朝特有の重い瞼を開き、時計を見ればいつも起きる時間より少し早い。
薄暗い部屋の中彼の姿を探すが既になく、キッチンからの物音だけが聞こえてくる。どうやら朝食の準備の真っ最中のようだ。
───なんだか朝から申し訳ないわね。
心の中でそう一言彼に謝罪を入れつつも流石の眠気には耐えれず、彼の好意に甘えて欠伸を一つ。
浮いてきた意識の中で改めて彼のことを考えれば、きっと謝罪よりもお礼を言われる方が喜んでくれる。そう思った。
だから私は心の中でこう言い直す。───ありがとう、と。
そうすれば優しく頭を撫でてくれて、目一杯の笑顔を返してくれた。
───ふふっ。朝から少し得した気分。
撫でられたところに自分の手をあわせてみるが、もちろん彼の手があるわけはない。けど、寝ている時にでも撫でられていたのだろうか、いつもとは違う寝癖のつき方にちょっとだけ得した気分になった。
しかし、そんな私も隣から聞こえてきた衣擦れの音で我に返る。
「もがもが...もが...もが?(朝から精が出るじゃないか。一体何を妄想していたのかな?)」
「...いや何言ってるか分からないんですけど。というか起きてるなら言ってくださいよ...」
くすりと笑みを零していた私の横には、既に起きていたのだろうミカさんが彼の枕に顔を埋めながら、くぐもった声で何かを言っている。
息を荒くして深呼吸を繰り返しているその姿は、全くもって朝から平常運転の変態である。
ん?あれ?というか...
「...ノンナさんは?」
目を擦り再度辺りを見渡すが、いるはずのもう1人が見当たらない。
確かに昨日はここで寝ていた。それがいないということは既に起きているということなのだろうが、朝一に何か用があるなんて聞いてなかったし...。
そう訝しく思っているタイミングでドアの前の物音に気づく。
「おはようございます。エリカさん」
「え?あっ、おはようございます」
「ふふっ。良い返事です。しかし、2人を起こしてきてくれと同志から頼まれましたが、どうやら必要なかったようですね」
入ってきたのは彼...ではなく、ノンナさんだった。それもエプロン姿の、である。
「もしかして、朝食作ってくれてたんですか?」
「いえ、そちらは同志の方が。私はカチューシャのお弁当作りです」
「あぁ。なるほど」
早起きした理由はそれか。相変わらずカチューシャ大好きねノンナさんは。
「けど私もお手伝いはしていたので、2人の“共同作業”...というところですね」
本命はそっちか、相変わらずあいつのことも大好きねほんと!
“共同作業”と強調して、くすりと笑みを浮かべるノンナさんを見てそう思う。
「ほら、ミカさんも。顔埋めてないで起きますよ」
「...」
「ミカさん?」
「...わしゃわしゃがないと起きない」
いやミカさんも相変わらず!!
何が悲しくて朝から突っ込み倒さないといけないのか。まぁブレない2人に挟まれてる時点でこうなることはわかっていたのだが。
「はぁ...。すみませんノンナさん。あいつ呼んできてもらえます?そうしないとミカさん、絶対起きないと思いますので...」
「ふむ。エリカさん、わしゃわしゃとは?」
「あー...。それはですね...」
そうして事の詳細を説明すること数秒。
「...なるほど。そういえば、私も少し眠くなってきましたね」
あっ。この流れは...
脱ぎ捨てたエプロンが宙に舞うのを見て、私はこの後起こることを察するのだった。
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「2人とも起きたかー?...って、おい」
中々戻ってこないノンナさんを見かねて、寝室へと戻ってきた彼が見たものはベッドに横になる“2人”。
「なんで起こしに行ったノンナが寝てんねん...」
「あんたの日課を見直してみたら?」
ミイラ取りがミイラになるというか、わしゃわしゃ待ちが増えたというか。ちなみに私は一応ベッドからは出ている。朝ごはんも作ってもらってるのにこれ以上手間をかけさせたくないから。
...まぁやってもらいたい気持ちはあるけど。
「なら───よし。エリカ、こっち来な」
「え?う、うん」
手招きに釣られて、てくてくと彼の元へと行けば、その手は私の頭に優しく置かれた。
「わっ...。...えへへ」
そして、私だけをわしゃわしゃしてくれた。
「おはようエリカ」
「うん...えへへ。おはよう」
その心地よさに自然と笑みを零せば、ベッドの中の2人がピクリと反応する。
「んー折角だし、今日は起きた順「「起き(ました)た!」」いや、お前ら起き“てた”やろ」
そして結局、皆揃ってわしゃわしゃされました。