「んじゃ、洗い物は俺がしとくから風呂入ってきな」
「え?いいの?」
美味しい夕飯とミカさんのレーション事件もひと段落。これからの時間をどう過ごそうかと考えてる時、彼からそう言われた。
「客人に洗い物してもらうなんて流石に出来んだろ。それに夕飯はミカが作ってくれたからな。だから洗い物は俺の担当なんだ」
「そう。残念ながらね...」
いや、何が残念なんですか...。
何故が落ち込むそぶりを見せるミカさんを疑問に思いつつも、それではとお風呂に行く準備を進める。
「あぁ、せっかくだ。ミカと一緒に入ってきな。うちの風呂はそんなに広くないけど、2人ぐらいなら入れるしな」
「ふふっ。そういう事だから、一緒に入ろうか」
「え?2人で入るんですか?」
「不満かい?」
「いえ、そういう意味では...ないんですけど」
少しだけ歯切れの悪い口調で返して、その理由はと視線を落とす。
だって...他の人と入るとなると、どうしても見比べちゃうから。――自分のスタイルと。
特にミカさんなんて、服の上からでも健康的で女性的なスタイルしてのに...私なんて無駄に筋肉ついちゃってる部分もあるし...。
だから、ちょっと劣等感があって...その...
「───あぁ。なるほど彼と一緒に入りたいんだね」
「ち、違いますよ!なんでそういう話になるんですか!」
そんな事微塵も思ってなかったのに、ミカさんのせいで想像しちゃったじゃない!彼の...その...は、はだか姿とかを...。
───あうぅ...。見られるはもちろん恥ずかしいけど、見るのだって恥ずかしい...。
「そして彼のはだか姿を想像してたと」
「いやだからそれはミカさんのせいで...というか簡単に心読まないでくれます!?」
「まぁいいじゃないか」
「よくないです!」
このままじゃ私のプライバシー無くなるんですけど!
「ふふっ。ちなみに彼の身体はね?やっぱり戦闘機乗る人特有の無駄のない筋肉というか。どれだけ食べても体重は変わらないし、ほんと...どこで代謝してるんだろう?」
そう頭にはてなマークを出しながら言うミカさんであるが...
「───いや、なんで知ってるんですか?」
同棲してるからって、そんなところまで知ってるのおかしくない?そんなことを毎日考えれるような環境、普通ないと思うんですけど。
だが、そんな私の疑問に答えるように今度はミカさんが口を開く。
「それはね、彼は半裸族だから...なのさ。お風呂出た後とかは寝る前まで半裸でうろついてる時とかもあるからね」
「えぇ!?」
衝撃の事実。愛する彼、半裸族。
は、半裸族ってあれよね?そんなに暑くない時とかでもすぐ脱ぐとか、事あるごとに上半身を見せびらかしてくるとかそういう...「んなわけないだろ。あとそれ半裸族にも失礼だわ」
「え!?あっ...ああ。よかったぁ」
どこか食い気味に返してきた彼のその一言に、私は胸をホッと撫で下ろす。
でも...じゃあなんでミカさんは知ってるの?
「だって一緒にお風呂入ってるからね」
「ふぇ!?」
もっと衝撃の事実だった!
「ほ、ほんとなの?」
フフンと鼻を鳴らすミカさんを尻目に真実を確かめようとするも、彼は濁すようにカップに口を付けている。
「まぁ...積もる話もあるだろうし、取り敢えず風呂行ってこい」
「ふふっ。そうだね。行こうかエリカ」
「いや、ちょっと待って!そっちの話の方が気になるってのー!」
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「ふーっ。やっぱりお風呂はいい文化」
あの後ズルズルとミカさんに引き摺られて、結局今は2人でお風呂に入っている。
ちなみにさっきの声は私じゃなくてミカさんの声。私はさっきの話でお風呂を楽しむどころじゃない。
「ほらエリカ。そんな難しい顔してないで、折角のお風呂なんだから」
浴槽で目の前に座るミカさんの水面には、ぷかぷかと浮かぶ2つの脂肪の固まり。
自分のと比べると、ちょっと...悔しい。これが演習用の標的なら間違いなく撃ち抜いているという自信がある。
しかもというかやっぱりと言うべきか、スタイルも抜群で出る所は出て、出なくていい所は引っ込んでいる。
二の腕だって細いし、ウエストはしっかりくびれがついている。
確かにこれなら、彼と一緒にお風呂に入る決心もつくわね。...まぁミカさんの場合はスタイルとか関係なく入ってると思うけど。
むぅ...っと口を膨らませながらも、頭の中にチラつくのはやはり先程の話。
...はぁ。私も、もうちょっと自分のスタイルに自信がもてたらなぁ...。彼と一緒に入ることにも抵抗が...───って何考えてんのよ私!なんで一緒にお風呂入る前提なのよ!
「入ればいいじゃないか。きみも充分いいスタイルだと思うよ?」
「いや、私なんてミカさんに比べたら...」
む、胸だってそんなに大きくないし、スタイルだって見劣りしちゃうと思う。
「エリカ。自分を卑下にしてたら何も始まらないよ?ここで大切なのは自分がどうしたいか。だろう?」
「それは、そうです...けど...」
電話でも隊長からかけられた言葉。ミカさんからも言われて思わず言葉に詰まってしまった。
「それにね?彼は好きだよ?エリカみたいに無駄のない引き締まった体型も」
「いや、だからなんでそこ知ってるんですか...」
そして、こうやって2人が私を気にかけてくれていることがわかるのは本当に嬉しい。
まぁ、彼のプライバシーに関しては手を合わせるしか無いようだけど。
「だからさ?取り敢えずの目標として、この1週間の間で彼と一緒にお風呂に入るってとこでどうかな?」
「えぇ!?い、今言われても1週間じゃ心の準備が...」
今まさに観艦式という高い目標の前に、もっとハードルが高い目標が出来てしまったような気ががが。
「───ちなみに、このまま待ってると彼が入ってきます」
「そういう重要なことは先に言ってください!」
1週間の目標はどこいったのよ!初日で達成しちゃいますよねそれ!
「そう...残念だね。じゃあ私は彼と2人で入ってるから、先に出ておいていいよ?」
いや、そのセリフは聞き捨てならないです!
ザバッと湯船から出た私だったが、その一言でまた湯船に浸かり直す。
「か、勘違いしないでください。あくまで監視です!ミカさんの監視の為に残るだけですから!」
「はいはい」
ミカさんそれは空返事すぎます。全然心こもってないの丸わかりです。
ほんともう...───いや待って!?脱衣所にもう人影見えるんですけど!ミカさん教えてくれるの遅すぎじゃないですか!?
ど、どうしよう。もう逃げられない。服脱いでるような音も聞こえるし、これやっぱり入って来るのよね?
極度の緊張感からか身体の中で、ドクッ!ドクッ!ドクッ!と心臓が勢いよく血液を送り出しているのが感じられる。
この後のことを考えながら急いで心落ち着かせる私だが、気のせいか目の前にいるミカさんが歪んできたような───...
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―――――――――
「おいミカ。シャンプー切れてただろ?───...ってどういう状況よ」
扉を開けて“服を着た”彼が見たのは、目を回してぐでーっと湯船の縁に頭を倒している私の姿。
「きみが早く来てくれないからエリカがのぼせちゃったじゃないか」
「いや、自分から一緒に入るわけないだろ...。というかミカ。分かってて焚き付けたな?」
「ふふっ。たまにはいいじゃないか。婚約者同士の交流というやつさ」
「たまにはってお前...。おーいエリカ?大丈夫か?」
「ちょっろまってぇ。ここほろじゅんびがまだらからぁ」
「大丈夫じゃない。問題だった」