほどの逸材を見た事がない。

 

これでホスト部も安泰だ!

 

...っ!あぁ、すまない。興奮のあまりはしゃぎすぎていたようだ。

 

私が見つけたのは戦車道履修生である幾人かの戦闘機パイロット。そして、その隊長と思われる彼。

 

高校生とは思えないあの大人びた雰囲気は人気が出ること間違い無し。彼はきっと素晴らしいホストになる。

 

あぁ、手記を残している時間も惜しい。善は急げだ。すぐに声を掛けてくることにする!

 

 

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ー月□日

 

普通に断られた。

 

まぁそうだよな。戦車道やってるのに両立するなんて難しいのだろうな。

 

ホスト部という名前を聞いて悪い印象は持たれなかったのは不幸中の幸いであろう。

 

それに、廃部寸前というこちらの現状を私のジャンピング土下座を交えて話したおかげ?で助力はしてくれるという約束はもらった。

 

なんとも嬉しい話ではあるのだが、結局入ってくれなければ意味はないのだ。

 

...はぁ。彼らのことは諦めるしかないのかもしれない。

 

 

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ー月◇日

 

考えうる限りこれしかない。この作戦しか...。

 

彼らには近々開催される文化祭にホスト部の臨時部員として出てもらおうと思っている。そこでPRするのだ。この部を。

 

幸いなことに戦車道として文化祭に参加することは無いと聞いた。そして、助力はしてくれると言っていた。だから、何とか参加してもらいたい。

 

そうすれば入部希望も絶対増えるはずだから。

 

 

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ー月⊿日

 

結論から言おう。彼らは快く承諾してくれた。

 

...よかった。あとは文化祭に向けての調整だ。

 

ホストは何系にするかであったり、衣装であったり、メニューであったり。

 

やることはまだまだ山積みだが、肩の荷が1つ降りた気分ではある。

 

彼らが出てくれないと、文化祭参加どころではなかったからな。そして、その憂いは無くなった。

 

あとは、私次第。

 

よし!頑張ろう!

 

 

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ー月∂日

 

今日は彼らと打ち合わせをした。

 

本当に申し訳ない話ではあるが、彼らとしっかりと話し合うのは今回が初めてである。

 

話し合いの中分かったことは、彼らは思った以上にフレンドリーで、この参加をとても楽しみにしていたという事だった。

 

正直に言おう。

 

嬉しい。

 

戦車道をしている時の彼らは、はたから見れば厳格で文化祭などのイベント事にあまり興味はないのかと思っていたが、目の前にいる彼らから感じられるのは私と同じ年相応の高校生ということ。

 

私は少し、彼らを勘違いしていたのかもしれない。

 

...あぁ。もちろんいい意味でだけど。

 

周りから大人びて見られていた彼らではあるが、本当はこういう催しに参加したかったのだろうか。

 

ならば私は、そんな彼らの期待にも応えたい。

 

彼らにとっても最高の文化祭にしよう。

 

そう決意を抱いた。

 

 

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ー月%日

 

 

ある程度の方針も決まった。

 

本当はクール系だの王子様系だの色々と決めたかったが、キャラ付けは流石に無理だと彼らから言われてしまった。

 

 

残念。

 

 

 

案がなくなってしまったのは少し勿体無い気持ちではあるが、まぁ彼らなら素であることが1番なのだろう。私が心配する事でもないな。

 

 

 

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ー月♪日

 

文化祭まで後1週間。

 

衣装も決めた。メニューも決めた。

 

よし。準備は万端だ。

 

因みに、衣装は薄青のブレザーっぽい制服。

 

何故かと聞かれても理由はわからない。けど、それにした方がいいような気がしたから。

 

どこかからか、“優しい君に桜キッス”というフレーズが聞こえてきた気もしなくはない。

 

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ー月⊆日

 

もう前日だ。

 

明日でこの部の将来が決まる。あぁ、緊張してきた。

 

実を言うと、私も文化祭に出るのは今回が初めてなのだ。

 

だから、明日人が来なかったらどうしよう。メニューが不評だったらどうしようと常に考えている。

 

でも、そんな不安以上に明日が楽しみで仕方がない。

 

衣装を着こなしている彼らは最高だったし、それに、巻き込んでしまったとはいえ彼らとこのようなイベントに参加出来るとは思っていなかった。

 

...。

 

ふふっ。

 

明日のことを思うと自然と笑みが溢れる。

 

さあ、もう寝よう。そして、明日を存分に楽しもう。

 

 

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ー月⊃日

 

文化祭当日。

 

朝からすごい反響だ。

 

確かに彼らのことを売りにはしていたが、どこでそんなに噂が回ったのだろうか。今も部屋の前には長蛇の列が並んでいる。

 

うちのPRも順調だ。

 

やはり、彼らに頼んだことは間違っていなかったな。

 

 

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ー月⊃日

 

午前が終わったのだが、忙しすぎる。

 

そしてそれに涼しい顔で対応している彼らはいろんな意味で凄すぎる。

 

こっそり副業でホストでもやってるのか?そんな疑問すら感じる。

 

だがやはりというか、こうやって一つのことに打ち込むというのは楽しいものだな。

 

少し前までは廃部を回避する事しか考えれなかったが、今はこの状況を楽しめるだけの心の余裕がある。

 

それもこれも、彼らのおかげだな。

 

忙しいという以上に、この時間がずっと続いて欲しい。そう思ってしまう。

 

 

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ー月⊃日

 

あぁ...文化祭も遂に終わってしまった。

 

あっという間だったな。

 

だが、当初の目標は達せられた。

 

文化祭が終わった後でも、我が部に人が殺到しているのがその証だ。

 

まぁ、何故か女性しかおらず、皆揃って彼らの素性を聞くばかりなのが気にはなるが、大成功?と言えるだろう。

 

そんな彼らとの関係も今日で終わり...。

 

はぁ。短い間ではあったが、彼らの人間性に触れた私は純粋にこのまま残って欲しかった。こんな楽しい時間をもっと過ごしたかった。

 

 

 

だが、それは叶わぬ願いなのだ。

 

...実は少し前に聞いたことがあったんだ。戦車道とはどんなものなのかと。

 

すると隊長である彼はこう言ったんだ。

 

“戦車道には人生の大切な全てのことが詰まっているんだ。”と。

 

私は、その一言で見てみたくなった。彼らを焚きつける戦車道というものを。

 

だからこれからは彼らを追って行こうと思う。もちろん、ホスト部は続けたままで。

 

あぁそれと、この写真は残しておこうと思う。

 

これから彼らの事をもっと知っていく第一歩として。

 

そして、この文化祭で出来た彼らとの絆の証として。

 

 

―――――――――

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話は冒頭に戻る。

 

アキが見つけた写真。それに写るのは間違いなく若かりし頃の彼。そしてラーズグリーズの人たちの姿。

 

薄青っぽい制服を着てはにかむ彼らの姿は某ホスト(クラブ)と遜色ない。

 

まぁ流石に男装女子はいないと思うが。

 

「ふーん。やっぱりお兄さんなんだ」

 

「そのようだね」

 

笑みをこぼした私の表情から、アキも写真の人物が彼という事を察したようだ。

 

それにしても、ホスト部か。私も生で体験してみたかったな、彼のホスト姿。

 

「え?ミカならすぐ見れるじゃん」

 

「うん?」

 

「だって同棲してるんでしょ?なら服さえ手に入ればいいんじゃないの?」

 

「!?」

 

そうだった。今からでも体験出来るのだった。アキの言う通り服さえ手に入ればいいのだ。そして、服に関してはおそらく実家に置いてあるだろう。なら、お義母さんにお願いすればすぐに送ってくれるはず。

 

くっ。私とした事がこんな初歩的な事を失念していたなんて。

 

「ミカ。気付いてなかったでしょ」

 

「さぁ?どうだろうね」

 

「...まぁいっか。どうせすぐ気づく事だったし。それよりも、あとはお兄さんが着てくれるかでしょ?」

 

「?」

 

「なんでそこは“?”なのよ」

 

いや、“?”もなにも

 

「彼が着てくれないはずがないだろう?」

 

きっと恥ずかしがりながらも着てくれるさ。

 

「...はぁー。まぁミカのお願いなら着てくれるだろうね!聞いた私がバカでした!」

 

得意げに言った私の言葉にアキが少し拗ねたように返す。

 

ふふっ。当然じゃないか。だって彼は

 

「私の“婚約者”だからね」

 

「うううううっ!惚気だ!結局惚気られただけだった!」

 

むふーっ。と自信満々に胸を張る私に、最近恒例となっているアキからの言葉を贈られる。

 

「アキも。そろそろいい人見つけなよ?」

 

「その一言は余計だよ!」

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