「わぁ...!ボコ!」
そう言って一様に目を輝かせて喜ぶ2人。目の前に置かれたものは、お皿に乗ったボコ...ではなく、ミカさんの作った夕食。しかし、それはただの夕食ではなくボコの顔を形作ったキャラ?炒飯というものだ。
「す、すごい。ミカさんって、なんでも出来るんですね」
「ふふっ。まぁ、流石にこういうのは久しぶりだったけど」
片目を瞑り自慢気な表情をするも視線は彼の方へ。
「いや、俺じゃなくて愛里寿な?」
訂正。その下で手を握る妹君の為に作っていたようだ。
まぁミカさんのことだからって、全部あいつに紐付けるのはよくなかったわね。そもそもあいつはボコのことよく分かってなさそうだし。
「でもきっかけは俺だったかもしれんが」
訂正。やっぱり彼だった。
「...何したのよ」
「そんな大層なことじゃねぇよ。ミカがちっちゃいころにな?デフォルメした戦闘機の炒飯作ってあげたのよ」
「子供になんてものつくってんのよ...。というか、私は作ってもらった記憶ないんだけど」
「あくまでデフォルメしたやつだからな?それに、お前はハンバーグ作ってやってただっただろ」
「それとこれとは話が別よ」
───はあ...私も作って貰えばよかった。
子供の頃であれば絶対に喜んでいたであろうそれを知り、私は心の中で1人ため息をつく。
だって仕方ないでしょ。そういうの作れるの知らなかったんだし。何?デフォルメした戦闘機?面白そうじゃない。それならハンバーグで作って貰えばよかった!───って...ん?
「...ハンバーグ。美味しかった?」
「え?ま、まぁ...そうね」
「そう。...愛里寿でいい」
え?何?なんか同族意識されたんだけど。
制服の袖をちょいちょいと引く島田流の令嬢...もとい愛里寿から何故か表情を緩めてそう言われる。
どこか嬉しさを含んでいるそれは、みほに対してと同じような視線を私に向けていた。
「愛里寿ちゃん、ボコ仲間が増えたね」
「...うん。嬉しい」
「いや、ハンバーグ美味しかったって言っただけよね!?」
話の流れ的に可愛いもの好きの同族意識ならまだ分かるわよ?まだね?それがどうしてボコ仲間として認定されることになるわけ?私ボコなんて一言も言ってないんですけど!?
「...あれは流石にやらんぞ?」
「いらないわよ!」
置いてあったボコのぬいぐるみ(なんで戦闘機に乗ってるのよ)を指差して言う彼に私はそう否定し、必死に身の潔白?を証明する。
しかし、冷静になって見ると彼は笑っており、結局面白がられただけなのだと気付いて強めに彼の脇腹を小突くのだった。
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「ほれ、冷める前に早く食べろよー」
「「はーい」」
向かいに座る2人から揃って返事が上がる。席に着くや否や携帯のカメラで写真を撮りまくっていたが、ようやく手をつけるようである。
声を大きく、いただきますと手を合わせ、嬉しそうにその手に持つのはスプーン。
「...?どうしたのエリカさん?」
「いや、案外容赦ないなって」
「え?...あぁ。ボコのこと」
「そうね」
あれだけ大事そうに写真を撮っていた割には、遠慮なくぐさりとスプーンが突き刺さっている。
キョトンと可愛く“?”マークを浮かべる2人とは対照的に、お皿に乗ったボコは早くもボロボロだ。
「それはまぁ、ボコだから。ね?愛里寿ちゃん」
「ボコに遠慮は不要。むしろ失礼」
「そ、そうなんだ...」
よく分からないが、ボコガチ勢からしたら当たり前らしい。まぁ遠慮して食べれないというよりはマシなのだろうが、それにしても何というか...うん。やっぱりよく分からない。
「エリカさんも食べる?」
「はぁ!?あ、あんたねぇ...」
形は違えど中は私が今食べている炒飯と同じ。それに何だかんだで付き合いの長いみほなら、私が別にボコ仲間ではないことぐらいはわかっているはず。───なのに...もう。
「だから、私は別に...」
そう断ろうとし口を開けた所で、可愛くスプーンを持つ愛里寿が、私に期待の眼差しを向けているのが目に入ってしまった。
「...絶対美味しいと思う」
「うぐっ...!」
一言、そして一閃。
「...はぁー。しょうがないわね」
その笑顔に負けてしまう私なのである。
「なら、エリカのもボコにすればよかったかな?」
「分かって言ってますよねミカさん」
「ふふっ。さぁ?どうだろうね?」
ジト目を向けるが、ミカさんはいつものごとくどこ吹く風。姉妹こういうところは似てほしくないというか、愛里寿には...そう。純粋に育ってほしいわね。
「...エリカさん。美味しい?」
「ん。美味しいわ」
「...そう。えへへ...よかった」
口をつけて美味しいと言えば愛里寿はパァっと表情をさらに明るくなる。
その光景はなんだか微笑ましくて、妹がいたらこんな感じだったんだろうなーと...
「───って、何よジロジロ見て」
「あ、あはは...」
「少なくともあんたの事じゃないから、安心?しなさい」
それに───あんたとは対等でいたいんだから。
心の声も、そして私の一言もよく分かってはいないだろうが、ふと目が合ったみほに知られるのは流石に恥ずかしく、真意を悟られないように言葉を隠す。
「けど、私は関係ないだろう?」
「わっ。ミ、ミカさん!?」
しかし、ここには人の心を読むことが得意な人物が1人。
「俺にとってはちゃんと義妹だもんなー」
「わわっ。お兄ちゃん!?」
そしてもう1人。
いつの間にか移動していたミカさんはみほをぎゅっと抱き寄せ、彼はよしよしと撫で始める。当の本人はというとあたふたとしながらも満更でもなさそうな雰囲気である。
───ぐぬぬ。
「ちょっと...!いい加減に!」
「お、なんだ?お前もして欲しかったのか?」
「ち、違っ...」
「「全く。素直じゃないんだから」」
「う、うるさい!」