ようこそ第0護衛隊群へ   作:/Null

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全てを知っている彼


1週間の荷物はキャリーケース1個 15/?

「兄さん、私からもありがとう。お弁当美味しかったぞ」

 

「おう。口に合ったか?」

 

「あぁ。もちろん、あの卵焼きの味が忘れられないほどだ」

 

「そうか。ならよかった」

 

私とは逆の手で頭を撫でられた隊長は、隣で気持ちよさそうに目を細めている。

 

それを見た私も負けじと彼の手に頭を強く当てると、彼は困った笑みを浮かべながらもまた優しく撫で直してくれた。

 

「あぁそれと、ミカが作ったハンバーグも...いや、これは直接伝えればいいか」

 

ん?

 

「どゆこと?」

 

「実は今日は兄さんの家に泊まろうと思ってな」

 

えっ!?ちょ、ちょっと...

 

「んー。まぁ別に構わんが」

 

し、しまった!みほに連絡する前に先手を打たれた!

 

しかもちゃっかりオーケーもらってるし...ぐぬぬ。

 

「ただ、これから訓練だからな。帰るの遅くなるぞ?」

 

「あぁ、もちろん分かってるさ。だから私はミカと夕飯の支度をしようと思う。私自慢の手料理だ。エリカも、それでいいだろ?」

 

「うっ...は、はい...」

 

私の考えを読んで先手を打ってくるとは...流石隊長。

 

「取り敢えずミカにも連絡しといてくれ。色々と準備もあるだろうから」

 

「ふふっ。分かったよ」

 

そして隊長もこの満足顔である。

 

もうこの際、隊長の手料理が食べれると考えてポジティブにいくしかなさそうね...。

 

はぁー...ちょっと残念。

 

 

「───ん?エリカ。なんか荷物少なくないか?」

 

「へ?」

 

話の途中、肩を落とす私の荷物を見てそう指摘する彼。

 

 

「そ、そんなことないと思うけど」

 

 

彼のいう通り私の横には小さめのキャリーケースが1つ。1週間のお泊まりとしては確かに少なすぎるそれは不自然で、(ガワ)だけでも大きいものにしとけばよかったという後悔はもう遅い。

 

 

「なるほど。やるな、エリカ」

 

そしてこの一瞬で全てを察したのであろう隊長からの一言。

 

そういうやり方もあるのかと一人感心する姿は正直余計である。

 

 

「え?どうした?」

 

 

「ふふっ。きっとエリカはな?兄さんの着替えを「わっ...!わー!!言わなくていい!言わなくていいです隊長!」───むっ?そうか?」

 

あ、危ない危ない。ほんと隊長はミカさんと同じで恥じらいがないというか。こういうのは分かってても彼の目の前で言ってほしくないんだけどなぁ。

 

「んー。まぁよくわからんが、俺の服にも限りがある。あまり使いすぎて伸ばすなよー」

 

「はいはい...───って、えぇ!?」

 

仕方ないと諦めているような雰囲気でそう言った彼は、私のはぐらかしも虚しく、結局全て分かっていたのであった。

 

 

――――――――――――

―――――――――

 

 

キーンという甲高い始動音と共にヘリのローターがゆっくりと動き出す。その音はやがてバタバタというブレードが風を切る音で掻き消されていく。

 

人工的に作られた風が辺りに強く吹き荒れる中、機外にはまだ彼と隊長の姿が。

 

操縦席にいる私からは何を話しているのかは分からない。けど少しの間その姿が数秒間重なったということは、そういう話...だったんだろう。

 

「悪い、待たせたな」

 

要件が終わったのであろう彼は、隊長から離れて副操縦席へと戻ってきた。

 

「ねぇ」

 

「ん?」

 

「キスしてたわね」

 

「してたな」

 

ヘッドセットをつけたことを確認した私は、先ほど見た光景を彼へと聞き直す。

 

「私にはしてくれないわけ?」

 

「お前は朝やっただろ」

 

「ふーん...。まぁ、いいわ」

 

「お、やけに素直だな」

 

「まぁ、私も成長したってことよ」

 

朝からミカさんと私だけっていうのも、隊長に申し訳ないしね。私も文句はないわ。ノンナさんに関しては...まぁごめんなさいとしか言いようがないけど。

 

心の中で軽い謝罪を入れつつもメインローターのピッチ角を調整すれば、機体が地面から離れるのがわかる。強い風を受けつつも手を振る隊長の頬はほのかに赤らんでいた。

 

それを少し羨ましげに思いながらも、私たちは手を振りかして機首を目的地へと向ける。

 

向かう先はもちろんケストレス。

 

そう、私たちの母艦だ。

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