追記:誤字修正しました。
報告ありがとうございます。
再会
重い瞼を擦り目を開ければ、視界に入ったのは見知った天井。霞む思考を振り体を起こすと、そこはいつものベッドの上。
察するに、先程の見ていた光景はどうやら夢だったようだ。
しかし特に残念がることもなく、思い起こすように再び目を閉じれば、脳裏にはまだ鮮明にあの光景が。
───当然さ。なんたってこれは、私の大切な思い出。一度たりと忘れたことなんてないんだから。
だけど、今日見るなんて───「ふふっ。何かの運命かもね」
そんな気持ちのいい目覚めに背伸びを一つ。
第62回戦車道全国高校生大会も終わり、私もそろそろ高校3年生というこの時期。
継続高校に入学して以来、私は昔と変わらず彼を探している。
...まぁ、これといった成果が上がってないのは悔しいところだけど。
けど。彼の機体はここにある。
“継続高校附属 航空記念博物館”
戦車道の歴史として置かれているここには、大会で使用されていた戦闘機が数多く並んでおり、それは彼らの機体も例外ではない。
その機体を、ここで見つけた時はちょっとだけ涙が溢れ出てしまった。
目の前に彼がいる。そんな気がして。
そして、ここにいれば彼に会える。そんな確信めいた気持ちを抱いて。
私は、今日もそこへ行く予定だ。
何故なら今日は特別な日。彼らラーズグリーズ隊結成の記念日なのだ。
こういう日を、彼が昔から大切にしているのを私は知っているから。
それに、今日は懐かしい夢も見た。運命という風は、今きっと吹いている気がする。
◇
広い館内。けど、もう見慣れた光景の中、私が迷わず辿り着いた先には、張られたロープの中央に置かれた戦闘機が一つ。
部隊章と、あのエンブレムは外されているが、間違いなく私の知っている機体。
“紫電改”
見間違えようなんてない。この機体から降りてくる彼を私は毎日のように見ていたんだから。
ロープの縁、スピーカーのついた案内板をスッと手撫でれば、流れてくる機械的な音声がこの機体の詳細を教えてくれる。
しかし重要なところは省かれており、真実は語られない。
───まぁ...別に、私は全部知っているからいいんだけど。
そんな悲壮感は誰に分かってもらえるでもなく。けど、別に私は気にしていない。
だって、この機体を見ているだけで不思議と気持ちが落ち着くし、彼がそこにいるような感じがするから。
誰にも分かってもらえないこの虚しさの中、いつの間にか私の心の支えにもなってたんだと思う。
だから私は、これからもここに足を運び続ける。たとえそれが、高校を卒業した後だとしても。
───けど...。次来る時は彼と一緒がいいな...?
隣には“まだ”ポカリと空いた空間。けど、次来る時はきっと隣に彼がいる。そう信じてるから。
「───...うん?」
ふとその視線を伸ばすと、私と同じようにその機体を眺めている人物が目に入ってしまった。
帽子を目深に被っており顔はよく見えないが、観光客が見るその目とはまた違う、何かを懐かしむような。そんな雰囲気。
でもこっちの視線に気付いたのか、その人は足早にこの場を去ろうとする。
そして私の前をフッと横切った時、私は反射的にその人の袖を掴んでいた。
なんで自分の手が出たのか分からなかった。
けど、答えは一瞬で出た。
───懐かしいあの“タバコの匂い”だ。
「...待ってよ」
袖口を掴みながら言った私の言葉に、顔の見えないその人はあたふたしながらも逃げようとしている。けど───
絶対に逃がさない。
「この場で大声を出して人を呼ぶよ?そうすれば困るのは“お兄ちゃん”だね」
「ひ、人違いじゃ...?」
動揺を隠せていないその声。聞き覚えのある声色。
「これでも昔から人を見る目はあってね。それはきみも知っているだろう?でもそう...もしきみが本当に人違いなら、私の知っている人の恥ずかしい思い出話をここで暴露しても構わないかい?その人の社会的地位を落としてからの解放でも遅くはないと思うんだ」
「うぇっ!?」
「SNSはこの話で持ち切りさ。なにせ私のお墨付きの話だからね」
片目を瞑りながらも、逃さないという私の強い
「───久しぶりミカ。大きくなったな...」
「───...うん!」
───やっと。やっと会えた。
これまでの、話したい事が沢山ある。
母の事。妹の事。ここで出来た友人達の事。私の事。
そして...あなたの事。
色んな気持ちがごちゃ混ぜにながらも、私は涙を浮かべ彼に抱きついた。
空白の時間を埋めることは出来ない。けど、これからの時間をもっとたくさん彩れるように。
昔以上に彼をもっと知れるように。
そして...彼と一緒に、戦車道が出来るように。
ここから始めるんだ。“私の戦車道”を。
やっと始まった感ある。