「で、なんでお前らがここにいるんだ」
訝しげな表情を浮かべる彼の目に映るのは、
“唯一の
「私たちの署名は兄さんも見ただろう?」
「いや、見たけどさ。行動早すぎだろ。昨日の今日よ?来ると思ってなかったわ」
「署名だけして来ないわけがないじゃない。それに、シーホーク使えば黒森峰からだってすぐに着くわよ」
「おうふ、確かに」
当時のホスト写真付きでリークした情報の力は絶大で、3人共例に漏れず我が家に押しかけて来ることとなってしまった。
「ノンナは乗せられただけだよな?」
「...(プイッ)」
彼の言葉に少し顔を背けるノンナ。
「おい、乗せられただけなんだよなぁ!!??」
そう。先程の話に例外なんていないのさ。
「うぅ、お前はツッコミ役の常識人だと信じてたのに...」
「いや、ミカさん達と比べると常識人だと思いますが...」
「その言い方だと、私が常識人じゃないと聞こえるんだけど?」
失礼な。掃除もできて、料理もできる。そして何よりも写真だって皆にリークするような気配り?ができる。そんな完璧超人???たるこの私が常識人じゃないと?
「普通は昔の写真を見つけたからといって、今の同志に着てもらおうとする発想にはならないと思いますが」
むむむ。
「でも、それに釣られてきみが来ているのも事実だろう?」
「うっ...」
私の的確な返しが図星だった為か、ノンナが言葉を詰まらせた。
ふっ。勝ったね。というか、そもそも
...ん?論点がずれてるって?
ふふっ。そんなことは関係ないのさ。なんて言われようとも私は常識人だから。
「完璧超人ならアキやミッコに迷惑かけないだろ」ボソッ
...何か否定的な意見が聞こえた気がするが、きっと気のせいだ。
それよりも
「ほら、早く着てきてほしいな」
送られてきた服はまだ彼の手元にある。それを着てもらわないと、ここからの話が始まらないからね。
「へいへい、似合ってなくても文句言うなよ」
「言わないって」
まぁ、きみが着て似合わないわけはないと思うしね。
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―――――――――
「どうよ」
「「「「...」」」」
「...なにか言って」
「いや、なんというか...。もちろん、いいんだ。いいんだけど...」
「写真と見比べると、やっぱりあんたも歳取ってるんだなって」
「やめて!そんな現実突きつけないで!」
似合ってる似合ってないでいうと、もちろん似合ってる。ただ、やっぱり写真と比べるとどうしても思ってしまう。
「体格とかはあんまり変わってないっぽいのに。あんた、顔付きだけは老けていってるわね」
まぁその歳の取り方も◎なんだけど。
とういか何故当時の服装をそのまま着れるのか。そこに関してはずるいと声高く言いたい。
毎日カロリーを気にしつつ美味しい料理を考え、戦車道をして体型を維持している私たちのことをなんだと思ってるんだ、と。
「戦車道を食後の運動代わりに使うなし」
「利用してるだけ、さ」
「そんな事に利用するのはお前ぐらいだよ...」
だって仕方ないじゃないか。他に運動する時間を作るよりも、私としては早く彼の待つ家に帰りたいのだ。と少しの惚気を入れておく。
周りを見れば皆同じ反応を───
「...ノンナ?」
「...へ?」
何故かノンナだけが彼を見てぎこちなく彼を見ていた。
「どうしたんだい?らしくないじゃないか」
いつもの調子なら先程の発言に対して一言ぐらいあってもいいのに。
「い、いえ。私は若い頃?の同志のことはよく知りませんでしたので、写真と見比べるのはなんかこう、新鮮だなと」
そう言ってノンナが少しだけ頬を赤らめる。
「そういう反応されるとすげぇ恥ずかしいけど、普通はこう言ってくれるもんだろ。開口一番“老けた”って言われて悲しみが深いわ。お前らも見習え」
「「「むむむ」」」
確かに、私たちが初めて出会った彼は大学生ぐらいのはずだから、高校生時代の若い写真と今の彼を見比べるのは私たちだって新鮮なことだよ。
まぁそれを言葉にしなかったのは悪いけど。
けど、そうやってノンナだけを撫でてることに関しては納得いかないかな。
目の前でこんな羨ましいことが起こっているというのに、良い言い訳が浮かばない私たち3人は指を咥えて唸ることしか出来ない。
そして当のノンナには私たちのことなんて見えておらず、嬉しさと恥ずかしさでいっぱいという表情を浮かべている。
ぐぬぬぬぬ。何とかして私も撫でてもらいたい。
「いや、いつも撫でてやってんだろ」
「「いつも!?」」
「おいミカ。同居しているからとはいえ、いつもそんなことしてもらってるとか聞いてないぞ」
「隊長の言う通りです!前々からそうでしたけど、ミカさんは抜け駆けしすぎではないでしょうか!」
「ふふっ。“抜け駆け”という言葉は適切じゃないかな」
だって私からは撫でてくれなんて言ってないからね。
「じゃあこれからはやらんようにするわ」
「ごめんなさい。やってください」
「変わり身早いなおい」
当たり前じゃないか。
朝は行ってきますのキスから始まって、昼は彼のお弁当。
そして夜は一緒にお風呂入ってソファーで撫で撫でしてもらう。
そんな充実した私の1日を守るためなら変わり身だって早くなるさ。
「ふふふ。ミカさん。後からちゃんと話し合いましょうね」
ゴゴゴゴゴという効果音が聞こえてきそうな雰囲気を醸し出す2人。
これには流石の私も冷や汗ものである。
「ま、まぁまぁお二人とも。ミカさんにも悪気はなかった思いますしここ辺りで───
「今1番の幸福を味わっているノンナさんは黙っててください」
「」
「大体ノンナさんもノンナさんです。告白じみたことを言って恥ずかしがっていたと思えば今日なんて、先日のこと忘れたかのように来てますし、それに───
ふぅ。どうやら、きみの軽率な一言でまほとエリカの矛先が変わったようだね。ありがとうノンナ。
あのモードになった2人はしつこいからね。根掘り葉掘り問いただされて、最終的には身ぐるみ剥がされる。そんなことを何回も経験したのだ。たから、きみの助け船は今の私にとってはまさに渡りに船であった、というわけさ。
当のノンナも2人の圧力に押されてタジタジである。
でも、そんなありがたい状況を作ってくれたノンナではあるのだが、私からも一言言わなければいけないことがある。
「なにしてるのかな?」
「なに、とは?」
見れば彼にコーヒーを淹れているノンナ。この短時間でなにほんわか空気をだしているのか。というかそこは私のポジションだろう。
「お。やっぱり思った通り美味いな、ノンナの淹れたコーヒーは」
「ふふっ。そう言っていただけると練習した甲斐がありました」
「わざわざ練習してくれたのか。ありがとな」
「...えへへ」
「「「むむむむ」」」
そう言ってまた撫でられて照れているノンナ。いつもやってもらっているとはいえ、目の前で何回もされると流石の私も限界である。
「ん?なんだお前らも撫でて欲しいなら───って早いなおい」
こういうものは羞恥心や躊躇いを持ったものから負けていくのだ。だから、あの気の強いエリカだって私に負けずの早身で、彼の前で視線を落としている。
...まぁ、そもそもこの私には羞恥心も躊躇いもないから関係ないんだけどね。
「ほれほれ」
「「「えへへ」」」
ようやく彼にわしゃわしゃされて自然と笑みが溢れる私たち。先程のことはすっかり忘れて、天にも昇る心地である。
「よーしよしよし」
それがムツゴ○ウさん風にされてるのも気付かないぐらいに。
...いや気付いてるよ?気付いてるけど、それを指摘しないほどってことさ。
コーヒーのことに関しては私も言いたいことはあるけど、それは取り敢えず後回し。
だから今はもう少しの間だけ。何も考えずにこの心地良い彼の感触を楽しもうじゃないか。