ようこそ第0護衛隊群へ   作:/Null

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よーしよしよし。


義妹ズ 31/?

時刻はちょうど17時を回ったところ。

 

世間的にはそろそろ下校の時間だが、私たちはというと日没前の飛行訓練を残し、タオルとペットボトル片手にひと休憩している。

 

フライトスーツの中は汗が滲み、ちょっと気持ちが悪い。

 

軽くシャワーを浴びる時間もあるけれど、急ぎの予定もないし、まぁ終わってから浴びればいいかと割り切ることにした。

 

髪の毛がべっとりと肌につくこの不快感とも、もう少しでおさらばだ。

 

───だから、今日最後のフライト頑張ろう。

 

 

ぐっとペットボトルを傾けそう気合を入れた時、聞き慣れた着信音が一つ。

 

「...ん。ミカか。どうした?」

 

音の発信源を辿れば彼の携帯電話。そして、相手はどうやらミカさんのようだ。

 

「おう、そうだな。まだ訓練中で...あとは日没前に軽く飛んだら...───ん?なんて?」

 

『だからザザザッ───が今から家に来るって』

 

雑音に紛れて聞こえたのは誰かが家に来るという部分だけ。ただそれを聞いた彼は、目に見えて慌て始める。

 

「...ちょっと、どうしたのよ?」

 

プルプルと携帯を握りしめている彼の肩を心配に思い叩くが、振り返った彼からは真剣な眼差しを向けられ、逆に私の両肩を掴まれた。

 

「え?ちょっ、な何?(や、やだ。私、汗臭くないかな...?)」

 

先程の決意は何処へやら。今になってシャワーを浴びなかったことを後悔することになってしまう私。

 

「エリカ...」

 

「ひゃ、ひゃい!」

 

「今すぐ帰るぞ!!!」

 

「え...?ええぇぇ!?」

 

───もう!何期待してんのよ!バカっ!私のバカっ!!

 

 

両肩をホールドされながらじっと見つめられた彼の視線に、思わず声がうわずってしまった先程の自分を殴ってやりたい。

 

「というか訓練は!?隊の皆さんは!?」

 

「んー、訓練は中止!あと、お前らは───各自通常任務に戻るように!」

 

「いや、雑っ!?」

 

しかし内容はよほど重要なことだったのか、私の手を引いて足早に格納庫を出て行く。

 

握られた手は離されることはなく、その光景にすれ違う人たちからは、なにか微笑ましそうにヒラヒラと手を振られた。

 

物凄い公開プレイをさせられてるようで正直めちゃくちゃ恥ずかしい。

 

 

 

───と、というか...

 

「帰るのは分かったから!その前に!シャワーだけでも浴びさせてー!!!」

 

 

――――――――――――

―――――――――

 

 

「ほら、お兄様が帰ったぞー!」

 

「あっ!お兄様!」

 

「おかえり、お兄ちゃん」

 

息も切れ切れに帰る彼に、何も聞けぬまま玄関を開けると、出迎えてくれたのはみほと島田流の令嬢...彼の言う義妹ズだった。

 

 

「よーしよしよし。相変わらず可愛いな2人とも」

 

「お、お兄ちゃん。エリカさんも見てるから...」

 

「みほさんだけずるい。お兄様、次は私」

 

「おう!ほれ、よーしよしよし」

 

「..,えへへ」

 

姿を見るや否や島田流の令嬢は彼に抱きつき、みほはされるがままに頭を撫でられる。

 

恥ずかしがるみほだが、心なしか気持ち良さそうに目を細め、そして令嬢様はというと年相応な嬉しそうな笑顔を浮かべている。

 

 

───この前戦った時とは大違いね。

 

 

私たちよりも歳下だというのに、何か近寄りがたい雰囲気を纏っていたあの時とは違い、今目の前にいるのは顔を綻ばせる年相応な子供。

 

 

人は見かけによらないというか、西住流でも島田流もやっぱり人の子なんだというか。

 

...まぁそれは隊長とミカさんで分かってたけど。

 

 

クールに決めていた2人が、気が付けばシャツやら枕やらを盗む変態となっていたことが脳裏に浮かび1人遠い目をする。

 

それを人の子(普通)と言っていいのかは分からないが...。

 

 

...え?私?

 

私はどう見ても人の子(普通)でしょ。今も昔も変わってないし、当然ね。

 

 

ふふんと得意げに鼻を鳴らすが、制服の袖口から見える中着に、どこかから物凄く不服そうな視線を感じるけどきっと気のせいだろう。

 

 

まぁそんなことよりも、

 

「まさかと思うけど、このために訓練切り上げたの?」

 

「当たり前だろ。可愛い義妹たちが来てるのに訓練なんてしてられんわ」

 

「えぇ...」

 

どんだけ義妹ズ好きなのよ。普通に引いちゃうんだけど。

 

 

「ごめんなー。お兄様、急いで帰ってきたからお土産とかなくて」

 

「お土産はお兄様。それ以上いらない」

 

「お、おおおぉ!愛里寿!お兄様嬉しい!!」

 

「いや、親戚のおじさんか!(...いや、親戚のおじさんだった!!)」

 

令嬢様をまた撫で始めた彼に、そんな訳の分からない1人ツッコミを心の中でしつつも、視線は2人の横で微笑ましそうにしているみほのほうへ。

 

「悪いわね。大したおもてなしも出来なくて。来た理由は聞いてないけど、取り敢えず明日までゆっくりしていきなさい」

 

そう言うとみほはキョトンとした顔をした後、にへらとあの笑顔を向けてきた。

 

「なんだかもうエリカさんの家みたいだね」

 

「へ...?は、はぁ!?なっ、なな何言ってんのよ!そう言う意味で言ったんじゃないでしょ!?」

 

「え?あっ、口に出てた?」

 

「思いっきり出てるわよ!」

 

「ご、ごめん...」

 

一切の含みなく言うみほは純粋で、そして相変わらず天然で。そんな彼女に私は昔と同じく調子を崩されっぱなし。

 

「はぁ...。もういいわ...。ほんともう、調子狂うわね」

 

なんだか懐かしい気持ちもあるが、きっとミカさんが聞いてたら即座に反論が飛んできてたんだろうなぁと、今と昔の違いを1人実感することにもなった。

 

 

「というか...あれ?ミカさんは?」

 

「え?ミカさんならそこに...」

 

 

 

「...お姉様。独り占めはよくない」

 

 

みほに促されて見た先には、妹に苦言を吐かれながらも彼に抱きついているミカさんがいた。

 

「いや、いつの間にいたんですか...」

 

顔を埋めて頬ずりしているその姿に私は呆れながらもそう言うが、みほはまだ慣れてないのか、はわわと口に手を当てている。

 

「そんなんじゃ明日までもたないわよ」

 

「もしかして、エリカさんもあんな...」

 

「ばっ、余計なこと考えなくていいの!」

 

そもそも、あんたの姉の方がよっぽどなんだから。

 

「ほれ、みほはいいのか?」

 

「ふぇ!?も、もうお兄ちゃん!だから私ももう子供じゃないって...」

 

「ん?でもまほは昔と変わらんぞ?」

 

「え!?お、お姉ちゃんが!?」

 

ほら。こいつのお墨付きよ。

 

「で、でも...。エリカさんに悪いかなって...」

 

「ふふっ。その心配はないさ。ここからエリカのかおりを感じるからね。大方家に入る前にやることはやっているさ」

 

うっ...。さ、流石ミカさん。鋭いわね。

 

 

 

「あぁ、それと...」

 

 

「え?それと?」

 

 

 

「ここは私とこの人の家だから」

 

「いや同居は認めるけど、ここ俺の家な?」




まほ誕生日おめでとう!
(3日遅い)
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