時刻は既に22時過ぎ。そろそろ寝る時間だというのに、彼の手にはいつものごとくコーヒーが。
「あんた。寝る前だってのによく飲めるわよね」
「ふっ。このくらいのカフェイン、俺の体には関係ないのさ」
「いや、別に誇れることじゃないと思うんだけど...」
この前なんてこれ見よがしにエナジードリンク飲んで、次の日には缶の色以上に真っ青な顔してるし。
もうそんな年齢でもないんだから、体調悪くなるならやめればいいのに。
「取り敢えず、私たち先に寝室行っとくから。程々にしなさいよ?」
「ん。わかってるよ」
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「おぅふ。またか...」
そう言葉を発し、額に手を当てたくても当てれない彼の今置かれている状況を説明...しなくても大体わかるわよね。
コーヒーを飲み終えた彼が欠伸を堪えてベッドに入ると、そこには昨日と同じく既に3人。
左側には昨日と同じく私が。右側は隊長ではなくノンナさんに変わり、ミカさんは真ん中で彼へと手を広げている。
「お前流石に下はキツいと思うぞ。俺もそれなりに重いし」
「ふふっ。なら、変わってくれるかい?」
「はいはい」
そう言って彼は肩をすくめながらミカさんと入れ替わる。仰向けになる彼の両腕を私とノンナさんはぎゅっとホールド。そして覆いかぶさるミカさん。見事な連携プレーである。
「どうしてこうなった...」
「あんたがカフェインなんかにうつつを抜かしてるからよ」
「そういうもんじゃなくない?カフェインって。というか、昨日よりも圧迫感が凄い」
「セクハラですよ同志」
「いや、ここまでしてるお前が言うの!?」
右腕を寄せるノンナさんはその豊満な体を彼に押し付けている。その強圧に昨日とは違い私も押され気味。
───くっ、これが胸囲の格差ってやつね。
高校戦車道の中でもおそらくトップクラスであるその体に若干たじろぎ、大分劣ることを実感しつつも私だってと左腕に絡んでいく。
そして結果的に昨日とは少し異なり真ん中で板挟みに押される彼。冒頭の言葉を呟き、額に手を当てたいのだが残念ながらその両腕は動かない。
ちなみにミカさんはというと彼の胸に顔を埋めて、だらしなく表情を崩している。相変わらず我関せずである。
...というかその状態でよく次の日まで寝れるわよねほんと。
「両手に花ですね」
「状況がなぁ...。明日も寝不足確定じゃねぇかこれ」
「それは興奮してってことですか?」
「いやそうは言ってないだろ」
「婚約者なんですから。別に構いませんよ?それとも、私たちの身体に魅力を感じられませんか?」
そう言ってからノンナさんは体を起こして、分かりやすく残念そうな表情を作り彼を見つめる。
「そんな顔してもダメだからな。そういうのは、お前らが成人してから」
「むっ...」
空いた右手でぽんぽんと頭を撫でれば、ノンナさんには珍しくミカさんと同じような唸り声を上げた。
───しかしそんな不満げな雰囲気も一瞬だけ。
「ふふっ。冗談ですよ。同志の気持ちは分かっていますから」
からかうようにそう返し、また彼の右隣へ収まった。もちろん、腕を抱き寄せるのを忘れずに。
「はぁー...。心臓に悪いからやめてくれ」
「なら、やはり欲情してたと?」
「いや揚げ足ぃ!」
じゃれあう2人。そしてノンナさんからの押しに狼狽える彼。
「───ふふっ」
「「ん?どうした(んですか)エリカ(さん)」」
「...あっ、ううん。何でもないの」
その光景がなんだか面白くて、自然と私の口元も緩んでいた。
きっと彼は言った通り、私たちが成人するまでは一線を超えるようなことはしないつもりだろう。
ほんと、そういうところはしっかりしてるというか、だからこそ安心してミカさんとの同居を許せるというか。
───これなら抜け駆けもされない...と思うから。...多分。
当のミカさんも、彼の答えが分かっていたから2人のやり取りに口を挟まなかったのだろう。いつもの澄まし顔ではなく、だらしなく涎を垂らしている姿を見てそう思う。
───まぁ、それはともかくとして...
「昨日よりも圧迫感が凄いって思ったってことは、隊長に言っとくから」
「許してクレメンス」